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その50

「シラユキ、そろそろ攻撃系の魔法も覚えようぜ?」


 最近父様と兄様は、私に攻撃系の魔法を覚えるように勧めてくる。


「えー、まだ早いよ……」


「よしやめるか!」


 あっさり諦める父様。


「またこの流れだよ……」






「二人で町に行ってるのがどうも心配なんだよな。バレンシアの実力を疑うわけじゃないが、やっぱり最低限自分の身を守る方法を持たないとな」


「シアさんがいれば大丈夫だよ。ルー兄様は心配しすぎ」


 シアさんをどうにかできる人がいるなんてとても思えない。元二つ名持ちの冒険者だよ? 兄様姉様クラスの戦闘力だよきっと。どんなメイドさんなのよ……


「お前、町は安全だ、とか思ってるんじゃないだろうな」


「安全なんじゃないの? 中にはその、怖い人とかもいるとは思うけど」


 みんながみんないい人達ばかりじゃないよね。今のところは怖そうな人には会った事は無いんだけど、きっといるんだろう。


「明るいうちに帰って来てるから言える事だな。悪い奴ってのは暗くなってから増えるんだよ。あの町にだって多くはないが、いるだろうな」


「悪い奴?」


 泥棒とか? 強盗?


「人攫いとかな、その、アレだ。言えねえよ!」


「ルー、シラユキに聞かせるには早いぞ」


 ひ、人攫い? え? この世界だと身代金とかじゃないよね。

 身代金目的でなければ、攫った人を売り飛ばしたりするんだろうか。奴隷? あ、売り飛ばすとか、奴隷とか、あ、アレか。


「うわ、半泣きだよ。あっさり答え出したなまた……。そういうこった、子供だから大丈夫、とか思うんじゃないぞ? 子供のエルフが一番、んん、やめとくか……」


 子供のエルフが一番……?


「ふぇ……。にーさまー」


 やだ……、聞きたくなかった、考えたくなかった。怖い、怖いよ……


「あああ……、脅かしすぎた……。ほらこっち来い」


「泣かすなよ、ルー。だが、よく言ってくれた」


 兄様に抱き付く。な、泣かないよ! 半泣きだけど!




「俺はな、できたら町になんて行って欲しく無いんだよ。でも、お前に色々見せてやりたいとも思う」


「自衛の手段は持っておいて損はない。と言うより、持っておいて欲しいんだ。もし、万が一、のためにな」


 自衛の手段、攻撃魔法、か……

 確かにいくつか覚えておけば、瞬間的に昏倒させられる、とかでもなければ大抵どうにかできそうだよね……


「どうせならもっと脅しておこうか? もう二度と国から外に出たいとも思わなくなるくらいにさ」


「うーむ……。それもいいかもしれないな……」


「やだー! 聞きたくなーい!」


 でも、つまり、そういう怖いことが、町には多くは無いがある、という事だね。


「ルー兄様のいじわるー……。町が怖くなってきちゃったよ……」


「ははは、それでいいんだよ。国の外は怖い事だらけなんだ、それは本当の事だぞ?」


「この国は安全さ。父さんと俺がいるからな。一生守ってやるさ」


 父様のいる所が多分世界で一番安全だよね。それに加えて、私の家族、国民みんな。例え世界を敵に回してもどうとでもなりそうな気がするよ。……うん?


「父様父様。今、兄様にプロポーズされたよ?」


 一生守ってやるさ、だって! なにその恋人に言われたいセリフの上位に入りそうな言葉。


「おお! やるな、ルー」


「何でだよ。シラユキはまず、もっと大きくなってから言え。背も、胸もな」


「な、なるかな……」


「な、なるさ、きっと……、信じれば……」


 身長さ……、伸びる気配すらないんだよね……

 今の身長は120くらいか、普通はもっとあるよね? 将来がかなり不安になってきてしまった。


 最近は白雪草に向かってお願いする毎日だ。あの優しい女神様の事だから、もしかしたら叶えてくれるかもしれない。そう信じたい。






「攻撃魔法かー。例えばどんなのがあるの? 主に火系だよね?」


「ああ、そうだな。火は一番分かりやすい破壊の力だろう。魔力の消費やコントロールも楽な部類に入る」


「燃やす、爆発させる、だな。これはよく見てるだろうし、多分シラユキにならすぐにできると思うぞ。小さな火はだせるだろ? 基本はできてるからな」


 父様と姉様はよく魔法の撃ち合いしてるもんね。私もあれに参加、か……。無理じゃね?

 小さな火を出す魔法が基本? ああ、後はそれを大きくしたり、飛ばしたりするだけか。爆発はどうやるんだろ……


「火の次に多く使われてるのは風かな。突風で足止めしたり、吹き飛ばしたり、圧縮した風で切り裂いたり。これはミランが得意なはずだから、今度聞いてみな」


 風をぶつけるのは分かるけど、切り裂く? カマイタチって理論上ありえないんだよね? 圧縮した風だっけ? な、なにそれ……


「こいつの悩んでる顔可愛すぎだろ。今は聞くだけにしとけ、そう多くもないからな」


「ええ、説明は私が」


 さすがシアさん、説明できそうなところは逃さない。



 しかし、可愛いって言われるのが、恥ずかしいじゃなくて嬉しいに変わってきてるわ……。身長があまり伸びないのなら一生言われ続けるかもしれないね……。開き直って可愛い系の美少女でも目指すか? 無いわー



「後は操作系の魔法か。こっちはまだちょっと難しいかもな。攻撃するための実物が必要だし、前に説明したとおり魔力の消費が多いんだよ。実戦で使うのはエルフくらいじゃないのか?」


「いや、そうでもないぞ? 人間にだって、獣人にだって魔法の得意な者もいる。人魚は水を操るのが上手かったしな」


 獣人の人が魔法得意ってあんまり想像できなかったけど、人魚なら納得だね……。?


「父様人魚族に会った事あるの!?」


「すげえな父さん。俺も本でしか見たこと無いよ」


 兄様も驚く。人魚族は住んでいる場所すら分からない幻の種族なのだ。


「伊達に約千年世界を回って来たわけじゃないさ。母上がエネフェアを身ごもってからは、もう国に落ち着いたんだがな」


 父様は成人してすぐに国を飛び出したんだっけ。ふふ、母上だって。どこの王族……、だから私たちは王族だよ……

 今では最高に優しい父様だが、昔は超怖い人だったらしい。気になるが、あまり詳しくは教えてはもらえない。


「私も実際に会ってみたいなー」


 人魚かー。綺麗そうだよね。


「確か種族的にみんな胸大きいんだろ? 会ってみたいよなー。なあ?」


「そんな理由に同意を求めないでよ……」


 さすが兄様、その発想は無かったわ。このおっぱい星人め……


「胸は確かに皆大きかったな。でもな、結構凶暴な種族だったんだぞ? 平気で生魚を頭からボリボリ、巨大な魚にも群れでまとわりついてボリボリ食べてたし。一度集落らしき所の水の中に入ってみたんだがな、問答無用で襲ってきたんだ。まあ、全て返り討ちにしてやったんだが」


「父様に夢を壊された!! それ獣人じゃなくて魔物なんじゃないの!?」


 ピラニアしか思い浮かばなかったよ! 人魚族はピラニアの獣人なんだー!!


「コラ、ひどいことを言うんじゃない。あの時は、あー……、縄張りにいきなり入った俺が悪かったんだろう」


「父さん何してんだよ……」


 ホントだよ……。侵入者撃退しようとしただけなんじゃないの? それで全部返り討ちか、怖かっただろうに……



 水の中に入ってる時はどんな魔法を使ったんだろう? 火は使えないよね。風も無理そうだ。水を操作? 人魚族の方が得意そうだよね……


 ゲーム的に考えると……、水系には雷か? こうかはばつぐんか?


「ねえ? 雷の魔法ってあるの?」


「雷だあ? あれか、空から落ちる」


「うんうん。ゴロゴロドカーンって感じのあれ」


 火と氷と雷はゲームで有名な属性だよね。氷は実際に水が無いと無理そうだけど、雷ならいけるんじゃないかな?


「やっぱりシラユキは可愛いなあ。落ちる所は見たこと無いんだな、嵐の日は外に出ないから当たり前か。あれは一回見れば、これは無理だ! って分かるぞ?」


 兄様にグリグリと撫でられながら言われる。


「ああ。そもそもあれが何なのかすら分からん。見たところ雲から発生してるようだがな、あれを魔法で再現となると、難しいどころか無理だな」


「何って、電気だよ?」


「デンキ?」「デンキ?」


 うわ、電気通じないよ! 雷っていう名前は翻訳機能でそう聞こえるだけか、なるほど。


「おい、父さん、まさかコイツ……」


「シラユキ? まさか、分かるのか? 使えるのかあれを」


「ふふふ……」


 多分使えるよ。電気なんていう物は日常的に使ってきた、電気が無いと生きていけない時代の人間だったからね。


「あれ? やばくねこいつ? 父さん以上の魔法使えるようになるのか?」


「あんなものポンポン落とされてみろ。俺ですらどうしようもないぞ……」


「さすがに雷までは無理かなー。でも小規模のなら使えると思うよ」


 うーん。物は試しだ、ちょっとやってみるか……


「何?」


「おい、シラユキ? ちょっと待て」




 雷を落とす、なんていうのはどう考えても無理だろう。雷は電気、それさえ分かっているのならやりようはいくらでもある。

 イメージは電気。簡単だよ、スタンガンだ。静電気を何倍にも……


 右手にパチッと電気がはし


「あいたっ! 痛い! えっ!? なんで、 あっ!? 自分の手の保護忘れてた!!」


 痛みに驚いて、一瞬発動しただけで止まってしまった。


「出しやがった!? すげえ! すげえけどアホだ!」


「くっ! すまん! 笑ってしまった!!」


「いたた……。火傷はしてないね。もう一回やってみよ……」


「大丈夫か? 見た目は何も無さそうだな……」


 父様が心配そうに右手を覗きこんで来た。


 い、痛かった……

 痛みとはほぼ無縁な生活してただけに、痛みに対する耐性も低くなってそうだね……


「無理すんなよ? お前が痛がると、俺たちはその何倍も痛いんだ」


 またそういう恥ずかしいセリフを平気で言う……


「うん、大丈夫。ごめんね兄様」




 右手を保護! イメージは……、何だ? 絶縁体? ゴム? ゴムゴムの?

 ゴムは無理だ! これは能力で補おう。

 とりあえずゴムのイメージでやってみる、電気の威力は最小限で。


 パチパチッと小さな電気が右手に走っている。

 ふむ……、痛みは無い、成功か。

 能力の魔法は駄目だね、何でもあっさりできてしまう。でも、電気はしょうがないかな……


 もう少し出力を上げるか。ちょっと痛いくらいに。……よし。




 右手バチバチ。ビリビリ少女です。


「できた。うわー、凄いなこれ……。目に悪そう」


 『スタンガン』とでも名付けよう。そのまますぎるけど最高にイメージしやすいだろう。


「何だよその魔法。ってかそれ魔法なのか?」


「確かにな。ちょっと違和感というか、なんとも言えない感じがするな……」


 何この二人、鋭すぎ……

 人前では能力使用は控えた方がいいか……?



「そうだ、ルー兄様、握手しよ?」


「父さん、妹が怖いです」


「俺がやってみるか? 体感できれば使えるようになるかもしれん」


「父様ならもうちょっと威力抑えるね。……うん、いいよ」


 静電気程度の威力まで落とす。それでも充分痛いんだよね。


「え? 俺の時は?」


 父様は許す! ただし兄様、テメーはダメだ……



 父様と握手。威力は静電気程度だ、が、持続するので結構痛いと思う。


「つっ! これは凄まじいな。最小威力でこの痛みなのか……。これに耐えられる生物はいないんじゃないか?」


 一瞬触れただけで手を離してしまった。静電気ってそうだよね、反射で手を引いちゃうんだよね。

 覚悟して触っても無駄だ、断続的に痛みが続く。人間とエルフは恐らく耐えられないだろう。


「それってまさか、シラユキに触れたらアウトか? 身を守るのには適していそうだな。いい魔法だと思う」


「ああ。シラユキ、これは飛ばせるのか? 雷か、きっとできるんだろうな。防ぎようが無いぞこれは……。シラユキはどうやって手を保護しているんだ?」


「え? あー、うーん……? これはちょっと説明できないや……。ごめんね父様……」


「自分で使っている魔法が何故説明できんのだ……」


 能力の魔法は感覚でしか使えないのよ、理解とか一切必要ないんだよねこれ。




 この後家族全員から質問攻めにあった。能力のことは伏せたが、近いうちに話した方がいいかな。


 これは多分、世界で私一人にしかできない魔法だろう。私の攻撃魔法は雷をメインにしていこうか。防御不能で近遠どちらでも使える、全身に纏って体当たりでもいい。


 あれ? 私無敵じゃね? あとは防御系の魔法さえあればよくね?











 パシン、と乾いた音が一つ。


「お、できたできた。手に纏わせる事は痛くてできんが、飛ばすだけなら問題ないな」


「父様だいっきらい!!!!!」


「何故だ!?」




 静電気レベルの電撃を、矢の様に飛ばすことはできてしまったみたいだ。出力は上げれないみたいだが、多分時間の問題だろう。


 ああ……、これは家族全員使えるようになっちゃいそうだね。何よこの天才一家は!!!


 私もなんだけどね! 世界で私だけが防げる、っていう事で。何か一気にしょぼくなった気がするよ……





今回の魔法の話ではないですが、今まで分かりにくかった言葉の表現について、『裏話』の方でちょっとした補足説明を入れる事にしました。

一度目を通してもらえると助かります。

http://ncode.syosetu.com/n3344w/3/


読まなくても特に問題はないとは思うのですが、一応の説明という事で。



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