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その62

 善は急げ、の言葉どおり、シアさんは早速次の日に冒険者ギルドへ伝言を頼みに行った。何故か私はお留守番させられたのだが……、苺飴をお土産に買って来てくれたのでよしとしよう。シアさん大好きだ!! ……こほん。リンゴ飴も欲しいな……


 リーフサイドのギルドへの到着日、無いとは思うが来訪の拒否、詳しい事が分かり次第連絡をもらえるそうだ。

 しかし、大陸中の全てのギルドがある町への伝言だ。どれくらいの時間が掛かる事やら。私はリーフエンド以外の国の地理は全く勉強してないからね、さっぱりだ。

 さらにそこからの返答の伝言も逆にあるね。これは、年単位で待たされるかもしれないんじゃないだろうか。






「シアさんはどれくらい掛かると思う? 返事来るまでさ。結構掛かりそうだよねー」


 シアさんはギルドを通じての連絡とかした事ありそうだよね。


「そうでもありませんよ? 冒険者ならば町にいる間は、特別な事が無ければギルドにはほぼ毎日顔を出すでしょうし。……ああ、なるほど、姫様は精霊通信を知りませんでしたね。申し訳ありません」


「精霊通信? な、なにそれカッコいい……」


 まさか、謎の種族の精霊に伝言を頼むのか? 謎の種族の割りにお仕事はちゃんとしてるのか……?

 しかし、精霊との意思の疎通は、難しいと言うより不可能に近いんじゃなかったかな? ギルドの受付はそれができないとなれないとかあるのかな。謎だ。


「ふふふ、カッコよくはありませんよ? 見た目はただの青い水晶です。その水晶に話しかければ、はるか遠くへと音を届ける事ができるんですよ」


 音を届けるって、え? 電話? 精霊を電話に使うの? それとも水晶に録音した音を精霊に運んでもらう? 水晶に録音って何よ!


「だ、駄目だ、全然想像もできないよ……。詳しく教えてもらえるかな、シアさんに分かる範囲でいいから」


 分からない時のシアさん頼み。あんまり頼りにしすぎるのも駄目かな……


「ええ、構いませんよ。姫様のお願いは私には嬉しいものです、ご安心を。精霊について私の知っている範囲など高が知れています。ですが、種族図鑑よりは詳しく分かっていると自負しておりますよ」


「あ、それは私も聞きたい! 精霊なんてどう使うの? あれただの光ってる玉じゃん」


 種族図鑑には、ぶっちゃけ何も分からないよとしか書いてなかったからね。

 うん? メアさんは見たことあるんだ。

 光の玉か……。何か、人魂っぽくてやだな……。 ? 私は今精霊の正体に一歩近付いたんじゃないだろうか? そんな訳無いか……


「シラユキの知ってる範囲じゃ、精霊と関わりがあるのって姉さんだけだもんね」


「フランさんのお姉さん? 私会った事あるの?」


「ふふ、シラユキひどーい。お友達なんじゃないの?」


 え? 私のお友達にフランさんのお姉さんが? だ、誰だろう……


「コーラスさんだよ、姫。もう、フランは意地が悪いよ」


「えええ!?」


「いい反応! 黙っててよかった! うーん、ちょっと意地悪しちゃったかな?」


「あ、う、ううん? こ、コーラスさんかー……」


 コーラスさんがフランさんのお姉さんだったのか!! 身近な人過ぎて逆に思いつかなかったよ。

 そういえば、言われて見れば似てる、かな? 髪の色も綺麗な緑色で同じだし、何より、その、あれが……


「さすがに姉さん程じゃないけどね、似てるでしょ。ほらほら」


 私の目線に気づいてか、フランさんが自分の胸を寄せて上げて……


「もぎとりますよ」


「レン怖いよ!」


 もげてしまえ!!






「さて、話を戻しましょうか。まず、精霊というものは謎の生き物、本当に生き物なのかすら分かっていません。これからもその謎は解明される事は無いでしょう」


 うん、そうだよね。図鑑によると、明確な意思を持って行動しているらしいんだけど、生態とか言葉とか一切分かっていないんだよね。


「ですが、極一部の精霊のみの話なのですが、その特性が判明しているものもいるんです。その一つが、失礼、その一種がギルド間等の通信に使われている精霊ですね。これは、人が勝手に付けた名前ですが、送音の精霊と呼ばれています。この精霊について、簡単にしかできませんがお話しましょうか」


 説明じゃなくてお話なんだ。当たり前の事だけど、シアさんでも知らない事がいっぱいあるんだね。

 しかし……、送音ってさ、聞こえが騒音みたいでなんか嫌だね……


「うんうん。お願いします!!」


「可愛らしい……。では、疑問質問はその都度遠慮無くどうぞ。何故かこの送音の精霊、とある地域のある場所で採取された青い水晶をどこか人の住処へと置いておくと、いつの間にかその水晶の中に住み着いているらしいんです。理由は分かりません。あ、いえ、理由は分かっているのですが、そうだろう、という可能性が高いというだけですね」


「とある地域のある場所っていうのは、やっぱり伏せられてるのかな?」


「ええ。乱獲され、良からぬ事に利用しようとする輩が必ず出てきますからね。勿論私も知りませんよ。興味が無いのもありますが、調査したところでも捕縛されるのが落ちです」


 そんな事に使えるのかな? 良からぬ、悪い事? 精霊だって生き物なんだし、使う人を選びそうなものなんだけど。


「住み着いた後は簡単です、ある一定以上の大きさに砕きます。あまり小さく砕くと効果はなくなってしまうらしいのですが、これも分かりませんね。砕いた水晶は、その後音のみですが、通信が可能になるんです。十の数に砕いたとしたら、その内の一つに話しかければ残りの九つから声が聞こえる、という事ですね。原理は一切不明です、最初に誰が気づいたんでしょうね?」


「く、砕いちゃうの? 中の精霊さん、死んじゃったりしないの?」


 ば、バラバラに引き裂いてやろうか? な状態になっちゃうんじゃ……


「せ、精霊さん……。ちょっとメア、シラユキ可愛いすぎるんだけど……」


 フランさんうるさい!


「私も今のは衝撃を受けちゃったよ……。姫、ちょっと可愛がっていい?」


 メアさんもうるさーい!! でも可愛がるのは許可しようじゃないか。


「後にしてください。精霊に死、という概念は無いらしいですよ? 例えその身を百に分けられようとも、在り様は変わらないと言われています」


「な、何それ……、精霊ってホントに理解不能な生き物なんだ……。んー、でもさ、その水晶から出て行っちゃったりは? 人に使われることを嫌がったりするんじゃないのかな?」


 さっきも言ってた事だけど、悪い事には使われたくないよね。


「精霊の考えは人には想像もできませんよ、そもそも精霊に何か考えがあるのかどうかも分かっていませんからね。本能のみで生きているのか、それとも人にはとても及びつかないような深い思慮の下での行動なのか……。話を戻します。精霊について分かっている事はもう一つあります、それは、役割を好む、という事。実際のところはそれが真実かは誰にも分かりませんが、通信、という役割がある限りはその水晶に居続けるらしいですよ」


「あー、何となくだけど分かったよ」


 音を送ったり受けたりが楽しいんだね。その水晶にいれば、人が音を送りに来てくれる。全く誰も来なくならない限りは、出て行く気が起こらないのかな、多分ね。


「さ、さすが姫。何となく分かるだけでも凄いよ……。よし撫でよう」


「私は姉さんに色々聞いてるから少しは分かるんだけどね。うん、撫でようか」


 そんなに難しい事でも無いと思うけど……。まあ、普通に生活して行く分には、確かに必要無さそうな知識だね。


 よし、撫でて!!




「姫様、ギルドの依頼の成功と失敗、ギルド員はどうやって把握していると思います? 町中での雑務依頼と違いギルドの依頼は町の外が主、一組に一人監視を付ける訳にはいきませんよね?」


 シアさんが急に話を変える様に話し始めた。


「自己申告、はありえないか……。話の流れからすると、精霊が関係してるの?」


 私が喋りだすと同時に二人の撫でる手は止まってしまった。ちょっと残念。


 町の外で数日過ごして、やってきたぜー、じゃ誰も信用しないよね。それが本当でも信じさせるのは難しそうだ。

 考えた事もなかったね。面白そう!


「教えて教えて! 今日のシアさんはサービス精神旺盛だね!」


 こういうファンタジーなお話は大歓迎だ!


「な、何という可愛らしさ……、は、失礼しました。ええ、その通りです。こちらは契約の精霊、と呼ばれるものが関わっていますね」


 契約の精霊! カッコいい! ファンタジーだわ!


「ふふふ。フラン、姫の目見てよ、可愛すぎる……」


「今日はいつもよりさらに可愛いわよねー」


「メアさんうるさーい!」


「おっと、ごめんごめん。怒らないのー」


 メアさんにまたグリグリと撫でられる。許した!


「続けますよ? こちらはもっと簡単ですね、依頼受領時のサイン、その行動が精霊を体に宿らせてしまうんです。体に宿らせるとは言っても外から見て分かるものではないのですが」


「見て分からないのに分かるの?」


「ええ。これは、実際依頼を受けてみれば簡単に感じ取る事ができるのですが……。つまり、姫様には一生分かりませんね」


 た、確かに……。受けた本人なら、宿られたぜ! って分かるんだね。


「そしてその精霊の好む役割とは、契約。正確には約束を守る事、でしょうか。いえ、もしかしたら約束を破る事かもしれませんね」


「うわー、ホントに簡単だー……」


「ふふ。依頼が終わり、ギルドへ戻っての報告のサイン。何も言わずとも、そのサインだけで成否が分かるのです。簡単でしょう? 成功した場合は何も起こらず、失敗の場合はサインしてすぐ用紙が燃え上がってしまいます。精霊の分け身を監視に付ける感じですね」


 なるほど、用紙が燃えるっていうのは分かりやすいね。精霊の考えは分からないけど、その行動原理だけは少しだけ分かってるんだ。

 失敗を嫌ってか、もしかしたら好きなのか、失敗した場合のみ何かしらの行動をとるんだね。これは面白いや。


「きっと約束事が沢山あるギルドに住んでるんだね。でも、私は見た事無いなー」


 ギルドには結構行ってるんだけど、精霊っぽい光の玉なんて一度も見たことは無いね。


「冒険者の登録を済ませれば見えるようになりますよ。恐らく依頼を受けない者には全く興味が無いんでしょう。姿を隠しているのかもしれませんね」


 よ、よくできてるなホントに……。シアさんにももう見えてないのかな?


「そうそう、ギルドの登録にも精霊が使われているんですよ? こちらは私にも詳しい事は全く分かりませんが」


 登録にもか……。登録の精霊とかかな? さすがにそのまますぎるか。


 んー、もしかすると……


「精霊さんってさ、結構私の知らない所で色々と使われちゃったりしてるの? この家の中でも使われてる所があったりするのかな?」


 電化製品の代わりに厨房とかにいそうで怖いよ。冷やすのが好きな精霊がいれば、冷蔵庫とかも作れるんじゃないのかな。


「いえいえ、さすがに一般の家庭で使われる事はありませんよ。この館内でしたら、エネフェア様の執務室には多くいると思います」


「え!? 見た事無いんだけど……。ああ! 私に興味が無いから姿を見せてくれないんだ」


「その通りです、さすが姫様。しかし、姫様に興味が無いとは……。その精霊、滅んでしまえばいいのに……」


「もう! 人と一緒にしちゃ駄目だよ! でも精霊さんかー……。会ってお話してみたいな……」


 精霊って可愛らしいイメージあるよね。妖精みたいに小さくて、羽生えてたりとかさ。




「かかかか可愛い! シラユキ可愛い! この子たまに凄く子供っぽい事言うんだよね」


「うんうん! 今日はちょっと、いつにも増して子供っぽくて可愛いね」


「姫様はいつでも、常に、子供らしくて可愛らしいんです。何を今さら……」


「何よ三人して子供扱いしてー!!」


 精霊には、ついついさん付けしちゃうだけじゃない!


 ああ! 確かに子供っぽいわ……。でもこれは直せそうに無いぞ……、困った。






また説明の多い話が少し続きそうです。

設定色々は飛ばし読みで、そんなものもいるんだー、程度に思ってもらえれば問題ありません。

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