#01 超能力者の出現
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※プロローグです。
誰も立ち入ろうとは決して思わないだろう、深く入り組んだ路地裏の小広場。
その場所で、ひとりの少年が立っていた。
茜色の光が差し込み、彼の表情を陰らせ、無機質なものへと染めていく。
彼の背後には、血にまみれた二人の少年が倒れている。
それを観察していたローブ姿の少女は、右手に持つ拳銃の標準を彼の左胸へと定める。
そして、息を吸い、吐くと同時にトリガーを引いた。
銃撃音とともに放たれた銃弾は、しかし彼に当たることなく、消滅した。
否、消滅したのではなく、受け止められていたのだ。
少年の、圧倒的なまでの膂力で。
彼の左胸の前で伸ばされた拳を見て、少女は、確信した。
こいつも、「超能力者」か、と。
†
――超能力なんて、現実じゃただの手品に過ぎない。
数十年前までは、そのように考えられていた。
それも当然だ。
テレビで、小説で、漫画で、多くの媒体を通して見る「超能力」は、人の空想上の産物でしかありえなかったからだ。
超能力に憧れ、手から出るはずもないエネルギーの砲撃を出そうとする者。
自分にしか出来ない特技を超能力だと言い張る者。
多くの人間が、「人ならざる力」を求め、努力し、挫折していった。
それでも努力し、近い境地まで到達した者もいた。だが、結局はそれも「手品」の類から抜け出すことは出来ずにいた。
だが、そんな中で奇妙な人間が現れる。
西暦2030年。
「その騒動」は世間を騒然とさせた。
――人が、飛んだのである。
きっかけは、一つの動画から始まった。
公園でひとりの男がその場で跳躍し、そのまま空中に立つというものだ。
何らかの機材を使っている様子はない。
もちろん、それを誰一人として信じるものはいなかった。
良く出来たCGだな、と。
だが、その動画の投稿主は反論した。
信じられないならお前らの目の前で見せてやろう、と。
その一週間後から、空を歩く青年の姿が東京を中心に目撃された。
多くの人々が空を闊歩する青年の姿を撮り、保存し、瞬く間にその情報が世界へと広がった。
遠くに写るものもあれば、メートルにも満たない距離に写るものもあった。
メディアにも一面で取り上げられ、空を歩く青年は数々の取材を受けた。
その中で、黒髪黒目、特に特徴のない至って平凡に見えるその日本人の青年は、世界に向けてこう言い放った。
『俺が、真の超能力者だ』と。
――東京青年浮遊騒動。
後にこう呼ばれることとなるこの騒動は、超能力者の存在を人々に知らしめるものとなった。
だが、この騒動は始まりに過ぎなかった。
次々と超能力者を語った「事件」が起こり始めたのである。
集団人間焼却事件。
人工巨大地震事件。
……
これらの事件は人々に確かに超能力者の存在を刻みこんだ。
しかし同時に、多くの悲しみと絶対的恐怖をも生み出してしまった。
超能力者は人々にとっての恐怖の対象であり、そして政府にとっての大きな問題であった。
超能力者は日本にしか現れていない。その理由は定かではないが、日本に出現した問題であるため、日本の政府と警察が共同でこれの責任を持つことになった。
従って政府は、ある「組織」を警察内部に組織し、超能力者と徹底交戦する方針を決定した。
名を、「超能力者殲滅部隊」。
超能力者と、政府の部隊との戦いが、こうして始まったのである。
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