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53/338

その53

今回はかなり短めです。

「はい、シラユキ、リンゴ。あーんして?」


「あーん……、んっ」


「ふふふ」


 なにこれ幸せすぎる。






 一晩寝たくらいでは魔力疲れは治らなかった。少し楽にはなったかな? 程度には回復してるんだけど。まだまだかかりそうだね。


 一度は経験させるつもりだったらしく、あまり怒られる事は無かった。

 シアさんが大喜びで、私の身の回りの世話をしてくれている。トイレくらい一人で入らせて欲しかったが、昨日の夜は無理だった。あまりの恥ずかしさ、情けなさに泣き出してしまった。

 さすがに泣き出してしまったのはショックだったのか、お風呂では特に何事も無かったのだけれど……。まだ数日はシアさんだよりになりそうだね。


 今日は朝から母様が付きっ切りで世話を焼いてくれている。

 母様はお仕事があって、あまり一緒に遊んだり、出かけたりできない。たまに暇を見ては私の所に来てくれるんだけど、私はそれが嬉しくてしょうがない。子供だね……


 その忙しい母様が、今日は朝から一緒にいてくれる。あまりの幸せに泣きそうだ。




 今は膝の上に座らせてもらっている状態、それだけで自然に頬が緩んでしまう。


「えへへ。母様大好きー」


「ふふ。まだまだ甘えん坊ね、シラユキは」


「母様は特別だよ。もっと甘えさせてねー」


 体を横に向け、母様に抱きついて頬擦りする。


「可愛い……。ごめんね? いつもあまり構ってあげられなくて」


「んーん。母様は女王様だし、忙しいから。たまにこうやって甘えさせてくれるだけで十分だよ。凄く嬉しい」


「シラユキが一言、もっと構って、って言ってくれれば、女王なんてその場で辞めちゃうのに……」


 ホントに辞めそうだから怖い。そうなると次の女王は姉様か? 無理じゃね? 私か!? もっと無理じゃね?


「大丈夫。父様も、ルー兄様もユー姉様も、メイドさんたちもみんな優しいよ。寂しいなんて思う暇もないくらい構ってくれてるから」


「まだ十二歳なのに……。もっとゆっくり大人になってね? もっと一緒にいたいって我侭言ってもいいのよ?」


「今日はずっといてくれるんだよね? それだけで十分すぎるくらい嬉しいよ。我侭言って困らせるなんて絶対イヤ」


「もう……。お母様をもっと困らせて欲しいわ……」


 ああ、駄目だ。嬉しい、幸せ。私ってこんなに母様のこと大好きだったんだね。




「あまりの姫様の幸せそうな笑顔に浄化、いえ、癒されます」


「浄化!?」


「あ、大きな声出さないの。ほら、こっちもたれなさい」


 シアさんの一言に突っ込んでしまった私を、優しく抱き寄せてくれる母様。


「こらこら、シア。邪魔しないの」


 メアさんが笑顔で注意をする。


「そうそう。こんなにふにゃけたシラユキは滅多に見れないんだからさ」


 ふにゃけた? 面白い表現だね……


「私の前でも、いつもあんな表情をしてもらいたいものです」


 シアさんも笑顔だが、ちょっと複雑そうだ。


「無理じゃない? レンってばシラユキのことからかい過ぎだよ」


「姫の反応は面白可愛いからねー。しょうがないよ」


「ですね。こればかりはやめる訳にはいきませんね」


 やめようよ! まあ嫌って訳でもないんだけど。



「三人とも、いつもありがとうね。貴女たちがいてくれるから私も安心してお仕事できるのよ」


「へ? はっはい! ありがとうございます!」


「これからも遠慮なくお任せください。一生」


「一生!? まったくレンは……。私もシラユキのお世話は楽でいいからいいんですよ。外さないで下さいね」


 三人とも相変わらずだなー。ずっと私の専属メイドさんでいて欲しいな。






「今日はまだまだ構い倒しちゃうからね、覚悟しなさい。ご飯だって食べさせてあげるし、お風呂も一緒に入りましょ? 寝る時も一緒だからね」


「えー。私、幸せすぎて死んじゃうかも……」


「姫は本当にエネフェア様のこと、好きだよね」


「当たり前でしょ? シラユキまだ十二なんだから、これが普通なのよ」


「ですね。今日の姫様は年相応に見えますね」



「母様大好きー!」


「ふふふ。私もよ、愛してるわ、私の可愛いシラユキ」






『トリップ』は毎回これくらいの文字数でしたね。何故かもの凄く少なく感じてしまう……


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