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その64

「さあ姫様! 今日は一体どんな可愛らしいお姿とお言葉を聞かせて頂けるのですか!! ああ、もう楽しみで楽しみで昨夜は興奮のあまり寝付けなかった、事は無いですが、まあ、それくらい楽しみなのです!!」


 母様に言われたとおり、コーラスさんに精霊の事に付いて詳しく聞きに来たのだが……。シアさんのテンションがおかしいことになっている。

 話し方こそいつものそれだが、何か、やけにノリがいいというか……。面白そうだからいいか。


「無理でしょ」


「開始一秒で!?」


 早くもこの話題は終了ですね。






「いくらシラユキでも無理なものは無理だって。ホントに可愛いんだから、もう……」


 コーラスさんの私に対しての呼び方が、いつの間にか姫からシラユキに変わっていた。親密度が上がったんだねきっと。


「やっぱりそうなのかな? それならそれでいいんだけどね、精霊さんを見てみたいなーと思って来てみたの」


「せ、精霊さん……。やっぱり私も子供作ろうかしら……。でも、相手がいないのよね」


 フランさんに取られちゃったんだよね……


「コーラスさん美人だし胸大きいし、凄くモテるんじゃないの?」


「そうでもないわよ? 確かに若い頃はモテすぎて困るくらいだったんだけどね、私、もう結構な年だし、みんな弟か子供にしか見えないのよねー。前に求婚しまくって来てた子も、いつの間にかフラニーとくっついちゃったし……、今は全然よ。はあ……」


 やっぱりコーラスさんって結構なお年なんだ。でも、言動は若いんだよね。

 そういえば、母様より年上なんだったかな? 一体何歳なんだろう……。女性でもエルフなら聞いても問題ないよね。


「コーラスさんって幾つなの? 母様より年上なんだよね」


「うん。あー、幾つだったかな……。結構前に千になったんだけど、正確には、えーと……」


「千!?」


「びっくりした……。もう、急に大きな声出さないでよ。まあ、千歳って言っても国から出る事は殆ど無いし、特に大きな経験もしてきて無いからね。ただ長く生きてるだけよ?」


 千歳以上とは予想外だった……

 大きな経験って、戦争とかあったんじゃ……? それは聞かない方がいいか。


「千歳ですか……、私の倍以上とは。まだ十二歳の姫様には想像もできそうにありませんね」


「うんうん。コーラスさんすごーい!」


「ウルギス様なんて千六百くらいよ? バレンシアの三倍以上よ?」


 それはそれ、これはこれ、なのだ。

 父様や母様の年を初めて聞いたときは確かに驚いたが、エルフならこれくらいが普通なのかって思っちゃってたんだよね。

 考えてみたら、五百歳以上の人って身近に全然いないな……


 んー……、いいや。十二歳の子供がいくら考えても無駄だね。今日は今日の目的をまずは片付けてしまおう。






「ほら、こっちおいで、ため池の中見て御覧なさい。光ってる丸いの見えるでしょ?」


 コーラスさんに手を引かれ、ため池の方へ連れて行かれる。

 ちょっとちょっと! 池は怖いんですけど! 私泳げないのよ!!


「ああ、見えますね。あの精霊はどんな役割が……、? 姫様、どうしました?」


「な、何でもないよ!?」


 そう言いながらも及び腰になってしまう情けない私。


「そんなにがっしり掴まって……、ああ……、なるほどね。ねえバレンシア、泳げないの? この子」


 何故バレたし!


「そう言われてみればそうですね、泳ぎの練習などしたこともありませんし……。ふむ、今度沢の方へ泳ぎに行きましょうか?」


 沢? 川かな? 川泳ぎ!? こ、怖いわー。野性的だわー……


「う、うん、機会があったらね! 多分無いけど!」


「機会というものは、出来る物ではなく作るものです。早速明日行きましょうね。まだ程いい暑さが続きますし、本当にいい機会かと思いますよ」


「あはは。頑張ってねシラユキ。今年の夏の間に泳げるようになっちゃいなさい」


「そんなー……」


 くう、シアさんの素敵な笑顔での提案は断れない! 断りにくい!!


 不用意な発言で墓穴を掘ってしまったようだ、大人しく諦めよう。川とか少し楽しみではあるしね。

 ん? 水着とかあるのかな? シアさんだけなら全裸でもいいか……。それは無いわ! 野外露出は無いわ!!




 池の中を見てみる。透き通った綺麗な水だね、どこか、川からでも引いて来てるのかな?

 でも、ため池って流れていかないから、水が濁っていきそうな気がするんだけど……、やけに綺麗だね。


 水の中には小さな光の玉がいくつも見える、あれが精霊かな? それほど大きくない、10cmくらいだろう。5m程のため池に、えーと……、十はいるね。数の数え方は一体二体だったかな?

 大きくないと言っても深さは私の背以上にあるんだが……。落ちたら溺れるねこれは。


「あの精霊、だよね? 何してるの?」


「何をしてるかまでは分からないのよ。でもね、あの子達が住み着いている池の水はずっと綺麗なままなのよ、何年経ってもね。普通は藻が生えたりして濁っていっちゃうんだけどね」


「水を綺麗にしてるって事? どんな行動原理なんだろ……。世界中の池に棲んでるわけじゃないよね?」


 それなら世界中綺麗な水だらけでいいと思うんだけど、さすがにそれは無いだろう。


「ううん、この辺りじゃここだけよ。シラユキは、精霊は自分の好みで動くっていうのは聞いた?」


「うん。やっぱりこの場所に何かあるのかな……」


 精霊に何か役割を与えるのではなく、勝手に働いてもらってる感じかな。精霊が生息しやすい環境を作り上手く利用している、と言うと聞こえがちょっと悪いかな。


 そうすると、ここの池の水を綺麗にする事に何か理由があると見た。

 この池の役割は、お花への水やりか? 多分それくらいしか用途は無さそうだね。


「まさか、お花が好きなの?」


「世界中の精霊学者が必死になって出した答えをあっさり出さないの。ま、ここは分かりやすいんだけどね。花の水まきにしか使ってないし」


 精霊学者なんているんだ。精霊の事を日夜研究してるのかな?

 なるほどね。そういう人たちがいるからこそ、ギルドでの使用や、こういった場所にいきなり精霊が棲み着いてしまった場合の安全性、危険性が分かるんだね。


「花その物が好きなのか、花にまく水のため池の水質保持が楽しいのか、完全な回答はどうやったところで分かりませんね。やはり精霊との会話、意思の疎通、それができないと……」


「ふふふ。シラユキ、話しかけてみたら? 答えてくれるかもよー?」


 そ、そうだよね。そのために来たんだった! よし! とにかくやってみよう!!




 池の淵にしゃがみ込む、右手はコーラスさんと繋いだままだ。落ちそうになったら引っ張ってもらおう。それか道連れね。


「精霊さーん? こっち来て欲しいなー? あ、この精霊さんって名前あるの?」


 またさんを付けてしまった! もういいや、直らないやこれ……


「名前? 人が勝手に付けたのならね。治水の精霊って呼ばれ……、バレンシア」


 治水? 何かイメージと違うな……。ああ、池だから合ってると言えば合ってるのか?


 考えていたら、繋いでいた右手を急に引っ張られ、コーラスさんの後ろに下がらせられた。


「わ! っと……。どうしたの? コーラスさん」


「冗談でしょう? まさか、精霊が答えたとでも?」


 シアさんが私とコーラスさんを庇う様に前に出る。

 どうしたんだろう? 全力で警戒してるね。……へ?


「え!? こっち来てたの?」


 やっぱりこの翻訳能力は精霊にも効果があるのか!?


「いえ、こちらへ来たという訳ではありませんが……、動きが止まりました。それも全てが、です……」


「止まった? 全部の精霊が? ねね、コーラスさん? 見せて欲しいな」


 私の壁になるように前に立っている二人のおかげで、池の中は全く見ることが出来ない。


「駄目、絶対に駄目。精霊はお友達なんかじゃないわよ? ただ、そう在るがままに存在しているだけ。この精霊だって、花にまく水を綺麗にするって事しか分かってないのよ? 他に危険な行動を取る事だって充分にありえるの」


 えー? 大丈夫だと思うんだけどなあ……


「私が見ています、お二人は離れてください。コーラスさん、姫様をお願いします」


 シアさんはそう、池から一瞬も目を放さずに言う。

 おっと、話しかけるだけ話しかけて逃げ出すとか、それこそ失礼者のする事だよ。


「精霊さーん! 私の言ってる事分かるのー? 分かってたら何かしてくださーい!!」


 姿は見えなくても声は届くのよ? 二人とも。


「シラユキ!?」


「姫様、何を!?」


「二人とも黙って! 大丈夫だよ、……多分」


「多分って……、!? 嘘……」


「まさか、本当に……? こ、こんな事が……」


 二人とも池の方を見て固まってしまった、どうやら何かしてくれたみたいだね。

 やっぱり、さすがは女神様のくれた翻訳機能だ。どんな行動をとってくれたんだろう……


 コーラスさんの手を放し、池に向かい歩き、出せなかった。


「コーラスさん、手、放してよー」


「え!? ああ、ごめんね? 私も、行くわ……」


 コーラスさんと二人で池に近づく。シアさんも一緒だ。

 二人ともまだまだ警戒してるね。そんな危険な存在には絶対に思えないんだけどなー


 どれどれ池の中は……、と、あれ? 特に変わりないね……

 さっきと変わらず、精霊がふよふよと漂っているだけだった。


「何も変わっていないように見えるんだけど……。何か変わってるの? それとも、もう戻っちゃったの?」


「はい……。ほんの数秒の事でしたが、精霊が池の中を激しく動き回っていたんです……」


 相変わらず池から全く目を逸らさずに、シアさんが答えてくれた。


 うーむ、それは見てみたかったな。もう一回お願いしてみるか? でも、何度もお願いするのも何だよね……


「あはは……。二人ともごめんね? 私、色々と規定外で」


「ホントよもう……。あんまり驚かせないでね?」


「精霊に興味を持たれると、稀にこういった現象が起こるらしいとは聞いてはいたのですが……。まさかこの目で見ることになろうとは、さすが姫様、なのでしょうか。すみません、まだ、落ち着いていませんね」


 さすがのシアさんも大興奮か。




 どうやらこちらからの言葉に少し反応するくらいみたいだね。何を言っているか意味までは通じてはいないようだ。精霊から見たら、何か変な感じがするくらいの感覚なのかもしれない。

 恐らく精霊に向けて、という明確な意思を持っての言葉だったからだと思う。翻訳機能が働いてしまったんだろうね。これがこの機能の限界か?


 残念だけど、会話、意思の疎通は無理か。治水の精霊は大丈夫でも、コーラスさんの言うとおり、他の精霊にはどんな危険があるか分からない。

 本当に残念だけど、諦めるしかないだろう……




「うーん、悔しいな。できそうな気がしたんだけどなー」


「姫様が何かを失敗するのって何気に初めての事じゃないですか?」


「え? 何それ? どこまで天才なのよこの子。うちの子に欲しいわ……」


「あはは。コーラスさんも家に住めばいいんだよ。そうしちゃおう?」


 コーラスさんは大好きだ。一緒に住んで、甘えるのもいいかも? 悪い事をしたらちゃんと叱ってくれそうだしね。


「それは難しいですよ姫様。館にはルーディン様という魔物がいらっしゃる事をお忘れなきようお願いしますね」


「そうね、ありがたい申し出だけど……。襲われる、とまでは行かないにしても、日常的に揉まれそうだし、さすがにそれはちょっとね……」


 そうだった! 家にはおっぱい星人が住んでたんだったよ!

 兄様め! こんなところで私の邪魔をするとは……!!


「今まで何度か揉まれてるんだけどね、ちょっと一回、その、危なかったのよ」


「やっぱり揉まれ、え……?」


 嘘……、まさか、無理矢理……?


「ちょ、違うわよ! 危なかったのは私!! ルーディンに初めてをあげちゃってもいいかなーって思っちゃってね? ああ……、私は子供に何を言ってるんだか……」


 よ、よかった! 兄様は優しい人だからね、揉んでも揉まれないんだよきっと! 何それ!!


「初めて? コーラスさんは、男性経験は無いのですか?」


「シアさん!? そんなストレートな聞き方は!!」


「うう……。そうなのよ、まだなのよね……。最初のうちは律儀に守ってたんだけどね、好きな人が出来たらあげようって。でもね、そのまま千年も生きて、どうでもよくなっちゃってさ、ルーディンに揉まれてた時に、このまま抱いてもらっちゃおうかと思ったのよ。でもさ、土下座して断られちゃってさ……、泣けるわよあれは……。揉んできたのは向こうからなのに酷いと思わない?」


「ルー兄様ひどい……!!」


 さすがにそれはひどい! こればっかりは姉様に言い付けるわ!!

 まあ、その、でも、コーラスさんとしていいっていう訳でも無いんだけどね。




「ウルギス様に抱いて頂く、とかどうでしょう?」


「何勝手に人の父様薦めてるの!?」


「あ、いいわねそれ。やっぱそういうのは年上でないとね。エネフェアも私なら許してくれるでしょ。おっと、様忘れた」


「駄目!! 絶対駄目ーー!!!」



 やっぱりみんなエロフ、じゃない、エロエロフ! いやらしいエルフなんだから! もう!!







エロエロフ。エロエロっぽくていい感じに?


毎回何故か自然にこんな話を始めてしまう登場キャラ達……、どうしてこうなった!

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