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序章 世界の変化
世界は変わった。
人間だけだった世界は終わり、世界に見えなかった者達が人間達と共存する世界に。
それらすべてが人間と交わる世界。
その変化に人間はおろか、それらの存在も気付くことは無いだろう。
――――もちろん、一部の例外を除いては。
しかしそんな異物が混ざり合う世界は平和だった。
世界が変わる前であれば、そんな変化をしった者はそれぞれの異物を取り除くために戦争いていただろう。
けれど、今は変わった。この世界は変わったのだ。
互いを異物ではなく、共存者として見て助け合えるそんな世界へと。
しかし、世界が変わっても変わらないものがある。
それは心。
喜怒哀楽は世界が変わっても変わらない。変わることは無い。
感情を持ったものの信念なのだから。
特に憎しみというやつは一番厄介だ。
「私の選択は正しかったのだろうか? 否、あの二人なら世界すらも巻き込んで正しい方向へ進ませてくれるだろう。昔の信念を断ち切り、今を生きる彼らなら――――」
そして男は薄暗い空間の中に浮かぶ月を見ながら天を仰いだ。