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その6

「ほれ、こんな感じだ、やってみろ」


 兄様が、母様の膝の上に座っている私の前に立ち、自分の胸の高さ辺りに握り拳大の光の球体を出現させる。

 身振り手振りは一切無しだった。それに魔法の名前も口に出していない。


 あれ? 手から出す、とかじゃないの? ノーモーションなのか。魔法スゲー……。……? やってみろ? まさか見ただけでできるのが普通なのか!?


「いくらシラユキが天才で可愛いからって、見ただけでできる訳ないでしょう……。まったくルーは……」


 苦笑気味に、呆れた様に言う母様。


 ですよねー。……可愛い事は関係ないよ。


「シラユキならできるかも、と、ちょっと思ってしまった……」


「私も……」


 父様姉様もですか。私そんなに頭よく見えるのかな? あ、そうだったそうだった、私、五歳だったね。でも中身は元十六歳、五歳の言動じゃないよね。




 あの後、どこから聞きつけて来たのか、母様と兄様も私の魔法の勉強に参加する事になった。多分メイドさんの誰かが即伝えに行ったんだろう。


 メイドさんよメイドさん、あの服は憧れる。一度着てみたいわ……。

 使用人、メイドさんと言っても仕えてくれている訳じゃない、そういうお仕事なだけね。一応私たちは王族だから様付けで呼ばれるんだけど、普通に笑いながら砕けたしゃべりで会話したり、誰かがボケたらツッコミを入れてくれたりもする。素晴らしいなメイドさん、実に素晴らしいな。でも父様と母様にはみんな敬語が出ちゃうみたい。まあ、女王様だもんね。


「ははは、冗談だって。……実はシラユキなら、と思ってたけどな。ま、基礎からやるか」


 兄様もかい! ううむ、これは何と言うか、私、期待されてない!? やばい、これで魔法の才能全く無しとかだったら……。ががが頑張ろう!

 しまったなー、早まったかなー……。十歳まで待てばよかったかも。ええい! 考えるのは後だ、まずは基礎とやらをしっかり聞こう。



「はいはーい! 私説明したい。いいわよねお兄様?」


 姉様が可愛く挙手。姉様もまだ成人したてだし、家族の前ではまだまだ見た目相応の子供に見える。妹のセリフじゃないねこれ。私が一番子供だよ!!


「おう。俺の説明じゃ分かり難いだろうし、ユーネに任せる」


「ルーは俺と同じで直感型だからなぁ……。ま、教えるのには向かんな」


 え、父様も感覚で理解しちゃうタイプなのか、意外だ……。兄様は納得。あはは、ひどいね私。


「それじゃ、私は足りない所の補足説明に回りましょうか」


 魔法を教えてもらうのは母様と姉様の二人がメインになりそうだ。母様は忙しいからたまにとして、主に姉様か。これは確実に甘やかされそうだね……。


「はーい! おねがいしまーす!!」


 さあ、魔法使いへの第一歩だ! 現代日本人だった私には、魔法は憧れの様な物、空飛んだりできるといいな……。






「まあ、説明って言っても数分も掛からないんだけどね。魔法は感覚で使うものだし、口で説明する事なんて殆どないからね」


 ん? 数分も掛からない? 感覚で使う? いきなり怪しくなってきたな……。


「シラユキは自分の魔力、分かる? 感じ取れる?」


 ま、魔力? 自分の中の力的なナニカですか。うん、全く分かりません! と首を振って答える。


「分かんない。どういうのなの?」


「普通分かんないよねー。むしろ分かったら怖いわ」


 ひどい! 嘘ついて分かるとか言わなくてよかった! 普通は分からないものなんだね。

 駄目だ、私まだ小説とか漫画のお約束設定が頭から抜けきってないよ。まずいなー、感覚で使う魔法って、変な固定概念持ちの私には難しいんじゃないだろうか?


「先に説明だけしちゃいましょう? すぐに終わるし、その方がいいわ」


「あ、うん。そうよね、魔力なんて、ただそういう名前が付いてるだけの謎パワーだし」


 謎パワーなんかい!! アンタたち魔法最強種族のハイエルフだろう! おいィ、それでいいのか……。


「それじゃシラユキ、まずは簡単に説明しちゃうね? 魔法っていうのはね、魔力っていう謎の体内エネルギーを現象に変換する技術の事よ。はい説明終わり」


 パンパンと軽く手を叩いて説明を終える姉様。


 はやっ!! 早いよ短いよ分かんないよ!!!

 へ、変換? 現象に? 謎エネルギーの魔力は分からなくても変換には使えるの?


「うわ、可愛いなコイツ。全然分からないって顔してるぞ」


 うるさいよ兄様。くそう、恥ずかしい。この世界の魔法は、兄様みたいな直感で動くタイプ向きの技術なのか……。


「短すぎるわよユーネ。でもその通りなのよね……。変換にはイメージが大切っていうくらいかしら、補足は」


 簡単に、すでに超簡単だが、まとめると。


「一言で言うと、イメージを力に変える技術、だな」


 先に父様にまとめられた。まあ、別に文句は無い。



 うーん? どうしよう、全く分からない……。イメージを現実にするんだよね。頭の中で考えて、えいっ、って? ……ん? 魔法の詠唱は?


「父様が大きな魔法を使うときに話してる言葉はいらないの?」


 イメージのみで結果を出せるなら、詠唱なんていらないよね?


「詠唱の事か? ああ、基本は必要ないな」


 いらないんかい!! あ、まさかカッコつけか? 格好つけてただけなのか!?


「あれはな、イメージの底上げに必要なんだ。詠唱有りと無しとじゃ実際の発動効果に大きく差が出るんだ。シラユキには分かり辛いか……」


 大きな魔法の場合はね、と母様が付け足し、さらに説明は続く。


「さっきルーが見せたくらいの魔法なら詠唱なんて必要ないわ。でも初めは何か口に出したほうがイメージしやすいからね、自分で何か考えるといいわ」


 自分で勝手に考えていいんだ……。あー、なるほどね、何となく分かってきたよ。


「それにな、あった方がカッコいいだろう!?」


 力説する父様。


 やっぱりカッコつけだったか。

 父様クラスの使い手になると、大魔法と呼ばれる物でも詠唱無しで連発とかできちゃうんだろうね。詠唱有りなら効果アップか……。改めて怖いわっ!!


「だよな? さすが父さん、分かってる」


 うん、兄様もそうだろうとは思ってたよ。




 うーん……。体内の謎エネルギー、魔力については完全無視でよさそうだね。実際に使う時の事を考えてみようか。


 小さな光の玉を出す、という魔法。名前は……、あ、名前。


「ねえ、ルー兄様? さっきの光る魔法って名前はあるの?」


「名前か? 俺はライトボールって呼んでるが……」


 分かりやすい名前だなぁ……、英語っぽいのは翻訳機能のおかげか。……俺は?


「おっと、そこもか。あー……、面倒だな。ユーネ頼んだ」


「はいはい。いい? シラユキ。魔法に名前なんて無いの、あくまで現象を起こすだけの物だからね。例えば今お兄様が見せたライトボールなら……、『光の球体を出す魔法』、かしら? 名前があるのなら、だけどね?」


「そのまますぎるー!」


 おっと、ついツッコミ入れちゃった。しかし、ホントにそのままだな……。兄様の性格が表れているみたいで面白い。


「だってね、一々現象一つ一つに名前なんて付けてたらキリが無いでしょう? どんな種類の魔法でも全部一纏めで『魔法』でいいのよ」


 そうなのかな? よく分かんないや……。



「もう、シラユキはまだ五歳なのよ? ちゃんと分かり易く教えてあげなさいね」


「あ、ごめんなさいお母様。だってこの子大体なんでもすぐ理解しちゃうから、ついついね……。シラユキもごめんね? まだちょっと難しいよね」


「んーん? 今は全然分かんないけど大丈夫だよユー姉様。みんな優しく教えてくれてるもん」


「きゃー! この子良い子すぎる!! 可愛すぎる!!!」


 姉様は私を抱き上げてクルクル回りだす。


「わわわわわ」


 うわ、漫画とかでよく見るけど、これ実際やられるとかなり怖いわ……。




「ごめんなさい、取り乱しました。お見苦しい姿を見せた事を心からお詫びして、反省します」


 回る怖さに泣き出しかけた私、慌てて止めるみんな、怒る母様、謝る姉様。い、色々な意味で怖かったわ……。特に母様が。







2012/8/2

全体的に修正、書き足しをしました。

今回は特に難しくて、一部変な表現や文章になっているかもしれません。

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