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321/338

その321

また一ヶ月も経ってしまいました。

そして今回もいい分け所がなかったので短いです。


前回のあらすじ

ウサリア可愛いですぴょん!




 着替えその他いろいろ、全ての準備を整え終えた私はノエルさんに手を引かれ、玄関前の大フロアへの階段を降りて行っている。グリニョンさんは改めて準備をするようなものが特に無いらしく、先に一階で待ってくれている筈だ。あるとしたらパンツくらいだろう。


「お、やっと来た。シラユキ準備なっがいわ」


「あう、ごめんねグリニョンさん。お待たせー」


「悪い悪い。ってかシラユキ様のせいじゃないっすよね」


 言われてみれば確かにそうだ。なので謝らな……、あ、もう謝ってたわ。

 むう、文句ならシアさんに言ってね! 着替えが終わってからもノエルさんに長々と助言、いや、指示と言う名の命令を出してたからね。

 でも、私は私でメアさんたちから様々な注意事項を言い渡されまくっていて、それにもかなり時間が掛かったから私のせいでもあると言えない事もない。態々訂正する必要は無いかな。


 まったくもう、相変わらず過保護で心配性なメイドさんズだよ。ふふ。……あれ? 裏を返せばそれだけ私の信用度が低いという事ではないだろうか? 未だに転ばないようにって注意され続けてるし。ぐぬぬ。


 細かい事は頭の隅の隅に全て放り投げ忘れ、遅れを取り戻すべくさくさくと出発しようではないか! と少し急ぎ目に階段を降りきると……


「シラユキちゃーん! シラユキちゃんの大好きなお姉ちゃんが遊びに来てあげたよー!! うーん、今日もかーわいい!! んでんで、今日はグリーとどっか遊びに行くんだって? お姉ちゃんすっごく暇だからついて行ってもいい? いいよね!? 駄目だって行っても勝手について行くけどね! あ、お昼は? お弁当はちゃんと持った!? もしかして三人分しか用意してなかったりする!? それじゃ全然残念じゃないけどグリーは置いて」


「ジニーうっさい」


「うぐっふう!?」


 グリニョンさんの腰の入った右ストレートがジニーさんのお腹、鳩尾辺りに炸裂した! 百点満点の見事な一撃だ。うむ。

 打たれたジニーさんは両膝を突き、お腹を押さえてうんうんと唸っている。実に痛そうだ。しかしジニーさんは一体どこから出て来たんだろう? 普通に家の外からかな? 展開が速すぎて驚く暇が無かったではないか。


「姉御!? ちょ、お、おいグリフィルデ、そりゃちょっとやり過ぎだって! 姉御ー? 大丈夫っすかー?」


「ジニーさんは頑丈な人みたいだけど普通に痛そうだよね? ジニーさーん? な、治しちゃう?」


 いつもシアさんとショコラさんからもっと痛そうな攻撃を受けて悶絶しているジニーさんだが、あれは二人が手加減している上での大袈裟な演技のはず。だと思う。そう思いたい。

 でもグリニョンさんとジニーさんはあんまり仲がよろしくない。なので今の一撃は本気だった可能性が多分にある。


「こんな奴転がしてそこら辺に放っとけばいいんよ。てかシラユキが能力使ったら散歩どころかベッドに直行じゃん。折角仕事サボって遊びに行けるっていうのにそれはわたしが困る、だからこいつは放置で問題なし。それで、弁当はホントに三人分しかないん? ならついて来れないようにしっかり止めを刺しとかないと」


 ジニーさんに駆け寄ろうとしたらやんわりと止められてしまった。そして何やら物騒な一言のおまけつき。なにそれこわい。


「お弁当は多めに用意してあるから刺しちゃ駄目! むう、同年代のお友達なんだからもっと仲良くすればいいのにー」


「えー」


 心の底から嫌です、という顔を返されてしまった。


「えーじゃねえよ。あとシラユキ様の前であんま暴力振るうなよな、バレンシアさんじゃあるまいし」


「へいへい。んじゃさっさと行こか」


「うん。……ジニーさんは?」


「勿論一緒に行くよ!! さっきも言ったけどお姉ちゃん今日は暇で暇でしょうがなくってさー。忙しいときは逃げ出したくなるくらい忙しいのに! 実際そうなったら本当に逃げてるんだけどね!!」


 勢いよく立ち上がって参加表明、と、駄目なギルド長表明までしてくれるジニーさん。やはり演技だったか。


「ははは、全然平気そうっすね……。ま、まあ、姉御がいてくれる方がアタシ的には安心できていいんすけど。……いや? うーん……、でもなあ……」


「ノエルさん?」


「と、何でもないっす。んじゃ行きましょか」


 何か考え込んでるみたいだったけど、本当に何でも無さそうだから気にしなくてもいいかな? よし。


「はーい。それじゃ、同行人が一人増えたところでお散歩へしゅっぱーつ!」


「ういっす!」「おー!!」


「ジニーうっさい」


「なんで私だけ!?」


 あはは。ホントになんでなんだろうね? お出かけ中に色々と聞き出してみるのもありかもしれない。楽しみが一つ増えてちょっと得した気分。



 そんな私たちのやり取りを、掃除の手を止めて微笑ましそうに見ていた一般メイドさんズに、ちょっとお散歩に行ってくるねー、と手を振りながら告げて玄関の扉をくぐる。

 ちなみに一般メイドさんズというのは、一言で言うと森に住んでいる家族の誰か、だ。主に私の家の周りに住んでいる人たちに多い。


 私の家の一階と二階には誰でも自由に出入りができるので、毎日誰かしらが集まって宴会騒ぎをしている。そうなると当たり前の事だが食べ物飲み物が必要になってくる。さらにその後の後片付けや洗い物も勿論山の様に出てくる。

 そして時が経ち、基本持ち込み持ち帰りだった人々の中から何人か、勝手に厨房を使ったり、掃除道具を持ち込んできちんと掃除をしていく人が出始めたらしい。


 普通に当たり前のことじゃないの!? というツッコミは今は置いておいて、これが一般メイドさんズの始まりである。あ、勿論そう呼ばれるのは女性限定なので安心してください。

 でも、そう言われても私的にはメイドさんズっていう気は全然しないけどね。……だってみんなエプロンだけでメイド服を着てないんだもん!! まずそれが何よりも大切な事なんじゃないの!!? 誠に遺憾である。




 外に出てまず感じた。暦はまだまだ夏真っ盛りだけど今日はそこまで気温は高くなく、日差しも眩しすぎると言うほど強くはない。だからリリアナさんは今日散歩を勧めてきたんだろう。

 心の中で感謝と、帰ったら少し甘えに行こうと決めながら家の前の広場へ足を進め……


(さんぽ? しらゆきさんぽいくの?)


(さんぽ! さんぽ!!)


 られなかった。


 恐らくさっきの私の言葉が耳に届いてしまったんだろう。お散歩大好きなルシアとクラリスが尻尾をブンブンと振りながら、進路を遮る様にしてお座りをして待機していた。二匹とももう巨体と言ってもいいサイズなので実際遮られてしまっているのだが。


「なんだよ邪魔すんなよ、あ、まさかお前らもついて来たいって言うのか?」


 ペシペシと、ルシアの額の辺りを軽く叩きながら言うノエルさん。叩かれているがルシアは逆に嬉しそう。


(いくー)(いくよー!)


 それに対して、行きたい、という希望ではなく、行く、とはっきりと答える二匹。

 ノエルさんには通じていないが、どうやら二匹の中ではこれから私たちのお散歩について来ることは決定付けられているらしい。


「なーんかこの子達また大きくなってない? シラユキちゃんどうするー? 私はお弁当の取り分が減らないなら別にどっちでもいいけど」


「う? うん。ご飯はいっぱいしまってあるから大丈夫だよ」


 クラリスの背中を撫でながら聞いてくるジニーさん。撫でられているが逆にクラリスは超嫌そう。

 多分マリーさんから色々と吹き込まれているんだろう。さすがにいきなり噛み付いたりはしないと思うが、ここまで露骨に嫌悪感を見せられると少し心配になってきてしまう。


 はてさて一体どうしたものか。どうすると聞かれても二匹ふたりとももうついて来る気満々なんですけど……。

 私としてはどちらかと言うと大歓迎。二匹ふたり用のご飯も常に能力でしまってあるからジニーさんからも文句は出ないだろう。グリニョンさんは明後日の方向を向いて我関せずといった空気。どうでもいいから好きにしろという意味ですね分かります。


「マリーとキャンキャンの奴は近くに……、いねえな。アタシはシラユキ様から目を離す訳にはいかねえんだよ、お前らの面倒まで見てられっかってんだ」


(えー)(えー!)


 しかしノエルさんは反対? 拒否? とにかく今日は私のお世話で手一杯という事らしい。私に何かあったら間違いなくシアさんに殺されてしまうので、それも当然と言えば当然かもしれない。


「シラユキちゃんはお姉ちゃんが見ててあげるから大丈夫だって! 一応グリーもいるんだから心配しないしない。ノエルちゃんはちょーっとシラユキちゃんのことばかり考えすぎかもね。それじゃメイドさんとしては失格かなー?」


「あ……!! は、はい! マジですんません!」


 あらら、注意されちゃったね。ジニーさんの言葉って軽く言ってるだけに聞こえるけど、実際は何となく説得力があると言うか、その言葉以上の重みがあるよね。ノエルさんはあんまり気にしてないといいけど……。


「それじゃ二匹ふたりとも、私からあんまり離れちゃ駄目だよ? ジニーさんとライスさんに吼えたりするのもダーメ。それが守れるならついて来てもいいからね」


(はーい!)(はーい!!)


 尻尾振りを最高速度に上げ、元気に返事をする二匹。素直ないい子たちだけど土埃が舞う舞う。


「ちょっとお姉さん振るシラユキちゃんもかーわいい!! ふふふ、お姉ちゃんと手繋いで行こうねー!」


「ほ、頬が緩んじまう! って姉御ずるいっすよ!! くっそ、今日はシラユキ様を構いまくるつもりだったのに邪魔者が増えまくりやがって……」


 ああ、ノエルさんは私を構い倒したいから反対してたのね……。それならば安心。


「あん? 決まった? そんじゃとりあえずその辺で弁当広げよっか」


「まだ出発してすらいないのに!!」


 グリニョンさんはいつまで経ってもグリニョンさんだなあ……。でもそこが一番の魅力。変わってほしくないね。







続きます!



次回予告

でもやっぱりデスコが一番可愛いデス。

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