その4
「可愛い……、可愛すぎるううぅ……。私も子供欲しくなっちゃう」
私は今、ベンチに腰掛けたコーラスさんに膝抱きにされている。そして目の前には巨大な双峰が聳え立っている。これは同姓でも触りたくなるわ……。
やっと心と体も安定してきたようで、涙も止まり、落ち着いた。勝手に子供らしい行動になってくれるのは、ありがたいものなのかもしれない。
うーむ……。しかし、この胸はまことにけしからんなぁ……。これを三分揉み放題ですか兄様。しかし私が易々と思いどうりにさせる訳は無い。気持ちも完全に落ち着いた様なので早速行動に移ろう。
「あの、コーラスさん、ルー兄様?」
「うん? どうしたの姫。もっと突付いてもいいのよ?」
「もう平気か? 今度町で苺買ってきてやるからな? 許してくれな?」
苺!? hai! 許すます!!
「ありがとうルー兄様! 大好き!!」
「!? 目の前でこの笑顔……。これはくるわ……」
コーラスさんも私の可愛さにメロメロであるか。しかし可愛いのも子供のうちだけ、今のうちに存分に可愛がってもらっておこう。
おっと話が逸れてる、戻さなければ。苺は本当に心から嬉しいけど、それはそれ、これはこれなのだ。
「えーとね? もう、三分以上経ってるんじゃないかなーって」
「三分? 何の事だ?」
「えー……、三分なんて言わないでもうちょっと抱かせてよー」
おや、いつものコーラスさんなら気づきそうなものだが。恐るべきは私の魅力か。
しょうがない、もう一つヒントを出そう。
「ルー兄様がコーラスさんの胸を触れる時間は三分間、だったよねー?」
「え? あ、ああ。それがどうかしたか?」
「あ! ああ、ね、なるほどね……。ふふふ」
コーラスさんがナイスだ、とばかりにニヤリとする。私の言いたい事を完全に理解してくれたみたいだね。
「そうよねー、もう三分は軽く経ってるわよね? まさか三分の間、一度も触ってこないとはねえ。どうしちゃったのよルーディン? 貴方らしくもない」
「お、おいおい、まだ開始も何も言って無いだろ? 後でだよ、後で。シラユキの前で揉めるか!」
姉様とのキスは誰の前でも平気でしてるのに……。方向性が違うか?
「開始時間なんて誰も決めてないでしょう? 貴方は三分間、私は好きなだけ、よ?」
そう言って私を抱く力を少し強めるコーラスさん。胸に埋まってしまう……!!
これは嬉し苦しい……。しかしいい流れになってきた、さすがはコーラスさんだ。
「そうだよルー兄様? 触らなかった兄様が悪いんだよ?」
「え? 俺が悪いのか? 何でだよ! ……いや、しかし、シラユキの言う事に間違いはない、俺が悪いんだろうな……。くそう、夢の三分間が……」
両手両膝を地面について、がっくりと項垂れる兄様。
そう! 私の言う事は正しいのだ!! ふふふ、兄様には姉様がいるんだから、他の人に手なんて出しちゃだめなんだから。
その後も花畑周辺を歩きながら軽い雑談を続けていた。
「そういえば、あの花、どこでも見かけるよな本当に」
あの花? ああ、あの白い花か。
兄様の指差す方へ顔を向けると、花畑の中ではなく道端に、小さくて白い花がいくつも咲いていた。
「あれは全く手入れしてないんだけどね、さすがに女神様の花なだけあるわよねー。抜くのもなんか罰が当たりそうだしそのままにしてるのよ」
「まあ、これだけ好き勝手に咲く花だとどこでも女神に見られているようなもんだよな。誰も悪さなんてできないだろうな、これは」
二人の話す女神様の花とは、小さな白い花を咲かせる雑草に近い種。雑草などという草は無い、と怒られそうだ。
この花は世界中どこでも、どんな厳しい環境でも、そしてどんな季節にも花をつける珍しい植物のようだ。
まるで神様の様に、どこにいても見られている、という意味なんだろう。女神草、女神様の花と呼ばれている。
自分の家に女神様の花を飾るのは、私は何も悪い事なんてしませんよ、という表明にもなる。勿論私の家にも小さな鉢植えに移して全部屋に飾ってある。
実はこの世界の神様、私をこの世界に招いてくれた女神様はこの想像から生まれたらしい。らしい、というか本人がそう言っていた。
女神様が世界を創ったわけではなく、この世界の住人が女神様を創ってしまったのだ。
小さな花イコール女神様でよかったよ。巨大な蔓系の植物でなかったことを神に感謝だ。神って誰よ。
そして、この花の本当の名前は、白雪草。この世界でそれを知っているのは恐らく私だけ。
私の今の名前の元だね、この名前は女神様が付けてくれたんだ。前世の名前は女神様と対面した時点ですでに覚えていなかった。消されていたのかもしれないが、正直興味もない、どうでもいい事だ。
家族にどうやってその名前を伝えたか、そっちの方がはるかに気になる。多分神様的なパワーなんだろうとは思うけど……。頭の中に電波送信? 怖いわ。
女神様からの干渉はそれで最後。もう死ぬまで、いや、死んでも無いと思う。
本来は、見守る、見張る、という役割の神様なのかもしれないね。
私は……、何と言うか、特別、だったんだ。
そんな事を考えていたら、私のお腹から可愛い自己主張が鳴った。
うわ、これは恥ずかしいな……。聞こえた? 聞かれた?
「あらら可愛い音。ふふ、お腹空いた? どうするルーディン? 家で食べてく?」
聞かれてた!!
「お、いいのか? それじゃありがたくご馳走になるか。な? シラユキ」
「うん! コーラスさんありがとー!」
わーいご飯だ! ……やばい、子供か私は。っと、子供でいいんだった。考えない考えない。
「姫は私がこのまま抱いて行くわね?」
「いやいや俺が」
「いえいえここは是非私に」
「あ、私もたまには抱いて歩きたいんだけど」
「こらこら二人とも邪魔しないの。ルーディン様かコーラスさんに任せようよ」
「おなかすいたよー……」
みんな笑顔の楽しい毎日。ずっとこんな日が続くといいな。
こんな感じの説明をはさんだ日常話が主になります。
特に大きなイベントとかは無く、だらだらゆるゆると続けていこうかな、と思っています。
2012/8/1
全体的に修正と書き足しをしました。