その9
「えいっ! えいえいっ! 出ろっ! 出てっ! 光れ! 光ってよー!!」
右手をブンブンと振り回し、半ばヤケになっている私。
くそう! 出ない! そもそも光の玉って何なのよ!! 熱を持ってない発光体とか想像できないって! ……人魂!?
「ああ……。姫様可愛らしい……」
「こりゃ無理そうだねー」
「考えすぎだよねえ、もっと肩の力抜けばいいのに」
三人ともニヤニヤとしながら見守っている。勿論さっき決めたとおり助言は一切無しだ。
うるさいうるさーい! 肩の力ってどう抜くのよ! 誰か説明してーー!!
おやつ休憩の後、早速光の玉、兄様命名『ライトボール』の魔法の練習を始めた。母様が言うにはこの程度の魔法ならメイドさんズがいる時なら練習しててもいいそうだ。この三人が側にいないときなんて滅多にないんだけど。
「姫ってまだ五歳なんだよ? 普通始めるのって十歳からだしさー、できなくても普通なんじゃないの? そんなのやめて私たちと遊ぼ」
「そうそう、いいじゃん後五年後で。五年なんてあっという間からね」
「私は見ていて楽しいので止めません。姫様のお好きなように……」
三人とも好き勝手言ってくれる……。能力を使えばこれくらい軽くできるのよ! ライトボールじゃなくて、ライトボールっぽい何かを出す魔法になってしまうんだけど……。
「みんなはどれくらい使えるの? 魔法」
ちょっと気になったけど、この三人はどの程度の使い手なんだろう? メイドさんなんだから攻撃魔法とかは使えないよね。普通くらい……、私の家族がおかしすぎて普通っていうのがよく分からないのよね。
「うん? 日常生活で困らない程度?」
「だよね。私もそんな感じ」
「私はそれなりに、でしょうか?」
「分かんないよ!!」
駄目だ!! そうだよね、普通って説明できないんだよね……。聞き方を変えなければ。
「う、うーん……。あ、父様たちみたいにドカンドカンできたりするの?」
「あ、そういう事? それなら無理無理。あの人たちみたいに、あの威力の攻撃魔法を詠唱破棄で撃つ事自体」
「メアッ!!」
「おっと、ごめんごめん」
ビックリした。シアさんが大声を出すところなんて初めて見た。やっぱりシアさん怒るとは怖いわー。でも普段は優しいから好き。
「ど、どうしたの?」
「ああ……、すみません姫様、驚かせてしまったようで……。ええと……、メアが王族の方々をあの人呼ばわりしていたので、つい……」
「そんな事気にしなくてもいいのにー。フランさんなんて私の事呼び捨てだよ?」
さらに言うと兄様と姉様に対しても敬語なしだね。
「レンは外から来たからしょうがないって。ね?」
「え、ええ。私はこの二人とは違ってリーフエンドの森生まれ、という訳ではないんです」
「え? そうなの?」
シアさんは森の外からの移住者なのか、それは知らなかった。この森の外でもちゃんとエルフは生活してるんだよね。
エルフは世界中どの町にでも、人数の多い少ないはあるが暮らしている。冒険者として世界を巡っている人もいるだろう。
そうなると長寿命のエルフが世界に溢れかえるんじゃないかと思うが、なかなかそうはいかない。
冒険者は常に死が付きまとう職業だし、エルフは元々子供が生まれにくい種族。増える量と減る量が大体同じなのかもしれない。怖い考えだが、よく分からない。
エルフは同種族以外だと、人間のみと子供を作ることができる。ハーフエルフだ。ハーフエルフには、人間寄りとエルフ寄りの二パターンがあって、耳の長さで見分ける事ができる。
人間寄りの場合はほぼ人間と変わらない、寿命が、通常長く生きて百程度が百五十程度に伸びるくらいだ。人間からすると結構違うのかもね。
エルフ寄りの場合。こちらもほぼエルフと変わらない。寿命が減るんじゃないかという話もあるが、ハーフエルフ自体数が少ないらしいのであまり分かっていないのが現状らしい。
エルフの子供は、エルフ同士、人間との間、ハーフエルフとの間の順で生まれにくくなる。エルフ同士の時点で百~ニ百年に一人生まれるかどうかと言われているね。人間寄りのハーフエルフは子供ができないまま寿命を迎えるのが当たり前状態だ。悲しい話だねそれは……。
私たち家族、ハイエルフの場合はもっと生まれにくい。千年に一人、といった感じか? 父様母様がそうだね、約千歳差。
しかし母様は二百年も経たずに三人の子を産むという奇跡的な事を達成してしまっていて、エルフの間では子宝の神として崇められている。いやだよ母親が子宝の神って……。
ハイエルフは生まれやすいんじゃないの? と考えるのが普通だと思うが、お爺様とお婆様がそう言っていたらしく、間違いは無いだろう、との事。
「シアさんはどこから来たの? 冒険者? それともただの移住者? それとも犯罪を犯して逃げてきたとか……」
ちょっと失礼な物も含めて、色々な想像が湧いてくる。
「シアならありそうで怖いよ……」
「失礼な……。え、と、一応元冒険者、だったのですが」
シアさんとしては珍しく、歯切れの悪い話し方。
お、おお! ぼ、冒険者!! シアさんが元冒険者だったとは! ……?
「うん? シアさんが冒険者ってちょっと想像できない……」
物腰穏やか、丁寧な言葉遣い。メイドになるべくして生まれてきた人に思えるんだけど……。
「え? ぴったりじゃない? レン強いよ?」
「そうそう! シア怖いよ?」
「そうだよね! シアさん強くて怖いよね!」
「……分かりました。私の強さ、その一端を軽くお見せしましょう」
きゃーー!! 言い過ぎた! 逃げて! 二人とも逃げてーー!!!
「でもシアさんってさ、まさにメイドさんっていう感じだよね。冒険者なんて荒事できる様には見えないなー」
逃げ出した二人は帰っては来なかった。なむ。
「冒険者、と一口に言っても色々とありますからね。私の様な変わり者も少なからずいるとは思いますよ」
さっきまでの怖い雰囲気はどこへやら、にこやかに話してくれるシアさん。
「そっか、そうだよねー」
なるほど、種族もさまざまなこの世界、私の知らない事ばかりなこの世界だ。冒険者一つ取ったとしても想像とは全然違うものなのかもねー……。
「シアさんの冒険者時代のお話、聞きたいなー」
「冒険者の話など、聞いていて面白いものではないと思いますが」
う……、それもそうかも? 人の生き死にの話もあるよね……。悪い事を聞いてしまったかもしれない。
「あ、明るい話ってないの?」
「明るい冒険話、ですか? うーん……」
悩んでる! 冒険者は明るい話も無いのか! 命を懸けて富と名声を求めるのみなのかっ!!
「な、何か楽しかったお話は無いのー?」
「いえ、そういう訳では……、ふむ、そうですね、では……。ある商隊の護衛中に大規模な魔物の群れに襲われ、全てが終わった後、立っていたのは私だけだった、というお話はどうでしょう?」
「楽しくないよそれ! 怖いよ!! なんでシアさんだけ生き残れたの!? 他の人全滅!?」
「ある意味、楽しそうではないですか?」
「どんな意味!? やっぱりシアさんこーわーいー!!」
この日は結局、一回も魔法を成功させる事ができずに終わってしまった。
明日から頑張る。明日から本気出す!!
2012/8/4
全体的に修正をしました。