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295/338

その295

 終始わくわく気分のままお手紙仕事をささっと終わらせ、休憩もそこそこに早速残る二人の働きっぷりを見学しに行く事にした。自分でも楽しみにしすぎだと思うけれど本当に楽しみだったのだから仕方がない。

 しかし、残念ながらヘルミーネさんは本人たっての願いもあり別行動となってしまった。仕事を教える筈のシアさんが私について来てしまうのだからこちらも仕方がない。後の事はメアさんとフランさんに任せておけば安心だ。


 さて、二人はどこで何のお仕事をさせられているのやら。ふふふ。



 道中出会ったウルリカさんとエレナさんに二人を見ていないか尋ねると、ノエルさんは一階の宴会場辺りで見たとのことだが、タチアナさんとソフィーさんについては姿を見かけてすらいないらしい。

 とりあえず片方だけでも居場所が判明したのはありがたいので、尻尾をモフらせてもらいながら素直にお礼を言う。朝から畑仕事に出ていたらしく土とお日様のいい匂いがする。抱きつきたい。


 ウルリカさんは秋祭りが終わるまで森で暮らしてもらう事になっている。少しの間だけと言っていたのにさすがに一ヶ月以上は長すぎるのでは? と遠慮されてしまったが、父様たちにとっての少しの間とは五年から十年くらいなので何も問題はない、と無理矢理納得させられてしまったらしい。有無を言わさず、と言った方が正しいかもしれない。

 でもずっとお客様扱いでのんびりとしていては体が訛ってしまうので、それならば運動がてら畑仕事の手伝いにでも出るか、となった訳だ。健康的な生活をしているね。


 このままウルリカさんに甘えまくるのもありなんじゃないか!? と撫でられながら考えたが、断腸の思いで体を離し、また後でねと別れた。冬毛に変わっていたら離れられなかっただろう。あのモフモフ感には抗えない! 抗いにくい!




 手に入れた情報を頼りに一階へ降り、大広間にたむろしているみんなに挨拶をしながら宴会場へ向かう。ここは本当は宴会場ではなく大勢が入れる会議場の様な部屋だったらしいが……。


 私の家の一階と二階は誰でも自由に出入りができるので、こうして毎日誰かしらが何の用事も無しにやって来ては談笑している。そしてある程度以上人数が集まると宴会を始めてしまうのだ。

 しかし家の前の広場や大広間で騒がれても邪魔なだけだから、とりあえず会議場にでも押し込んでおけばいいか、とむかーし昔にリリアナさんが決めたんだとか。どうせ会議なんてこの先開く事はないだろうし、折角の大部屋を使わずにおくのもなんだからこの際宴会場にしてしまえ、という流れなんだろう。合理的だ。(?)



 私を構おうとちょっかいを掛けまくってくるみんなを振りきって宴会場に入る。今は掃除中らしいのでそれ以上は誰もついては来なかった。


 ふう、助かった……。どうしてみんなあんなに私を構いまくりたがるんだろうね、不思議。まあ、嫌ではないんだけどいい加減可愛い子供扱いは少し控えてもらいたい。やめろとまでは言いません。


「だから今は掃除中だっつってんで……、あ、シラユキ様とシア姉様でしたかすみません。どうかしたんですか?」


 宴会場に入り一息ついたところでキャロルさんに話しかけられた。

 今の反応からするとここを使おうとしてる人たちが何組か来ていて、それをその都度追い返していたんだろう。まだお昼前だというのにまったく……。


「特に用って訳じゃないんだけど、ノエルさんは何してるかなー? って様子を見に来たの」


「掃除っす! 今日は一日中掃除の予定っす!」


 ノエルさんの耳にも届いたらしく元気に答えられた。


 今はモップ掛け、かな? お酒とかおつまみとかをこぼす人は結構いるからここの床はよく汚れるんだよね。いくら注意しても父様がその筆頭だからどうしようもないのが悲しいところ。


「ふむ、見た感じ手馴れている様ですね。雑務依頼での経験が活きてきているという訳ですか、面白くない」


「シアさんは何にでも面白さを求めないの! ノエルさんは心配なさそうだねー」


 心底つまらない、期待外れだという空気を醸し出しているシアさんを軽く注意してからノエルさんの仕事ぶりを観察させてもらう。


 ふんふーんと鼻歌交じりにモップを滑らせ、しつこい汚れを見つけたらゴシゴシと何度も擦り、綺麗になったらまた鼻歌再開、と本当に手馴れている感じだ。その姿は誰がどう見てもメイドさんそのものにしか見えないだろう。


「目をやってから暫くは雑務依頼で食い繋いでいたみたいですからね。でもいきなり王族の方の生活スペースの掃除は無理があるだろうって事で、とりあえず一階と二階の掃除をメインでやらせてみてます。ぶっちゃけ既にエレナより役に立ちますよアレ」


「アレ言うな! っとと、いけね、忘れてた。今そっち行きます!」


 ほほう? エレナさんはそこまで……、うん? 何を忘れてたんだろう?


 ノエルさんはモップを壁に立てかけると一直線に私の下へとやって来た。つまり私に何か用があるという事か。


「お好きなだけどうぞ!」


 そして軽く腰を折って前屈みになり、ずずいっと私の顔の前へ大きな胸を突き出してきた。


 え? なんなのこれは……? こう目の前におっぱいがあるとつい手が伸びてしまうじゃないか! あ、まさか揉めっていう事? 気持ちは嬉しいんだけどシアさんとキャロルさんの前だとちょっと気恥ずかしさがね……。


「あれ? どうしたんすか? アタシの胸はもうシラユキ様の物なんすから好きにしてもらってもいいんすよ?」


 いつまでも手を伸ばさない私に痺れを切らしたのか、さあさあどうぞどうぞと顔に押し付け始めてきた。なんて積極的で破廉恥なメイドさんだ!


「わぷ。ちょ、ちょっと待ってノエルさん。誰がそんな変な事……」


 ここまでされては遠慮するのも失礼なので、手で抑えるようにして軽く揉ませてもらう。


 むう……、やはりノエルさんも中々の実力者だね。断トツでランキングトップの母様と二位のショコラさん程じゃないけれど、やはりこの大きさと揉み応えは癖になる。大変素晴らしい。素晴らしいが兄様を近寄らせないようにしないといけないね! 絶対揉まれるわこれは……。

 しかしノエルさんのおっぱいも私の物になってしまったのか。確かに私お付の三人のおっぱいは私の物だけど……、って、いやいやそうじゃなくて!


「ば、バレンシアさんが、うひ、くすぐったい。シラユキ様ってホントおっぱい大好きなんすね、可愛らしいっす。あー、生で直接の方がいいっすか? 上脱ぎましょうか?」


「脱いじゃ駄目! ここは外から見えちゃうから……、ここじゃなくても駄目だから!! ってやっぱりシアさんだった! 変な事教えないのー! もう!」


 まったくシアさんはもうー! そんなだから私のお姫様としてのイメージがどんどん崩れていっちゃうんだよ!


「か、可愛らしいです姫様! いえ、その、まあ、事実ですし別にいいのではないでしょうか? 私は勿論メアもフランもキャロも、いえ、世界中のエルフのおっぱいというおっぱいは全て姫様の所有物なのですから!」


「だからなんでそうなるの!? むう、シアさんとはまたしっかりと話し合わないといけないね!」


「ありがとうございます。楽しみにしていますね」


 やはり全く悪びれない! 本当に楽しみにしてそうだから困るよ……。


「いやまさか、バレンシアさんの口からおっぱいなんて言葉が出てくるなんてな……。驚きを通り越してなんつーか、シラユキ様はやっぱ色んな意味ですげえの一言だわ」


「もう慣れちゃったけど言われてみると確かにね……。でもアンタはもうちょっと言葉遣いを考えなさいよ? 王族の方々のじゃなくてシラユキ様の直属のメイドって事になるんだし。ま、形としてだけだけどね」


「う、そう言われるとさすがに少しは正さないとなあ……。あ、シラユキ様? もうちょっと揉んでもらえないっすか? なんかもう癖になっちまいそうで」


「あ、後でね、後で!」


 また私におっぱいを揉まれるのが好きな人が一人出来てしまった! どうしてこうなった!!




 ノエルさんの胸の揉み心地を充分に堪能したところで次の目的地、いや、目的地は分からないがタチアナさんの所へと場所を移す事にした。これ以上揉み続けていては掃除の邪魔になってしまうし、何よりシアさんがまた変に嫉妬してしまう。後でご機嫌取りとして軽く揉んであげよう。



 三階にまで戻ったところでグリニョンさん(はいてない)と遭遇し、五階の物干し場で二人を見たとの情報を得る事ができた。こんなに簡単に情報を入手できるとは、これも日頃の行いの賜物というものなんだろう。うんうん。

 このまま三人でお散歩でもどうかな? と思いかけたがぐっと我慢。グリニョンさん(はいてる)にお礼と別れを告げて五階のバルコニーへと向かう。


 ふう、今日も頑張った。これからも毎日穿かせ続けてみせるわ!




「む……、う? クレアさんかな?」


「ええ、確かに。物干し場で一体何を騒いで……、まあ、予想はつきますが」


 五階に上がると外から、目的地のバルコニーからクレアさんの声が聞こえてきた。

 何と言っているのか詳しくは聞き取れないが、その口調と声の荒らげ方から穏やかな話ではないとだけは感じ取れる。


 そう言う私も実は予想できてるんだけどね。タチアナさんがいるのになんで? っていう疑問はあるけど恐らく間違いないだろうと思うよ。


 急に静かになったバルコニーに出ると案の定、そこにいたのはいつもの無表情だけどはっきり怒っていると分かるクレアさんと、その前で正座をさせられているソフィーさんタチアナさん姉妹の三人。

 私が近づくとクレアさんとソフィーさんは軽く頭を下げ、タチアナさんは満面の笑顔を見せて歓迎の意を表していた。


「クレアさーん、何があったの?」


 タチアナさんの笑顔も気になるけど、まずはクレアさんが怒っていた理由を聞いておく。曖昧な問いかけだがこの状況からすると他の言葉は必要ないだろう。


「いえ、姫様のお耳に入れる程の事ではありません、お気になさらずに……。運が良かったな二人とも」


 最後の小声からしてもまだまだ怒り冷めやらぬといった感じのクレアさんだったが、私の前ではさすがにお説教の続きはできないと見える。急に静かになったのも私の気配を感じたからなのか。


「姫様? ここは何があったかではなく、誰のだったかと聞くところですよ?」


「バレンシア! お前という奴はどうしてそう……」


「わ、クレアさん怒らないで! 私も大体何があったか見当はついてるから!」


 ニヤニヤ笑顔で進言してきたシアさんをクレアさんが注意する、が、私の聞き方が悪かったという事にしてこの場は収める。

 クレアさんは本当に真面目な人なんだから……。そしてシアさんはこういう時は本当に不真面目な人なんだから……。


「ええと、私とキャロルとノエリアの……、です。今朝はノエリアを加えて三人で鍛錬をしていたのです。それで三人ともそれなりに汗をかいたので着替え、洗濯を頼んでおいたのですがそれをこの二人が……、という訳です」


 肝心なところはぼかして説明するクレアさん。少し恥ずかしそうだ。


 まあ、さすがにパンツの匂いを嗅いでいたのを注意していましたとは言いにくいよね……、うん? 二人が!?


「タチアナさんもなの!? ど、どうしてそんな事!」


 ままま、まさか、タチアナさんはやっぱりそっちの人!? シアさんカイナさんに続いて私を狙う人物がまた現れてしまったのか……!! ガクブル。


「す、すみません! 姉さんからこうやってしっかりと洗えているかを確認すると教わって、わ、わたしもおかしいとは思っていたんです! でもこちらではその方法が正しいのかと思ってしまって……」


「そんな確かめ方があってたまるか! は、失礼しました姫様」


 おおう、ビックリした。しかしクレアさんがツッコミを入れるなんて珍しいものを見せてもらった事だし許してあげようじゃないか。


「とりあえずタチアナさんは立ってもいいよ、お姉さんの言う事だから信じちゃったんだよね。まったくもう、ソフィーさんはこれで怒られるの何回目なの?」


「回数までは……、その、毎日の事なので。申し訳ありません」


 今のは匂いを嗅いじゃったのを謝ったんじゃなくて、回数が分からなかった事を謝ったんですね、分かります。


 実はソフィーさんのこの確認方法は、目立つ所でやらなければ別にいいやとみんな黙認していたりする。怒るのはキャロルさんとクレアさんくらいだね。

 本当に、ただ純粋に綺麗に洗えているかの確認のための行動の筈なのだが、ソフィーさんだからという色眼鏡を通してしまっているせいでいやらしく見えるだけなのだ。多分。


 ちなみに、洗濯前の洗い物の匂いを嗅がれた場合は勿論全員怒ります。そっちは間違いなくいやらしい考えからの行動だからね!



「あ! シラユキ様シラユキ様!」


「う? なあに? タチアナさん」


 やけに嬉しそうな声色で私を呼びながら歩み寄ってくるタチアナさん。そして目の前までやって来ると私の両手を取り、自分の大きな胸に押し当て……。


「どうぞ! お好きになさってください。ふふふ」


「また!? ちょ、ちょっと待って!」




 色々あって疲れてしまい、ウルリカさんの尻尾に癒やされようと談話室に戻ると、ヘルミーネさんからも同じく、どうぞ……、と頬を染めて言われてしまったので、嬉しいけどこれはおかしい! とシアさんを問い詰めて白状させる事にした。


 取り調べの結果、新メイドさんズ三人の胸は既に私の所有物。誰かに触れさせる場合は例え家族と言えども許可を得なければいけない。顔を合わせる度に満足するまで揉んでもらうように。などといった決まり事を言い含められていたらしい。なんという事だ……。


 初日から色々と大変すぎる! 主にシアさんのせいで! これからの毎日が本当に楽しみじゃないか……。

 うん? ああ、うん、疲れるけど楽しいね。ふふふ。







こうしてシラユキのおっぱい好きの噂は広まっていくのです。

そろそろ『VR』の方も続きを書きたいですね。

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