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その327

お久しぶ……、もう開き直ってはじめまして!

「いやー、一ヶ月なんてあっという間だったっすね、ホント残念っす。ま、二ヶ月もしたらまたアタシの番になるかもっすから、そん時はまたよろしくお願いしますよ」


「うん……」


 嫌だ嫌だと思いながらも時は無情にも進んで行き、ついにこの日がやってきてしまった。今日はノエルさんの返却日!!

 いや、ノエルさんは私のメイドさんなんだから返却するっていうのもおかしい表現だね……。再度貸し出し? 出向させる? まあ細かいことは気にしない。

 しかし、一ヶ月があっという間ですって? ここでいつもの私なら一ヶ月も、と考えるところだけど今回ばかりは同感だね。楽しい時間は早く過ぎ去ってしまうものとは本当によく言ったものだよ。


「ふふ。少し塞ぎ込まれちゃってますね。シラユキ様は甘えんぼさんですからお辛いですよねー」


 俯く私の顔を覗き込むように見てくるキャンキャンさん。私とは逆にいつものにっこり笑顔、機嫌がよさそうだ。


「あああアンタはどうしてそんなに軽く!! シラユキ様の心中をもっと察して差し上げなさい!! も、申し訳ありません! うちの馬鹿メイドが年々無礼になりまして……」


「わ、大丈夫だよー。ちょっと残念だなーって思ってるだけだから。それに、それくらいで無礼とか失礼とか思わないからね!」


 マリーさんの大袈裟な反応に少し驚かされてしまった。本当にいつも驚かされてばかりな気がする。主にツッコミ的な意味で。


「は、はい! シラユキ様はなんてお優しい……」


 訳の分らないタイミングで尊敬の眼差しを送ってくるのも本当に多いなあ……。これにはいつまで経っても慣れないよ。


「お嬢様ももっともっとシラユキ様を子ども扱いして可愛がって、甘やかして差し上げないとですよ?」


「いやいや、さすがにマリーにそれは無理な相談ってもんでしょ。コイツ自体がまだまだ甘えん坊の子供なんだし」


「そうだよなあ? シラユキ様の前じゃお嬢様ぶってるけど、どうせ家に帰ったら別の意味でお嬢様してるんだろ」


「そうなんですよ。お嬢様ってば事ある毎に、お母様ーお母様ー、って本当に可愛いんですよ!」


「やめてやめてやめなさい!! キャロルもノエルも煩いですわ!!」


「煩く騒いでるのはお嬢様だけですよ? それにはしたないです」


「アンタが騒がせてるんでしょうが!! ……はっ!? し、失礼しました。お騒がせしましたわ……」


 キャロルさんとノエルさん、それにキャンキャンさんからのニヤニヤ視線がマリーさんに突き刺さりまくっている……!! 

 まるで水をかけられた焚火のようにシュンと大人しくなってしまったマリーさん。個人的にはもうちょっとこの騒がしさを楽しみたかったが残念だ。


「ふふ、皆さん楽しそうですね。マリーさんはシラユキ様以上に反応が面白いですから、ついついからかい過ぎてしまう気持ちも分かります。私ももっとマリーさんと触れ合いたいんですけど……」


「う、うん。ほどほどにね?」


 前を進む仲良し賑やか四人組を見ながら微笑むソフィーさん。笑顔だが少しだけ寂しそうにしている。羨ましそう、が正解かも。

 ここ最近はいやらしさや変態さは欠片も感じられないので別に触れ合う程度問題はないとは思うのだけど……、その触れ合いが精神的なものと肉体的なものとで話が全然違ってくるのでやはり、程々に、と返すだけにしておこう。


 ちなみにソフィーさんの現在地は私の右隣、しっかりと手を繋いで歩いている。勿論メイドさんズとマリーさんに襲い掛からないようにと捕まえている訳ではない。

 キャロルさんとノエルさんからその事について文句を言わないのは、今日は私のメインメイドさん兼護衛であるシアさんがいないからだね。ソフィーさんは元冒険者だけど戦ったりなんてできそうにないから私と一緒にまとめて守ってくれているんだろう。多分だけど。



 さて、控えめに騒ぐ四人を見ながら現状について思い返してみよう。

 今私たち六人はリーフサイドの大通りをゆっくりと進行中。目的地は言うまでもない『踊る妖精』だ。向かっている理由もこれまた今更語ることでもない、ノエルさんのお見送り? とエレナさんのお迎えだね。

 でもこんな大勢でぞろぞろと行く必要があるのだろうか? ふふ、それもちゃんとした理由がある。

 ノエルさんがお店に戻った後、代わりに誰がメイドさん修行に来るのか。エレナさんが抜けた後、一体誰がヘルプに入るのか。その二問題が全くのノープラン状態だったからである。

 なので、補充要員交代要員を全員引き連れて行って、現地で話し合って決めてしまおう! となり今に至る。行き当たりばったりとも言う。むしろそうとしか言わない。


 その時になったらその時また考えればいいやー、と誰も気にも留めずに月日が過ぎ、実際その時がきてしまったという訳だね。

 一応私は少しは気にしていたのだけれど……、考えないように考えないようにとしていたら普通に忘れてしまっていました。いやはやお恥ずかしい。




 人目が多くて甘えたりはできなかったが、それでもメイドさん四人に囲まれて幸せ気分なまま『踊る妖精』に到着。主に囲まれていたのは私よりマリーさんの方かもしれないがそれは置いておこう。

 時刻はいつものお昼のピーク時間を過ぎた辺り。外から見た感じテラス席のほとんどが空席、出入りしているお客さんも今は見当たらない。丁度いい時間帯に着く事ができたようだ。


 私とソフィーさんを先頭にして店内へぞろぞろと入っていく。ドアを開けてくれたのはキャロルさんだったのだが、何故かドアベルが鳴らないように慎重に開けていたのが気になった。

 まさか、案内されるよりも先に席に着いておいて、いつの間に!? 的な感じで驚かせようとかそんな悪戯心が働いたとか? いやいやキャロルさんに限ってそんな子供みたいな真似はさすがに……。


 変な考えは頭の隅に追いやって、まずは店内を軽く目で一回し。見た限りフロアにいるのはエレナさんだけで、思った通りお客さんの数はまばら。暇そうで何よりだ。


「ん? あ、姫じゃん。そんな大勢引き連れてどうしたってのよ? ちょっと前に来たばかりなのに、そんなに森にあたしがいなくて寂しい? って言うかバレンシアは? 今日は一緒じゃないの?」


「ちっ、気付かれたか……」


 はた、とエレナさんと目が合ったと思ったら、矢継ぎ早に疑問を投げかけながらずんずんとこちらへやって来てしまった。……今しがたしていた筈のお客さんの対応を放り投げて。


 さすがエレナさん自由フリーダム!! そしてキャロルさんはやっぱり悪戯を仕掛けたつもりだったのか!! 面白そうだから帰ったらシアさんにも教えてあげよう。ふふふ。


「おいコラ今注文取ってただろお前! ああ、いや、アタシが代わりに行くからエレナはシラユキ様案内してそのまま話相手になってろ。それじゃシラユキ様、またお帰りの時にでも呼んでください」


「ほい了解。普通に忘れてたわ」


「あはは……。あ、うん。はーい、またあとでね」


 そう言うとノエルさんは苦笑いをしているお客さんのもとへと速足で行ってしまった。

 狙った訳ではないが、これでメイドさん交換は一旦終わったのだろうか? 入店後すぐなのにバタバタしすぎて中々頭がついていかない。もうちょっとゆっくりお話ししながらにしてほしかったものだね。


「マリーとソフィーとか珍しい組み合わせじゃない。で、どうしたってのよ? ホントにあたしに会いに来たとか?」


 改めて私の方へ向き直るエレナさん。その表情からは私の目的に心当たりは一切無さそうに見える。

 今日の予定はジニーさんを通じて三人に伝わっている筈なのだが、どうしてこんな反応を……? エレナさんのことだから多分忘れてるんだろう。納得した。


「うん、えっとね」


「その前に早く席に案内なさいですわ!! シラユキ様にこのまま立ち話をさせるつのりですの貴女は!!」


「わぅ!」「おおう、いきなり何よ?」


「お嬢様!!」


 また驚かされた! そしてマリーさんはまた怒られた! ええいもう、どこでもいいから早くお話させてー!!



 あまり目立たない奥の方の席へと案内されてやっと人心地。あのまま入り口で騒いでいたら、お店の中から外からと注目を浴びまくってしまうところだった。

 席に着いたのは私とマリーさんとエレナさんの三人。もしかしたら膝の上に乗せられるかも? と少し焦ったがそんな気配すらなかった。安心だが少しだけ寂しい。


 気を取り直して先ほどの話の続きを、まずは私がここへ来た目的から話そうじゃないか。エレナさんに会いに来たっていうのも目的のうちの一つであるから間違ってはいないんだけどね。


「あ、紅茶紅茶、ついでにお菓子も……、ソフィーちょっと行って適当に貰ってきてよ。あたしもう座っちゃったし姫の相手もしてあげなきゃだし」


「はい、分りました。ふふ、シラユキ様はキャロルさんにお任せしますね」


「はいはい任せて。エレナってホントどこでもそれよね……。あはは」


 あまりの自由フリーダムっぷりにさすがのキャロルさんも呆れ笑い。

 ちなみにマリーさんは完全に意気消沈して反省中。ツッコミ癖っていうのはどうやっても治らないものだから仕方ないと思うのに……。


 いやそうじゃなくて、そろそろお話の続きをさせてもらえませんかねえ……。でも口を挟むタイミングが全く掴めません!


「今日はアンタを迎えに来たんだけどジニーさんから聞いてない? それとタチアナかミーネのどっちかを連れて帰って、その代わりに私かソフィーティアが残る予定だったんだけどさ、その分だと……」


「何それ聞いてない聞いてない。は? 今日? いきなり言われてもあたし何にも準備してないんだけど」


 ああ、忘れてたんじゃなくて本当に伝わってなかったのか。ちょっと失礼な予想をしちゃってて申し訳ない。……ってまたそうじゃなくって! 私のセリフを盗るとはキャロルさんめ……。ぐぬぬ。

 しかし、何も聞いてない? メイドさん研修&メイドさん派遣という私的一大事を? これはいくら大好きなジニーさんと言えどもしっかりとお話しをしないといけないね!

 ……と、その前にもう一つあった。


「そうそう、バレンシアさんはキャロルさんとソフィーさんが抜けちゃった代わりに館でお仕事ですね。ついて来る気満々でしたけどリリーさんに捕まっちゃったんですよ」


「へー。自分で聞いておいてなんだけど結構どうでもよかったわ。でもありがと」


 また先に言われたー!! キャンキャンさんめー! ぐぬぬぬぬ。

 私がのんびりしすぎてるのが原因なんだろうけど、なんとなく、こう、アレな気分ですよ。うまく言葉にできないけどぐぬぬな気分。


「あれ? なんか姫拗ねてない?」


「……へ? 拗ねてないよ?」


 ちょっとぐぬぬな気分なだけで……、うん? 確かに拗ねているっていう言葉は今の気持ちにしっくるくるかも。


「なになに? ちょっと放っておかれただけで拗ねちゃってるの? ほーれほれ、この寂しんぼめー」


「うにゅにゅにゅ……」


 ニヤニヤしながら頬をグニりまくってくるエレナさん。周りのお客さんの視線も少しは気にしてください!


「シラユキ様は少し前からまた輪をかけて甘えん坊になられたんですのよ。本当にもう可愛らしくて可愛らしくて……」


「無理して大人になろうとしてエネフェア様に怒られちゃったんですよねー。ふふふ」


「ホントホント。おかげって言うのも変だけどシア姉様も大喜びってもんよ」


 キャロルさんとキャンキャンさん、それといつの間にか復活していたマリーさんからもニヤニヤ視線が送られてくる。恥ずかしいけどちょっと嬉しかったりもする。まさに複雑な気分!


「あ!!」


「にゅ!!」


「あ、ごめんごめん」


 何かに驚いたのか、その拍子に強めに頬を押し込まれて変な声が出てしまった。これは100%恥ずかしい! 何があったんだろう?


「キャロルちょっと姫構ってやってて。あたしはアイツを追い返してくるから!」


 勢いよく席を立ち、何やら物騒な宣言をするエレナさん。


「え? あ、うん、頑張れ」


「追い返す? 誰を?」


 問いかけてみたのだが時既に時間切れ。エレナさんはそのままの勢いで走り去ってしまった。


――帰れ変態!!!


――おわっ!! ちょっ、いきなり酷いですよ!


 走り去ったと思ったらすぐに聞こえてきた大きな声! さっきからもう何がなんなの!?

 まだお店に来てから十分と経っていないのに色々と起こりすぎい! 今日はいつにも増して頭も体もついて行けません! 誰か詳しく説明を!


「あ、クライドさんですね」


「あら? クライドさんですのね」


 マリーさんはついて行けてる!!? 仲間だと思ってたのに!! ……え? クライドさん!?







続いてしまいます!



本当に久しぶりすぎて書き方を半分忘れてしまっていました。

続いてしまったのでさすがに次回はなるべく早めに投稿したいです。


それでは、13卵発掘作業系のお仕事があるのでこれで。

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