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336/338

その336

また半年経ってしまうところでした……。お、お久しぶりです。(いつもの)




 さあ早く早く、とシアさんに急かされるようにして冒険者ギルドから出る私たち一行。そしてそのまま、シアさんではなくミランさんに手を引かれ、少し急ぎ足で即出発。なんとも忙しないがそれも仕方がない、あまりゆっくりし過ぎると本当に夕方になってしまう。

 多少帰るのが遅くなったところでシアさんがいれば何も問題ないのは間違いない。しかし、過保護すぎる家族がそれをどう思うかはさすがに未知数、不安が勝ってしまう。折角ミランさんと手を繋いで町を歩けるというのになんて勿体ない……。


 まあ、急ぎ足なんて言ってもそこは子供の私の足、普段とほとんど変わらないんだけどね。

 それじゃ黙々と歩くだけなのもなんなので、お話再開と行こうじゃないか。

 右にはミランさん、左にはシアさん。そして後ろからハンナさんとコレットさんがついて来るという部隊編成。まずは一番近いミランさんからだね。


「ミランさんミランさん、さっきシアさんが言ってたけど今日は本当はお休みの日だったの?」


「え? ええ、まあ……、はい、そうですね。シラユキ様が私に御用があるとかで急遽。でも代わりに明日はお休みですから……、と、そうじゃなくてええと、あー……」


 私と手を繋いでいるからか、少し嬉しそうな笑顔だったミランさんの表情が曇る。答えにくいことを聞いてしまったのかもしれない。


「じ、実はですね、これまでにも何回もあった事なんです。なので気になさらないでくださいね」


「そうなの!? 知らなかった……。うう、今更だけどごめんねー」


 今更過ぎる衝撃の真実!

 気にしないでと言われてもこれは逆に気にしちゃうなあ。確かに冒険者ギルド自体に用事はあまり無く、ミランさんに会いに通っているのだから本人がいないと意味がない。前日に急に決めてしまった場合は休日をずらして調整してくれていたんだろう。これはもっと早く気付くべきだった。

 そもそもミランさんと会うのは冒険者ギルド、というのが決まり事みたいになってしまっているのがおかしいのか。こちらも今更感が凄い。


「いえいえ! 私の予定よりシラユキ様を優先するのは当然ですから! それに私に会いに来て頂けてるんですから反対に嬉しいんですよ?」


 軽く私の頭を撫で、微笑みながらそう言ってくれるミランさん。今のは本心からの言葉だと思う。


 ううむ、それならいい、のかなあ? でも何となく悪い事をしちゃった気分。


「ねえねえ、普通はお姫様のシラユキちゃん様からじゃなくてミーランさんの方から会いに行くんじゃないの? 会いたかったら呼び出しちゃえばいいじゃん」


 はっ!? そ、それは盲点だったわ……。


「ちょっとハンナ、そこは黙ってなさいって……」


「あはは……。いいのいいの、そう考える方が自然だから」


 ハンナさんからのごもっとも過ぎる意見にハッとさせられてしまった、が、そうすると私の運動不足にさらに拍車がかかってしまうので残念ながら見送らせていただきます。



「あ!」


「姫様?」「シラユキ様?」


「なになに? どったの?」


「え? 何かありました?」


 そんな風に軽い雑談を、主に冒険者ギルドやミランさんのお仕事について話していた時に急に思いついてしまった。正確に言うと思い出してしまった。


「ねえシアさん、ジニーさんはお店にいるんだよね?」


「? はい。どこかへ出られていなければの話ですが」


 こうして今、実際にジニーさんに会いに『踊る妖精』へ向かっているのだからそれも当たり前、シアさんも返事が一瞬遅れてしまったくらい当たり前の話なのだけれど、一応確認だ。


 ふむふむ、という事はつまり……。


「それならショコラさんは奥にいたんだよね? 会いたかったなー」


 ジニーさんが冒険者ギルドにいない場合は、何か特別な事情でもない限りショコラさんが待機しているはず。今はもうほぼ毎日その状態で、おかげでジニーさんはお店の方のお仕事に専念できているらしい。


「なるほどそういう事でしたか。しかしガトーのことなど気に掛ける必要はありません。どうせまたすぐに何かと理由を付けて食事を集りに来るでしょうからね」


「どちらかと言うとシラユキ様を可愛がりにお邪魔しているんだと思いますけど……」


「同じことです。まったく、ガトーは遠慮と言う言葉を知らないのですから……」


 ミランさんのフォローをばっさりと切り捨て嘆息するシアさん。

 そんな事を言いながらもショコラさんが遊びに来るときちんと歓迎してくれてるんだけどね。シアさんの数少ない森の外でのお友達、お目当てが私でも満更ではないはず、と思いたい。


「ショコラさん? ガトー?」


「ガトーショコラさんって確か……、Sランクのあの『閃光』ですか? 竜人の」


「そういや活動休止してギルド員やってるって聞いてたけど……。へー、この町にいたんだね」


 ハンナさんとコレットさんがショコラさんの名前に反応した。Sランクともなると冒険者同士の間で頻繁に噂されてたりするんだろうか?


「ショコラさんってやっぱり有名なの?」


 気になってしまったので聞いてみる。私から見ると食欲旺盛な美人さんという印象が強いのだけれど。むしろそれ以外に見えない。


「そりゃ勿論有名も有名! なんてったってSランクなんだしね! でもまあ、ここ最近はあんまり大きな噂は聞かないかな?」


「少し前に聞いた話だとええと、ハイエルフの方々に喧嘩を売って、は、半殺しにされて冒険者としては再起不能になったとか……。それでギルド員になったんだろうって」


「なにそれこわい」


 そんな事ある訳ないじゃないか! まったくもう。変な噂が流れちゃってるみたいだね。誠に遺憾である。


「あはは、シラユキちゃん様可愛い可愛い。その反応からするとやっぱり噂は噂でしかないみたいだねー」


「そうみたいね。うーん、あとはお弟子さんの……、なんて言ったっけ? ハンナ」


「ん? 弟子って言うとライナー・ランガー? 『鋼爪』の。二人とも結構有名人なんだけど、コレットってばそっち方面は全然興味無さげだよね」


 おお、ライナーさん懐かしい。また遊びに来てくれないかなー。

 そしてやはりライナーさんも有名人。お友達としてちょっと鼻が高い気分。ふふん。


「高ランクの人なんてエルフ以外はどうせ接点もないだろうし……、と、そうそうライナーさんね。そのライナーさんとの間に子供ができちゃって今は子育てに専念してるとかそんな噂も流れてましたね」


「へー! なにそれ面白い!」


 やっぱり二人の仲は周りからするとそう見えるんだね! ふふふ。今度ショコラさんに会った時はこの話題で盛り上がろう。


「うわっ、可愛い……! そっちもただの噂みたいですね」


 有名人、いや、身近な人の噂話は思った以上に面白いね。現実との食い違いっぷりが特に。

 あ! でも大筋は合っているのかもしれない。ライナーさんが私を泣かせちゃった事件と、ショコラさんが私を自分の子供として育てるとか公言していたこと。あとは二人の普段の仲とか取り巻く状況とか、そんなこんなが紆余曲折して伝わってそういう噂になった、と。おお、面白い面白い。


「シラユキちゃん様はそのガトーショコラに会いたかったの? なんで?」


「なんでって、ショコラさんはお友達だから挨拶くらいしておきたかったなーって思って」


「お友達なんですか!? え? Sランクの冒険者と普通にお友達になれちゃうものなんですか? 怖くなかったです?」


 おお、いいねいいね! こうやって遠慮なく質問をぶつけて来てくれるのは嬉しい。やはり最初から口調を崩してた事が功を奏していると見た。お姫様扱いよりはただの子供扱いの方が断然いいに決まっている、これからも続けよう。


「うん。初めて会った時はちょっと怖い人かもって思ったけど、本当は凄く優しい人なんだよ?」


「ガトーさんはあの目が怖がられているだけで本人はそこまでは……、まあ……、子供には優しい人ですよ。一応」


「そこは普通に言い切ってあげて!」


 ミランさんのフォローはたまにフォローに聞こえないのが面白いなあ。目が怖いっていうのはどうにも否定できないけど。


「目が怖がられてる? へー。まあ実際会ってみれば分かる事だよねー。よっし! この町での予定に一つ追加!!」


「え? ほ、本気で会いに行くの? ハンナのことだから絶対失礼な事言って怒りを買うオチしか見えないんだけど……。不安しかないわ」


「なんでさ!? いや、私ってそこまで失礼な奴じゃなくない!? ねー? シラユキちゃん様ー?」


「う、うん」


「それがもう失礼だから!」


 この二人の会話は聞いてるだけでも面白楽しすぎるなあ。もうお店に行くのはやめてこのまま家に連れて帰っちゃいたいくらいだよ。ふふふ。


「うーん、Sランクかあ……。私には想像もつかないかなあ」


「コレットからするとそうかもね。だからって私からしてもさっぱりだけどさー! 噂を聞いてるともうなんて言うか、化け物じみてるどころか完全に人の領域は超えちゃってるよねえ」


 ショコラさん以外のSランクの人の噂かー。実際一つも聞いたことないや。私の隣に元Sランクの人がいるんだけどそれは今は置いておこう。人の領域を超えちゃってるメイドさんとかなにそれこわい。

 そうだ、ランクと言えば……


「二人のランクはいくつなの? こういうのって聞いちゃってもいいのかな」


 服装からするとCランク以上なのは間違いないはず。……あれ? でもコレットさんってごくごく普通のお姉さんにしか見えないんだけど? おっぱい以外は。


「別にいいんじゃない? でも私たちの場合はちょっと特殊なんだよねー。ふっふふ」


「特殊?」


「ちょっとハンナ……」


 なになになあに? 気になる言い方じゃないか! コレットさんの反応からすると何か言いにくい秘密でもあるのかな?


「私たちはねえ、なんと二人合わせてCランク! エルフってなんでかCランクから始まるんだけど、そこにぎりぎり、二人で何とか、お情けで乗っけてもらってるみたいなそんな感じね!!」


「なんでそんなに自信たっぷりに言えるのよ……」


 何故かドヤ顔で言うハンナさんと、少し恥ずかしそうなコレットさん。多分コレットさんの反応が正しいんだろうと思う。ハンナさんのあの得意気な表情を見ると合ってるか不安になってしまうが。



 ハンナさんとコレットさん、二人合わせてぎりぎりCランク。その真相は聞いてみれば簡単で納得のいくものだった。

 まずハンナさんは能力的にはCランクとして申し分なし。しかし、ひどい言い方だが人格的にやや問題が残る。

 そしてコレットさんはその真逆。能力も人格も人並み、言うなればただの一般エルフのお姉さん。


 という訳で二人合わせて何とかCランクに籍を置いてもらえているらしい。どんな依頼を受けるにも二人一緒で、と言うよりはコレットさんが必ず同行しなければいけないんだとか。うん、まだ知り合ってすぐだけど分かる気がする。



 私の短い歩幅のせいで、いや、おかげで面白くも興味深いお話を色々と聞かせてもらえた。

 普段冒険者の人たちと軽く会話することはあっても、ここまで込み入った事情などを細かく聞いたことはなく、すべてが新鮮で時間があっという間に過ぎてしまった気さえする。


 ……つまりはそろそろ目的地、『踊る妖精』に到着する頃合い。とても名残惜しい……。これはまたすぐにでも二人に会いに来なければならないね! その時はショコラさんも紹介してあげよう。今から楽しみ楽しみだ。


 私がそんな事を考えてるとは露とも知らず、お店の場所を知らない二人はさらに興味深そうなお話を始めている。


「ガトーショコラ以外のSランク? 全員有名なのにコレットってば知らないの? なんで?」


「全く知らない訳じゃないけどあんまり詳しくは知らないのよ。二つ名と名前くらいね。今までは興味が無かったからそれ以外は本当にさっぱり。で、今は四人いるんだった? 『閃光』のガトーショコラ、『風』のネーブル、『役者』ブラッドと……、あともう一人」


「『魔王』ギーゼルヘーアだね。この人は噂も殆ど聞かないから知名度は他の三人に比べるとかなーり低めかもね」


「はー、ショコラさん以外の人は初めて知っ、『魔王』!?」


「あとほら、もう引退してるんだけどシラユキちゃん様のメイドさんもそう。『千剣』のバレンシアって言って一時期すっごく有名だったんだよねー」


「ま、『魔王』って……、え?」


 いや、あの、なんでシアさんのことを知ってるの? と言うかそれよりも『魔王』とかいう物騒な二つ名の人が凄く気になるんですけど!!

 あ、シアさんは一体どんな反応を……? って目を細めちゃってる怖い怖い! ミランさん明後日の方向向いてないでどうにかしてー!







続きます!


いやー、話が進まない進まない。次はさすがにここまで間は空かないと思います。

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