②話『犯罪でなければ……良かろうなのだあああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』
「テメエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!! 裏切り者おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! 犯罪者あああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
「やっ止めろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! それに彼女はもう20歳だああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
尾貞は優の胸ぐらを掴みながら揺らした。
優は目を回しながら必死に抵抗した。
「あ! あの止めてください! 私が大好きな人なんです!」
「無理いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
尾貞は完全に目がイッテいた。
もう完全なる犯罪者の眼であった。
「落ち着け尾貞よ、嫉妬とは、みっともない……」
「さっきまでリア充に嫉妬を向けていたお前がそれを言うなあああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
尾貞は優の胸ぐらを掴んでいた片方の手を放して殴ろうとした。
焦った優は
「おい! やっ止めろってマジで! 洒落にならねえって!」
とビビりながら言った。
「ふがyづあfはfでゃうああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
意味不明の言葉と共に尾貞の拳が飛んできた、
しかし、尾貞の片手は優の重さに耐えきれずに離してしまい、
ガツン!
そのまま壁を殴ってしまった。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!! 腕がアアアアアアアアアアアアアア!! 腕があああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「……ザマア」
尾貞がもがき苦しんでいるのを見て優は指を指して言った。
それを見ていた咲菜は
「め!」
「いて……」
そう言って優の頭をコツンとした。
「お友達さんにそんなことを言ってはいけませんよ」
「う……うん、ごめん」
「それを言うのはお友達さんに言ってあげてください!」
「はい……ごめんな尾貞、さすがに調子に乗り過ぎた」
優もさすがに反省しながら尾貞に手を差し伸べた。
それを聞いて尾貞は
「俺もごめん、さすがに冷静さを失っていた……」
と言って謝った。
そして尾貞は
「咲菜ちゃんもごめんね、せっかくの告白に無粋にもこんな状況にしてしまって……」
とすまなさそうに咲菜にも謝罪した。
すると咲菜は
「私はいいんですよ、こちらこそごめんなさい、私もさすがに場所を選べていませんでした、あなたの気持ちも考えずに申し訳ございません」
と尾貞に謝罪した。
それを見て2人は
「「ええこやー」」
と言った。
「そんな! 照れますよ!」
尾貞はそれを見て
「おい、お前、この子を可愛いだけで見るんじゃねえぞ、もしそんなことだけで付き合っていたら俺がお前を殺す」
「ああ、さすがにこれは可愛いだけで決めるなんて勿体ないことは出来ん、全て! 俺はこの子の全てに恋に落ちてしまった!」
「そうか……それなら、それ……そ……れな……らあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
すると尾貞は再び発狂して優を殴り掛かった。
そして足を滑らして頭から地面にぶつけた。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!! 頭がああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ! 割れるうううううううううううううううううううううううううううううううううう!!」
「……気持ちは分かるがもうやめとけ」
「……今日は帰るよ……」
「ああ、そうしておけ……」
そう言って耐え切れなくなった尾貞は家へと歩いていった。
「ごめんなさい、優君とお友達さんの間に溝を作ってしまったみたいで……」
「いいんだ、君が気にすることではない、あいつとは腐れ縁だ、そんな程度で壊れるものか……」
そう言って俯いている咲菜を優は慰めた。
「ありがとうございます」
ホッとしたのか、嬉しそうに顔を赤くしながら優の顔を見上げた。
「でもいいの、俺もう33歳だよ、オッサンだよ」
「そんなこと関係ない! 私はあの時からこの気持ちだけは偽りたくないもの! あなたの全てを愛したの! だから私は今告白したの! そんな小さな理由でこんなことしないよ!」
「!! あ……ありがとう」
それを聞いて優は自分が情けなくなってきた。
(俺はバカだ、何もしないで彼女作って楽して生きていきたいなんて完全に夢物語だ、この子を見てみろ! 近童 優! この子は今日という日までにどれだけの努力を積み重ねたと思う!見ればわかるだろ俺! 俺と尾貞が一瞬にして心が奪われるほどに可愛く仕上げてそのうえで告白に挑んだんだ! 振られたら一瞬にして努力が崩れることを分かった上で覚悟をして告白したんだ! それを俺は自分がオッサンだからいいのかなんてよく聞けたものだ! それは俺の問題だろうが! この子に聞いてんじゃねえよ!)
完全に自分が馬鹿なことを聞いたことに気づいて情けなくなった。
そして
(近童 優! 自分が何をすればいいか分かるだろう! 俺はこの子を何が何でも幸せにするんだ! この子に愛想を尽かされないように! 自分でこの子に近づけるように! そしてこの子が俺のせいで恥をかかないように! 努力するんだ! 今から! ……出来るかな……)
不安になりながらも優は咲菜の手を握った。
「これからよろしくお願いします! 咲菜ちゃん!」
「!! ありがとう……本当にありがとう……嬉しい……ずっと抱いていた気持ちが叶うなんて……」
そう言って咲菜は涙ぐんで
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!」
「!!」
そのまま泣いた。
すると
「ちょっとちょっと君、何してるのかな?」
警察が来てしまった。
「いえ! 違うんです! この子が僕に告白して僕がOKしてそれで歓喜余って泣いてしまってるだけなんです!」
優は必死に事実を説明した。
「お前みたいなゴミの代名詞みたいなニートっぽい奴が告白されるわけないだろうが、 こんな可愛い子はもっと勝ち組に告白するもんだろうが、それに君最近もう一人の負け組のゴミと一緒にカップルを睨んでるそうじゃないか、この社会のゴミ」
そう言って警察は優の腕を無理やり引っ張り、ワッパを掛けた。
「ちょっと待てええええええええええ! 確かに今は休日だから寝癖そのままだけど! 俺ニートじゃないから! 確かに睨んだことあるけど誰でもあるでしょう!」
「嘘をつくんじゃないよ! お前が平日にエロゲーショップに入って行くところ見てたんだからな、それに誰でもしないからそんなこと」
「それ! 指定休! 指定休だから!」
「はいはい嘘言うんじゃないよ社会のゴミ皆言うんだよね」
「おい! お前それでも警察か!」
「警察だから社会のゴミを出来るだけ掃除してるんだ、感謝しろよ」
そう言って問答無用で容赦なく連れて行こうとする。
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああ!! 豚箱はいやだあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「生まれてきたことを後悔するんだな」
そう言って警察は優をパトカーに乗せようとした。
「あの! 違うます! 私が本当に告白したんです! そして優君をゴミと言わないでください!」
それを聞いて警察は信じられなさそうに
「……見る目ないね、君……」
そう言って仕方なさそうに警察は優からワッパを解いてそのままパトカーで見回りに行ってしまった。
優は中指を立てて
「ファック!」
と言った。
それを見て咲菜は
「ダメですよ、例え相手が悪くてもそんなことをすればもっと酷い目に逢いますよ、そう言うことは私と……その……二人きりの時に愚痴を言ってください……」
と言って顔を赤くしながら注意した。
再び優は
(ええこやー)
と思った。
その時
「咲菜、その人誰……」
その時咲菜と同じくらいの女の子が信じられないような目で優たちを見ていた。
「あ、愛紗ちゃん、この人私の初恋の人で初彼氏……なの……」
照れながら咲菜は優を紹介した。
優はドヤ顔で
「彼氏の優です! よろしく!」
と言った。
すると愛紗はプルプル震えながら
「認めない」
「へ?」
「私はこんな男認めないいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
と突然大声を出した。
「!! 何! 何! どうしたの!」
優は突然のことにビビった。
「許さない、どうやって咲菜を誑かしたのか知らないけど、私はあなたを一生呪ってやるううううううううううううううううううう!!」
「何それ怖い!」
「どうしたの! 愛紗ちゃん! 今日はなんだか変だよ!」
そして優しい顔になった愛紗は咲菜を見て
「大丈夫、私が目を覚まさせてあげる」
と言った。
そして優をキッ! と睨みつけながら
「このことを親衛隊に言ったらあんたみたいなゴミの人生終わりなんだからねえええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
と言って愛紗はそのまま走り去ってしまった。
優は叫んだ。
「何それ超怖い!」
そして、あまりのことに優は思った。
(本当に大丈夫だろうか俺……)
その不安そうな思いが伝わってしまったのか咲菜は
「ごめんなさい、私が迷惑をかけてしまったみたいで……愛紗ちゃんも普段優しくてあんなこと言う子じゃないの……信じて……」
と涙ながら言った。
それを見て優は
(バカか俺! さっき幸せにするって言ったじゃないか! アンナ障害が何だ! きっと今からでも努力すれば皆認めてくれる! 大丈夫だ! 自信を持て! 上司にももっと自信を持てって言われてるじゃねえか!)
そう思って優は自分を奮い立たせた。
「ごめん、ありがとう、君のこと大切にするよ」
「!! 本当に、こんな私でいいの!」
それを聞いて優は首を縦に振った。
「嬉しい、本当にうれしい!」
そう言って咲菜は優を抱きしめた。
「温かいな、お前は……」
「ありがとう……」
優の恋愛が始まった。
覚悟と共に始まった。
今までの自分を脱ぎ捨ててでも絶対に成就してやると思った。
(まずすることを考えてそれを一つずつ実行していこう!)
そんな覚悟を胸に秘め近童 優の恋物語が始まる。
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優は早速家に帰ってお母さんに報告した。
「母さん! 俺! かの……」
「咲菜ちゃんと恋人になった事でしょ?」
とお母さんに先に言われてしまった。
「……何で俺より先に知ってるの?」
優は呆然としながら聞いた。
「さっきここに来てあんたに告白したいって言ってたわよ、あんたがいなかったから先に聞いたわよ、どうせOKしたんでしょ童貞」
「……うん、まあそうなんだけど……」
「見境ないわね、このロリコン」
「ロリコンじゃないもん、もうあの子二十歳だもん……」
「光源氏物語作戦でもしてたの? あの子あなたが良くやるエロゲーのヒロインに雰囲気似せてたように見えるけど?」
「!!」
優は改めて思った。
(本当に俺の告白を成功させるために努力してたんだな、すげええ……)
「まあいいか、俺もあの子を幸せにするためにいっぱい努力すればいいんだ!」
「まあ、絶対に追いつかないでしょうけど、てか、あんたはあんたのままでいいんじゃない? あの子はあなたの好みになりたいみたいだし、変えない方が良いと思うわよ」
「何でだよ! 努力は大切だろうが!」
それを聞いてお母さんは
「真面に努力したこともない癖に良くそんなことが軽々しく言えたものね、ドン引きよ……」
と完全に引かれていた。
「ええ……そこまで言う……」
「うん、言うよ、当たり前じゃない……」
優は心が少し折れた。
「いや、そんなことで挫けるな俺! 頑張れ俺! 自分を変えなくても別の方向で彼女を幸せにすることだって出来るはずだ!」
「さっそく揺らいでんじゃないの、私に言われたぐらいで、これだから努力しなかった人間は……」
「ねえ! 何でさっきから正論言うの! 止めて! 正論!」
「正論だもの、言うわよ」
優はもう何も言えなかった。
「まあでも、知らないわよ私」
お母さんが意味ありげなことを言った。
「え、何? どうしたの?」
気になって優は聞いた。
「あんたは知らないだろうけど、あの子結構人気みたいだから、普通に親衛隊が町の彼方此方にいるわよ、茨の道みたいだけどまあ頑張ってねえ、骨は拾ってやるから」
「……うん! 僕頑張る!」
優はもう考えないようにした。
そして初彼女に胸を躍らせながらエロゲーをやって寝た。
「結局何も変わりそうにないわね、あの子……はあ」
お母さんは息子の情けなさに頭を抱えて溜息をついた。