プロローグ
柔らかい感じの
ホラーです
あまり怖くないと思います。
嬉しいとか、楽しいとか、そういった感情はその思い出と共に記憶として残りやすいものである。細かいことは思い出せなくても、その時自分が何をして、どのように感じたのか、それが人を成長させるのだ、そしてこうしたあいまいな記憶は、少なからず未来の自分たちにも影響を及ぼすことがあるのだ。
ある少女たちは暗くなるまで近所を探検して遊ぶことが好きだった、
「まりちゃん、向こうって行ったことあったっけ?」
1人の少女が橋の手前から向こう岸を指差し、隣の子に聞いている。
「行ってみよう!」
少女たちは橋を走って渡り、その向こう側の自分たちの知らない新しい景色に目をキラキラさせた、
「あれ?こんなとこに道がある」
さらに好奇心は高まり一見不気味な林でも、道を見つけてしまったら探検してみたくてたまらないのだ。
彼女たちは先を競うように林の中を進んで行くとちょっと開けた空間にたどり着いた。
「早いよこゆきちゃん」
「別に早くないよ、それよりこれ見て!」
林の中にぽつんと開けた空間には、これまたぽつんとたたずむ小さな神社が置かれていた、
こういった知らない何かを見つけることができるのが、探検の楽しさなのだ。
「これお稲荷さんって言うんだよ。」
「へ~!そうなんだ!!さえ、物知りだね!」
するともう1人の少女がカバンからガサゴソと何かを取り出した、
「こんなの持ってるよ!」
お稲荷さんの神様が狐と知ってか知らずか、取り出したのは油揚げだった、
「なんで油揚げなんか持ってるの!?」
「お使い頼まれてたから―…、お供えする?」
その後少女たちは油揚げをお稲荷さんにお供えして、それぞれ手を合わせて拝んだのだ。
日が沈み始めて辺りが暗くなってきたので、さすがの彼女たちでも今日の探検はここまでのようだ、
「あっ、2人とも!」
先に歩き始めていた2人が振り返る、
「大きくなってもここにこようね。」
2人は当たり前と言ったような顔でそれぞれの顔を見合って、大きくうなずいた―……
何の変哲もない小さいころの記憶、他記憶の大半は忘れてしまうだろう、
でも、だからこそ、この思い出は大切なのだ、
忘れてはいけないある日の思い出なのだ―……。




