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その78

 いきなり王族一堂の前で紹介されたキャロルさんの固まり様は凄かった。緊張で倒れちゃうんじゃないかと思ったよ。

 緊張で、歩く時に手と足が一緒に出るって本当にあるんだね……。ちょっと笑っちゃったよ。

 しきりにシアさんに助けを求めていたが、残念、シアさんも私以外の王族の前では控えちゃうんだよね……


 でも、キャロルさんはAランクの最上位に位置する冒険者。国が関係するような依頼も請けて、王族、とまでは行かないにしても、多少偉い人には会ったこともあるとは思うんだけどなー。

 やっぱりエルフにとって、この国の王族、ハイエルフは特別なのかもね。できたらそんな事気にせずに、気楽に話し合える関係になりたいものだ。


 食事の席でもガチガチ。テーブルマナーなんて誰一人気にして無いのに……

 ここでもシアさんに助けを求めていた。まあ、そのシアさんは私のお世話してたんだけどね……。ごめんなさい!

 テーブルマナーと言えば、箸が欲しいね、今でも使えるかちょっと不安だけど。ナイフとフォークも慣れると使いやすいんだけどね、やっぱり箸以上に食べやすい食器は無いと思うよ。

 

 何かを口に運ぶ度に、美味しいです、とは言っていたが、味なんてきっと分からなかっただろうと思う。まずは私と二人だけの席で慣れてもらった方がいいのかもしれないね。




 そして今は食後、場所はいつもの談話室。私とキャロルさん、そしてメイドさんズの三人がいる。

 さすがに王族に囲まれては談話も何もあったものじゃないので、みんなには遠慮してもらった。明日から一人ずつ慣れていってもらおうと思う。

 シア姉様が立っているのに私が座るわけにはー、とか言っていたが、私とシアさんで無理矢理座らせた。お客様が何を言うか。ふふふ。




「ふう……、美味しいですねコレ。さすがシア姉様、何でも出来ますね……」


「落ち着いたかな? そんなに緊張する事なんて無いのに」


 紅茶を飲んで一息ついたところで話しかける。

 シアさんの淹れてくれた紅茶っていうのが効いたかもしれない。


「す、すみませんシラユキ様、お気を使わせてしまったみたいで。まさか王族の方全員の前へ連れて行かれるとは思わず、またお見苦しいところを……」


「三百にもなって情けない……。殆どはいといいえでしか答えられてなかったですよ」


 シアさんが呆れたようにため息をつく。


「シア姉様も助けてくれたってよかったじゃないですか……。シラユキ様のお世話は確かに大切な事ですけど、そちらのお二人にお任せしてもよかったんじゃ……」


「この私が姫様のお世話を蔑ろにする訳にはいきませんからね。それに、ただのメイドに王族の方とその客人の会話に入っていけと言うのですかあなたは。常識で考えなさい」


「私も今日くらいはいいと思うんだけどな……。もっとキャロルさんを構ってあげてよシアさん」


「シラユキ様……、うう、なんてお優しい方なんだろう……」


「甘やかさないでくださいね、姫様。キャロはこう見えても立派な大人、三百歳以上ですよ? 甘やかす必要など一切ありません。逆に言えば、姫様を甘やかす必要は絶対にある、という事になりますね」


「え? どう考えたらそうなるの!?」


 多分キャロルさんが緊張してたのは、王族の前という事に加えてシアさんの前だから、って言うのもあったのかな。大好きな人に変なところは見せられないよね。



「あはは。常識で考えろなんてシアの言えたセリフじゃないよ。一番の非常識メイドじゃない」


「うんうん。でも、まあ、ウルギス様とエネフェア様はしょうがないよ。私たちでもそこまで気軽に話しかけれないって」


 そうかな? フランさんもたまに母様と冗談を言い合ってると思うんだけど……。あ、キャロルさんのフォローか。


「失礼な。……そうですね、まずはルーディン様とユーフェネリア様とのお話に慣れるといいでしょう。お二人ともキャロより年下ですから、少しは話し易いのでは?」


「だねー。二人とも私より年下だし、ユーネ様は成人してるけどまだまだ子供っぽいところもあるしね、話しかけ易いと思うよ」


 フランさんは二百歳以上だったね。あ、キャロルさんの方がさらに年上なのか……

 見た目がメアさんより若く見えるから違和感が凄いよ。年齢を聞いた今でもついつい勘違いしちゃうねこれは。


「わ、分かりました。滞在中には緊張せず話せるように頑張ります。でも、できたら皆さんも一緒でお願いします……」


「さっきからちょっと気になってたんだけど、私たちに敬語なんて使わなくていいよ? シラユキお付って言ってもただのメイドだし。メアも私もこんな感じで話すからね。あ、そだ、キャロルって呼び捨てでいいの? 悪いけど、見た目からさん付けはし難いんだよね」


 何て正直な人だ! さ、さすがはフランさんだ……


「あ、はい。呼び捨てでいいですよー、っと、呼び捨てでいいよ。実は私も敬語は苦手でさ、助かるよ」


「私も呼び捨てで呼んじゃおう。ねえねえ、キャロルってホントに三百以上? やけに可愛いんだけど」


 メアさんの約三倍生きているようには見えないよね。

 み、未来の私を見ているようだ……!!


「うん、三百四十ちょい。背も胸ももう諦めたよ……。特に背は子供の頃から気にして色々やったんだけどね、リーチが短すぎるし。でも今はもう関係無いね、むしろ小回りが効いていいよ、この見た目で得する事も結構あるしね。何か買うときおまけしてもらえたりさ。あはは、子供扱いされて喜ぶのもなんなんだけどね」


 リーチ? 小回り? 諦めちゃ駄目だよ!! 特に胸の方は諦めちゃ駄目だよ!!!

 しかしキャロルさんは大人だなあ……。私もこんな大人になれる日が来るんだろうか?


 はっ!? 私は諦めないんだから!!!


「冒険者の考えですね。姫様、リーチの差は生死に直結するんですよ? 今は関係無いと言うのも、例の武器で補えている、という意味です。姫様も安心して諦めてください」


「また顔に出てた!? そうなんだ……、体が小さいっていうのは、冒険者にとって不利でしかないんだね、って諦めないよ!!!」


 160、いや、贅沢は言わない! 150は欲しいです! お願い女神様ーー!!


「シラユキ様はまだ十くらいですよね。大丈夫です、きっとエネフェア様、ユーフェネリア様のように美しい大人の女性になれますよ」


「ありがとうキャロルさん! 初めてそんな優しい言葉を貰った気がするよ……。あれ? ホントに初めてじゃ……?」


「姫は美しい大人の女性って言うよりは、可愛らしくて子供っぽい感じに育って欲しいよね。ずっと私たちにお世話させて欲しいし、そもそも想像もできないって」


「ええ、まったくです。姫様はこの先ずっと、未来永劫そのままで、今のお可愛らしいままでいてくださいね」


「可愛らしいままなのは確実よね。ずーっとお世話してあげるからねー、シラユキ」


 みんなこうやって小さい方がいいとか、可愛いままでいろとか言うんだよね。それは、自分の背が高いからこそ言えるセリフなんだよ!!!

 でも、ずっとお世話したいって思ってくれてるのは嬉しいな。ちょっと涙が出そうになっちゃった。


「みんな猫可愛がりなんだね……。ふふ、シラユキ様も嬉しそう。私も引退したらこの国でゆったり過ごそうかな……」


 それはいい考えだね。キャロルさんという素晴らしい理解者を手放したくはないな……。引退したらと言わず、どうにか今すぐにでも我が家のメイドさんとして家族になってもらえないものか……




「シラユキの背はどうせそんなに伸びないから、その話はもういいとして。ねえ、キャロル、ちょっと聞きたい事あるんだけど、いい?」


「フランさんひどい!! よくないよ! 伸びるよ! 多分! きっと! 信じれば……」


「シラユキ様落ち着いてください……。ええと、フランさん? 何かな。私に答えられる範囲でなら何でも答えるよ」


 くそう! フランさんめ……。自分がちょっと背も高くて胸も大きいからって……、うじうじ。


「あらら、ぶつぶつ言い始めちゃった……。ま、いいや、放っておこう。ん、さんは付けなくてもいいよ。レンとはさ、Hしてたんだよね? 女の人同士ってどうヤるの? どうヤったの?」


「ええ!? な、な……」


 フランさんのアレ過ぎる質問にキャロルさんがうろたえる。


 なななななんて事聞くのよ!!! でもちょっとだけ興味のある話ではあるね、黙って聞こうか……。生々しい発言になりそうだったら止めよう。


「フラン! いきなり何を聞くんですか! 姫様の前ですよ? 自重してください」


「私もちょっと興味あるなー。女の人同士とかじゃなくてさ、シアがそういう事するのって想像できないんだよね……」


 え? そうなの? 確かに想像しにくいけど、シアさんが女の人と、って言うなら想像できちゃうよ? またしちゃったよ!!! うああああ……


「まあ、確かに、もう性欲というものは感じなくなりましたからね。……姫様は別ですが」


「私は別なの!? 性欲とか生々しい表現はやめて!!」


「あれだよ、別腹ってやつ。デザート感覚なんだよきっと」


 それもやだよ! でも的確な表現過ぎて泣けるわ……


「いい表現だねメア。それで、どうなの? レンとはどうヤってたのか聞かせてよ」


 まだ聞くか!? でも止めません!


「シラユキ様の前ではちょっと、さすがにね……。シア姉様が話してもいいって言うなら、後で話してもいいけど」


「駄目に決まっているでしょう!! 叩き出しますよ! フランもいい加減にしてくださいね」


「はい! 話しません!!」


 うわ! 珍しくシアさんが大声を! こ、怖いわー……


「ごめんごめん、もう聞かないって。……後でこっそり教えてね?」


「フラン?」


 またいつの間にやらナイフを手に持っているシアさん。


「じょ、冗談だってば! や、やだなー……。まったく、レンは真面目なんだから、もう」


「まじめとかそういう問題じゃないと思うよフランさん……」




 私が生まれてから多分初めてのお客様なんだろう、メアさんフランさんも大喜びだ。

 明日は兄様姉様も加えて、一緒にお話しようと思う。楽しみだー


 でもHな話は勘弁して欲しいよ……。興味は、その、あるんだけどね!






10月6日

フランのセリフを修正しました。


やっぱり話し方がおかしかった……。すみません。

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