その39
またまた二話投稿です。
先にその38の方へお願いします。
「他に質問はありますか? さあさあ、どんどんどうぞ」
シアさんが、まだ全然説明したり無いぞと要求してくる。
「シアさん本当に説明大好きだね……」
「メイドですから」
「なるほど」
「納得なの!?」
だってシアさんだし。
「それじゃ、冒険者とは関係ないけど、いいかな。エルフに求婚する意味について」
気になるよね。ラルフさん嫌われたままなのは可哀想だし。
しーん、と静まり返ってしまった。
あれ? 何か地雷踏んだ!?
「どうしましょう? 私には、姫様にはまだ、まだまだ早すぎる問題かと思うのですが……」
「そうよね……。せめて五十……。やっぱり成人してからでもいいかしら」
「俺はいいとは思うが……。やっぱ駄目だ、こいつ絶対泣くわ」
泣く? あ、これは聞かない方がいい気がする! 止めよう!
「あ、あ! 今のは無しで! 聞かない!!」
「うん。ごめんねシラユキ? 意地悪してるわけじゃないの、分かってね?」
「もう少し大人になってからな? やっぱりお前にはまだ早いよ」
「うん。変な事聞いちゃってごめんなさい……」
「いえ、姫様ならご自分で気づかれると思いますよ。ただ、本当に今はまだ早い、と言うだけです」
子供にはまだ早い。何か重要な、とても大切な、何かがあるんだろう。
「俺ってさ、もしかして、結構最悪な事してる?」
ラルフさんが言う。
理由を聞けない、エルフでもまだ気づけない私にはなんとも……
「お前にもそろそろ教えてやるよ。痛い目に遭ってからがよかったんだが、これ以上評判下げるのもな」
「今日はシラユキがいるし、また今度ね。それまで、今までみたいにエルフを見かけたら即求婚、とかはやめる事。いいわね?」
そんな事してたんかい。という事は……
「ミランさんも?」
「は、はい。初めてこのギルドに来たその日に。その場で切り刻んでやろうかと……、な! なんでもないです!」
「み、ミランさんも結構怖い人?」
その場で切り刻むとか……。
「いえいえそんな事は決して! ただ、それだけ大切な事、なんです」
こんな温厚そうなミランさんを怒らせるんだからね、相当だ。
人間同士なら半分以上冗談でも済むんだろうが、エルフには100%真摯な態度で臨まないといけないんだ。
うん、そうなると。
「ラルフさんもう死んじゃった方がいいんじゃない?」
「ついに唯一の味方がいなくなった!!! シラユキちゃん結構言うね……」
「姫様の許可が出たところで、早速50点を目指そうかと思うのですが」
「駄目よ、シア。40点で許してあげて?」
「40点でも即死だからね!? 額だからね!?」
「両手両足に一本ずつ、っていうのもあるよ?」
「シラユキちゃん!? 駄目だよ! 君は優しい子のままでいて!!!」
「ふふふ、冗談ですよ。でも、それだけ嫌われる事を今までしてきたんですから、これからは気をつけないと、ですね」
私にはまだよく分からないが、ラルフさんには反省してもらおう。
理由が分かったら私もやっぱり許せないのかな……
「それでは姫様のご要望通りに、両手両足で40点を狙いたいと思います。皆様、一本当たる度に拍手をお願いします」
「冗談だからね!? シアさん止まってー!!」
「もうそこまで気になる事はないかな。後は気になった時に、またシアさんに聞くね。ここにもまだまだ来ると思うし」
Cランク以上の人とお友達にでもならないと、冒険話は聞けそうに無いしね。今日はここまでにしておこう。
「はい、お疲れ様でした。次はどこへ参りましょう? 結構時間を使ってしまいましたが……」
「そうね……、お菓子、お土産を買って帰りましょうか」
お菓子! ほうほう、ほうほう!
「ぶっ。すっげえ目キラキラさせてるよこの子」
はっ! 見られてた! 笑われた! くそう!
「なんで言っちゃうかなコイツは……」
「やはり今ここで消しておきましょうか? 私たちの楽しみをこうも簡単に奪うとは、到底許せるものではありませんね」
「何でだよ!! 確かに可愛いけどさ、見慣れてるだろう?」
ピタッと、兄様姉様シアさんが固まった。
い、一体何が起こるんです?
「あ、あー、もう駄目ね。ごめんなさいラルフ、あなたはいい友人だったわ」
「ふむ、思えばお前が十六の時からの付き合いか。たった三年だったが、いい友人だったよ」
「私は今日初めてお会いしましたので、何の抵抗もありませんね。さようなら、とだけ」
「あ、あれ? 俺変なこと言った? し、死ぬの!?」
「冗談ですよ。ちょっと冗談に見えませんけど……。そうだよね三人とも?」
「シラユキの可愛さが」
「この子の愛らしい言動が」
「世界一愛らしい姫様の、世界一愛らしい笑顔が」
「見慣れるわけ無いでしょう!?」「見慣れるわけ無いだろう!?」「見慣れる筈がありません!」
「息ぴったりだな」
「うん。父様と母様もこんな感じですよ?」
でもこの過保護と言うか、可愛がりには未だに慣れないよ……
「し、シラユキちゃん、強く生きるんだぞ。俺はここで死ぬようだ……。だが、覚えておいて欲しい、俺と言う馬鹿な男が生きていたという事を」
「ら、ラルフさーん!!」
「わ、私はどちらにどう参加したら……」
「き、気にしなくてもいいんじゃないかな……」
ミランさんは普通の人だった。
「では、私はまだ受付の仕事が残ってますので。できたら帰られるまで護衛として同行したいんですが……」
「ミランさん百人いてもルード一人の方が強そうだしな」
実際そうなんじゃないかなと思ってしま……、ん?
「ミランさんって、もしかして結構強い人なの?」
でなければ護衛に付くだなんて言い出すはず無いよね。
「あ、はい。あ、いいえ!」
「どっちだよ。ミランさんは確かBランクだろ? でも今は受付メインにしてるんだっけ」
「ええ、たまに高難易度の依頼の消化に出向いたりは、まだしていますね」
Bランク! 凄い、一流レベルの冒険者だ!
という事は。色々な冒険のお話が聞けそうかも?
「ミランさんミランさん」
「はい! なんですか? シラユキ様」
「私とお友達になって欲しいな。それで今までしてきたお仕事のお話、聞かせて欲しいなー」
「お友達ですか!? そそそそんな! 恐れ多い……」
恐れ多いとか初めて聞いたよ!!
やっぱり王族とお友達は厳しいかー……。ちょっと悲しいな。
「あ、コラ、シラユキ! 結構血生臭い話もあるんだからな? 分かってるのか? あれ? 泣いてるのか?」
泣かないよ! ちょっとだけ悲しいけどさ……
「え!? すすすすすすみません!!! お友達でも何でも!! 遊び道具でも奴隷でも何でもなりますから!!!」
「それは素晴らしいですね。姫様の魔法の練習にはもってこい、ですね」
「しないしないしないよ! 奴隷とか怖いよ! 遊び道具とかいやらしいよ!!」
ちょっとアレすぎるよ! いやーんなアレすぎる表現だよ!!
「なるほど。ミランはいやらしいのね」
「なるほどな。大人しい顔してても中身はいやらしい、と」
「なるほど。だがもう少し胸が欲しい」
「わかりました。ミランさんはいやらしい。そう皆様にお伝えしておきましょう」
「えええええええ!?」
からかえる対象を見つけたらすぐこれだよ! 楽しそうだな四人とも……
ごめんなさいミランさん。私の不用意な一言でいやらしい人として認識されちゃったよ……
「もう、みんなしてからかっちゃ駄目だよ! ほら、お菓子屋さん行くよ!! ミランさんまた冒険のお話聞かせてねー!!」
「は、はい! いつでも来てくださいね!」
手を振って離れる私に、明るく答えてくれるミランさん。
いいお友達ができてよかった。向こうはそうは思ってくれないだろうけどね。
でも、今はそれでもいいや。ゆっくりお友達になっていこうと思う。
次はいつ会えるか、とても楽しみだ。
「勝手に行くなシラユキ!! ちなみに菓子屋はそっちじゃないぞ」
「もっと早く言ってよ! 恥ずかしいいいいい!!」
「あはは。シラユキ様可愛い」
走り戻る私に微笑むミランさん。
もう会っちゃったよ!!!
ちょっと冒険者ギルドの話が長かったですね。
ほのぼの話を楽しみにしてくれていた方にはつまらない内容だったんじゃないかなと。
またちょくちょくこんな内容のお話が何話か続く事があると思いますが、今後もよろしくお願いします。