その30
また二話投稿です。度々すみません。
先にその29の方へお願いします。
「ま、まずはシアさんのお話、聞きたいな?」
母様の膝の上に完全に捕まってしまった。全部話すまで逃げられそうも無い。
「別の世界の人間種族、だったか? 話してくれるか? シラユキ」
「スルーされたよ……。うん、話しちゃおっか。でも前世の記憶って言っても、知識ばかりだからね。どうやって生きてきたか、とかは覚えてないんだ」
これは嘘、覚えてはいるが、思い出すのが難しいだけだ。
「な、なるほどね、シラユキがよく考え込んでるのって、そういう事だったんだ」
姉様も少しは落ち着いた様で、話に参加してくる。
「すごーく簡単に説明しちゃうね。私って女神様にこの世界に招いてもらったんだ」
「あ、それは知ってるわ」
あ、知ってるんだ。さすが母様。 え?
「知ってるの!?」
「あ、ごめんね? 知ってるって言っても、女神様が授けてくれた子供、って言うことだけよ? でも安心してね、私たちの子供であることは間違いないわ」
さすが母様だ、私が変なことを考えてしまう前に説明してくれたよ。
「あなたを授かったと思うその日にね、夢に見たの。そこで名前をシラユキと名付けてくださってね? それだけの事よ。あなたは私とウルの愛のこう、愛の結晶よ」
愛の行為のって言おうとしてた! エロフめ!!
「それは俺も初耳なんだが……。頑としてその名前以外認めなかったのはそういう事だったのか」
父様も知らなかったとは。母様も、もしかしたら悩んでいたのかな。
「う、うーん。みんな全然驚いてくれないなー……。驚いて欲しいわけじゃ無いんだけど」
普通、普通過ぎる。大慌てで追求されたいとは思わないが、もう少し、ねえ?
「驚くのはいつでもできるのよ。まずは聞かせて頂戴?」
やっぱりみんな凄いや。さすが最強のほほん種族だね。
「聞かせるって言っても、もう無いかも?」
転生した経緯とか話したって意味無いしね。本当にもう話すことは無いや。
「あら? もう無いのね」
「いやいや! まだあるでしょ!? 女神様に招いてもらったとか、別の世界とか……」
日本の知識はあっても、それを見てどう思った、とかまではなかなか思い出せないのよねー
「ま、その辺はどうでもよくね?」
「だな、女神のことは確かに気になるが、うむ。どうでもいいか」
「そうね、どうでもいいわよね」
「あっれー? 私がおかしいの?」
「ユー姉様の反応が普通だと思うよ……」
「気になったらその都度聞くわ。今日はなんかもう、もういいや……」
そして姉様は考えるのをやめた。
「はい、結論を出します。シラユキはシラユキ、見たままの子供、私たちの愛する娘、大切な家族よ。前世の十六年分の記憶、なら少し変わっていたのかもしれないけれど、知識、だからね。ま、それでも私は気にしないけどね? 見た目が子供で中身が大人って言うのも、面白そうだし」
「うむ。そうでなければ俺と一緒に風呂などとても入れんだろう。俺はシラユキが成人しても一緒に入るつもりだが」
父様とは未だにほぼ毎日一緒に入ってます。もうアレも見慣れたよ。最近は姉様とが多かったけどね。多分私も、成人しても一緒に入ってると思う……
「なるほど、知識過多の子供なのね。たまに子供っぽく見えないときもあるけど、基本は子供よねこの子」
「たまに見た目以上に子供だよな」
「子供子供言わないでよ。子供だけどさー」
あはは、と笑いが起こる。結構重要なお話しの筈が、あっさり終わってしまったよ……
「それじゃ、次はシアね」
「覚えていましたか」
そうだ! シアさんも同じだったんだっけ。私と同じ、前世の記憶持ちなのかな? まさか同類の転生者?
「シアさんも、女神様に連れてきてもらった、とか?」
「いいえ?」
「あ、それじゃ、この世界の人が普通に生まれ変わ……、うん?」
女神様は言っていた。生まれ変わり何ていうものは無い、と。人は死んだらそこで終わりなんだった。
「それも残念ながら違いますね。ただ私も、皆様には決して自分からは言えない重大な秘密、という物を持っている、という訳でして」
「シアさん殆ど謎じゃない! 謎メイドじゃない!!」
「メイドですから」
そして綺麗なお辞儀。
「聞きたい聞きたーい!」
「ほら見ろ、子供だ子供」
「兄様うるさーい!」
「子供ね」
「子供よね」
「可愛いなあシラユキは……」
「あー、っと、ごめん。盛り上がってるところ悪いんだけどさ、どうしても気になっちゃった事があって。シラユキ、まじめな話、していい?」
「フラン!?」
急に話しに入ってきたフランさんに驚くメアさん。王族の談話中に割って入るとか! とか思ってるんだろう。誰も気にしないってそんな事。
「うん。なあに?」
「前世が十六までっていうことはさ……、その、さ、あれよ」
ああ、それの事ね。
「大丈夫、死んじゃったわけじゃないよ。だから安心してね? ありがとうフランさん」
「よよよよよかったー! さすがに、一度死を経験してる、とか言われたら。私泣くわよ」
超安心された。確かにそこは気になるよね。
「ありがとうね、フラン。私も気になってはいたんだけど、聞く勇気までは持てなかったわ」
「すみません、エネフェア様……」
全くみんな、優しいなあ……。今のは本当なんだけど、嘘でもあるの。ごめんね?
「さ、おやつにしよ? 今日はみんなで食べよー?」
「あ、こいつ今話逸らそうとしたぞオイ」
「あっさりバレた!?」
続きます。
続きはまた明日の0時に。
30話にしてやっと転生のお話、のんびりすぎる……
このお話の後も十歳編はまだまだ続きます。