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その3

一つのお話をいくつかに分けて投稿する場合が多くなると思います。

キリのよさそうなところで終わるようにはしていますが。

 兄様と一緒に花畑の近くまでやって来た。もうここからでもいろいろな花の香りが流れてくるのがはっきりと感じ取れる。


 鼻がつんつんするわ。鼻がツンツンして、鼻水がデレっと出るわけね。なるほどこれが噂に聞くツンデ……、ふう。


 意味不明な考えは思考の隅に追いやる。そのまま暫く歩くと、ため池の横から魔法で水をまいているコーラスさんが見えてきた。遠目にも分かるあの巨乳は間違いない。


「コーラスさーん!」


 手をフリフリ大きな声で呼びかける。子供は元気が一番なのだ。よーし、このまま胸に飛び込むか、と歩みを速める。

 私の呼び声に気付き、コーラスさんは水をまく手をそのままに振り返った。……え? そのままに?


 時間がゆっくりと流れるような錯覚を受ける。コーラスさんの右手から放射線状に、私と兄様がいる辺りまで水が飛んで……


「きゃー!」


「冷たっ! こらやめろ! 俺はともかくシラユキを濡らすんじゃない!!」


 冷たい冷たい! 気持ち良いわ。兄様もこれくらいで怒らなくてもいいのに……。


「あーらごめんなさい? 何か胸にいやらしい視線を感じたものだからつい」


 兄様の声で水をまくのを止め、ゆっくりとこちらに歩いてくるコーラスさん。


 気づかれてた! しかしこれは見入ってしまうわ……、一挙一動ごとにたゆんたゆん。


「ごめんなさーい。コーラスさんの胸大きくて、ついつい目がいっちゃうんですよねー」


「だよなぁ……。お詫びに揉ませうわやめろ! かけるなかけるな冷たい!!」


 おお、兄様だけ狙い撃ちになった。水をまく範囲も自由に変えられるって凄いなー。私も早くこんな魔法を使えるようになりたい!



 兄様は自分で、私は一緒に付いて来ていたメイドさんに髪を拭いてもらう。


「まったくルーディンは……。姫も姫よ? 何回も言ってるのに……」


「うう……、だって大きいんだもん……。羨ましいですよー」


 わ、私もこれくらいになりたい! 拝んでおこうか。ありがたやありがたや。


「あ、そっちじゃなくてね」


「はい?」


 そっち? どっち?


「まだ敬語が出ちゃうのね、お姉さん悲しいわ。お友達に敬語を使われちゃうお姉さんかわいそう……。泣いちゃうんじゃないかしら、しくしく」


 両手で目の下辺りをこすりながらわざとらしく嘘泣きを始めるコーラスさん。


 なんというわざとらしい嘘泣き。しくしく声に出す人初めて見たよ。


「あれ? また敬語出てました? あ、出てるや……」


 うーん、これはしょうがないよね。私中身子供じゃないし、いくらお友達といっても年上の人には敬語出ちゃうのよね。これも元日本人のサガか……。


「こーんな小さな頃から敬語なんて使わなくていいのよ。どうせこっちのと同じで外交とか出ないんでしょ?」


「こっちのとか言うなよ……。まぁ、合ってるんだが」


 兄様はいつまでもそのままの兄様でいてください。あんまりカッコよくなられると色々と困っちゃうわ……。


「うーん? 私は分からないかなー? 大きくなったらやりたくなるかもしれないし」


 首をかしげる。もっと子供っぽく話してみるかね。敬語も意識して話さないように努めてみよう。


「何この子可愛い……。でも、礼儀正しいのはいい事だと思うわよ? こっちのはもう明らかに手遅れっぽいしね」


「ぬう、反論できない……」


「あははは」




 兄様と手を繋いで、花畑の周りをゆっくりと散歩する。

 花の名前には詳しくないどころか全くと言っていい程知らないから分からないが、本当に色々な種類の花々が咲き乱れている。

 さらに凄い事に、コーラスさんはこの花畑全域をたった一人だけで管理しているらしい。


「凄いですよねー、お花畑。あ……」


 おっとまた敬語が出ちゃってるよ、難しいねなかなか。


「姫はそれでいいのかもね。無理に変える事もないかな……、ふふ」


「可愛ければ何でも良いんじゃないか?」


 そう思うのは兄様だけで、……違うな。私の家族はみんなそうか……。


「なるほどね。敬語幼女に興奮する変態兄か……。ここで亡き者にしておいたほうがよくない?」


 敬語幼女萌えであるか。うん、有りなんじゃないかな。ロリババアとか呼ばれてるキャラも結構好きな分類に入る。


「ごめんなさい、コーラスさん。ルー兄様はもう治らないの、手遅れなの……。でも、見捨てないで上げて!」


「そうよね……。こんなのでも姫のお兄さんだし、こんなのでもこの国の王子だしね……」


 そう、こんな兄様でも王子なのよ。それに、コーラスさんの手を汚させるわけにはいかないわ。


「こんなのこんなの言うなよ……。シラユキも何気にひどいぞ?」


「あ……、ごめんなさい、ルー兄様……。ごめんなさい……」


 しまった、ついつい言い過ぎちゃった。コーラスさんと一緒にいるとなんでか調子に乗っちゃうのよね……。ノリのいい人だからかな?


「あ! 怒ってない、怒ってないぞ! あ、あ、あ! 泣くな! 泣かないでくれ!!」


 なにやら急に焦り出す兄様。私が泣き出したと思ったらしい。


 この程度で泣かないのに、もう……。あれ? 泣いてるわ私、子供だなー。


「うっわ、妹泣かしてるわこの馬鹿兄。これはエネフェア、様、に報告を入れた方がいいわよね?」


「うお! やめろ!! 母さんに言うのはやめてくれ!!」


 何その反応? 母様に怒られるのがそんそんなに怖いのかな。あんなに優しい母様のどこが怖いと言うんだろう兄様は……。




「泣かすつもりは無かったんだよ本当に。ごめんなー? お兄ちゃん怖かったなー?」


 兄様は私を抱き上げて優しくあやしてくれている。私はまだスンスンぐずっているが……。


 体と精神の違いか、ずれか、たまに暴走するのよね。難儀な体だわ。


「しっかりしててもまだ五歳なのよ? んー、姫は多分私の真似しちゃってるだけだから、怒るなら私を怒りなさいって、処罰でも何でも受けてあげるから」


 処罰!?


「わ、わるいのはわたしなの。コーラスさんはわるくないのー……」


 兄様にぎゅーっと抱き付きながらお願いする。こんな程度で処罰されるなんてありえない。


「ああ、分かった、じゃない。……誰も悪くないから、怒ってないからな、安心しな?」


「か、可愛い……。皆が甘やかすの理解できるわねホントに」


「こら、原因が」


「あっと、ごめんなさい。どうしようかしらね? 罰する? 一応不敬罪よね? この国でその罪で罰された人いないんだけどさ……。姫泣かした原因となるとさすがにね」


 隣人皆家族を地で行ってる国だからね。不敬罪なんてあって無いような物だ。しかし、私を泣かすくらいの事がどれほどの罪になると言うんだろう?


「不敬罪って……、国民は家族だぞ? 誰がんなことするかよ。それに、泣かしたのは俺だよ」


 さすが兄様、普段は軽いけど実際はちゃんとしてるのよね。ホントよ?




「ふ、ふたりとも、えーと……」


「どうしたシラユキ。誰もお前の事怒ったり、嫌いになったりなんてしてないからな? 大丈夫だぞ?」


 あれ? なんて言うんだっけ……? 言葉が出てこないや。たまにあるのよねこれも。


「えーと、えーと……。だいすき……」


 オウフ。はっ、はっ、恥ずかしい!! 何言ってるのよ私はー!! やばい、顔真っ赤じゃないかな今!? とりあえず兄様に抱き付いてごまかそう。


「ぐはっ!! なんて破壊力だ……」


「くっ!! この私がっ!! あ、私にも抱かせてよルーディン」


 あー、駄目だ。体のほうが落ち着くまで黙って抱きついておくか……。



「駄目だ抱かせん! お? そうだそうだ。お前への罰はそれでいいな」


「そんな! 私に死ねと言うの!! 胸揉んでもいいから! 今なら三分揉み放題!!」


「よし、好きなだけ抱くがいい!!」




 楽しそうだなぁ……。落ち着いたらまたお花見ようね、兄様。







2012/8/1

全体的に修正と書き足しをしました。

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