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273/338

その273

「みんなおっまたせー! ってあれ!? シラユキちゃんだけなの? ルーちゃんとユーネちゃんはー?」


 むむむ! やっと来たなジニーさんめ! 遅い、遅すぎる!!


「二人とももう部屋に戻っちゃったよ……。私ももうちょっとしたら寝ようかなーって思ってたところなんだよ?」


「ご、ごっめんねー! つい話し込んじゃって、って言うか話が長引いちゃって……。ありゃー、シラユキちゃんはもうおねむ? それじゃ今日はお姉ちゃんと一緒に寝よっかー! ふふふふふ」


 両手をわきわきとさせながら、もの凄く楽しそうな笑顔で近付いて来るジニーさん、だったのだが。


「させる訳がないでしょう」


「な、ぉぐふっ!」


 シアさんから本日二度目の鋭い膝蹴りをお腹に受けて倒れ込み、


「いきなり来て私たちの一番の楽しみを盗ろうなんてね……。メア、ちょっと手伝って」


「うっわ、痛そう……。あ、うん、フランはそっち持って。やっぱシアって怖いなあ」


 フランさんとメアさんの二人に両手を掴まれてズルズルと引き摺られ、部屋の外に転がされるように捨てられてしまった。

 一応入り口のドアは開いたままなので廊下に倒れているジニーさんの姿は確認できるのだけど……、ピクリともしない。大丈夫なんだろうか……。


 今日一体何度目になるか……、またもや、ちーん、という効果音が聞こえてきそうだ……。



 夕食を食べ終わり、兄様と姉様と一緒に談話室へと移動して、父様との大人のお話が終わるのをワクワクしながら待っていたのだが、その期待を裏切るかのように一向にお話が終わる気配はなかった。

 まだまだ時間が掛かりそうなら仕方がない、といつもの様に雑談をしながら待ち続け、ついに私のお風呂の時間になってもジニーさんが現れる事はなかった。

 残念ながらそこで兄様と姉様は仲良く離脱してしまう事になった。多分お風呂上りの私がすぐに寝てしまうだろうと踏んでの事だと思う。今日は結構歩いたので早く寝ろと暗に言われたのかもしれない。


 そしてさっきの今、仕方なくそろそろ寝ようかなと考えたところで漸くジニーさんが大人の話を終えてやって来た、という訳だ。まあ、すぐに退場させられてしまったけどね……。

 ちなみにフランさんとメアさんの対応が揃って冷たい(?)のは、今の今までシアさんから、ジニーさんがどれだけ不誠実で不真面目な人なのかと延々聞かされていたからだ。私の教育に悪そうな人だと判断されてしまったらしい。


 この結果は、どうせ少し話せばいい人だと分かるから問題ないだろう、とシアさんの行動を放置していた私に責任があるかもしれない、が、黙っておこう。ジニーさんもまたすぐに復活するだろうし、シアさんの話を聞く限りだとショコラさんに迷惑を掛けまくってるみたいだからね。



「あん? なんでコイツこんな所で寝てるん? 邪魔くっさい」


 偶然、かどうかは分からないけれどグリニョンさんが部屋の前を通り掛かった。そして倒れてピクリともしないジニーさんをゴロゴロと転がして談話室の中へ押し込んでから私の方を向く。


「これでよし。そんじゃ、めどいけどお風呂入ってくるよ。おやすみシラユキー」


「あ、うん。おやすみなさーい」


 グリニョンさんはそのまま引き止める間もなく、軽く手をヒラヒラとさせながらお風呂へ行ってしまった。引き止めようにもこれからお風呂なら仕方が無いのだけれど。

 そんな行動を見て私たちはお互い顔を見合わせ、何とも言えない表情で苦笑いをし合う。倒れているジニーさんは勿論無反応です。


「グリーが館に来てからそれなりに経つけど、私らにはあんまり愛想よくないわよねー。すぐ勝手にどこか行っちゃうし」


「ウルギス様とリリアナさんの言う事しか聞かないよね。まあ、姫には優しいみたいだからいいけど。それよりこの人どうしよっか? シア、ちょっと強く蹴りすぎたんじゃない?」


 メアさんがジニーさんをこの人呼ばわりで指差す。


 早く起きて! このままだと気絶したまま家の外に放り出されちゃう!


「ジニーさん、そろそろお席の方へお願いできますか? 姫様をさらにお待たせするつもりですか」


「はいはーい、ごめんねシアちゃんシラユキちゃん。そっちのおっぱい大きな二人もごめんねー」


 シアさんの言葉にさっと立ち上がり、体を叩いて服に付いた汚れを払いながら謝るジニーさん。痛いだとか苦しいだとか、そういった気配は微塵も感じられない。


 なんだ気絶したフリをしてたのか……、本当に頑丈すぎるよ。……はっ!? シアさんもおっぱい大きい人の中に入れてください!!


 シアさんから何か言いたげな視線が送られてくるのに耐えながらジニーさんが椅子に座るのを待つ。また心を読まれてしまった……。


「さーてさて! うーん、どうしよっか? シラユキちゃんがおねむならそんなに長くお話できないかなー。あ、まずはそっちの二人に改めて自己紹介でもする?」


「要らない。とっとと出てって」


「要らない。さっさと帰って」


「なんで!? なんでシラユキちゃん以外のみんなはそんなに冷たいの!? 私なんにもしてないのにー!!」


 フランさんとメアさんのあまりの率直な拒否の態度に驚くジニーさん。

 シアさんから聞いているので必要ないのもあるけれど、なんという見事なまでの拒否っぷりなんだ。



 シアさんのメイドさん情報によると、ジニーさんの不真面目さは冒険者ギルド内だけのものではなく、各ギルドの代表者の集まりの様な場ですら遅刻は当たり前、遅刻どころかそもそも集まりの存在を忘れていたり、覚えていてもすっぽかしてしまう事すらあるらしい。さらに仕事の遅さも相当なものの様で、明日できる事は明日やればいい、と自分の部屋から忽然と姿を消してしまうのが常なんだそうだ。これは二人が私の教育に悪そうだと判断してしまうのも無理はないと思う。ライスさんとは違った方向で嫌われてしまったね。


 でもジニーさんは、本当に大事な問題の集まりには呼ばれていなくてもどこからか嗅ぎつけ勝手にやって来て、いつものようにただの明るいお姉さんの様な口調と態度で自然と解決の流れへと持っていってしまう事もあるんだとか。

 緊急事態や本人の興味、後はエサをちらつかせるなどでやる気を出してもらえれば本当に有能すぎるくらい立派なギルド長さんなので、一応周りからの信頼は厚いらしい。しかしギルド長的に信頼はできても個人的に信用はあんまりできないという不思議な事になっているみたいだ。



 私も色々とお話したい事はあったんだけどどうしたものかな。ちょっと眠気が出てきちゃってるのと、あとは聞いちゃいけない事も結構ありそうなんだよねー。特にシアさん関係の質問はしっかり考えてからしないといけないかな?


「ふふ。一応私が簡単にお話しておきましたので自己紹介の類は必要ありませんよ。二人の反応は至極当然というものでしょう?」


「なんて説明したらこうなるの! シアちゃんやっぱり意地悪だー」


 そう非難しながらも表情は笑顔のままのジニーさん。シアさんも機嫌よさげにしている。


「ねえねえフラン、なんか変だじゃない? ジニーさんとシアって水と油と言うか、絶対馬が合わないと思うんだけどさ」


 早く帰れオーラを出していたメアさんだったが、シアさんがにこやかに対応するところを見るとさすがに興味が沸いて来てしまったようだ。


「あー、うん、それは私も思ってた。なんかさっきの話も友達とか家族を紹介する感じに近かったしね」


 フランさんも違和感を感じていたみたいだが、思いっきり拒否した手前いきなり話しかける様な事はしないでこそこそと話し合っている。


 よし、ここで話の流れを上手く誘導する事ができればすぐに二人とも打ち解けられる筈! 今日入手したばかりの最新情報を早速使う時がやって来たね。


「ジニーさんはシアさんが昔お世話になってた人なんだってキャロルさんが言ってたよ」


「ほほう、キャロがそんな事を……」


 しまった! これで確定していたキャロルさんへのお仕置きがさらにきついものになってしまった! 今日の添い寝当番は丁度よくシアさんだし、眠る前に何とかフォローを入れなければ……。


「昔? レンってウルリカの時もそうだったけどやけに交友範囲広いよねえ。全然そうは見えないのに。ちなみにどんな関係の知り合いなの? それって。やっぱり冒険者関係?」


「うん。シアちゃんが初めて冒険者ギルドに来た時の受付が私だったんだよねー。あの頃のシアちゃんは可愛かったのに、日に日に意地悪な子になっちゃってお姉さん悲しいわ!」


「へー、また変な縁もあったもんだね。あ、初めてってシアが冒険者になった日の事? 詳しく聞きたいね、それ」


 はい? 今でもシアさんはたまに可愛い行動を……、じゃなくて、シアさんが初めて冒険者ギルドに……、でもなくて! 二人の興味が完全にシアさんの方に移ってる!? あああ、話が弾むのはいいけどシアさんの昔話は……、あれ?


「詳しくと言ってももう随分と前の事ですからそこまでは……。ただの子供だった私に色々と世話を焼いてくれていた、まあ、姉の様な方ですね。今の私があるのもジニーさんの突飛な行動があっての事、今でも頭が上がりませんよ」


 普通に話してるー!? ええー? シアさんって自分の事を話されるのってすっごく嫌がるのになんで!? お姉さん的な存在だから止められないっていうのとは違うよね、シアさん笑ってるもん。

 あと、頭は上がらないのに手は上げるんだね……。上手い事を言ってしまった。


「突飛な行動っていうのがちょっと引っ掛かるけど、ふーん、レンのお姉さんね、それなら納得だわ。あ、ジニーさん、紅茶は要る?」


 納得? まあ、うん、確かに納得しちゃうかもねー。


「あ! 欲しい欲しい!! もう喋りっぱなしで喉渇いちゃっててさー、ありがと!」


「姫はもう寝る前だから駄目だけど適当にお菓子も出そうか。二人が寝た後に色々と聞き出すチャンスだね。ふふ」


 私が寝る前にお菓子とかずるいずるい!



 ううむ、三人が仲良くなってくれるのはいいんだけど、シアさんの悲しい過去とかに触れちゃうかもしれないお話は避けてもらいたいなー。


「シアさんシアさん、いいの?」


「え? あ、ええ、構いませんよ。今日会ってすぐに信用しろというのは難しいと思いますが、ジニーさんの口から誰かを傷付ける様な言葉は出てきませんよ、ご安心ください。と言っても身内と呼べる人物のみの話になってしまいますが、ね」


 珍しく今気付きましたとばかりな反応をするシアさん。笑顔のままで理由を教えてくれた。


 むう、なるほどねー。きっと答えにくい質問でも上手くはぐらかしちゃうんだろうね。

 でもシアさんにそこまで信頼されているとは……、ちょっとジェラシーの心が湧いてきちゃうね。ぱるぱる







上手く纏まらずに長々と続いてしまいましたが、これでジニーの顔見せの様なお話は終わりです。



地球を防衛する系の仕事が忙しすぎるので次回の投稿はさらに遅れるかもしれません。

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