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その57

「ギルドの依頼話なんて面白くもなんとも無いだろ? 多分雑務依頼の方が、仕事が色々ある分面白い話も多いと思うぜ?」


「うんうん。ギルドの依頼は報酬が多いけど危険だからね。日数も掛かるし、即金作るならやっぱ雑務依頼だよね」


「そうなんですか?」


「俺たち軽く話してるけどな。あー、言っていい? メイドさん」


「姫様、ギルドの依頼は命がけなんですよ? それだけは忘れないでくださいね」


 ラルフさんの代わりにシアさんが答えてくれた。


「あ、私また……。うう……、ごめんなさい」


「子供だからしょうがないって。あたしらも怒ってないよ。でも、あんまり血生臭い話はきかせたくないかな。ギルドの依頼ってのはそんなモンばっかだよ」


 二人は軽く話しているが、実際は一つのミスが死に繋がる状況の筈だよね。

 それに、ギルドの依頼の殆どは討伐系、生き物の命を奪うお仕事か……


 またやっちゃったよ。何か、どうも、駄目だね。私はやっぱり世間知らずのお姫様なんだなー……






「お、そうだそうだ。昨日やった依頼でルードに会ったんだよ」


「え!? 何でルー兄様が?」


 兄様が依頼を出したとか? それはないよね……


「る、るーにいさま……。可愛い……」


 子供っぽい呼び方でごめんなさいね! でももうこの呼び方が普通になっちゃってるし、多分一生直らないよ。


「森の中の採取場までの護衛、と言うか荷物持ちの依頼だったんだけどな? 採取場ってエルフが管理してるんだよ」


 うん。森の中だもんね。



 森の中にはエルフしか入ってはいけない、という訳でもない。集落の方へ近づかなければいいのだ。

 結構アバウトな表現だが、見回りが常に回っているので奥に迷い込む人も出ない。

 あからさまに故意の進入だった場合でも、あっさり見つかってあっさり捕縛されてしまうらしい。


 森の中には動物も普通に住んでいる。中にはそれなりに危険なものもね。

 でも、何故かエルフを襲うような事は決して無い。逆に、エルフが狩るような事も無い。


 他種族は普通に襲われてしまうのだが、採取場までに出会う事は殆どないらしい。絶対会わない、という保障はないので、やっぱり護衛は必要なのだ。

 護衛だけだと、ただ着いて行くだけの仕事になってしまう。それなら、最初から荷物持ちも仕事に入れての募集にしてしまえ、という感じかな。



「何でか知らないけどさ、ルードが採取場の見張りしてたんだよ。王族だろ? あいつ。もう依頼主がビクビクしちゃってさ。護衛が俺でよかったよマジで」


 何やってるんだ兄様は……

 昨日、昨日ね、何があったっけ? そういえば昨日の兄様はやけに機嫌がよかった様な……

 兄様の機嫌がいい時は、えーと。私といる時は大体機嫌いいね……


「その依頼主って、あの人? 魔法薬のさ」


「ああ。よく分かったな」


「有名な人なんですか?」


 魔法薬? 森に採取って、薬草とかかな?

 調薬ギルドの人なのかもしれないね。一回は覗きに行ってみたいな。


「ある意味有名。あたしはあんまり好きじゃないな、いい人なんだけど」


「ひがむなひがむな。生まれ持った物はどうしようもないさ」


 生まれ持った物? ひがむ?


「胸?」


「おう、あれは凄いぞ。一回でいいからもん、おっと、何でもない……」


「なるほど、敵ですか」


「敵ですね」


「敵だね」


「何で敵!?」


 なるほど。兄様は事前にその情報をどこからか仕入れて、待ち伏せしていたと言うわけか。王族が何してるのよ!!



「ねえラルフさん? ルー兄様はその人に何かしちゃったり、してませんでした?」


 多分、いや、絶対揉んでるよ! 姉様に言いつけてやるんだから!!


「いんや? 特に何も無かったな。問答無用で揉みに行くと思ってたんだけどなー」


「ええ!?」


 そんな馬鹿な! どんな人か知らないけど、兄様が何もしないなんて……


「え? ルーディンさんがあの胸見て何もしなかったの?」


 あ、やっぱりナナシさんも兄様の趣味は知ってるのね。


「じっと見つめてはいたけどな。そのせいでまた余計にビクついちゃってさ、面白かったぜ?」


 な、なるほど。たぶんそれ、楽しんでたんじゃないかな……

 ビクッとする度に揺れる胸を眺めて、ニヤついてたんだよきっと。

 ホントに何してるのよ兄様は……




「胸ならあたしがいくらでも揉ませてあげるのにさ。何回誘っても触る程度しかしてこないのよねあの人。それだけユーネさんの事が好きなんだろうけどさー」


 誘う? 触る? 獣人の女の人? 兄様のお友達? 何か忘れてるような……


「ここですね。ナナシさんは最近どんな雑務依頼を受けたんです?」


「シアさん? 何その笑顔?」


 シアさんが笑顔でナナシさんに質問する。ここ?

 ナナシさんはどんな依頼を受けてるんだろうね。女性の冒険者が受ける依頼、確かに気になるね。


「あたし? 一晩のお相手だね。その前もそう、あ、その前もか」


 え? 一晩のお相手募集の依頼って、アレのお相手募集の……、思い出した!!!


「あれ報酬いいんだけどね。アタシも大体すぐ後にさ、そのお金で同じ依頼出しちゃうのよ。ラルフ相手でもいいんだけど、あんまり回数持たないからねこいつ。一晩どころか三回出した」


「オイやめろ! メイドさん知ってて聞いたなこれ!!」


「ナンノコトヤラ」


 棒読みだ! ナナシさんがどういう人か知ってたなシアさん!!


「何焦ってんのよ? シラユキちゃんの事? 十二だよこの子、分かる訳ない……って……?」


 エロイ人だこの人! 思い出したよ! 兄様の友達でエロイ獣人の女の人!!


「え? 赤くなってる……? 意味分かるの!? え? や、やっちゃった?」


「初めての獣人の人のお友達が……エロイ人……」


「何で分かるの!? エルフの十二って言ったら全然子供じゃん!? あ、違うよ? あたしエロくないよー? ただちょっとエッチが大好きなだけで……」


 !!?


 エッチ! が! 大好き!?


「ナナシさんのエッチ!! 私の周りの女の人って何でみんな……」


 家族はエロフ、お友達はエロイ人。はっ!?


「ミランさんは!? ミランさんは普通だよね!? 聞きに行かなくちゃ! 行こう!」


「ええ、行きましょうか。ふふふ」


 シアさんが凄く楽しそうだけど気にしていられない! 早速冒険者ギルドへ!






 所は変わり、冒険者ギルド受付前。


「みみみ、ミランさん!!」


「わ! シラユキ様こんにちは。どうしました? 慌てて」


「ミランさんもエロ……、エッチな人なの!?」


「ななな何をいきなり聞いてるんですかーーー!!!」



 怒られました……

 ミランさんは、エロフどころか男の人とお付き合いもしたことが無いとか。よかったよ……



 ドタバタしたせいか町の怖さが薄れた、と言うか、あまり気にならなくなった気がする。

 これもシアさんの策略か? ホントに頼りになるメイドさんだよ。






ちょっと短めですが、今回の新キャラの顔見せ回はこれで終わりです。

次回からまたほのぼのーと……できるといいな……


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