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その43

「まず最初に言っておくわね。疲れたらちゃんと言う事、また熱出して倒れちゃったりでもしたら私たちの心が持たないからね。あの時は本当に心配したんだから……」


 姉様本当に心配してたからね……。もちろんほかのみんなもね。



 私のあまりの体力の無さに、なるべく外に出るようにする事になった。読書もまだまだしたいので、一日おきくらいかな。もちろん読書の日も散歩程度はする。


 魔法は使うと疲れるものらしい。魔力という謎パワーを消費しているみたいなんだけど、明かりの魔法をそれなりの時間出し続けても全く疲れは出た事は無い。本当に消費されてるんだろうか?

 疲れが出るとは言っても、それで体力が付くとは思えない。しかし、広場で動き回りながら練習する事になる筈、それなりの運動量になるだろうと思う。


 まだ体感した事は無いんだけど、魔力疲れはどんな感覚なんだろう?

 気だるくなったり? やる気が起きなくなったり? 鬱のような気持ちになるのだとしたら嫌過ぎるね。大きな魔法を使うたびに鬱になってたら……。それはそれで、見ている分には面白そうだ。






 分からないなら聞いてみる。

 今日の先生は姉様とシアさん、メアさんとフランさんはお留守番だ。

 熱を出した日から、姉様はまた私からあまり離れようとしない。姉様とシアさんという甘やかしの二大巨頭のもとでどんな魔法の練習になるのか、期待半分不安半分、複雑な心境だね。


「ユー姉様、魔力疲れって、どんな感じなの? やっぱり精神的に疲れるのかな?」


「それもあるわね。普通に息が切れてきたりするのよ、走った後みたいな感じにね。それに精神的な疲れって言うのかな? これはちょっと言葉では説明できないわね……」


 なるほど、体力と精神力、両方使う感じなのか。精神的な疲れは確かに言葉にはしにくいね、ちょっと怖いが、その内に私も体験する事になるだろうし、今は詳しくは聞かなくても大丈夫かな。

 もしかしたら、使う魔法によっては魔力の減りに差が出るのかもしれないね。そういう事を調べてみるのも面白そうだ。

 兄様が前に見せてくれた、土でナイフを作る魔法。あれも消費が大きいんだっけ? 父様が飛び降り台を作ったときも結構疲れるとか言っていた様な気がする。土関係は消費が激しいのか?



「とりあえずはね、ええと……。火は駄目ね、火傷しちゃったら怖いし。物の操作も駄目、魔力の消費が大きいから、シラユキには多分まだ早いわ」


 いきなり答えが出てしまった。物体を操作する魔法は魔力の消費が大きいんだね。私にはまだ早い?


「父様たちはポンポン使ってるけど……、あ、年齢的に?」


「そうよ。子供のうち、シラユキは特に体力無いしね、重そうな物じゃなくても、何か動かしたらすぐに疲れちゃうんじゃないかな。大人になれば自然と魔力は増えていくみたいだから、そっちはいいんだけどね」


「そっかー。魔法って体力も重要なんだねー」


 もしかしたら、魔法を日常的に使い続ける事で体力が付いていくんじゃないだろうか? だとしたら……、楽できるかも?


「疲れるまで魔法使えば体力付くんじゃないか? うへへへ。というお顔をしています」


 また表情を読まれたよ……

 うへへへって何よ! 前にも聞いたなこれ……


「あ! 駄目よ? 魔力疲れは休めばすぐに回復するっていう訳じゃないからね?」


 シアさんは、何で私の考えてる事がこんなに具体的に分かるんだろう……。確かに私って、考えが表情に出やすいみたいなんだけどさ。



 ん? 休んでもすぐには回復しないんだ? ゲームだと一晩寝れば全快っていうイメージだよね。


「魔力はどう回復していくの? 魔力補充的なお薬があったりするのかな?」


 魔力回復の薬は必須のアイテムだよねー


「さすがにそんな物は無いわね。んー……、いっぱい食べて、いっぱい寝るしかないんじゃない?」


「そうですね。通常の運動での疲れとは違い、魔力疲れは一定の量回復するまで疲れている状態が続きますから辛いですよ。少しでも疲れを感じたら仰ってくださいね」


 うわー、怖いなそれは。回復するまでずっと息切れや精神的な疲れが続くんだ……

 魔力補給の手段も探さないとね。私の能力でどうにかできそうな気もするけど、まずは実際魔力疲れを体験してみないことにはね……


 私予想だと、何となくジュースとお菓子は回復量が多い気がするね!

 魔法の練習の後はおやつを食べる。素晴らしい流れじゃないか……




「それじゃまずは、うーん、何から使ってみようか? 風は結構起こせるようになったよね。シアは何がいいと思う?」


 風は結構な強さで吹かせることができるようになった、メイドさんズのスカートを捲るというセクハラ魔法としてしか使ってはいないんだけどね。もっと慣れればいくらでも強くできそうだ、が、シアさんのスカートは一度も捲れた事は無い。別に手で押さえているわけでもないのに何故だ……


「日常的に使う魔法と言えば、やはり火、ではないでしょうか」


 火? 火かー。多分簡単にできると思う。ライターのイメージで指先にともせば……、危ない! 指先燃える!

 指先から少しはなれたところに出すイメージか、それでも結構熱そうだね。そう考えるとちょっと難しいのかも?


 指先が燃えないように保護しながら使うとかどうだろう? 問題はどう保護するかだが……、冷やす?


「ねえねえ。物を冷やす事はできるの?」


「冷やす? 水を氷にしたり?」


「うんうん、そんな感じ」


 氷は魔法で作ってるはずだよね、冷凍庫なんてあるわけ無いし。

 前に私が熱を出した時にフランさんが用意してくれた氷だって、魔法で用意していたんだと思う。


「それはいいお考えかもしれませんね。まだまだ暑さも続きますし、ご自分の周りの空気を冷やして冷をとる、という事もできるようになりますよ」


「寒い時は逆に暖めたりとかね」


 何その素敵魔法! 人間エアコンか。あまりにも暑い時は、メイドさんズが風を送ってくれるんだけどね。面白がって強めに吹かせてして遊ばれるのもよくある。私は髪が長いからかなり面白いらしい。私もお返しにスカート捲りの魔法で逆襲するのだが、多勢に無勢で反対に捲られてしまう毎日だ。あの楽しさは異常。


「ああ……、ですが、魔法に頼りすぎるとどうなるか、分かりますよね?」


「うん。多分魔法無しじゃ、ちょっとした暑さ寒さに耐えられなくなっちゃいそうだね」


 エアコンが無いと生きていけなくなるか。便利すぎるのも考え物だね。


「我慢できない時にちょっと使うくらいでいいのよ。シラユキなら大丈夫、そんな事になるはずが無いわ。心配するだけ無駄よ」


「それもそうですね、失言でした。暑い時には脱いで、寒い時には着込めばいいんです。全裸でも耐えられない時に使うのがいいのでしょうか」


「暑くても全裸にはならないからね!?」


「それは残念です」


 本当に残念そうに言うシアさん。

 そんな事ばっかり言ってるから勘違いされるんだよ。もう……




「うん。冷やす魔法にしようか。どう練習したらいいかな……」


 次の魔法は、『物を冷やす魔法』に決まった。温くなったジュースをその場で冷やしなおして飲めるとか、最高じゃない?

 まてよ……、ジュースを凍らせる事ができれば……、ごくり。


「水に手を浸けるのが一番簡単で分かりやすいかと」


「ああ! そうだったわね。私もそれでできる様になったんだった。懐かしいわー」


 おっと、いけないいけない、ちゃんと話は聞かなければ。


 水に手を浸ける? 体温が下がっていく感じかな? なるほどねー


「それでは、水桶を用意して参ります」


 綺麗なお辞儀をしながらそう言うと、シアさんは家の方へ戻って行った。




 あ、考えてみたら。


「家でやればいいんじゃないの?」


「あ」


「あはは」


 やっぱり姉様も気づいてなかったか。


「シアには言っちゃ駄目よ?」


「はーい!」






「あ、来た来た、ってやけに大きいわね」


「うん……」


 シアさんが広場に戻ってくるのが見えた。直径1m、高さは30cmくらいはありそうな水桶を頭の上に載せて……。!?


「シアさん手使ってないよ!?」


「え!? あ! 本当だ! な、なにあれ……」


 姉様も私もびっくりだよ! 手で支える事もしないで頭の上に載せて、普通にスタスタ歩いてくるよ!!


 シアさんが目の前まで来た。私たちは絶句。


「大変お待たせしました。申し訳ありません」


 そしてお辞儀……!


「こ、こぼれる! 落ちる! あぶぶぶぶぶ!!!」


「し、シア! やめて! 見てて怖いからそれ!!」


「ああ、これは失礼を……」


 軽く手を添えて、音も無く水桶を下に降ろす。もちろん水はなみなみと入っている。100kg以上あるんじゃないかこれは……


「そ、それも魔法で? シア」


「あ、ああ! 魔法で載せてたんだ?」


「ええ。喜んで頂けたようで、なによりです」


 シアさんいい笑顔。この人は人をからかうのが好きだなホントに……


 今のも物を動かす魔法の応用なんだろうか? あれ? 物を動かす魔法って魔力の消費が大きいんじゃなかったっけ?


 シアさんを見つめてみると、何か? という表情を返されてしまった。全く疲れている気配すら感じさせないねこの人は……

 うん、深く考えないようにしよう。シアさんだから、メイドさんだからで納得しておこうね。うんうん。






「では、姫様。水に手を浸けてみてください。片手だけで結構ですよ」


 早速練習開始。まずは水の温度を見るんだね。


「うん。冷たくて気持ちいいねこれ」


 さすような冷たさは無いが、程よい冷たさで気持ちがいい。服を脱いで中に入ってしまおうかと一瞬考えてしまった。


「しばらくそのままでお願いします」


 そう言うと、シアさんも水に手を浸ける。


「さすがにこのサイズは時間が……。大きすぎましたね」


「え? あ、あれ? 冷たくなってきた?」


 気のせいなんかじゃない。水温がどんどん下がってきている!


「冷たっ!」


 あまりの冷たさに、反射的に手を引き抜いてしまった。引き抜いた手は少し赤くなっている。

 何度まで下がったのこれ! す、凄い! シアさん凄い!


「下げすぎましたか? すみません、ユーフェネリア様。姫様のお手を……」


「あ、なるほど。ナイスよシア」


 姉様が私の手を両手で温めてくれる。うわぁ…姉様の手…すごくあったかいナリぃ……


「ありがとうユー姉様ー」


 嬉しさを表現するために姉様に抱き付く。


「か、可愛い……。シア、よくやったわ!」


「お褒めに預かり、光栄でございます」


 水に手を浸けたまま軽くお辞儀するシアさん。


 浸けたまま? ああ、水温を戻してるのかな?




 姉様に抱きついたまま暫く待つと、なにやらパキパキと小さな音が。

 次第に音は大きくなり……


「シア?」


「もしかしてそれ、凍ってる?」


「はい。近くでどうぞ。あ、触らないようにお願いしますね」


 姉様から離れ、二人で近づいて水桶の中を覗き込んでみる。

 うわ、シアさんが手を浸けている辺りからどんどん凍っていってるよ。実際目の前で見てみると、ホントに魔法って凄いな……


 さらに少し待つと、水桶の中の水は完全に凍ってしまった。


 そしてまた、全く疲れる気配を見せないシアさん。

 か、考えちゃ駄目だ……、メイドさんだからいいんだよ……


「ここまでできる必要は無いとは思いますが、コップ一杯程度の水を瞬時に凍らせるくらいなら、姫様でしたらすぐできるようになりますよ」


「え、えー……」


 できると思う、じゃなくて、できるようになります、って断言しちゃうんだ。


「大丈夫。シラユキならできるって」


 そうかなー? でも、できたら便利だろうなー……




「ああ、後、注意事項が一つ。手を浸けたまま凍らせると」


 そう言ってシアさんはゆっくりと立ち上がる。水桶を左手に付けたままで。


「手が抜けなくなりますから、気をつけてくださいね?」


 そう言って左手をフリフリ。水桶も一緒にブオンブオン。


「シアさん怖い! 冗談だって分かってるけど、その大きさのを軽く片手で持ち上げるのは怖いよ!!」


「私もできるわよ? これくらいなら余裕だってば」


「ユー姉様も!? 二人ともこわーい!!!」






「あ、いたいた。おーい、シアー! 用意してきたよー! ってなにそれ!?」


「何やってるのよレン……。ああ、シラユキで遊んでたのね」


 メアさんがやって来て驚いている。そうだよね? 驚くよね普通は……。? 私、で?


 声のした方に目を向けると、二人とも結構な荷物を持ってきている。

 折り畳みのテーブルと椅子に、大き目のバスケット? 一体何を始める気だろう?


「さて、それではおやつの時間にしましょうか。今日はかき氷です」


 水桶を下に下ろして普通に手を抜く。簡単に抜けるんじゃん!!


「手の周りの氷だけを少し溶かしたんです」


「あ、なるほど。シアさんやっぱり凄いや……」


 え? かき氷用の水だったのこれ……




 メアさんフランさんが、椅子にテーブル、器にシロップ。次々と並べて行く。さすがメイドさんだ。


 シアさんはというと……


「な、ナイフ!? ナイフで削るの!?」


「ええ、もちろんそうですよ。砕いた氷より削った氷の方が、味も食感もはるかに上ですからね」


「そういう意味じゃないよ! うわ! 何その切れ味! 手、速っ! 凄い! でもちょっと怖い! シアさん怖い凄いこわーい!!!」



「シラユキ大喜びね。夏場はたまにお願いしようかな。ああ、あのはしゃぎ様、頬が緩んじゃう……」


「ちょっと氷の量が多いね……。私ちょっとウルギス様たちも呼んで来るわ。メア、後お願い」


「追加の器とスプーン、後は椅子もお願いね。あ、姫は苺のシロップがいい?」


「うん!!!」






 結局家族全員集まり、そして何故か次々と人が集まっていき、かき氷祭りは夜遅くまで続いた。途中でお酒に切り替わり、いつもの宴会になっていたが……



 あれ? 私の魔法の練習は?







かき氷いいですよねー


市販のシロップは匂いを変えてるだけで全て同じ味の様ですが、この世界のシロップは全て本物の素材から作られています。

どうでもいい補足でした。


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