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その31

「シラユキ、隠してる事、話して? 今聞いておかないと、絶対に私たち、あなたも、後悔する事になる。かもね?」


「どっちだよ……」


「エネフェアの勘は当たる、話すんだシラユキ」


「うん、いいよ?」


「あれ? 軽い!?」


 今日は姉様がツッコミ担当だ。楽しいわこれ。






「私、実は六回死んじゃってるらしいの」


「え? 死ん、六回!?」


 姉様いい反応だ。っと、母様の私を抱きしめる力が強くなった、早く続けなきゃ。


「って言ってもね、記憶は一切無いの。これは説明難しいな……」


 凄く簡単に説明できる言葉があるんだけど、こっちじゃ通じないしなあ……


「私ね、十六歳の、ある時点、その時点の状態を保存? されていたのかな? それで」


「どこのどいつだ!!! 女神か!? 叩き潰す!!! 行くぞエネフェア!!」


 うわあ! 父様一瞬で理解して一瞬で切れたよ! 凄いわこの人……、!? 母様痛い! 抱きしめる力が強いよ!!!


「違う! 違うからね!? 女神様は助けてくれたんだからね!? 私で遊んでた人はもう死んじゃってるからね!?」


「何? そうなのか……。すまん、取り乱した。申し訳ない女神よ。そして礼を言う」


 執務室に飾ってある白雪草に向かい、謝罪とお礼を言う父様。



「お父様とお母様は今ので全部分かったの? その反応からすると、私たちは聞かない方がいいのかな……」


「大丈夫だよ? 碌でもない話だけど。私自身は全く覚えてない事だしね」


「俺も詳しく聞いたら多分切れそうだな……。シラユキに何かしてた奴はもう死んでるんだな?」


「うん。女神様がね、やっつけてくれたの」


「そ、っか……。ありがとう、女神様」


「女神ってやっぱ凄いな。神様だもんな。ありがとう」


 二人とも花に向かってお礼を言う。なんかシュールだね。






 私は通算すると、六回死んでいる、らしい。らしい、なのは女神様に聞いただけだからだ。記憶は全く無い。


 十六歳の普通の女子高生だった私は、ある存在の暇つぶしに選ばれた。私がいた世界の神様、カミサマのような存在だろうか?

 女神様が言うように、世界問わず、生まれ変わりという物は無い。死んだ人はそこまでで終わりだ。先など無い。


 ならば、どうする? 私、というおもちゃで何回でも遊ぶためには? 

 


 おもちゃ、遊ぶ、ゲーム。セーブ&ロード。



 十六歳時点でセーブ、死んだらロード、だ。私の住んでいた世界のカミサマはそういう力が使えた。使えてしまったらしい。


 神様は世界によって創られるものだ。その世界の住人のイメージで。カミサマなんて言うモノは、漫画や小説、アニメ、それにゲームでは割とよく登場する。そこから力を得たんじゃないか、という話だ。


 こっちの話はもういいか、ここまでにする。



 そして、異世界トリップ、という概念。自分の世界に住まう人々を、異世界に飛ばす、という力も得てしまっていたようだ。


 後は簡単だ、セーブしてから異世界に飛ばす。死ぬまで観察して楽しむ。死んだらロード、また別の世界へ。

 時には自分に与える事ができる能力を与え、普通ではない生活を送らせ、また楽しむ。

 セーブ後になら何を与えようが、ロードし直してしまえば、また新しい能力を与えて、違う人生を観察できるからね。



 そして七度目のロード、今のこの世界に飛ばされようとしていたとき、女神様に見つかった。

 私は覚えていないが、カミサマを消滅させてしまったらしい。女神様凄いわマジで、超強いんじゃね?


 私を元いた場所へ戻す事はできないが、自分の世界になら迎え入れることができる。六度の死を経験した私にはそれが可能らしい。そこの意味は全くよく分からない。経験はして無いんじゃないのかな? ロードされた体だし。



 後は簡単でいいか、能力を貰い、能力使用のためのアニメや漫画、ゲームの記憶の保護。その代償としてその他の記憶を奥底に送られた。送られただけで封印や抹消はされていない。取り出そうにもできないんだから同じ事なんだが、消してしまうと折角保護した部分の記憶が理解できなくなるらしい。それもそうか。



 幸せになりなさい。という最後の一言の後、私はシラユキとしてこの世界、この家族の下に生まれた。


 なりなさい、という意味は、後は自分で頑張れって言う事だね。これ以上のサポートは無しよ? と。

 充分すぎる程色々なものをもらってしまったのだが。



 この激甘な家族とか、ね?






 能力云々以降の話はしていない。話す意味も無いし、何より最後のは、ちょっと恥ずかしい。



「改めて礼を言う。女神よ、本当に、本当に感謝している。この子を救ってくれた事を、シラユキを私たちに授けてくれた事を、心から、感謝する」


 うひゃー。父様が感動してる? こうしてるとちゃんと王族って感じよねー


「危ねえ、聞いてて切れそうになったわ。でも切れる相手ももういないんだよな。イライラするな……」


「落ち着いて、お兄様。その分シラユキを可愛がればいいのよ」


「そうよ、ルー。これまで以上に可愛がってあげなさい。もちろん皆もね?」


 激甘家族が、超激甘家族に進化しました。






「六回の人生か、ちょっと気になるよな。想像もできん」


 兄様が言う。エルフだしね、人間の生きる時間はあまり理解できそうにないか。


 あ、今の今まで忘れてたよ。アレがあったね。


「兄様、これ、読める?」


 私は六冊の本を、何も無いところから取り出す。


「本か……、今どこから出した!?」


「ひみつ。読める?」


 六冊とも手渡す。兄様はそのうちの一冊を開き……


「何だこれ? 白紙じゃないか」


「あ、やっぱり読めないんだ」


「ルー、閉じろ。早く閉じろ。それは恐らく、シラユキの生きてきた六回の人生の本だ。そうだろう?」


 兄様は慌てて本を閉じる。あんまり乱暴に扱わないでよ。それただの本なんだからさ。破れたりも普通にするんだよ。


「何てもん見せやがる! いや、読めなかったんだけどさ」


「うん、そうだよ父様。私の六回の人生録。その本は五百年以上生きてないと読めないらしいの。父様と母様には読めるんじゃないかな?」


 五百年以上生きてから読まないと、心が持たない、らしい。一体どれだけ酷い人生送ってきたんだろうね私は……


「そっちの赤っぽい二冊は読んでも大丈夫らしいんだけどね? 黒っぽい方の四冊は、例え千年生きたとしても読まないほうがいいんだ、って、ええ!?」


 父様が黒っぽい本の一冊をパラパラとめくり、顔をしかめ……、しかめ、というか歪め、かな?




 四冊とも焼いた。




「父さん、どうした?」


「ウル?」


 父様のいきなりの行動にみんな困惑している。元々読む気は無かったが、ちょっと内容が気になってしまう。



「すまん、暴れてくる」


「え?」


「あ、お父様!?」


 明らかに普段の父様とは違う空気を纏い、窓から飛び出して行ってしまった。





「どれだけ凄惨な内容だったんだよそれ……」


 兄様が、足元に落ちた灰に目を落としながら言う。


「千六百年以上生きてきたウルでさえあの反応よ。五百年生きたシラユキが読んでいたら……」


「読むつもりは無かったんだけどね、焼いちゃって正解だったかな?」


 想像したくないね。前世と合わせて二十六年程度の知識じゃ、想像もできない内容なんだろうが……



「お母様、シラユキちょっと抱かせて」


「ふふふ、いいわよ。シラユキ、ちょっと降りてね」


 母様の膝の上から降ろされ、今度は姉様に抱き締められる。


「この事はもう話さない、聞かない。みんな、それでいい?」


「ああ、さっきも言ったが、必要になったらその都度、その時、話してくれればいい」


「うん。別に、気になったら聞いてもいいよ? もう隠すような事は何も無いし」


 後は能力くらいか? これも別段隠しておく様な事でもないね。




「ここにいる皆、今日の事は他言無用。いいわね? 問題は無いと思うけど、変な噂は立って欲しくないからね。破っても特に罰は無いわ、そこは安心して頂戴」


 こう言われた方が、進んで喋ろうと思う人は少なくなると思う。母様うまいな。

 むしろ、飛んで行った父様を含め、十人の内緒話だ、と喜んでいそうだ。




 考えてみれば、結構重い話をしていたと思うんだが、この世界の住人はみんな凄いね。


 私の家族が凄いのか?





シラユキの転生の経緯や理由はこんな感じでした。能力の説明はまた次の機会に。

シラユキ本人が全く能力を必要としてませんから、説明回を書くことができない……


何だコレ全然分からないぞコラー、と言う方はお気軽に感想で質問をどうぞ。

通常の感想も書いて貰えると嬉しいです。


お、お願いします……



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