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その73

 あれから数日後、ライナーさんからの謝罪を受けるために町へとやってきた。

 メンバーは、私、シアさん、母様、クレアさんの四人。兄様はもう面倒だからとついては来なかった。

 父様思わぬ行動に出るかもしれないので姉様とお留守番だ。


 それにしても、女王様自らご出陣だよ……、やばいよ……

 特にクレアさんがやばい。服装はいつものメイド服なのだが、腰の後ろに鉈のような形をした剣を下げている。


 その鉈は何? と恐る恐る尋ねてみたら。


「鉈? いいえ、これはファルシオンと言います。確かに鉈のようにも見えますが、鉈は主に伐採用。こちらは完全に武器として扱われます。今回はギルドまでの道のりの護衛ですからこの程度の武器で充分でしょう。魔物に会う事もありませんから。敵に出会うとしたらそれは人、相手が人であればこれでも十二分に威力を発揮できます。脳天から真っ二つ、とは簡単にいきませんが、手足を斬り飛ばす程度であれば造作もありません。先日の話ではありませんが、例え千の敵が来ようとも私とバレンシアの二人がいれば安心です。お二人に掠り傷付けることなく殲滅してご覧に入れます」


 と、素敵な微笑みで説明、さらに怖い例え話で安心させて……、安心できるかっ!




 森を抜け町の入り口に着くと、なにやら大人数が待ち構えていた。どうやらギルドからの迎えらしい。

 人数は十人ちょっとか、その中で知っている顔はミランさんだけだね。多分Bランク以上の人も数人混じって護衛として付いてくれるみたいだ。


 母様とギルドの人が何か話をしているが、私はそんな堅苦しい会話に興味は無い。シアさんを連れてそそくさとその場を離脱する。


「ミランさーん。そんな所にいないでこっちに来てー」


 ここは空気を読まず、子供っぽく行動しよう。

 ギルドの人ガッチガチだからね、少しでも肩の力が抜けてくれるといいんだが……


 ミランさんは小走りでこちらに来てくれた。


「シラユキ様……、今日くらいはお姫様らしくしましょうよ……」


「いいのいいの、そういうのは母様にお任せ。ミランさんも一緒に来てくれるんだよね? 近くにいて欲しいな」


「今回はシラユキ様の知らない顔ばかりですからね。分かりました、私でよければお供しますね」


 やった! 話し相手ゲットだ!

 今日はシアさんもあまり話してくれそうに無いからね。ギルドまでの道のりを黙って歩くのは苦痛でしかない。



 ん?


 目に、ある人が止まる。 


「み、み、ミランさん。あの人って……」


 ミランさんの手を引っ張り、頭を下げてもらって、小声で聞いてみた。


「あの人? ああ、リズィーさんの事ですか。綺麗な人ですよね……」


 やっぱりそうだったか。あの人が『落炎』のリズィーさんか……


 翼は目立つね。真っ白で大きな翼、とても綺麗だ。

 リズィーさん本人も美人だね。綺麗な腰まである金色の髪、宝石みたいな碧色の瞳。背はシアさんより少し高いか? 160くらいだろう。年は、うーん、二十歳くらいかな。有翼族の年は見た目では分からない。

 それとあの胸! ラルフさんがつい見入ってしまうのも頷けるよ。胸が強調されるような服だからか、体が細いからか、さらに大きく見えてしまう。


「Aランクの有名な人なんだよね? お話したいな……。怖い人じゃないよね?」


 リズィーさんは、にこにこと笑顔で待機している。

 ラルフさんが殺気を飛ばされたって言ってたし、もしかしたら怖い人なのかもしれない。


「大丈夫ですよ、とても優しい人だと思います。話してみると、優しいと言うか可愛らしい感じがしますね」


「お願いしていいかな、あ! 目が合っちゃった」


「ふふふ。呼んできますね、少しお待ちください」


 じーっと見つめすぎていたせいか、こちらの視線に気づかれてしまったようだ。


 何かすっごい笑顔で見つめ返してくるんですが……




 ミランさんはリズィーさんと数言話し、一緒にこちらに戻ってきた。


「はじめまして、姫様。私は、リズィー・ランと申します。ご覧の通り、有翼族です。どうぞお気軽にリズ、と呼んでくださいね」


 うわあ、綺麗な人……。優しそうな人だ、これなら安心できそう。

 何と言うか、柔らかい、ゆったりぽわぽわしたような喋り方をする人だね。ミランさんの言うとおり可愛らしい感じがする。


 ご覧の通り、と見せてくれた背中は大胆に開いていて、背中が腰の辺りまで丸見えになっている。見えやすいように髪を持ち上げているのが、またなんとも……

 翼が常に出ている種族の服はこうなるんだ……。なるほど、そのせいで胸が引っ張られて、強調されてるように見えちゃうんだね。


 ふむふむ、なるほどなるほど……。もげろ!


「はじめまして、シラユキ・リーフエンドです。ええと、リズさん、でいいのかな?」


「はい。親しい人にはリズ、リズラン、と呼ばれています。呼び捨てで、構いませんよ?」


「よ、呼び捨てはちょっと……。それじゃ、私の事も名前で呼んでくださいね。もちろん呼び捨てでも」


「ありがとうございます。それでは、シラユキ様、とお呼びしますね」


 やっぱり様付けかー。呼び捨てで呼んでくれるお友達はさすがにできそうに無いかな……


「様なんて付けなくてもいいのに……。あ、敬語も無しでいいですよ。できたら、私とお友達になって欲しいです」


「この喋り方が普通なので、すみません、このままで。私のような冒険者とお友達、ですか? 私としては、嬉しいのですが……、いいんでしょうか?」


 さすがに王族からのいきなりなお願いに困り、ミランさんに尋ねるリズさん。


「大丈夫ですよ。私もシラユキ様とはお友達の関係ですからね」


「そうなのですか? ふふふ、では、こんな私でよければ、よろしくお願いします、シラユキ様」


 そう言ってリズさんは右手を差し出す。握手かな?


 私はしっかりと手を握り返して。


「うん! よろしくね! リズさん!」


 笑顔で答える。


 やった!! またお友達が増えたよ! しかも今度はAランクの冒険者の人! いいねいいね! ディ・モールトいいね!!




 あれ? リズさん手、放してくれないんだけど……


「何て可愛らしさ……。噂には、聞いていましたけど、まさか、これほどとは……。あの、メイド、さん? 抱きしめても、いいんでしょうか?」


 シアさんに変な確認を取るリズさん。


「何故私に……。姫様、お答えしてあげてください」


 私は空気に徹する、といった感じで私に丸投げされてしまった。

 リズさんの期待の眼差しがちくちくと突き刺さる。


「うん……、あんまり強くは困るけど……。いいですよ?」


「はい! では失礼して……」


 私をとても優しく抱きしめるリズさん。

 む、胸が凄い! 母様クラスと見た!!


「あああ……。まさかこの世界に、キャロル先生より可愛らしい方が、存在するなんて……」


 キャロル先生? 最近どこかで聞いたような……






 その後すぐ移動が始まった。リズさんは私と手を繋ぎ上機嫌。


 ギルドまでは、そこまで時間は掛からないが、それなりには掛かる。道中リズさんと色々なお話が出来た。

 リズさんのゆったりとした喋り方はいいね。他の種族の、特に人間の人って何となくみんな早口なのよね。

 さすがに初めの内は母様の近くで緊張していたが、どちらも自分に似たような気配を感じたんだろう。すぐに自然に会話できるようになっていた。


 リズさんは可愛いもの全般が好きなようだ。今度シアさんが作ってくれたぬいぐるみを自慢しようと思う。




 シアさんは終始無言で、機嫌が悪いというか、何か考え込んでいるようだった。

 冒険者時代の事を話されないか不安なのかな? ライナーさんに会ったらまず、シアさんについては話さない様にお願いしようか。




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