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公爵夫人のお茶会 〜姫君達は集う〜

「リュエマお姉様!!」

 久々にドレス姿で訪れた茶会には、同じ年頃の良家の「姫」たちが大勢参加していた。

 主催したのは王の姉であるスラビアーヌ様。ハンクルイエ公爵夫人だった。

 頬を染めてリュエマに駆け寄ってきたのは、リュエマを「お姉様!」と慕う集団「白薔薇会」、別名「姫騎士様を慕う乙女の会」のトップに立っているリシェルール。ベリエル男爵家の姫だ。栗色の巻き毛に明るい緑の瞳の可愛らしい姫だった。今日は若草色のふんわりしたスカートが特徴的な、可愛らしいドレスを着ている。頭に色とりどりの生花が山盛りに飾られているのが、どうやら昨今の流行らしい。

 そういえばと、リュエマも頭にそっと手をやる。シンプルにサイドの髪だけを結ったそこには白百合の花が飾られていた。

 侍女達が「絶対に譲れません!!」と、目をつり上げて怒るのに負けて、頭に花を飾らせたが、なるほど流行なのだなと思う。今日のリュエマのドレスは、スカート部分の膨らみを押さえたシンプルなシルエットの紺色のドレスだった。シンプルなシルエットながらも、アクセントに使われているレースは銀糸で編まれており、スカート部分には同じ銀糸で精緻な草花の模様が刺繍されていた。

 リュエマはドレスや装飾の流行など、全く興味が無かった。装いはシンプルで動きやすい物に限ると思っている。だが、侍女たちは私が恥をかかないようにと頑張って飾ってくれるのだから、感謝しなければならないのだなと思った。 

  

「リシェルール、久しぶりだね。元気だったかな?」

 リュエマが自分の右腕にまとわりついて来たリシェルールにそう言って微笑むと、あちこちから、

「ずるいわ!リシェ!!またリュエマお姉様を独り占めして!」

 と、目をつり上げて怒る令嬢方が見えて、リュエマは苦笑する。

 彼女たちのほとんどが、まだ16歳になる前で、春の園遊会での社交デビューをしていない令嬢達だ。

 そんな彼女たちにとって、時折騎士姿を披露するリュエマは仮想恋愛の対象なのだろうなとリュエマは思っていた。

「そういう時はな・・・」

 と、四番目の兄ファルアルドが言っていた対処方法を思い出す。

 リュエマはにっこりと彼女たちに微笑むと、

「ごきげんよう。みんな今日もとても可愛らしいね」

 そう、アルトの極上の声で告げれば、リュエマを見ていた令嬢達はみな黙って顔を真っ赤に染めてしまう。

 ファルアルド兄様に教えてもらった対処法は、確かに彼女たちを黙らせるけど、何だかどこか間違っているような気がしているリュエマなのだった。



「今日のこのお茶会には、大切な目的があるんですのよ!!」

 声をひそめて、リシェルールがリュエマに耳打ちをしてきた。

「大切な目的?」

「スラビアーヌ様は次期王太子殿下の花嫁選びをなさっているんですって!」 

 話しを奪うように、リシェルールが身体を寄せている右側とは反対側の左側からリュエマにそう言うのは、麦わら色の緩やかに波打つ髪を結い上げて、白い生花を天こ盛りに飾った、黒い瞳が美しいピュリアリエ。エニグランド伯爵家令嬢だった。彼女のドレスも、スカート部分がふんわりと膨らんだ、水色のドレスだった。

「なによ!ピュリア!今、それは私が言おうと思っていたのに!」

「リシェばかり、リュエマお姉様とお喋りするなんてずるいのよ!」

 リュエマを真ん中ににらみ合う二人を

「まぁまぁ。どちらも同じくらい素敵なのだから、仲良くしようね」

 と、リュエマがそっとそれぞれの手を取って微笑めば、二人はまたしても真っ赤になってモジモジしながら黙ってしまう。

 ファルアルド兄様、確かにこの対処法は効果はあるようですが・・・何か間違っているような気がするのは気のせいでしょうか?と、リュエマは首を傾げるのだった。


 花嫁選び・・・確かにそっと周りを見渡せば、どの姫も「決まった相手がいない姫」だなと思う。こういう場には必ず呼ばれている社交界の華であるミサエラーシュ姫がここに居ないのは、将来ロマーノ公爵夫人になることが決まっているからだなとリュエマは周りを観察しながら思う。

 リュエマのドレス姿を楽しみにしていたノルディアス王子は、朝の会議をサボった罰として、今頃書斎で書類の山に埋もれている頃だろう。

 しかし、このような場に自分が呼ばれるとはどうなのだろう?と、リュエマは首をかしげた。確かに「秋の狩り」以来、ノルディアス王子から求愛されてはいたが、リュエマが断り続けているのは周知の事実だった。

 自分ほど「王太子の花嫁」という言葉から遠い存在も他にないだろうとリュエマは思っている。


 今の王でいらしゃるアンリストル様は、お体がそんなに丈夫ではないため、なるべく早く、王太子のノルディアス様に王位を譲りたがっていらっしゃるという話しを王宮に勤める次兄から聞いたことをリュエマは思い出していた。ノルディアス様のお母上はすでに亡くなられているから、スラビアーヌ様は母代わりに甥であるノルディアス様の花嫁捜しをするおつもりなのか?

 そんなことを考えていた時だった。

「あら、ここにも華やかな姫君達がいらっしゃったわ」

 そう、気さくに声を掛けてきたのがスラビアーヌ様だった。深い緑のドレスに、控えめだがやはり色とりどりの小さな生花でできた飾りを、白い物が混じり始めた金茶色の髪に上品に飾っている。

 思わず騎士の礼をとりかけて、ドレス姿であることを思い出したリュエマは、慌ててスカートを摘んで貴婦人の礼をとった。

「そこに居るのは、「姫騎士」のリュエマ姫ね」

「はい。お久しぶりでございます」

 リュエマは「女騎士」として、女性の警護に何度か同行したことがあり、スラビアーヌ様とは何度か会ったことがあったのだった。

「丁度良かったわ。あなたには頼みたいことがあったのよ。あとで使いの者をやりますからね」

「はい。かしこまりました」

 そう言ったものの、私に何の用だろう?と、リュエマは首をかしげるのだった。


 連投です。

 読んで下さってありがとうございます!


 ノルディアスは当然ながら「正妃の偽り」のトシェンの父です。

 ノルディアスはどうやってリュエマを妻にするのか。

 リュエマの「大きな悩み」とは?

 それがここから先の展開の柱になります。

 

 お楽しみ頂けたら幸いです!


 雨生あもう

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