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その37

「きょ、今日は一体何の御用で……? コラ! アンタ達こっち見るな! 聞き耳を立てるな!」


 私たちはカウンターに近いテーブルに案内された。元々座っていた人たちはミランさんが駆逐した。ごめんなさい、罪無き冒険者の人たち……。もちろんシアさんは立ったまま、もう突っ込まないぞ。


「んー、特に用と言う程のものは無いのよ。この子が一度、冒険者ギルドを見てみたい、って前から言っててね?」


「そうだったんですか……。シラユキ様は、確か十歳になられたんでしたよね?」


 し、シラユキ様!? 様!? 姫様には慣れたけど、名前に様付けは慣れない! でも言ったらまた慌てるんだろうな……


「どうしましょうか姫様。強制させます?」


「強制!? な、何をですか!? はっ! 私何か粗相を……!」


「だからシアさんは何で分かるの!?」


「メイドですから」


「安定の返答だよ!!!」




「では、姫、か、姫様、もしくは世界一愛らしい姫様の三択でお願いします。選んでください。私のオススメは、世界一愛らしい姫様です」


 そんなの選ぶ人いないよ……。しまった! フラグだ!!


「はははい! 世界一愛らしい姫様!」


「やめて!!!」


 ミランさんの性格から、オススメ以外は選ばないだろうと言う確信があったのか。さすがシアさんださすが。



「おもしれーなー……。いつもこんな感じなのか? ルード」


「ああ、いじられるのは主にシラユキだがな」


「今日はシラユキもミランさんも同時にいじってる感じよね。さすがシアだわ」



「冗談ですよ。私としては、姫、と呼んでもらいたいですね」


 私とミランさんをからかうのに満足したのか、やっと普通に話を進める。


「呼び捨てでもいいのに」


 自分が姫様って呼んでるから被るのが嫌なのかな?


「よ、呼び捨て!? 王族の方をそんな!! 姫で! いえ! 姫様でお願いします!!」


 様付けは譲れないわけね……。ま、いっか。私が名前に様付けに慣れればいいんだし。


「好きに呼んでもらって大丈夫ですよ。もちろん名前でも」


「はい! シラユキ様!」


 慣れぬぇーーー!!! はっ、失礼。






「それでは、えーと……。簡単に冒険者ギルドについて説明します?」


「いえ、結構です」


「シアさん!?」


「メイドさん!? それじゃ何しに来たの!?」


「説明は私の仕事です」


 ああ、なるほどね。説明好きだな……


「姫様の質問に私が答え、ミランさんには補足をお願いしましょうか。私も元冒険者とは言え、現役を退いてから暫く経ちますからね」


「え? 貴女も冒険者、だったんですか? すみませんがお名前は……、シアさん、ですか?」


「すみません、一メイドの名前など、どうかお気になさらず」


「バレンシアだ、姓は無いらしい。シラユキにも言ってないし、本当に無いんだろう」


「ルーディン様……」


 どうしたんだろう兄様。シアさんは言いたくないから名乗らなかったんだと思うけど……


「俺たちはお前の冒険者時代の事を全く、うん? ミラン、どうした?」


 ミランさんはあんぐりと口を開けて固まっている。まさかシアさんって有名人?


「薄い紫がかった銀色の髪? そして灰色の瞳、バレンシア……! あなた、もも、もしかしてせんけ」


 カッ! と、ミランさんの目の前にナイフが刺さる。


 うわあ! 投げた! ついに投げたよナイフ!! 威力ありすぎて刃の部分がテーブル貫いちゃってるよ!! しかも投げた瞬間が全く見えなかった……。


 シアさんこーわーいー!!!



「申し訳ありません……。手が、滑りました」


 ミランさんは完全に固まってしまった。

 多分シアさんは冒険者としては結構有名だったんだろう。その人を怒らせてしまったんだ、動けなくもなるよ。


 でもラルフさんは知らないのか。シアさんが冒険者を辞めたのはかなり昔の事なのかな?



 全員が静まり返ってしまった。

 他の冒険者の人たちも何事かと、こちらを見て緊張している。


「恐らく、いえ、確実に人違いでしょう。ただのメイドである私の話などやめて、姫様の質問にお答えしましょうか」


 シアさんは、音も立てずに軽くナイフを引き抜き、話を元に戻す。

 ナイフは左手に持ったままだ、これ以上聞くな、話すな、と言う事なんだろうと思う。


 ……思うが。


「こ、ここで私がシアさんの事を聞いたら?」


「し、シラユキ様!?」


 怖い! 怖いが気になる! ミランさん何か二つ名っぽいの言おうとしてたよね? せん? 千? 尖? 穿? 殲? 物騒な文字ばかり浮かんでしまう……


「また、手が滑ってしまうかもしれませんね。恐らくミランさんかラルフさんの……、どこかへ」


「どこへ!?」「どこへ!? 何で俺に!?」


「それじゃ聞くか?」


「やめろアホ!!!」


「やめてください! !? ルーディン様にアホ!? アンタ本当にいい加減にしなさいよ!!!」


 あ、ミランさんの調子も戻ったのかな? 元気になったね。

 さすがシアさん、ここまで考えてたんだ。……だよね?






「聞きたい事、聞きたい事かー……。やっぱりまずは少し説明してもらった方がいいかな。気になった事があったらその後に聞くから。それじゃ、ミランさん。お願いしてもいいですか?」


「はい! ……あの、シラユキ様? できたら敬語をやめて欲しいんですが……」


 むう、初対面の人とそんなに気軽に……、できるんだけどさ。ミランさんエルフだし。

 ラルフさんは無理、人間でさらに男の人だし。でも何度か話せば自然に話せそうだ。


「そうですよ姫様。もっと高圧的に命令してあげてください」


「しないよ!? もう……。ミランさん、お願い」


「はい、分かりました。えーと、まずは何から話しましょうか……」


 そっか。私の敬語のせいでミランさん恐縮してたんだ、悪い事しちゃったな。次に他のエルフの人に会ったときは気をつけよう。






 まずはここ、冒険者ギルドについて、ですね。ここの主な役割は、冒険者の登録と、依頼の斡旋です。

 依頼は、魔物の討伐、魔物が出る地域への護衛や採取が主ですね。他にもいくつかありますが、遠征と護衛、大体はこの二種類です。


 外の掲示板の雑務依頼は、ギルドは関与していません。掲示板の提供のみですね。

 関与事態はしていませんが、失敗はもちろんこちらの能力査定に響きます。簡単な仕事ばかりのはずです、あの程度軽くこなしてもらわないといけませんしね。

 中には冗談半分に危険な仕事の依頼もありますが、誰も受けないままか、高ランクの方が気まぐれに受けたりもします。


 ランクは知っていますよね? FからAまでの六段階あります。Aの上にSランクもありますが、世界に五人、今は四人しかいません。あってないような物ですね。


 Fランクの状態ではギルドの優遇を一切受ける事が出来ません。これは、登録だけしておいて権利のみ使う、という事の防止のためです。

 一度でも依頼を成功させ、ある条件を満たせば、晴れてEランク。ここでやっと冒険者ギルドの一員として認められ、様々な優遇を受ける事が出来ます。


 そうですね……。分かりやすいのは、武具店での割引や、宿で出される水桶の無料化などでしょうか? この町は元々水は無料なんですけどね。他の町では有料の所もあるんです。

 あ、もちろん雑務依頼は、成功しても特に何もありませんよ。雑務依頼を受けるためだけに登録、という事もありませんね。こちらの説明は省きます、すみません。


 FからDランクまでは衣類の黒系統での統一。Cランク以上になると色の自由が認められます。

 これは、一目で実力者が分かるようにするためと、低ランクの冒険者の自衛のためですね。


 後は……、冒険者の戦争への参加の禁止。参戦時には勝ち負けを問わず、登録抹消、再登録不可のペナルティがある。くらいでしょうか?






 すごいなミランさん……。さすが受付嬢、説明し慣れてるわ。


「ありがとう、ミランさん。凄く分かりやすかった!」


「い、いえ……」


「照れるな照れるな」


「アンタは黙ってなさい!」


「この扱いの差! ひどい!!」


 ラルフさんが茶化し、ミランさんが怒る、それに対してラルフさんが反応する。なるほど、いい流れだ。

 でもこの程度で嫌われるとは思えないんだけどな……。帰ったらシアさんに駄目元で聞いてみよう。


「あ、すみません。何か質問はありますか?」


「質問には私が答えます。遠慮なくどうぞ」


 おっと、説明大好きシアさんが出てきたよ。うずうずしてたもんね。






まだまだ続く説明回。さらに次回へ続きます。



いつの間にか月間ランキングにまで入っていました。

ありがとうございます!


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