⑨話『恋人弁当』
「何なんだよ! これは! 今更すぐるだろ!!」
「ええ、いいじゃん! 先輩~一緒にご飯行こうよ~」
近童 優は33歳童貞、今まで女性にモテたことがないばかりか食事に誘われたことなど一度もない
なのに
「何で彼女が出来た今になってご飯誘われんだよ! いやだよ! カ○リー○イ○食べるよ!」
「いや、いつもいつも何でカロリーメイト2本で先輩は平気なわけかを聞きたいんですが……」
と年下の子が苦笑いで言った。
「もういいじゃないですか~たまには健康的な物食べないと本当に死にますよ~」
「え、でもアレちゃんとカロリーコントロールの食べ物だよ……200kcalはあるぞ……」
「いや、足りない分を補うだけであれだけ食べれば大丈夫なわけないじゃないですか……本気で言ってるんですか?」
とさすがに心配気味で言われた。
「とにかく、いつも気になってたんですよ! 毎日毎日飽きもせずに! たまにはちゃんとしたもの食べましょうよ!」
「食べてるんだけど、夜ご飯に」
「朝は?」
「オレンジジュースだけだが?」
「どうやって生きてるんですか、いつか死にますよマジで……」
と思いっきり心配された。
「いやかな、だって俺最近できた彼女いるし他の異性と一緒にいるところ見られるの無理だし……」
「もう、強情ですね先輩は」
そう言って後輩の女の子は
「いいから行きますよ! 大丈夫ですよ! そんなマンガみたいにばったり何てないですよ~」
「ちょ! ここは諦めろよ! もしあったらどうするんだ!」
と言ったが非力な優は後輩の女の子に力負けした。
「……」
「先輩、私に負けるってどんだけ非力なんですか……いつもカ○リー○イ○ばっか食べてるからですよ……」
「え、それが何の関係が?」
「えー何で関係ないと思ったのかな~」
そう言ってそのまま昼を食べることになった。
「はあ、どこで食べるんだよ~ラーメン?」
「どうして先輩は両極端なんですか? カロリー低すぎたり高すぎたりと……もっと健康的なもの食べましょうよ」
「何だよ健康的な食べ物って……サラダとか?」
「バランスのとれた食べ物」
「ではカ○リー○イ○だな、バランス栄養食だし、俺会社に戻るね」
「行かせねえよ!!」
「て! お前は何でそんなに力強いんだよ! なんかスポーツやってたのか!」
それを聞いて後輩の女性は
「いや、何もスポーツやってない女性に力負けしてることをもっと自覚してください」
と言われてしまった。
そのとき
「あら~何をしているのかな~」
「あ」
「あ」
咲菜が真顔で目の前で怖声でいた。
2人は青ざめた。
「チッ違う! この女が俺を無理やり引っ張って来たんだ!」
「まあそうなんですけどそこで女性を庇わないのはどうかと……」
「俺の彼女の前で何で事実を言ってはダメなんだ?」
「まあそうなんですけど、もうちょっと何とかならないんですかね、先輩は……」
それを聞いた咲菜は
「そうなんですか、それならいいんですけど……」
と不機嫌そうに言った。
「まあ、そうなるよな~」
「まあ他の異性といればそうなりますよ~」
「全部お前のせいだけどな」
「まあそうですけどもうちょっと庇えよ~」
そして咲菜は
「まあ話は聞いてましたので大体事情は分かりました」
「あ、聞いてたんですね、だったらこの先輩がカ○リー○イ○ばっかり食べて健康に気を遣わな過ぎなんですよ~彼女さんの力でどうにかなりませんか?」
「そうですね~ではこれはどうですか? 毎日優君に手作りのお弁当を持たせるってのは!」
「え、マジで? いいの?」
「この先輩は本当にそういうところは遠慮なしだよね~悪いよ~とかふつう言いませんか?」
「フ、何なら仕事は咲菜に任せて、専業主夫になろうかなって思ってるぐらいだぜ、収入も咲菜の方がでかいからな!」
「そこ威張って言うことでもないですけどね……」
「私は構いませんよ! 優君お料理できるんですか?」
それを聞いて優は意外そうな顔で、
「え、俺に出来ると思う? 大丈夫! スマホ見たり料理本見て覚えていこうと思うから!」
「おいおいマジかよ、こんな野のどこがいいんですか? 彼女さん……」
とどうしようもない優を見て後輩の女の子は咲菜に聞いた。
「え、だってそう言うところがかわいいんですよね~」
「あ、ダメだこりゃ、駄メンズ好きだ……」
「誰が駄メンズだ!」
「アンタだよアンタ!」
後輩の女の子はついに先輩とも言わなくなった。
「そういえばお名前まだ聞いてませんでしたね」
「あ、ごめんごめん私の名前は山木 恵子! よろしくね!」
と言って山木は挨拶した。
「小井田 咲菜です、優君がいつもお世話になっております」
「いえいえ、こういうところ以外では一応はいろいろ教えてもらってますねで、こちらもお世話になっております」
そうして2人は挨拶を済ませた。
「で、お昼どうしようかな~カロ……」
「大丈夫ですよ! ちゃんと2人分もうありますので!」
と言って鞄からお弁当を取り出した。
「え、もしかしてそれで俺の会社の近くにいたの?」
「はい! 今日は大学が休みなので作りたてですよ!」
「何でこんなハイスペックな彼女貰ってんだ! 身の程を知れ!」
と山木は優に怒った。
「おい俺先輩だぞ! 敬語を使いなさい!」
「敬語を使って貰えるだけのことをあなたは見せて来たんですか!」
「……」
「そこは黙っちゃんだ、でもそこがかわいい!」
そんな咲菜を見て山木は
「ああ、こりゃ他の人たちが反対する理由も分かってくるような気がする、こんな純粋な原石のような宝石をこんな価値も分からん男に渡すのが本当に惜しくなってくるわ……」
と唐突に山木は2人の間を反対する人たちのことを理解してい始めていた。
「まあ、私は先輩の健康状態を滅茶苦茶心配してただけなのであるならいいですよ!」
「おう、そうか、気を遣って貰って悪いな」
「そりゃそうですよ、たとえ役に立たない先輩でも先輩の仕事がいきなり私の仕事になったら困りますし」
それだけ言って山木は
「では、午後もよろしくお願いします!」
と言って昼ごはんと取りに行った。
「あいつ俺のことを慕ってはないみたいだな」
「まあまあ、いいじゃないですか、優君には優君の良さがありますよ!」
「そうか! ありがとう!」
と言って優は咲菜の作ったお弁当を2人で食べ始めた。
「うま! 何これ! 野菜の嫌いな物も食べられると言うマジックだと!」
「結構大変でしたけど食べられたみたいで何よりです!」
そのお弁当には優の嫌いな物も入っていたがそれすらも美味しく仕上がっている、
普通なら食べないでおこうとするがさすがに優も彼女の作ったお弁当を残さずに食べたいと言う気持ちがあったため、逆に先に食べることにした。
「うむ、まさかこんなに素晴らしい料理を食べられるとは、俺も教えてもらったら結構な腕前になりそうな気がしてきた!」
「任せてください! きっちり教えますので!」
と言って咲菜は優に笑顔で言った。
「あ、さっきはごめんなさい、優君のことを信じているんですが、嫉妬してしまって……」
「うん……ああ、さっきのね、まあ女性と絶対にいないことはまずないだろうから慣れないとな……でも俺だってお前が他の男といると嫉妬するだろうから人のことは言えないと思うぜ!」
「そうなんですか!」
優は笑いながら
「そりゃそうだよ、俺だって咲菜が他の男といたら嫉妬してしまうよ! アレ? あの男って誰だろうか? あれは浮気じゃないよね? とかいろんなことを考えてしまう者だぜ! 誰だって自分に自信が無くなってしまうことがいきなり降りかかって来るんだから仕方ないって! だからお前のそれも仕方ないです増すことが出来るって! 暴力やいきなり刺して来たりとか一緒にいた女を殺したりしない限り問題にはならないさ!」
「そっそうなんだ、ありがとう励ましてくれて、私も出来るだけ気を付けるね!」
「お、ありがとう!」
とその言葉によって咲菜の暴走が始めった。
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「というわけで、編集長、私の担当を女の人に変えてもれってよろしいでしょうか?」
「……いきなりどうしたんですか?」
編集長は咲菜に冷や汗をかきながら聞いた。
「彼氏が不安がったら嫌なんで!」
「そんな笑顔を咲き誇らされながら言われても……」
「そこを何とかならないでしょうか?」
「うーん」
と編集長も困っていた。
するとそこへ
「咲菜ちゃん! 編集を変えたいって本気かい! 何で! 僕じゃ何か不満だった!」
と一人の男が真っ青になりながら言った。
「斉藤さん! いえ、そう言うわけではないんですが……」
「だったらなんで!」
「キャッ!」
と言って斉藤は咲菜の肩を掴んだ・
「おいおい、落ち着きなさい、冷静に話そうじゃないか」
編集長は斉藤に言った。
「! ……すみません、取り乱しました」
「私は大丈夫ですよ」
と咲菜は笑顔で言った。
そして一度ブースで3人が話し合うことになった。
「えっと、私彼氏が出来たんですよ」
「え……」
ショックを受けたように斉藤は少し真っ青になった。
「? どうかしたか? 斉藤?」
編集長は不思議そうにしながら聞いた。
「だっ大丈夫です」
「そうか、まあ手柄が逃げるかもしれないしな、でも今の反応が少し気になってな……」
と言って話を戻した。
「で、彼氏が出来たから担当を変わって欲しいとはどういうことかな?」
と咲菜に質問した。
「今日、私の彼が後輩の女の子と昼ご飯を食べに行くところを見て……」
「? それがどうしたのかね? まあ確かに浮気っぽいのではって考えるだろうけど勘違いなのではないか?」
「それは絶対に勘違いじゃありません!」
「うわあ! ビックリした! 何だね斉藤君! 静かにしたまえ!」
「すっすみません、でもそれはきっと勘違いではありませんよ……」
と斉藤は俯きながら言った。
「いえ、私の勘違いでした、話も聞いている限り浮気ではありませんでしたし……でも……」
「斉藤君の反応も気になるが君の事もちゃんと聞かないとな……」
そして編集長は話を再開させた。
「でも私分かったんです、私はそう勝手に不安になってもいいと思うのですが、彼が私が他の男性と一緒にいるところ見ると不安がるんじゃないかって、そしてそれがもとに別れ話が進んだらどうしようと思いまして……」
「成程、でもそれは考え過ぎですよ、確かに不安になるでしょうけどそれも恋の楽しみの一つですから」
と編集長は大人の意見を述べた。
「いえ! そんな男とは即刻別れるべきです! あなたを縛り付けるなんて! 最低で!」
「いえ、私が勝手に不安がっているだけで、別に縛られていませんが? まあ、彼が求めるなら縛りプレイもありかな……」
と顔を赤くしながら咲菜は言った。
「なっ何を言ってるんですか! あなたはそんなことを言う人ではなかったのに! その男にそそのかされたんですか!」
「いいじゃないか、新ジャンルに使えそうだ! 少し卑猥な物を小説に入れると喜ばれることもあるんだ!」
と斉藤の言葉を編集長が遮った。
そして編集長は
「気持ちは分かるがそれで担当の変更をすることは出来ない……申し訳ない、もしそうして欲しいのなら契約を着る必要が出てくる、それはいやだろ?」
「分かりました、では契約を切りましょう、女性の担当さんを用意してくれる場所で執筆させていただきます、もし小説家がダメなら別の職を探します、私大学生ですので時間はまだありますから」
「「え!」」
「ではまた後日契約を切るために来ますので! 今までありがとうございました!」
と言ってそそくさと帰ろうとする咲菜を
「ちょっと待って!」
と引き留めた。
咲菜は不思議そうに
「どうかしました? 忘れ物でしょうか?」
と聞いた。
すると編集長は優しい顔で
「皆には黙っておくんだぞ」
「編集長!」
と言って口に指を当てた。
それを聞いた斉藤が一番驚いた。
「私の権限で女性にしておこう!」
「そっそんな! 僕は反対ですよ! そんなの不当でしょう!」
すると編集長は微笑みながら咲菜に
「理由は担当が君に色目を使うって彼氏と別れさせようとするにしておけば問題はないだろう」
「な!」
「証拠のボイスレコードもここに保存しております」
「ちょ!」
「よし、明日の会議で皆に報告しておく! 以上! 解散!」
「ではこれで失礼します!」
「ま!」
斉藤の言葉も届かずに会議は終了した。
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「なんで……なんで……」
斉藤は呆けながらその場で座っていた。
「おい斉藤! 仕事しろ!」
編集長は怒るがそれすらも聞こえないようであった。
「まあ仕方ないか、でもこれも運命だと思って諦めるんだ」
と編集長はボソッと言って仕事を再開させた。
「そうだ、あいつだ、あの男のせいだ……」
そして
ダ!!
「おい! 斉藤! どこへ行くんだ! ってあ、もう定時か、あいつもう仕事終わったみたいだしいいか……」
そうして斉藤は外へ出て
「まずは情報を集めないと!」
と言ってそのまま走り出した。




