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更なる受難? 〜姫騎士は頼られる〜

 お茶会の翌日、リュエマはエルン皇国の妃、ティアーヌとフリューレが滞在する部屋を訪れていた。


「あら、リュエマ様。何かご用ですか?」

 そう、訪れたリュエマに声をかけてきたのは、ティアーヌの筆頭侍女のカレンナだった。栗毛色の巻き毛を後ろに一つに束ねて、エルン皇国の侍女の制服なのだろうか、グレーのワンピースに白いエプロンを付けている。

「いいえ、今日はティアーヌ様にではなく、フリューレ様にご用があって参りました」

 リュエマがそう告げると、カレンナは怪訝そうな顔をした。

「あの娘・・・いえ、フリューレ様に何のご用でしょう?」

 それまで友好的だったカレンナの纏っていた空気が、一気に冷たい物に変わった事にリュエマも気が付いた。

「いえ、実は昨日、フリューレ様をエスコートした時に、こちらの粗相で大切な靴をダメにしてしまいました。代わりの靴を幾つかお持ちしたので、お試し頂きたいのですが」

「そういうことでしたら、私が!!」

 そう、名乗り出たのは、初日にフリューレの持たされていた荷物を持とうと申し出た侍女だった。


 その侍女は名をクレリレアと言った。

「フリューレ様がお使いのお部屋はこちらなんです」

 そうクレリレアが招いてくれた部屋は小さな小部屋だった。

「ここは・・・」

 本来ならば筆頭侍女が使うべき部屋であって、決して姫君の部屋に相応しいとは思えない部屋だった。

「メインのお部屋の続き部屋は?」

 リュエマがそう尋ねると、

「その・・・そのお部屋は侍女頭のカレンナ様がお使いです」

 クレリレアは悔しそうな顔をして言った。

「フリューレ様は姫君なのに・・・お母様の身分が低いからと、皆様が軽んじられていて・・・筆頭侍女のカレンナ様は元々は公爵家の縁戚の方なので・・・」

 唇を噛みしめてそう言うクレリレアは白いエプロンをギュッと握りしめていた。


「クレリレア、どなたかいらしたの?」

 そう、バルコニーから戻ってきたフリューレが声をかけてきた。

「あっ、姫様。騎士様が、リュエマ様がお越しです」

「まぁ・・・リュエマさ・・ん」

 “リュエマ様”と言いかけて、慌てて訂正するあたり、生真面目な方なんだなとリュエマは思った。 


「間に合わせで悪いのだが、貴方の足に合いそうな靴を幾つか見繕ってきたから、試していただけないか?本来はドレスに合わせる物なのだろうから、色は何色か用意したのだが・・・」

 リュエマが持ってきた袋の中から五足ほどの靴を取りだし広げてみせると、フリューレは驚いた顔をした。

「で、でも・・・」

「私はこういう物には疎くて、うちの侍女達に選んでもらったのだが、気に入らないか?」

「いえ・・・そうではなくて・・・」

 戸惑う様子のフリューレに、クレリレアがはしゃいだ様子で靴を薦める。

「姫様!これなど、今夜の晩餐に選んでいる黄色いドレスにぴったりです!」

 それは淡い金色の繻子を張った、落ち着いたデザインの物だったが、クリスタルの飾りが可愛らしい物だった。

「でも、こんな・・・頂けません」

「いや、あなたの靴の踵を折ってしまったのは私ですから、もらって頂かないと私も困りますよ」

 フリューレはなおも迷っているようだった。

「失礼」

 リュエマはそう断ると、さっと跪き、フリューレの部屋履きを脱がせて、金の靴を履かせてしまう。

「リュ!リュエマ様!」

「リュエマとお呼び下さいと、昨日も申し上げましたよ。きつかったり、痛かったりはしませんか?」

「ええ・・・」

「なら、全部置いて帰ります」

「えっ!!」

「好きにお使い下さい」

 フリューレは大きな眼を更に見開いて、驚いていたが、そんな表情も可愛いなとリュエマは思った。

「こんなに頂けません!」

 と、言いつのるフリューレにリュエマは爽やかな笑顔で言う。

「私に返されても、私には小さすぎる靴ですから困ります。あなたが使わないなら捨てるしかありませんから」

「あ・・・ありがとうございます!」

 

 その夜の晩餐会に現れたフリューレは、淡い黄色のドレスに、リュエマが贈った靴を履いていた。

 騎士姿でティアーヌ姫のエスコートをしていたリュエマは、そっとフリューレに微笑んで見せた。フリューレは頬を染めて俯いた。


 翌日、フリューレの侍女だと言っていたクレリレアがリュエマの元を訪れた。

「これをリュエマ様にとフリューレ様からです」

 そう言って差し出されたのは、リュエマのイニシャルが入ったリボンタイだった。 

 リュエマが騎士服を着るときは、せめて女の子らしくと母がリボンタイを結ぶようなドレスシャツを多く作ってくれていたのだった。

「この刺繍は?」

「はい。フリューレ様が刺されたものです。頂いた靴のせめてものお礼にと」

「そう。早速使わせて頂きますと、お伝え下さい」

 今しているリボンタイを解くと、リュエマは新しいリボンタイを結んでみせる。

 クレリレアはホッとしたように微笑んでみせた。


「フリューレ様は本当に心根のお優しい方で、私たち使用人にも心を配って下さいます」 そうクレリレアが話し出す。

「第二皇女様だとは知らなくて、私は初日に会ったときにご挨拶もしないで、失礼してしまったね」

「いえ・・・あの扱いでは・・・お間違えになられても無理はございません」

 クレリレアは唇を噛んで俯いた。

「第一皇女様とはいつもあんな感じなの?」

「そうですね・・・でも・・・むしろ、ティアーヌ様の周りの方々の方がフリューレ様を敵視されていらっしゃるといいますか・・・」

「ふ〜ん、そうなんだ〜」

 と、突然割って入った男の声に、二人はギョッとして振り向く。

「ト、トリス兄上っ!!ここ、二階ですよ!!」

 窓枠に腰掛けているのは、リュエマの二番目の兄トリステラだった。

「ん〜、階段に廻るの面倒だったから」

 驚いて固まっているクレリレアにリュエマは慌ててトリステラを紹介する。

「クレリレアさん、こちらは私の二番目の兄でトリステラ。こう見えても騎士団の近衛隊の隊長だ。決して怪しい人ではないよ」

「こう見えてもは余計だろ?初めましてだねクレリレアさん。君があの可愛い第二皇女様の侍女なんだ」

 と、絶品の笑顔で答えるトリステラも、シャルア男爵家の血を受け継いでいて、キリリとした美貌の持ち主だ。窓からの光に母譲りの金の髪がキラキラして眩しい。

「は、はじめまして。クレリレアです!」 

 クレリレアは真っ赤になって俯いた。

「でもさ、だめだよ〜。侍女が主人のお家事情ペラペラ話したりしちゃ」

 そうトリステラが軽い口調で注意した。

「いや、聞いたのは私なんだ!」

 リュエマが庇う。

 すると、クレリレアがキッと顔を上げて言った。

「いえっ!今日はリュエマ様にお願いがあって、ワザと恥を忍んでお家事情もぶっちゃけさせていただきに来たのです!」

「えっ?クレリレアさん?」

 クレリレアは戸惑うリュエマの手を取り、ギュッと握りしめて言った。

「リュエマ様!どうかうちの姫様をお守り下さい!!」 



 

 ご無沙汰してしまいました。


 今、最新流行といいますか、ノロウイルスをもらってしまいしばらく寝込みました。

 明日から職場復帰ですが、まだ体調は万全ではないかも・・・。


 皆様もお気をつけ下さいませ!


 雨生あもう 

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