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その67

 クレアさんこわーい。


 私は怖くないです。武器が怖いんです。


 そんな意外に楽しいやり取りをしていたとき。



「ただいま戻りまし楽しそうですね」


 シアさんがノックをしつつ戻って来た。

 ノックと言ってもこの部屋のドアは開けっ放し。開けてあるドアを叩いただけだが。


 帰還の挨拶と、私たちの状況を見た感想が重なって面白いな。


「シアさんおかえりー」


「バレンシア、丁度いいところに来た。お前からも言って差し上げてくれ。私が怖いのではなく武器が怖いのだと」


「なるほど、把握しました。姫様、クレアは怖いですよ?」


「やっぱりクレアさん怖いんだ!」


 喋り方からしてきっと武人タイプの人だよ!


「な! 私は怖くなどありません! バレンシア、お前という奴は……!」


「私ですら数回しかさせて頂いた事がない姫様の膝抱きをこうも易々と……。残念ながら貴女に加勢する訳にはいきませんね。妬ましい」


 シアさんがぱるぱるしている。


 シアさんも読書の時にやればいいじゃん。多分私がからかい難くなるからしないだけなんだろう……


「ふふ、シアさんもする?」


「す、すみません! 私などよりバレンシアの方がいいですね……」


 クレアさんは慌てて私を降ろそうとする。


「ああ、そのままで結構です。もう暫く姫様の椅子でいられる事を堪能するといいですよ。それと、姫様が本当に怖がっているのなら、大人しく可愛らしく座っている訳はないでしょう? ただの冗談、安心してください」


「そ、そうなのですか? 姫様」


「あれ? うん。武器は確かに怖いけど、クレアさんはもう怖くないよ」


 まさか、クレアさんホントに私が怖がってると思ってた?


「姫様、クレアは姫様以上に冗談が通じないのです。あまりからかってはいけませんよ」


「はーい。ごめんねクレアさん」


「いえ……。安心しました」


 恐る恐る私の頭を撫で、安堵の溜息をつくクレアさん。凄く嬉しそうだ。


 なるほど、正直な、素直な人なんだね。ついつい、いつも通りの感覚でやっちゃってたよ。危ない危ない、反省しよう。

 しかし、私以上に冗談が通じないってどういう意味だろう……






「武器についての会話で仲良くですか……。クレアらしいと言うか何と言うか……。姫様を怖がらせるような説明はしてないでしょうね?」


「ああ、そんな説明はしていない。そうでしょう? 姫様」


「普通に怖かったよ! 表現が生々しかったよ!」


「そんな……、気をつけていたつもりなんですが……」


 あれで気をつけてたのか!? この武器はここを狙えば効果的とか、使う事前提の説明だったじゃない!


 武器は使ってこその武器なんだっていうのは分かるけどさ、武器の説明の間間で、返り血を浴びないようにする動き方とか、実際の戦い方の説明まで始めちゃうのは怖かったよ! しかも笑顔でっていうのがまた怖さを増大させていたね。

 クレアさんは本当に戦うことが好きなんじゃないだろうか……。体を動かす事が好きっていう事にしておこう。うんうん、そうしよう。


「武器など姫様には一生縁の無い物。果物ナイフや包丁の使い方すら覚える必要はありませんからね。一生私にお任せください」


 それってつまり、料理は教えないぞって事? 


「うーん、簡単な料理くらいはできるようになりたいな。誰かに作ってあげて喜んでもらうって、いいよね」


 私がおいしいおいしいって食べてると、三人とも凄く嬉しそうだしさー


「ええ、そうですね……」


 うん? その言い方その表情、まさか!


「クレア?」


「クレアさん? 料理作ってあげるような人、いるの?」


「しまっ! い、いません!」


 言ってしまった! という顔で手で口を塞ぐクレアさん。


 分かりやすい人だ……。これは突っ込んで聞くほか無いね!


「いるんだ! 恋人? それとも結婚してるの?」


「結婚!? ま、まだしていな……、あ、いいえ! いません!!」


 ふふふ、何て可愛い反応だ!

 クレアさん美人だもんね、恋人もちゃんといるのかー


「どんな人? 会ってみた」


 !?


 く、苦しい!? クレアさん力強いよ!!


「くくく苦しい、よ……」


「姫様!? クレア、放しなさい! 強く抱き締めすぎです!」


 シアさんの声に反応してバッと手を放すクレアさん。


「いたたた……」


「も、申し訳ありません!! 私は何ということを……」


 クレアさんは、私を自分の膝に乗せたときの様に、脇に手を入れ軽く持ち上げながら自分は席を立ち、私を椅子に優しく降ろし直す。


「自分の力の強さと姫様の華奢さを考えて行動してくださいね。姫様も、からかいが過ぎましたね」


 クレアさんに注意をしつつ、私の体に異常が無いか調べ始めるシアさん。


 く、苦しかった……。

 普段まじめな人はからかっちゃ駄目だ。

 うーん、もうちょっとあのままでもよかったんだけどな。まあ、しょうがないか、今のは私が悪いね。


「ごめんねクレアさん。内緒にしておいた方がいいのかな?」


「はい、お願いしま……、いません! 恋人などいませんから!!」


 あはは。どうしても隠しておきたいみたいだね。気になるけど、これ以上聞いたら色々と危険そうだし……


「うん、分かった。いないんだね、シアさんも、これ以上は聞かないようにしようね」


「私は元から何も聞いてはいませんが……、分かりました」


「あ……、あはは、ごめんね?」


 そうだった。こう言う時真っ先に動くのがシアさんだからさ、ついついね。



「それでは、バレンシアも戻って来た事ですので、そろそろ私もエネフェア様の所へ戻ります」


「うん! また一緒に本読もうね!」


「は、はい。必ず」


 何か、感涙といった感じでクレアさんは母様の所へ戻って行った。




 シアさんと二人、談話室に残される。

 メアさんとフランさんもまだ掛かりそうだ。ちょっとお腹も空いてきたんだけど……


 とりあえずシアさんとお話しながら待とうかな。


「ふふ、クレアさんといっぱいお話出来ちゃった。もう怖くないよ!」


「よかったですね、姫様。この調子でカイナも落としてしまいましょう」


 シアさんは私を持ち上げ、椅子に座り、膝の上へ私を降ろす。何故か横抱きの体勢だ。

 これって、自然と向き合う形になっちゃうから恥ずかしいんだよね、顔も近いし。母様にはいつもしてもらってるんだけど……


「落とすって……。でも、カイナさんとも、もっと自然に話せるようになりたいね」


「カイナはクレアに比べれば容易い方かと思いますよ、完全に姫様の愛らしさにやられてしまっていますから。あの緊張癖が治るには時間が掛かりそうですけどね」


 そうだよね、あそこまでガチガチになられると、こっちも緊張しちゃうんだよね。

 よし、頑張ろう! 家族なのにお話できないとか、悲しいもんね!


「でも、できたら、私だけを見てくれると嬉しいのですが……」


「やめて!! その妖艶な眼差し! 怖い! 落とされちゃいそうで怖い!!」


 絶対この人ノーマルじゃないよ!! 



 最近シアさんのアタックが強烈になってきてないか? これは、一回ちゃんとした話し合いの席をを設けるべきだね!

 二人きりだと襲われそうだけど、本心を話してもらわなきゃ……






「シアさんシアさん。今日は寝る前に大事なお話があります。私のお部屋へ来るように!」


「ひ、姫様にはまだ早いです!! せめて初潮を迎えられてから……。しかし、姫様のお誘い……。分かりました、精一杯努めさせていた」


「違うから! 違うからね!? お話! お話だけだから!!」


「告白ですか? では、キスまでくらいなら?」


「怒るよ?」


「す、すみません! 調子に乗りすぎました!!」


 謝りながらも私を撫で回す手を止めないシアさん。




 早まったか……!?







ついに次回シアさんと……

お楽しみに?


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