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その7

 姉様から受けた説明からすると、魔法に名前が無い理由はこういう事だ。


 とりあえず兄様が使って見せてくれた『ライトボール』を例にして考えてみよう。

 姉様が言うには、『ライトボール』は『光の玉を出す魔法』、だね。それなら、その光の玉を歩くのに合わせて動かしたり、その場から遠くへ飛ばしたりする魔法は? 『光の玉を自由に動かす魔法』、かな? さらに光の玉に熱を持たせたり、その光量、熱量を上げ下げしたり、サイズを変えてみたり、点滅させてみたり……、などなど。キリが無いねホントに。


 これは、この光の玉に関する魔法は一纏めで『ライトボール』、と、兄様が勝手に呼んでいるだけだ。起こる現象一つ一つに名前なんて付けられるものじゃない。……付けられるかもしれないけど。

 勝手に呼んでいるのはイメージがしやすいからなんだろうと思う。兄様の場合はカッコつけが大部分を占めるんだろうが……。


 なるほどなるほど、ここまでは何となくだけど理解した。確かにこれは感覚で使うものだね。ライトボールの言葉一つで、恐らく全部の効果を使い分けているんだろう。益々私には難しくなってきちゃったぞ……。



 私は頭脳タイプの人間だ、じゃない、人間だった。今はエルフだったね、あはは。動くよりまず、頭で先に考えるタイプ、面倒くさがりとも言う。……言うか? 私だけだよそれは!

 魔法一つ一つに名前が無いのが一番痛いな。全てイメージで補わないといけないのか。考えるのが得意な私には、合っているのかそうじゃないのか、難しいところだね。

 兄様みたいにライトボールの一言で光の玉関係全般を操る、なんて事はとてもできそうにないぞ……。うーむ、困った。


 感覚、感覚で使う、か。実際魔法を目の前で見て、イメージは断然しやすくなった。光の玉を出すという事は恐らくできるだろう。しかし、それを自由に動かしたり、熱を持たせたりか……。



 これは……、難しいな……。何か取っ掛かりが欲しいところだね。




「シラユキー? 聞いてるー? シラユキったら」


「あ、え? ごめんなさい姉様、考え事しちゃってた」


 頬を突付かれる感触と声に顔を上げてみると、こちらを覗き込む姉様と目が合った。


 ちょっと考え込んじゃってたみたいだね、心配させちゃったかな? 駄目だねもう、私ったら、こんな時こそ家族に頼るべきだろう。


「可愛い……。それで、どう? 何か思いついた?」


「ううん! 全然! 全くできそうに無い!」


 できなくても元気に答えよう、私はまだ五歳なんだ!


「あはは……、可愛すぎるわこの子。それじゃアドバイスを一つ、ね?」


「うん!」


 姉様大好き! 言葉に出すと話が進みそうにないから心の中でね。



「深く考えない事、よ。魔法なんて適当でいいのよ、適当で。初心者は、パッと考えて、カカッと名前付けて、ポーンと出しちゃうのよ」


 考えないって難しいいいいいいい!!!


「ううううう……」


「あらら。ルーもユーネもこの説明でできちゃったのよね。懐かしいわ……」


「うむ。我ながらかなり的を得ていると思う」


 父様が考えた説明かそれ。くそう、アンタらみんな天才なんだよきっと……。折角アドバイスを貰ったのに全然参考にならないとは……、ぐぬぬ。 




「ほらほら考えるなって、まずはやってみな。ほれこんな感じ」


 兄様がライトボールを五個くらい出現させて、自分の周りを自由に動かし、って! なにそれ凄い!!!


「凄い! きれい!! ルー兄様すごい!!」


「お、おお!? 大喜びだなオイ。よーし見てろよ」


 さらに十個程追加し、今度は私の前にまで数個飛ばす。そして、私の周りをくるくると回りだす光の玉。


「うわ! うわあ!! きれい! でもまぶしい!! でもすごい!! ……やっぱりまぶしいよ!!」


 感想が次々と口から飛び出していく。あまりの綺麗さに感動しすぎたのか、体が暴走状態に入ってしまったみたいだ。これが落ち着くまでもう勉強はできなさそうだね。


「お、おお、可愛いな……。おい、ずるいぞルー! 一旦消せ! シラユキ、今度は父様の魔法を見せてやろう」


「わー! なにするのとーさまー?」


 父様が張り切ってる。しかし暴走状態の私には止める事はできない。大丈夫なのかこれは……。



 父様が軽く右腕を横に払うと、広い部屋全体に沢山の光の玉が、出、た……。


「うわっ! オイやめろよ父さん!!」


「眩しっ! 目がチカチカするわよ!」


「あら、綺麗ね」


 赤、青、黄色、緑、その他いろいろな色の光の玉が、点滅しながら部屋中を縦横無尽に動き回っている。目に悪いよこれ! 部屋を明るくして離れて見てね! 部屋の中が明る過ぎるんだよ!! 逃げ場無いよ!!!


「とーさますごいすごーい!! でもめがいたくなってくるよ! めがー! めがーーー!!!」


 暴走状態でもお約束は忘れない私、褒めてもいいのよ?




「うう、まだ目がチラつくわ」


「この程度で軟弱な」


「無茶言うなよ父さん。でも何で父さん母さんは平気なんだ?」


「あ、そうだよね、ふしぎー」


 まだ目の中に光の残滓が残ってるよ、丸い玉の残像が沢山見えて、視界が嫌な感じだ。


「目に入る光を魔法で抑えればいいでしょう? 咄嗟に使っちゃうのよね私たちは。慣れ、というものよ。昔からの癖はそう簡単に抜けないわ」


「そっか、でも態々こんな事程度で魔法使うのもな……」


「そうよね。私は実戦なんてした事無いし、まだまだそこまで考えられないわ」


 姉様よく父様とドカンドカン撃ち合いやってるじゃん。あれうまく防がなければ死んでるよ! 実戦だよ殆ど!! この天才どもめ!!!


 おっと、それより今は。



「母様、凄い……」


 うん、今の一言はとても良い勉強になった。暴走状態も落ち着いたようだね。



 大袈裟に言うなら、瞬間的に防御魔法を展開したんだろう。

 凄いわ、運がよかったよ私。今のお遊びでとても重要な事に気づかされた。ありがとう母様。


 父様も同じような魔法で目に入る光を和らげていたはずだ、そうでなければ自分自身も目をやられてしまう。

『光の玉を出し、自由に動かす魔法』と『目に入る光を和らげる魔法』か。もしかしたら他にも複数使っていたのかもしれない。

 魔法の複数同時発動か? いやいや違う。言うなれば『光の玉を出し、自由に動かし、目に入る光を和らげる魔法』と言ったところか。他にもあるならもっと名前が長くなるだろう。


 さらに母様の咄嗟の判断力、こちらも別の意味で勉強になった。イメージが即防御にもなる。眩しいと思った、思う前にノーアクションで防御が可能なのか。日差しが眩しい時に、反射でまぶたを閉じるような感覚で防御魔法を使ったのだ。



 これは……、冗談抜きで凄い。凄まじいな、魔法ってやつは。

 本当にイメージが全てなんだ……。これが得意な種族が最強と言われるのも当然の事に思えちゃうよ。



 目の前に道ができたような気がするよ。これは、私にも何とかなりそう!


「ふふふ。何か掴んだみたいね」


「え? 今ので?」


 姉様が何で? と驚く。今の会話の流れで何か分かるとは思えないだろう。


「やっぱりシラユキは天才だな! さすが俺の、俺たちの娘だ! 家族だ!!」


「ああ! ……そうだ! 父さんやるぞ! 明日は祭りだ!! 宴会だ!!!」


「まだ一個も魔法使えてないってば、試す事もしてないわよ? でもお祭りか……。いいわね!」


「うん? しちゃう? それじゃ明日はお祭りね。あ、手配お願いね」


「はい。畏まりました」


 母様が早速メイドさんに指示を出し。指示を受けたメイドさんは挨拶を残し、すぐに部屋を出て行く。


 え? 何のお祭り? この前も私が文字を覚えきった記念、とか言ってお祭りしたばかりじゃない。



「え? え? 今度は何の?」


「ん? 何だっていいじゃないか。祭りだぞ? 祭り」


 よくないよ兄様! よく分からない理由でお祭り開催しちゃ駄目だよ!!


「そうだな……。シラユキが魔法について何か掴んだ記念祭、でいいか」


「何か掴んだだけで!? 普通は使えるようになったら、じゃないの!?」


 最近私ツッコミ役に回ってるな……。メイドさんたちも手伝ってよ! ボケが三人もいるんだよ!? あ、あれは駄目だ! すでにお祭りを楽しみにしてる顔だ!! エルフはみんなこんなのばっかりなのか!!!


「細かいなお前は……。お? それなら、魔法使えた記念祭も開けるんじゃないか!?」


「そうね! それもいいわね! さすが私の愛するお兄様!!」


「よーし! そうと決まれば勉強なんぞもう終わりだ!! 酒買いに行くぞ酒!! 後は肉もか!!」


「おう! 俺も手伝うよ父さん!!」


 二人とも早速窓から飛び出していく。


 おいおい、王族が買出しに行くのかい。……窓!? ここ四階だよ!? いつもの二階とは全然高さが違うよ!!



 私の住んでる家は、森の中心にある大木をくりぬいて住居に改造してある。メルヘンすぎる。木が死んじゃうんじゃないか? と思うが、これも魔法的なナニカが働いているんだろう。考えないのが一番だ。慣れるんだよ私。



「うわ!! 飛んでる!? あれも魔法なの!?」


 飛んでる! 飛んでるよ!? いいな、いいな!!!


 焦って窓の外を見た私の視界に入ってきたのは、空を飛ぶ二人の後姿。

 すぐに木々の陰に隠れて見えなくなってしまったが、結構な速度で飛んでいたんじゃないかと思う。


「あれは飛んでると言うより、高く斜めにジャンプしてるって感じかしら? まったく、二人とも子供っぽいわね」


 いつの間にか隣にいた姉様から呆れた様な声。でも姉様も人の事言えないんじゃ? と心の中だけで思っておく。


「飛ぶ事も勿論できるわよ? でもね、スピードを出して飛ぶのは疲れるから蹴って跳んだほうが楽なのよ。シラユキは女の子なんだからあれは真似しちゃ駄目よ? スカートの中見られちゃうからね。ふふふ」


 はっ!? そんな問題があるんだ! スカートで空を飛ぶ、っていうのも漫画の中だけの話なのか……。ズボンは嫌だからスパッツを穿こうかな。パンツじゃないから恥ずかしくないもんの精神で。

 まあ、スパッツを穿いててもスカートの中を見られるのは普通に恥ずかしいよ……。



 今のは跳躍魔法とでも呼ぼうか。走ったら疲れるけど、蹴り飛んで落ちるのは瞬発力と慣性の力か。風圧をどうにかする魔法、姿勢を制御する魔法、それに。蹴る時に窓枠を傷つけないようにする魔法も使っていたんじゃないかな? 他にもきっと色々、全部感覚で使ってるんだ!



 なるほどなるほど、なるほどなー。カチリカチリとパズルのピースがはまっていくような感じ。


 ふふ、ふふふふ……

 これはいける! できるわ! 私にもできそうだわーーー!!!


 まずはスパッツの用意だ! じゃないよ!! まずは光の玉だけだよ……、他の魔法は十歳までお預けだよ……。







なにこれイミフという方はお気軽に感想で質問してください。

分かり易い説明はできないかもしれませんが。


ここちょっとおかしくね? という所もあったら是非お願いします。


2012/8/3

全体的に修正と書き足しをしました。

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