表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/338

その5

「魔法ねえ……。確かに便利と言えば便利だけど、まだ早いんじゃない? シラユキまだ五歳よ?」


「でもな、ユーネ。シラユキが勉強したいと言ってるんだ、この俺に教えてくれとねだってきたんだ! 叶えてあげたいと思うのが当然だろう? なあ?」


 さすが父様、あっさり味方に付く。姉様も私には甘いが、甘いからこそ危険な事はさせてくれないのだろう。

 ちなみに今の私の状態は、父様に後ろから持ち上げられて姉様に突き出されている様な感じだ。どうだどうだと押し付ける感じに近い。

 正直やめてほしいが、父様は私の側に付いてくれているので黙っておこう。この状況を面白く感じている気持ちも少しはある。



 そう、魔法よ、魔法。何か一個くらいは使えるようになりたいじゃない? 私が女神様に貰った能力は一応魔法なんだけど、普通の魔法とはちょっと違うのよね。普通の魔法っていうのもまだ何も教えられてないから分からないから、多分違う、と言った方がいいかな。まあ、それは今は置いておこう。



 魔法の先生として私が選んだのは父様と姉様だ。兄様は何となく教えるの下手そうだし、母様はこの国の代表者、忙しい時もあるだろう。お仕事の邪魔はしたくない。

 その点父様と姉様はいつも暇そうに、と言うか、いつも私と遊んでくれてるからね。簡単な物を何か、一つでもいいから教えて欲しいと父様に頼んでみたのだ。そしてさっきのやり取りに繋がる。




「簡単なもの一つでいいとシラユキも言っているじゃないか。本格的に始めるまでの予習くらいに見ておけばいいさ」


 本格的に始めるのは十歳以降、という事らしい。町に行ける様になるのも十歳から。その年が一つの節目にでもなっているのかもしれない。



 エルフ、ハイエルフの成長は、十歳までは人間種族と同じで、後は百歳くらいまでゆっくりと成長していく。成人は百歳。二十歳幼女とかもありえるわけだ。


 うーん、二十歳でもまだ幼女とは……、違和感が凄い。人間的な考えは早めに捨てなければ、とは思うのだけど、なかなか難しいね。最低でも前世の倍くらい生きなければ無理か。三十二、三歳でもまだまだ子供だろうと思うけど。



「駄目よ、やっぱり駄目。この子に魔法をを教えるにはまだ早いと思う。十歳でも早いかも……」


 ぐいぐいと突き出される私を父様の手から救出し、膝の上に座らせてくれる姉様。やっと落ち着いて話せるかと思った矢先に反対されてしまった。


 あれー? 姉様の中では私の評価は意外に低いんだ、結構ショックだよ。確かに甘えまくってるからねー……。


「十歳以降なら何も問題は無いだろう? 俺たちが付いて教えるんだ、それから十年も経てばどんな魔法でも使えるようになるんじゃないか? シラユキは天才だからな、俺の子だからな!」


 姉様の膝の上から私を持ち上げ、高々と掲げ挙げながら言う父様。所謂高い高いだ。


 父様は現在最強の魔法使いだからね、先生としては申し分ない。他の家族もみんなそうだ、魔法の修行に専念している訳でもないのにこの国のトップクラス、いや、トップ集団になっている。ハイエルフは魔法に関しては頭一つどころじゃなく抜き出ている。


 エルフが最強種族なら、ハイエルフは超最強種族、かな。どこかの戦闘民族のようだ……。




 魔法使い、という職業があるわけじゃない。剣を使うから剣士とか、そんな職分けがあるのはゲームだけだ。大抵は冒険者の人括りで纏められる。魔法がある程度は使えないと冒険者としてやっていけないと思うし、魔法のみを特化させて鍛えても駄目だと思う。勇者、戦士、魔法使いなんて呼ばれるのは絵本の中の登場人物くらいなんだろう。


 その考えからいくと、冒険者は肉体的にも魔法的にも、それなり以上に使えないといけない事になるのかな? 脳筋タイプの獣人や竜人は、完全に人間が持てる力を超えてると思うから別かもしれないが。

 ああ、前衛、後衛に分かれるとかあるんだろうか? いや、それって一人じゃ戦えないって事か……。っと、考えが変な方向に逸れちゃったね。この辺りは追々と知っていけばいいか。




 父様の腕に座らせてもらった後、姉様はため息を一つ、説明をする。


「あのねお父様、シラユキに魔法を教える、それはいいのよ、私も教えてあげたいもん。でもね、今は絶対甘やかしちゃうと思うのよ。厳しく教えるなんて、私には絶対無理だわ、無理無理。十歳になってもそうよ、今よりもっと、もっともっと可愛くなるわよこの子? 何でも許しちゃうわよ? 広範囲無差別破壊魔法とか平気で教えちゃうわよ?」


 おお、よかった、そんな理由だったのか。甘ったれに教える魔法は無え! とか言われたら絶対泣いてたよ。……広範囲無差別破壊魔法!? 広範囲を無差別に破壊する魔法か、なるほど。なにそれこわい!!


「う……、た、確かにそうだ。絶対甘やかしてしまうに決まっている! 自分の事だからよく分かる! そうか……、うーむむむ……」


 なにやら話の雲行きが怪しくなってきてないかなこれ。このままだと十歳どころか、五十歳からにしようか、とか言われてしまいそうだ。軽いお願いの筈がまさかこんな方向に話が転がっていくとは……。


「でしょ? だからね、私は成人からでも遅くは無いと思うの。成人までには日常使う魔法を一通り覚えておくべきだとは思うんだけど……、シラユキだからいいじゃない。百になってからにしましょうよ。ねえ、お父様」


 成人! 百歳!? それは先過ぎるでしょう!! 姉様だって、まだつい最近成人したばかりじゃない!


「そうだな……。どうせ嫁どころかこの国から出す気も無い。ゆっくり、ゆっくりでいいな。それでいいだろうシラユキ? 魔法は確かに便利だが、生きていく上で必ず必要という程の物でもないんだ。たまに暴れてる俺やユーネは怖いだろう? 魔法は怖いものなんだぞ?」


 まずい! どんどんまずい方向に話が進んでるよ!! 成人で習い始めではなく、一生使えなくてもいいんじゃね? 的な話になってきてないかこれ!?



 ぐぬぬぬ……。こうなったら手段は選んでられないね。こちらも少しは退いて、しかし落とす!!


「うう……、魔法使ってみたいよ……。お願い、父様、ユー姉様。十歳まで我慢するから、もう我侭言わないから……」


 父様の首に手を回して、抱きつきながらお願いする。


 ここで女の武器、涙でも流せればいいんだが、潤ませるのが限界か……。しかし十分効いているはずだ!


「ああああああああ! ごめんねシラユキ!! 意地悪したわけじゃないの!! 教えてあげる! 広範囲無差別殲滅魔法でも何でも教えてあげるから! 泣かないでお願い!!!」


「俺は……、俺は何ということを……。娘可愛さに自分の愛を、エゴを押し付ける所だった! すまんシラユキ!! 十歳と言わず今からでも全て教えよう!! 集束型直線蹂躙魔法でも何でもな!!」


「怖い! 例えに出す魔法が怖いよ二人とも!!」


 しまった! つい突っ込んじゃったよ!!

 だって広い範囲を無差別に殲滅する魔法と、直線範囲を束ねられた魔法で蹂躙する魔法よ? 物騒を通り越して怖いわ! 引くわ!! 姉様無差別魔法好きだな!!




 結局、小さな光の玉で辺りを照らす魔法を教えてもらえることで落ち着いた、夜に便利そうだ。


 攻撃魔法とか多分一生使わないよ……、花に水をまくような可愛い魔法でいいのよ……。

 あ、コーラスさんに教えてもらうべきだったか? 真っ先に最悪な部類の攻撃魔法が出てくる辺り、師事する人選を誤ったかもしれない。




 後で聞いた事だが、父様は、一人で一つの国の首都、大きな町を、単独で、散歩気分で簡単に潰せるほど強さ、なのは聞いていたのだが……、実際過去にやったらしい。

 母様もそこまでいかないが、頑張れば同じ程度の事はできるとか。兄様姉様も、エルフから見れば若い方なのに、強さだけなら、冒険者でも上の上、もっと上でも通じるのよねきっと。



 私の家族怖っ! 怖すぎるわ!! でもみんな大好き!!!







魔法修行開始?

異世界っぽい!


2012/8/2

全体的に修正、書き足しをしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ