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その61

「ねねね、シラユキの能力でさ、食べ物って作れないの?」


 能力説明から開放されたと思ったら、早速今度は私付きのメイドさんズからの質問攻めの様だ。メアさんが楽しそうに質問して来る。


「作れると思うよ? 私が実際に見て、実際に食べたものなら、だけどね」


「うわすっご、なにその便利魔法……。もう姫がいれば何もいらないんじゃないかな……」


 自分の魔力を食べてる感じがして、なんか嫌な感じもするけどね……


「何か作ってもらっちゃおうかなー。服とか、宝石とか?」


「食べたい時にアップルパイとか出せるの? う、羨ましい……」



 私の能力発表の後も、別段誰も何も変わらなかった。まあ、当たり前か。

 多分世界を変えてしまう程の力を持ってたとしても、この森の住人なら、「ふーん、凄いね」程度で済ませてしまいそうだ。






「調理済みの料理は恐らく無理でしょう。姫様ご自身が、全ての食材をどのように使って、どう調理しているかを完全に理解しているのなら話は別だとは思いますが」


 あー、確かに。

 使っている全部の素材、細かい調味料、隠し味等など……、全部知ってなきゃ駄目なのかもしれないね。これは要実験かな。味と見た目さえ分かってればポンと出しちゃえる気もするけど……


「そうなるのかな? それでも多分、リンゴをそのまま一個、とかなら出せると思うよ。でも、物を直接作っちゃうのは魔力の消費が凄そうなんだよね。まだ使わない方がいいのかな」


 見えない足場は空気を固めるイメージで、直接何かを出した訳じゃなかったからね。多分だけど……

 リンゴを一個作ったら魔力疲れを起こしました、とか何の意味もないよね。そうなったら使い道の無い能力になっちゃうと思うよ。


「私もそう思います。最低でも成人するまでは試すのもお控えになった方がよろしいかと。私の能力と違いナイフだけではなく、どんな物でも作れてしまうという事は魔力運用の効率化も不可能に近いと思われますから」


 ま、魔力運用の効率化? なにそれ?

 やばい、今の説明はさっぱり分からないや。後でしっかり教えてもらおう。


「うーん、分かった。まだまだ試すのもやめておくね」


 とりあえず分かったのは、物を作り出すのはまだやめておいた方がよさそうっていう事だね。


「そっか、残念、成人したらお願いねシラユキ。それまでに欲しいものをリストアップしておこうかな」


「うん、本当にできるかどうかは分からないけどねー」


「姫ならきっと何でもできちゃうって。でも、無理はしないでよ? シアの言うとおり、まだ使っちゃ駄目だからね」


「さすが私、信用無いね!」


「あははは、ごめんごめん。んー、姫には能力なんてあっても無くてもいいよね。可愛いし」


 またそれか! 可愛ければ何でもいいという考えはいい加減捨てて欲しいものだ……




「ふむ……。例えば、アップルパイを収納、保存しておいて、食べたくなったら出して食べる、という方法をとればいいですね。予め作って用意しておけばいいんです」


 おお! シアさん凄い……。私の魔法なのに、シアさんの方がよく理解しちゃってるよ。

 黙ってると思ったら色々考えてくれてたみたいだね。た、頼りになりすぎるよこのメイドさんは……。ありがたいね。


「あ! じゃあさ、シラユキに悪くなりやすい食材とかさ」


「やだよ!」


「ふふ、冗談冗談。怒らないでね」


 人を冷蔵庫扱いしないでよ! ん? 冷蔵庫より凄いな、収納した状態のまま保存されるんだから絶対腐る事も無いし……

 あれ? この魔法凄くね?


「グラスと、後はオレンジジュースを大量に収納しておけば……、ごくり」


 グラス出して、指先の影からでも注げば……。すすすす素晴らしい!


「ぷっ、いくら女神様作の凄い魔法でも、姫の使い方はそれくらいだよね」


「ええ、安心ですね。全く不安に思う事すらありません。さすがは姫様、素晴らしいお考えです」


 え? 今の褒められたの? 違うか! また子供だって言ってるなこれは……。もう!


「うーん……、それなら、重い物を大量に運ぶ時もさ、シラユキに仕舞って運べばいいんじゃない? 今度頼んでいい?」


「イーヤ!! フランさんは楽する事ばっかり考えて!」


 冷蔵庫の次は台車代わりか! 私便利だな!!


「技術の進歩と言うものは、楽をしたい、という欲求から進むことが多いんですよ」


「そういう問題じゃないよ!」


「冗談です。しかし……、重い物の代わりに姫様を抱き上げて運べばいいんですよね……。ふむ……」


「シアさんまで!? しないからねー!!」


「勿論冗談です」


 露骨に目を逸らすシアさん。


「目を合わせて!」


「そんな! 私に石になれと仰るのですか?」


「私何者よ!!」




「ホント仲良いよね二人とも。仲良し姉妹って感じ。シア、ちょっとからかい過ぎだよ」


「おっと、これは失礼を。すみません姫様」


「うんうん。ねえ、レン。いい加減その馬鹿丁寧な言葉遣いやめたら? もっと砕けた喋り方できないの?」


 私から見るとメイドさんズ三人の方が仲の良い姉妹に見えるんだけど……、うん?


「え? 砕けた喋り方するシアさん?」


「そう言われましても……。確かに昔は、多少荒めな言葉遣いでしたけどね、今はもうこの話し方が普通なんです。直そうにも直せませんよ?」


 荒めな言葉遣い? シアさんが? ちょっと想像してみようか……?


「駄目だ、想像もできないや……」


「そんなものなのかな。丁寧な喋り方以外のシアは、私も想像できないなー」


「今でも敵と判明している者にはこんな言葉遣いはしませんよ。それでも姫様の前では抑えるとは思いますが」


「面白そうだねそれ。ちょっと試しに」


「フランさん駄目! 私多分泣いちゃう!!」


 この優しすぎるシアさんが、荒い言葉遣いなんて……。しかも敵対者に、だよね。いやだー、想像もしたくないよ……


「あらら、お姉さんの怖い顔は見たくないか。ごめんねシラユキ」


「まったくフランはー。私が言いたかったのはね、シアって妹か誰か、そういう関係の子がいたんじゃないかなーってね。妹扱いが上手いって言うか、そんな感じかな」


 妹? シアさん五百歳くらいだし、いてもおかしくは無いよね。

 子供の頃の記憶は無いみたいだから、実際は妹と言うか、その、そういう子、とか?


「レンの場合だと、妹って言うより、恋人とか愛人とか、奴隷とか?」


 そう、そういう子。最後のは聞かなかったことにしよう。まったくこのエロエルフめ……。言い難いなこれ、改良の余地ありか……


「失礼な。ですが、確かに弟子の様な子はいましたよ。様な、と言うより弟子そのものでしたね」


 弟子? さ、さすが元冒険者……

 シアさんのお弟子さんかー。一体どんな人だったんだろう?


「女の人?」


「ええ、エルフの女性でしたよ」


 あ、笑顔。まさか……


「小さくて可愛い?」


「え? ええ、会ってすぐの頃は子供でしたしね……。姫様?」


 ふむふむ、それはそれは。小さくて可愛い女の子エルフか……


 という事はさ……


「手、出しちゃった?」


「え?」


「シア?」


「レン? まさか師匠命令で無理矢理、なんていう事は……」


「いえ、まさかそんな、無理矢理なんて事は決して。あ、何もしてません! 手なんて出してませんよ!」


「出しちゃってる! 絶対手、出しちゃってるよ!!」


 やややややっぱりシアさんはそっちの人だったんだー!!!


「ひ、姫様!? 誤解です! 私はノーマルだと何度も申し上げているじゃないですか!?」


「レンは絶対ノーマルじゃないよ……」


「だよねー……。誰も信じないってそんな事」


「ふ、二人とも何を! 私は姫様をからかうのが好きなだけであって、女性の体に性的な興味などありません!!」


「わ! シアさん怒らないで! 信じるから! 大丈夫、私は信じてるよ」


「姫様……!!」


 私の言葉に感動して、半泣き状態で私を抱きしめるシアさん。

 でも、からかうのが好きとかひどいよ……


「シラユキー、襲われるよー?」


「何とでも言いなさい。私は姫様にさえ信じて頂ければ、それでいいんです」


「駄目か、折角レンをからかえると思ったのに、残念」


 うん。ちょっと残念だね。






「シアさんのお弟子さんかー……。どんな人か気になるね」


 んー……、メイドさんじゃないよね?


「今でも生きているとは思いますが、どこで何をしているやら。別れてから二百年近く会う事も連絡をとる事もしていませんでしたからね。恐らく国外で冒険者を続けているとは思いますが……」


 シアさんの言う国外とは、森の外、の意味ではなく、リーフエンドの管理圏内の外、と言う意味。

 統治じゃなくて管理なのがこの国らしいね。ぶっちゃけ管理しているのは各ギルドらしいのだが……


「ギルドに頼んでみたら? リーフサイドのギルドに来るように伝言してもらうとかさ」


 メアさんがナイス提案をする。そんな事できるんだね。


「安否は正直どうでもいいんです、そこまでする必要は無いですよ。特に会いたいとも思いませんし」


 ど、どうでもいいんだ……、冷たいなー。ああ、あれか、大きくなっちゃった子には興味無しなのか!!


「何? 仲違いしたとか? 確かにレンに付いて行くのは大変そうだからね」


「また失礼な……。仲は悪くなかったと思いますよ、むしろ良かったのではないかと。理由はただの独り立ちですよ」


 冒険者としての独り立ちかー。私は大人になっても、シアさんにはずっと側にいて欲しいのにな。


 お互い悪く思っては無いんだよね。それならば……


「よかった。それじゃ、ギルドの人に頼んでもいいよね? その人の名前は?」


「ひ、姫様?」


 二人を会わせてあげたい。そして、その人に私も会ってみたい。

 それで、冒険者時代のシアさんの話をこっそりと聞かせてもらいたいな。


「いくらエルフとは言え、冒険者ですよ? 王族に敬意を払う者が全てではありません。お考え直しを」


「あ、そっか、ごめんねシアさん。エルフだから大丈夫って思い込んじゃってた。反省しなきゃ……」


 エルフ=のほほん種族でいい人ばかり、って無条件に思い込んでしまっていた。

 この国だから言える事であって、他の国に住んでいるエルフは、性格が荒い人もいるかもしれないんだよね。想像が難しいので、かもしれない、になってしまうんだが。


「レンの弟子なら私は大丈夫だと思うけどね。二百年も経ってれば分からないかな……」


「私は逆にシアの弟子だから危ないと思うんだけど……」


 ど、どっちもありえる!!


「まあ、折角の姫様のお心遣いですし、一度会ってみるのもいいかもしれませんね」


「え!?」


「私一人で、の話ですよ? 勘違いしないでくださいね?」


 何か今のツンデレっぽいな。それはつまり……


「あ、そうだよね。うん! いいよ! 国の名前出しちゃっていいから、呼んでもらっちゃおう!」


 いい流れじゃないか! 安全の確認さえ取れれば私にだって会わせてくれる筈だ。

 シアさんのお弟子さん! さらに、国外の冒険者! お、面白くなってきたわー!!


「姫様には会わせませんよ?」


「何で!?」



 デレなど無かった!!





これで能力説明は一応終わりです。

今回はメイドさんとキャッキャウフフしてただけとも言いますが……


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