⑪話『本来の将来』
「お母さん、あの時は助けてくれてありがとう、でももうちょっと俺の庇い方があったんじゃないの?」
「え、あれが一番の手なんだけど?」
そう言ってウイスキーボンボンを食べながらお母さんはコーヒーを飲んだ。
「いや、何で俺の悪口を言いながら庇うのが一番の手! 絶対にもうちょっと俺を褒める点だってあるでしょう?」
「何? 無遅刻無欠席を誇るとでも? 言っとくけどね、そんなの社会では当たり前よ! たまに小さなことでもいいから自分に自信を持てって言うけどね、小さすぎることを誇って何がすごいの? 常識が出来なかった人間が常識出来るようになって社会の誰が褒めてくれるの? そんなの小さいガキの頃から出来ている人間は出来てんのよ! あんまり調子に乗んな!」
「えーそういうこと言っちゃう? そんなこと言って人の自信を削いじゃうの? 酷くない?」
そう言ってブーイングをする優
しかしお母さんは呆れながらスマホを弄って
「これを見なさい」
と言ってスマホを見せた。
そこには
『胸糞悪い! 童貞の末路!』
と書かれた動画があった。
「これがアンタの未来よ!」
そう言ってその動画を再生
そこにはただ一人寂しく、仕事もプライベートも自己中で人に迷惑を掛けているという漫画が描かれていた。
そしてそんな人間が恥ずかしげもなく生きていると思いっきり非難をされていた。
しかも現実に存在すると言う最悪なことが書かれていた。
「やっ止めろよ! そんなの見せられたら不安になんだろうが! 悲しくなっちまうだろうが! 大丈夫だ! 俺には咲菜ちゃんがいるんだ! そんな未来にはならない!」
「そうよ、本当になるかよって思う人間がいるかもしれないけど、ほとんどの童貞がこのように暮らすってネットには書いているわよ、あんたも咲菜ちゃんに捨てられてらもうこの未来が確定するって危機感を覚えなさい!」
それを聞いて涙を流しながら
「止めろよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! そんなこと言うんじゃねえよ!」
「だったら死ぬ気で離すんじゃないわよ!」
とお母さんが念を押して。
「わっわかったよ、お願いだからその動画見せないで!」
そう言ってお母さんに頼んだが
「ダメよ! ちゃんと最後まで見なさい!」
と言って無理やり目を開けさせられその場を動かないように思いっきり関節を決められた。
「やっ止めろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
優は悲鳴を上げながらその動画を最後まで見せられた。
「……こわい」
「そうよ、じゃあ、頑張ってね」
「うん……がんばる……」
そう言って放心状態の優はそのまま部屋に帰って行った。
そして部屋にあるフィギアを見て
「あああああああああああああああああああああああああああああああ!! お母さんがいじめるううううううううううううううううううううううううう!」
と言って泣き喚いた。
それを聞いたお母さんは
「あの子大丈夫かしら、このまま咲菜ちゃんが捨てなければいいけど……」
と思いながらウイスキーボンボンを頬張った。
「糞、酷い、どうしてあんな動画を、しかも本当にあるって、何それ怖い」
怯えながら布団にくるまっていた。
「糞、あれで引き籠りになったらお母さんのせいにしたる」
そう言って咲菜に電話を入れた。
『はい、どうしました?』
「今度デートしよう!」
『良いですよ! 楽しみです!』
そう言って取り敢えずはデートの誘いを電話で入れた。
「良かった、じゃあまた日曜日に!」
そう言って電話を切った。
「よし、これで俺の未来は安定だ!」
そう言ってそのまま仕事の疲れで眠った。
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「良かった、デート誘えて」
「そうか……俺にそんな話をするんだ」
と尾貞は優に言った。
「……ごめん」
「……良いんだ」
そう言ってさすがに自嘲しなかったことを優は反省した。
「それで、上手く言ってるのか?」
「ああ、いってるよ、この前恋人同士の約束した! ……てか、結局聞くのかよ」
「そうだよな~何で聞いたんだろうか? でもなんか気になるんだよ、人の恋愛ごとって……俺は女子かよ!」
「まあ、分からんこともないよな~何でか知り合いが恋愛しているとなんか気になったりするよな~」
「そうそう、この前……なんだっけ?」
「そういや俺らってそんな経験あったっけ?」
そう言って2人は悩み始めた。
すると
「あ!! 高校の時クラスの同級生がそんな話があった時スゲー俺ら耳を澄ませたよな!」
「ああ!! そう言えばそうだな、俺ら他の同級生のほとんどがリア充という絶望的状況でつるんでた奴等と嫉妬しながらなぜか最後までその話を耳を澄まして聞いてたな!」
「そうそう! だって気になるんだよ! ムカつくけど! そして振られたって聞いたときなぜか俺らは盛り上がってたよな……」
「それを聞いたクラスの女子が『ちょっとやめなさいよ! この子本当にショックなんだから! 何! 他人の不幸は蜜の味ってわけ!』とめっちゃブチギレたよな…・・・」
「あの頃は俺たちも若かった……」
懐かしそうに2人は話していた。
そして尾貞は
「お前らはいつ別れるんだ?」
「やめろよ、お母さんに童貞の悲惨な未来を描いた動画を見てマジで怖くなってんだから」
「!! 何それ怖い!」
そう言って2人は震えあがった。
「今日は土曜だからデートは明日か……すごく邪魔したいな~」
「ダメだやめろお願いだから」
「お前をその悲惨な童貞の末路に引きずりこんでやろうか~」
「やっ止めろおおおおおおおおおおおお!!」
そんな会話をしながらアニメショップに来ていた。
そして尾貞は
「お前の彼女って本当にアニメの理解がある人なんだな~」
「そうだな~運命ってスゲーな」
と言いながら取り敢えずその話をやめた。
すると
「おい! お前!」
といきなり声がした。
「そういや、次何する?」
「新しいゲームが発売してるみたいだからそれを買うよ、お前は買わないの?」
「ああ、別にいいや、なんか滅茶苦茶ボーッとしたいときとかあるし……」
「そうか、てか彼女とやらないの?」
「……」
「もしもーし」
(なるほど、彼女と一緒に協力するのか、話題のゲームらしいしそれもいいかもしれないな)
と優は考えていると
「おい! 聞いているのか!」
と大きい声が聞こえた。
「なあ、さっきから男が叫んでるけど俺らの事じゃねえ?」
「?? ああ、そういえばなんか声に聞き覚えあるようなないような……」
そう言って振り返ると
「あ、昨日の斉藤さんだっけ?」
「何だお前知り合いか?」
「ああ、元咲菜の担当編集」
「え、あいつなんか作品でも作ってんの?」
「ああ、売れてるみたいだぜ」
「そうなんだ」
とそんな話をした。
すると斉藤は
「お前に聞きたいことがある!」
「うん? 何?」
「お前はどうしてあの子が好きなんだ?」
「はあ? 何でお前にそんなこと言わなきゃだめなの? 気持ち悪いし意味が分からない」
「うん、愛する女に盛り上がりで言われたら照れるの見たさに出来そうだが男にそんなことを言うのはな~言う必要性が感じないな~」
と2人はドン引きしていた。
だが斉藤は
「いいから答えろ!」
と2人の言葉を聞こうとしなかった。
「はあ、どうせお前俺が何て答えたって否定的な答えで別れろとかそんなんで幸せに出来ないとか色々な理由付けてくるんだろ? 見え見えなんだよ!」
「そうだな」
と2人は無視して移動しようとした。
「黙れ! 答えろ!」
そう言われて優はため息をついて
「分かったよ、答えりゃいんだろう!」
そう言って斉藤に向き合った。
「えっと、そうだな、運命だから?」
「は?」
斉藤はその答えに顔を歪ませた。
「だってそうだろ? 子どもの頃から俺のことを好きでいてくれてそれで20歳になるまで俺のために自分の純潔も守って恋もしないでずっと俺のことを一途に思い続けた、そして20歳になり俺には恋人が出来たこともなかった、そしてその運命の歯車が俺たちを出逢わせた! それが俺があの子の好きなところだ!」
と自信満々い答えた。
そして斉藤は
「だったら、それってあの子じゃなくてもいいってことだよな?」
「はあ?」
斉藤の言葉にさすがに呆れた。
「どうしてそうなるんだよ? 運命で何が悪いんだよ?」
「だってそうだろ? 運命であればどんな子でもいいんだろ?」
「お前は何を言ってるんだ?」
そして斉藤は
「分からないのか? それってつまりあの子のことを真に好きではなくてただただ運命の相手だと自分に酔ってそれであの子と向き合ってるってことだよな? それは本当の愛なのか? それはお前の愛し方? 笑わせるな! それはお前の自己満足だ!」
「だったらお前はどんなアイシ方なら許せるんだ?」
優ではなく尾貞が質問した。
「心だ! 俺はあの子の心を見て愛した! 優しくて心遣いが出来て、真面目で、そして何より相手を思いやる気持ち! そこに惚れたんだ!」
と堂々と答えた。
それを聞いて尾貞は
「でもそれって綺麗な部分の心しか見てねえんだろ? 汚い部分を見て愛してるって言わないんじゃないのか?」
それを聞いた斉藤は尾貞の胸ぐらを掴んで
「黙れ! 彼女に汚い部分があるだろ! 撤回しろ!」
「えい」
「グアア!!」
取り敢えず優は斉藤の脛を蹴った。
「てめえ! 何をする!」
「友達のピンチを救うのは友達だろ! ばっきゃろおおおおおおおおおお!!」
と熱血系みたいなことを優は言った。
「まあ、ありがとう……まあ、なんていうかお前も皆もあの子の綺麗な部分を見てそれが本当の愛だのなんだの言ってるがそれだってある意味じゃ間違いだろ? だってその人の綺麗な部分を見てそれが全てだっていうのはさすがにないわ、だったらこいつの運命の方がまだマシだと俺は思うね、だってまだこいつの場合は綺麗だとか汚いとかの部分には触れていないだろ? それってつまり今はまだわからないってことだろ? なら今からわかって運命に勝つかどうか分からないってことだ、つまるところまだ別れる可能性があるってことだ!」
「結局そこかよ!」
「だって女の子が綺麗とか言われたら喜んじゃうじゃん!」
「何でお前は上げて落すんだよ!」
「お前らいい加減にしろ!」
それを見ていた斉藤が怒った。
そして
「お前らさっきから好き勝手言いやがって! どうせ今まで彼女の1人もいなかったんだろ!」
「「ってってめええええええええええええええええええええええええええ!!」」
2人はブチギレた。
「だったらお前にはいたのか! どうせ同じ童貞なんだろ!」
「お前らとは違ってちゃんと女性との経験もある! お前らとは違うんだ!」
「っこっ恋すればいいってもんじゃねえぞ!」
「そうだこのヤリマン!」
「運命だとかそんな生ぬるいこと言っているお前らみたいなバカ共と一緒にするな」
と完全否定されてしまった。
「てってめえ! 運命舐めんなよ! エロゲーだってな! 様々なルートつまり運命でどんな人と結婚する関わるんだからな! 俺が咲菜と恋愛することが出来たのは運命のおかげなんだ! 俺があいつを愛する理由なんてそれだけで十分なんだ! そしてこれからいろんなことを知って咲菜の好きなところを増やすんだ! そこらの顔がいいからやタイプだからってナンパしまくる節操なしと一緒にするな!」
とブチギレた。
「近童! 俺はこんな奴なんかに咲菜ちゃんをやるより! お前みたいなゴミとくっつけてこいつみたいなやつを悔しがらせる方がよっぽどいい! 応援するからな!」
「おう! 言ってることは最低最悪だがありがとう! きっと結婚してやるぜ!」
と言ってガシッと握手した。
「さっそく咲菜ちゃんに電話して俺の思いを伝えるぜ!」
「おう! なんだかわからないが盛り上がりってやつか!」
と言って優は突然スマホを手に取り
『はい? どうかしましたか?』
「咲菜! 俺たちは運命の出会いで引き合わされたんだ! 絶対に結婚しよう!」
『はい! 喜んで!』
「以上だ!」
『はい!』
そうして電話を切った。
「どうだ? はいって言ってくれたぞ!」
「てめえ!!」
そう言って斉藤は殴り掛かろうとした。
優は
「おっと」
軽やかに避けた。
「何と! 奇跡ってスゲエ!」
尾貞は笑いながら見ていた。
そして尾貞と近童は
「「逃げるぞ!!」」
と言ってそのまま逃げて行った。
「まっ待てええええええええええええええ!」
その後すぐに追いつかれた。
そしてまた殴られそうになり警官に止められ斉藤は暴行罪で捕まった。
2人は
「「最底辺は最後には必ず勝つ!」」
と意味不明なことを言った。
「さてと、邪魔者は消えた、でもそうだな、お前がさっき言った通り咲菜と協力プレイをしてゲームをするのもいいな!」
「エロゲーばっかりでなくそれもいいんじゃね? 恋人がいる人だけが堪能できるイベントだぜ、って何で俺はこいつにアドバイスしてるんだ?」
と疑問の思いながら尾貞は言った。




