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その45

「ごめんなさい、ルー兄様。えへへ……」


「何で怒られてるのに嬉しそうなんだこいつは……」


 兄様に怒られてしまった。別に私、Mじゃないよ?



 私の早とちりのせいで、兄様姉様には迷惑を掛けてしまった。

 ちゃんと考えてみたら、兄様が浮気なんてするわけも無いね。姉様一筋、本当に心から愛している。熱いわ。


「そんなに怒らないであげて、お兄様。シラユキだって私のためを思ってしてくれた事なんだし」


「ん、そうだな。俺たちに限って、この程度の事で大事になるなんて無いし、これくらいにしておくか。シラユキも、もう少し落ち着いて考えるようにな?」


 あっさり許されてしまった。もう少し怒られてみたかったが、相変わらず甘いなー


「うん。ごめんねルー兄様。ユー姉様も」


「私は怒ってないわよ。心配してくれてありがとね?」


 ほっぺグニグニ。姉様これ好きだな……




「にゅにゅにゅ……。えへへ」


「さっきからどうした? やけに嬉しそうじゃないか」


 ずっとにやついている私を不思議に思ったのか、兄様が聞いてきた。


「私、ちゃんと怒られた事ってあんまり無いから。まだ二回目?」


 一度目は例の飛び降り未遂。あの時は、姉様が慌てていただけで怒られた内には入らないかもしれないが。


「だってシラユキって、我侭言わないし、言われた事は素直に聞くし、約束も絶対守る子だからね。怒る事自体ないのよ」


「だよなー。ユーネが小さい時なんて、母さんに怒られまくってたのになあ……」


 え? 姉様が怒られまくる? 母様に? どっちも想像しにくいな……


「こ、子供だったからね。今は全然大丈夫よ? 私の場合はお兄様に甘やかされて育ったからね、ちょっと、我侭だったのよ」


「ユー姉様が我侭? う、うーん……?」


 子供の頃からラブラブな二人しか思い浮かばない。兄様にもロリコン疑惑が出てしまうのでやめておこう。


「そうそう。ちょっと魔法教えたらすぐにガンガン使い始めたりなー。しかも主に攻撃魔法なんだよ」


 攻撃魔法を乱射する子供魔法使いですか。なにそれこわい。


「それは、お父様とお兄様が攻撃魔法ばっかり教えてくれてたからでしょ?」


「お前が教えて欲しいって言ったんだよ。最初に使えるようになった魔法が火炎放射だしな。あの頃は毎日火事ばかりだったよ」


 森の中で一番使っちゃいけない魔法を真っ先に教えるとは、何を考えてるんだ。


「教えちゃう父様とルー兄様がいけないんじゃないかな……」


 子供に攻撃魔法とか教えちゃ駄目だよ、もう……


「言ったろ? 我侭だったって。一つ教えたらもう終わりさ。次を教えなければ家が燃えてなくなっちまう」


「あはは……」


 計画通り、にやり。ってやつか!

 さすが姉様、まず森と家を人質にとれる魔法を教えてもらうとは、子供の頃から頭良かったのね。


「うう……。お兄様が私を甘やかしすぎたのがそもそもの原因なのよ?」


「シラユキなんて、家族全員どころか国民全員に甘やかされている訳だが?」


「もう! いじわる言わないでお兄様!!」


 おお! 姉様可愛い! これって単にイチャイチャしてるだけなんじゃないのか?


「ははは、悪い悪い、もう言わないよ。ごめんなユーネ。お前が可愛すぎるからいけないんだぞ?」


 怒る姉様を抱き寄せて、優しくささやく兄様。


「そ、そんな……。お兄様の……バカ……」


 一瞬で、兄様にしなだれかかる様に大人しくなる姉様。



 抱き合う二人、見つめ合う二人。そして近づく唇……




「あー、何か暑いね? 風送ろうか? ルー兄様、ユー姉様」


 ぱたぱたと手で扇ぎ、魔法で冷風を二人に向かって送る。クーラーの魔法とでも命名しようか。

 まったく……。二人の世界に入ると私がいることをすぐ忘れるんだからこの二人は……


「さ、寒い! こらやめろ! っていつの間にこんな魔法を!?」


「寒い! お兄様暖めて!!!」


 さらに抱きつき、体の接する面積を増やそうとする姉様。気分は北風と太陽の北風だ。

 何となくやってみたらできてしまったんだが、これは便利そうだね。いい魔法が出来てしまった。



「シラユキストップ! 寒い! じゃない! いきなり教えてもいない魔法を使うんじゃない!!」


「あっ!」


 言われてすぐに魔法を止める。や、やっちゃった……


「あ、ご、ごめんなさい……。う……。ごめんなさいぃ……」


 勝手に魔法を試さない事って毎日言われてたのに……


「え? シラユキ? ちょ、泣かないで! お兄様言い過ぎよ!!」


「し、しまった……。ちょっと言葉が強かったな。怒ってないぞシラユキー?」


 こういう時はもっと怒ってよ! でも、もっと甘やかして欲しいとも思ってしまう。






「ああ……、久しぶりに泣かせちゃった……」


 姉様が落ち込んでいる。私が悪いんだから気にする事無いのに……


「うーん……。いまのはちょっと過剰反応しすぎたか。あれくらいの魔法なら、いや、シラユキに魔法の程度なんて分からないか……」


「うん。止めようにもこの子、一発で成功させちゃうし、詠唱破棄が基本になっちゃってるから、何を試そうとしてるかも全く分からないのよね」


「ご、ごめんなさい……。もう絶対に勝手に使ったりしません……」


 もう駄目だ。何が駄目か分からないけどもう駄目だ。


「うわ、敬語だよ。お、怒ってないからな? 落ち込むなよ? 気にするなって言っても難しいと思うけど」


「この子結構気にしちゃうタイプだからね。ま、魔法使うのやめちゃいそう?」


 あ、その手があった。

 うん。魔法なんて、もう使うのやめればいいんだ。これで無駄に心配させる事も無いよ。よかったよかった。



「魔法を使うのをやめよう。そうすればお二人にもう心配は掛からない、というお顔をしています」


 ここまで黙ってたシアさんが急に口に出す。だから何でそこまで具体的に分かるのよ!?


「シラユキ!?」


「お、落ち込みすぎだろ!? どうしたんだよ!?」


 そりゃ落ち込むよ。だってさ……




「だって、二人とも大好きなんだもん……。迷惑なんて、心配なんて掛けたくないもん……」


 ああ、せっかく治まった涙がまた出てきちゃったよ。


「じゅ、重症だなこれは……。一体どうした? 子供なんだから迷惑なんて気にするなよ」


「恐らく、約束を破ってしまった事、ではないでしょうか?」


「ええ!? 一回、それも、あんな程度の事で!? ま、まじめ過ぎるわよ!」


 一回とか、程度の問題じゃ無いんだよ、姉様。


「それだけお二人、いえ、皆様の事を思っている、という事ですね」


 説明しないでよ恥ずかしい。


「うん。大好きなみんなに心配なんて掛けたくないよ……」


「何この子、心優しすぎる。天使なの?」


 危ない! 吹くところだった!! この空気で拭いたら台無しだよ!




 ごつん、と、私の頭に拳骨が落とされた。


「え……? 痛い……」


 い、今の? 兄様が?


「お兄様!?」


「ルーディン様!?」


「こ、心が痛え……。じゃなくてだな、シラユキ。お前が抑えてどうするよ? 違うな、お前だけが、か」


 叩いた兄様本人が一番ダメージを受けているようだ。


 うん? 私だけ?


「そんなの優しさじゃねえぞ、ユーネ。ただの自己犠牲だろ。シラユキだけに我慢させろって? それが俺たちのためになると?」


「うん、そうね……。ちょっとシラユキが可愛すぎて考えが浅かったわ」


 姉様は私に向き直り。


「ねえ、シラユキ。これからはもっと、もっと私たちに甘えなさい。我慢なんてされるより、我侭放題された方が嬉しいのよ? お姉ちゃん命令!」


「我慢なんてされたら逆に悲しくなるわ。お前になら分かるだろ? もっと好き放題やれって。やりすぎたらちゃんと叱ってやるからさ。お兄ちゃん命令だ」


「私が常にお側にいます。誰にも心配など掛かりませんよ?」



「ユー姉様……、ルー兄様……、シアさんも……。ありがとう……。大好き!!!」


 とりあえず一番近くにいた兄様に飛びつく。


 ああ、もう! 大好きだこの家族!!!


「あ、お兄様ずるい! 私も!」


「その次は是非私にもお願いします」






「よかった、丸く収まったみたいだよ。シアもすっかりお姉さんだね。でも、姫が我侭って、全く想像もできないんだけど。ねえ、フラ、ン?」


「うううううう……、いい話ね……。私もシラユキ抱きしめに行きたい……」


「ああ、フランってこういうのに弱いよね」






予想通り、ピックアップ圏外へと落ちていました。

み、短い夢だったなあ……


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