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その312

またもや間が空いてしまいました。すみません!




 うーん、ノエルさんはどこに行っちゃったのかなー? 大声で呼べば反応してくれるかもだけど、ついでに散歩すると思ってそれはまだやめておこっと。


 なんだかよく分からない方向にやる気全開になったノエルさんはあの後、シアさんに決意表明をしに行く、とキャロルさんに私を任せてどこかへ行ってしまった。

 しかしもうすぐお昼だというのに一向に帰って来る気配がない。まさか、私のお世話を禁止されて深い悲しみに包まれているシアさんに亡き者にされたのか!? と少し心配になってしまってこうして探しに出て来た訳なのだ。

 ちなみにお供はキャロルさんで、今はさっきまでシアさんといたというキノコ採取ポイントに向かっている。


「ふふ、シア姉様無茶苦茶不機嫌でしたからそれもあり得ない話でもないかもしれませんね。私もアイツに呼ばれるまではチクチクと軽い嫌がらせをされてましたから」


 私と手を繋いでいるからなのか、それともシアさんに構ってもらえていたのが嬉しいのか上機嫌なキャロルさん。……前者であってほしい。


「まったくもう、シアさんはすぐにキャロルさんに意地悪するんだから。ノエルさんにもすっごく冷たいんだよ?」


「あー、はい、ですね。嫌ってるって言うか相手にしたくないと言うか、うーん……。なんかノエル相手には昔っからそうなんですよねシア姉様って。何が気に入らないんでしょうね?」


 シアさんがノエルさんにいい感情を持っていないのは昔から、まだキャロルさんが独り立ちをする前からの話で間違いはないみたいだ。

 でも一番長い付き合いのキャロルさんが知らないとなると、もう本人から聞き出すしか手はないんじゃないだろうか? という事は問題は……。


「シアさんのことだから聞いても素直に教えてくれそうにないよね。だからって命令なんてしたくないし……」


「確かに言い出しにくい理由だったら困りますよね。シア姉様はホントに困った人なんだから……。まあ、そこがいいんですけどね」


 にへら、っとだらしない顔でにやけているキャロルさん。可愛い。

 こういう事を照れずに言えてしまうのがキャロルさんの凄いところだと思う。


 キャロルさんはシアさんのことなら何でも好きーって感じのくせにー。ふふふ、見てて面白いから黙っておこっと。




 キノコ採取ポイントはとうに過ぎ、しかし歩けど歩けど二人の姿は見つからず、このままでは広場に着いてしまうんじゃないかと思い始めた頃……


「……ん? あ、いた! いましたよシラユキ様! ほらあそこに! やっぱあの髪は目立って分かりやすいわ」


 ついに目標を発見です! 発見したのはキャロルさんだけどそれは置いておこう。


「う? どこに……? あ、いたいた! ……あれ?」


 ノエルさんの桃色鮮やかな髪は目立つ。確かに目立って分かりやすいのだが……。


「シラユキ様の予想が的中してしまいましたね。生きてるかなアイツ……」


「さ、さすがに生きてるとは思うけど……、また怪我させられたりしてそう! キャロルさん早くー!」


「冗談ですよ冗談。ふふ、可愛いなあ」


 進行方向からやや逸れた草むらの陰、そこに見えるのは間違いなくノエルさんのピンク髪。問題はその髪が地面に広がっちゃってる事かな。

 それはつまり……、ダウンしてます倒れてます! 早く介抱しに行かないとー!! 相手があのシアさんなんだから笑えない冗談だわ……。



「ノエルさん大丈夫!? 何があったの!?」


 ……反応は、なし。ちーん。


 急いで駆け寄るとそれはもうひどい状態、いや、体勢だった。

 両膝を地面に着いた状態で上半身だけ前に倒れ、受身を取る筈の両手はお腹の辺りを押さえている。さらには、うぐぐ、といったうめき声も小さく聞こえてくる。


 まずは生きている事に一安心。しかしこの体勢ははジニーさんもたまにしてるね。……させられてるの間違いか。


「どしたのよ一体。……腹? あ、もしかして刺された?」


「刺された!?」


「刺されてね……!! いてえ……」


 よかった違った! ビックリさせないでもらえませんかねえ……。


 キャロルさんの不穏な言葉に反応してがばっと起き上がり、ツッコミを入れようとしたノエルさんだったのだが、お腹の痛みの方が強かったみたいで力なく横に倒れてしまった。これもジニーさんのおかげか見慣れてしまっている。


 痛そうではある、しかし外傷は無さそうなのと、一応ツッコミを入れる元気(?)はあるみたいなので落ち着いて話を聞いてみよう。


「どこが痛いの? 治しちゃう?」


「い、いや、いいっすよ、暫くすれば引く痛みっすから。それに今日はもう一回使っちまってるんですから魔力も心配っす」


 むう、そう言われてしまうと無理やり治す訳にもいかないか。でも私の魔力より自分の体の心配をしてほしいな!


「だから何があったってのよ? ああ、シア姉様に何かされたってのは何となく分かるからそこはいいわ。もしかして毒キノコでも食べさせられた?」


「毒キノコ!?」


ちげえって! いてえんだから大声出させんなよなまったく……。おー、いてて……」


 だから驚かせないでもらえませんかねえ……。


 ツッコミを入れつつゆったりとした動作で上半身を起こし、胡坐をかいて座るノエルさん。

 お腹をさすって痛そうにしているのでまだ立ち上がれるまで回復はしていないんだろうと思われる。なのではしたないと注意するのは控えよう。


「どうせ大袈裟に痛がってるだけっしょ? はいはい、さっきからシラユキ様が心配顔されてるんだからサクサク事情を話す!」


 キャロルさんが半分呆れ半分怒りながら説明を促す。シアさんがいないのでお姉さんモードだ。実際キャロルさんの方が年上で先輩メイドさんっていうのもあるのかもしれない。


「っと、すんませんシラユキ様。いやまあ、簡単に言うとですね、バレンシアさんにちょっかいかけたらめっちゃ鋭い膝蹴りを貰っちまった訳なんすよ」


「分かってたけどやっぱりシアさんだった!」


 シアさんは私が見てない所だとかなり暴力的に……、うん? ジニーさんが膝蹴りを受けてるのは何度も見てるね。

 つまりシアさんの中でノエルさんはジニーさんと同じ扱いにカテゴリ分けされているという事か! ここには何か秘密が隠されている予感がするわ。


「ちょっかいってアンタ……、自業自得じゃん。シラユキ様、こんなの放って置いて帰りましょうか」


「え? さ、さすがにそれは……。どう? ノエルさん、立てる?」


「あ、はい、何とか。それじゃ帰る道すがら詳しく話しますよ。手、どうぞ」


 ノエルさんは、よっこいせ、という声が聞こえてきそうなくらいの重い動作で立ち上がり、私に手を差し出してくるが、


「何でアンタが手を伸ばす!! シラユキ様と手を繋ぐのは私!」


「いてっ! いきなり何しやがる!!」


 私がその手を取るよりも早く、案の定キャロルさんに叩き払われてしまった。


「午前中シラユキ様にべったりできてたんだから今くらいは遠慮しなさいよ! 遠慮を!!」


 どっちかと言うとべったりしてたのは私だけどね。ふふ。


「んだよ、メイド修行はとりあえず今はだけど一ヶ月しかないんだぞ? 真似事でも大恩人にお仕えできる感動を察してお前こそ遠慮しろよな」


「ふん、タチアナとミーネならともかく誰がアンタなんかの心情を察してやるもんですかってのよ」


 ふん! とそっぽを向き、私の手を取って歩き出すキャロルさん。見てても聞いてても面白いのでこの口喧嘩? を止めるのはやめておこう。


「師匠に似て性格(わり)い奴! そういやお前タチアナには何でか優しいよな? 何でだ?」


「あの子成人しててもまだ子供みたいなもんなんだから当ったり前でしょ。まあ、見た目が好みってのもあるけど」


「うへ、お前が言うと生々しいな……。でも確かに可愛いよな、タチアナ目当てのお客が一番多いんじゃないかって思うしよ」


 ほほう? タチアナさんは見た目も言動もすっごく可愛い人だもんね。さらにおっぱいも大きいという……。これで人気にならない方がおかしいか。


「アンタの薄着目当てで来てる人も多いんじゃない? スカート短くてちょっと動くとパンツが見えるんじゃないかってのもあるってきっと」


「そういう視線も多いっちゃ多いなあ……。つか一番人気はやっぱお前だろお前。手伝いに来てくれるのはいいんだけどその日はお客がやけに増えるんだよ」


「マジで? ま、まあ、お客さんが増えるのは悪い事ではないでしょ。はあ、男にモテたところで嬉しくも何ともないわ」


「ははっ、バレンシアさんはもう完全にシラユキ様しか目に入ってないもんな。お前はそうでもないけどあの人は随分と変わったよな。……その、あれだよ」


 シアさんはもうちょっとキャロルさんに優しくしてあげてもいいと思うんだけどなー。冒険者時代のシアさんのお話はいつになったら教えてもらえるんだろ?


「あれって……、雰囲気とか? と、シア姉様で思い出したけどアンタ一体シア姉様に何したのよ?」


「ん? 何って……、あ、そうだったそうだった、それを話すんだったよな。ええっと、まずはどこから……」


 むむむ? 話を綺麗に逸らされた気がする! 逸らされたと言うか戻されたんだけどね。やっぱりまだまだ教えてもらえないかー。ざーんねん!

 残念は残念だけど二人の面白いやり取りが見られたからよしとするかな。ふふふ。シアさんから膝蹴りを受けてしまった理由も気になる事だしね。



 帰り道で聞かせてもらったお話をまとめると……。


 命知らずなノエルさんはシアさんにいきなり、私のお付メイドさんを目指す、と宣言してしまったらしい。なんて勇気のある人なんだ……。

 しかしいくらシアさんでもそれだけで危害を加えてくるなんて事にはならず、逆に「精精頑張りなさい」と応援(?)されてしまったらしい。

 さらに、どんな分野のものでもいいので何かひとつでもシアさんに実力を認められれば、なんと! 名前で呼んであげると約束までしてもらえたんだとか。


 シアさんなりに歩み寄ったっていう事なのかな? だったら嬉しい事だね。



 うん、ここまでは把握しました。イイハナシダナー。


「それで、どうして膝蹴りなんてされちゃったの? あ、もう痛くない?」


「はい。あ、いや、少しは痛みも残ってますけどそこまででもないっす。心配お掛けしちまってすんません」


「コイツは結構頑丈な方ですから大丈夫ですよ、ただ大袈裟に痛がってただけですって、多分。んで?」


「うっせ。それでその後、認めさせるっても何をしたらいいんだ? って首をひねって考えてたんすけど、そこであのヒラヒラした短いスカートが目に入って……」


「う、うん、シアさんスカート短いよね。もう大体分かっちゃったけど、それで?」


「今朝のリベンジも兼ねてめくってやる! って手を伸ばした瞬間ズドンっすよ。あの人後ろ向いてキノコ探してた筈なのに何でああも一瞬で攻撃に移れるんだか……」


「やっぱり! それくらいで反撃しちゃうなんてシアさんひどい!」


「不意打ちでスカートめくろうとする奴の方がひどいですよシラユキ様。一体何を認めさせるつもりだったのよアンタは……。でも、確かにあのシア姉様のスカートをめくれたって言うなら誰にだって実力を認めてもらえそうよね」


「だろ? 膝が飛んでくるとは思いもしなかったけど結構いい案だと思うんだよな。とりあえずこの線で行ってみるかー」


「どの線!? 何の実力!?」



 何のでしょうねー、あははー、と二人にはいい笑顔で笑われてしまった。

 ただのノリのいい友達同士での会話のやり取りだっただけで、私をからかって遊んでいたわけ訳ではなさそうだ。と思う。


 しかしノエルさんは本気じゃないといいんだけど……。シアさんのスカートをめくろうだなんて本当に命がいくつあっても足りないよ! 勇気と無謀を取り違えてはいけません!







地味に続いてしまいました。もう一話くらいつづくかも?

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