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その260

二話同時投稿の予定でしたがまずは前半半分だけ。

長くなりすぎてしまい、変なところでぶつ切りになってしまいました。

 マリーさんの恋人は妖精さんでした騒ぎから約一週間後、今日はキャロルさんと一緒に例の秘密じゃないけど秘密の広場までお散歩に行く事になった。つまり今日は、キャロルさんを労わろうの会の開催日だ。

 フランさんに二人分のお弁当を作ってもらい、他にも必要だろうと思われる物を色々と渡され、それらを全部能力でしまい込んだら準備は完了。早速手荷物一切無しというお手軽ピクニックへと出発しよう。


 キャロルさんはここ最近毎日あくせく忙しそうに働いていたみたいだし、今日は一日中のんびりとしてもらわないとね! ついでに私と遊んでもらう感じでお願いします。ふふ。



「あんな何も無い広場なんて行ってどうすんの? どうせなら町まで行ってケーキ食べようよ、姫ー」


「こーらエレナ、確かに何も無い空き地なんだけどシラユキのお気に入りの場所なのよ? 私は久しぶりに行くから少し楽しみね。子供の頃にリリーによく連れて行ってもらっていたわね……。ふふ。ねえ? リリー?」


「ん。気持ちいい」


「気持ちいい、ですか? ああ、確かにあそこは空気や雰囲気がいいと言いますか、気持ちが落ち着くいい所ですよね。あ、今日はリリアナさんにエネフェア様のことはすべてお任せしてしまいますね。ふふふ、姫様、お手をどうぞ」


「え、あ、うん? どうしてこうなった!」


「まあ、私はどうせこんな事になるんじゃないかと思ってましたけどね。それでもちょっとはシラユキ様を一日中独り占めして可愛がれるかもって期待してたのになあ……。はあ」



 キャロルさんと手を繋いでウキウキ気分で一階まで下りて来た私を待っていたのは、いや、待ち伏せしていたのは、エレナさんとリリアナさん、さらには母様とカイナさんの四人だった。

 エレナさんは暇だったからと無理矢理リリアナさんを誘い、その動きをどこからか察知した母様はこれはお面白そうだとお仕事を放り出して、カイナさんはそんな母様の付き添いという名目で私を可愛がろうと……。四人の考えや行動理由はそれぞれこんな感じらしい。


 実は私も薄々こうなるだろうとは思っていたんだけどね……。だってやけにその他色々の量が多かったからねー。四人分のお昼も荷物の中に含まれていたんだとすると、実はこれは計画的な犯行なのではないだろうか!? ……はあ、どうでもいいや。


「キャロルさん、離れちゃ駄目だよー。こっちこっち、戻って来てー」


 カイナさんと右手を繋いだので、空いている左手で距離を置こうとしていたキャロルさんを手招いて呼ぶ。母様がいるからと完全にお控えモードに入ってしまわれるところだった。


「は、はい! でも、いいんですか? シラユキ様も私なんかよりエネフェア様の方が……」


 ま、まあ、私も母様がいるとなるとどうしても優先して甘えまくりたくなっちゃうんだけどね……。でも今日は特別なんだよ、うん。

 ちなみに、私なんか、という自分を卑下するようなセリフは嫌いなのだけれど、私自身もたまに知らずに使っちゃってるらしいのであまり強く言えなくなってしまった。ぐぬぬ。


「いいの! 私は今日はキャロルさんと手を繋ぎたいんだから!」


「うわっ、可愛い……!! はい! ありがとうございます! 今のは我侭っぽくて可愛かったなあ。ふふふ」


 にっこり笑顔で喜んで手を繋いでくれるキャロルさん。嬉しそうだ。


「はああ……、姫様はなんて可愛らしいんでしょう……。あ、私はもう姫様にお手を繋いで頂けるだけで感無量ですので、キャロルとお話して甘えてくださいね」


 繋いでいる私の右手をさわさわと撫でながら、幸せそうに微笑んでいるカイナさん。くすぐったい。


 むむ? 最近カイナさんとは全然遊べてなかったのに、暴走するどころか随分と謙虚な姿勢だね。どうしたんだろう?

 まあいいや、言われなくともそのつもり、今日は何を置いてもキャロルさんを優先する日だもんね! ふふふ。


「あたしもあんまり邪魔にならないようにリリアナさんと話してよっかな。エネフェア様、通訳お願いしていい?」


「それは構わないけど、私も意訳よ? と、こんな所で話してても仕方がないわ、お話は出発してからにしましょうか。シラユキ、そろそろ行きましょ」


「はーい! それじゃ改めてしゅっぱーつ!」


「か、可愛らしすぎます姫様ぁ……」


「なんで泣きそうなの!?」


 ああ! キャロルさん優先の日なんだけど、カイナさんのこの控えめ(?)な態度も気になるー!!




 母様を通訳としてエレナさんとリリアナさんのお話は盛り上がっているようだ。後ろを歩く三人の会話もかなり気にはなるが、こちらはこちらの三人でお話をしようと思う。歩くペースが最も遅い私が度々振り返っていては広場に到着する頃には完全にお昼を回ってしまいそうだからね。


「そういえばマリーが会ってた妖精、フォルベーでしたっけ? あれから姿を見せなくなったらしいですね」


「え? そうなの? この前私たちが騒ぎすぎちゃったからかなあ。次に顔を出したら捕まるんじゃないかって警戒してるのかもしれないねー」


「姫様可愛い……」


 実際私の企みは絶対にバレているだろうし、シアさんを初めとしたメイドさんズの前に妖精さんなんてのが出て来ちゃったら……、うん、リリアナさん以外の全員がまずは捕まえようとするだろうね……。主に私に見せようっていう理由で。

 私はあれから、あの迷子事件から一度もフォルベーとは会ってないんだよね。まあ、フォルベーとは、だけどね。ふふ。


「でもこの森の中で妖精の姿を見る事ができるのはシラユキ様とマリーの二人だけなんですよね? 特に警戒される理由も無さそうだと思うんですけど……。まあ、マリーが言うにはまさに絵本に出るような妖精っていう感じの気まぐれな奴らしいですから、その内またひょっこり顔を出しに来るんじゃないでしょうか? 多分ですけど」


「ううん、見て話すだけなら誰にでもできると思うよ。確かいつもは見えないようにしてるだけとか言ってたし」


「は? あ、はあ。……今のって多分世界でシラユキ様お一人しか知らない情報よね。か、軽ーく仰ってくれちゃってもう……。ええと、それなら一度見てみたいものですね。はは……」


 キャロルさんは見た目子供だから普通に会ってくれるかもしれないねー、という言葉はギリギリ喉元で押し留める。危ない危ない。

 しかし、妖精さん情報はあまり話さない方がいいんだろうか? またなーんか呆れられちゃった様な気がするね……。


「今度私が自分の部屋かコーラスさんのお花畑で一人になってみようか? それで出て来てくれたらキャロルさんに会ってーってお願いしてみるとかどう?」


「い。いえ、ホントに実現しちゃいそうですからやめておきましょうよ……」


「ああ、姫様は本当にお優しい……、? !? い、いけませんそんな事!!」


「え!?」「あん?」


 私の右手を撫でながら何やらブツブツと呟いていたカイナさんだったが、急に足を止めて焦った風に会話に割り込んできた。一体どうしたというんだろうか?


「カイナ? どうしたの?」


「また姫がなんかやらかした? そんな時はびしっと叱ってやればいいのに」


 いつも何かやらかしてるのも叱られてるのもエレナさんの方なのにー。私は大体巻き添えだよ、もう!

 と、今はそれは置いておいて、カイナさんが何に対してこんな過剰反応を見せたのか聞かないとね。


「カイナさん? 何が駄目なの?」


「お一人で妖精に会われる事です! そんな事をしてもし妖精の住む国や女神様の元へ姫様が攫われてしまったら……、ああ!」


「なにそれこわい」


「た、確かにシラユキ様の可愛らしさに女神様ですらあっさり陥落してるっぽいし、あり得ない話でもないかもね……。シラユキ様、やはりここはやめておきましょう」


「ないない。ないからね? ……多分」


「そうね、コーラスには悪いけどあの花畑……、焼き払うしかないわね」


「絶対やめて!!」


「あっはは」「ふふ」


 エレナさんとリリアナさんも笑ってないで止めて! ああもう、カイナさんはたまにシアさんより変な発想をするんだから!




 冗談よ、と微笑む、しかし目は笑っていない母様に不安を覚えながらも歩みは進め、ようやく目的地の秘密じゃない秘密の広場まで到着する事ができた。こんな大人数で来る秘密の広場があるものかっ。

 獣道はカイナさんに抱き上げられて進んでいたのでカイナさんの心も落ち着きを見せてくれていた。優先する筈だったキャロルさんには悪いけどこれで一安心だ。


 着いて早速能力でしまってあった品々を全て取り出し、メイドさんズにテーブルセッティングをお願いする。

 キャロルさんには見てるだけでいいと伝えてみたのだが、私と母様のことはリリアナさんに任せて真っ先に準備へと行ってしまった。


 ううむ、エレナさんの前だと休み(サボり)にくいのかな? キャロルさんももう立派な先輩メイドさんだもんねー。ふふふ。


「姫とウルリカの能力ってこういう時便利だよねー。あたしもなんか一つくらい能力欲しいなあ」


「武器の持ち運びにはホントに便利そうよね、暗殺向きの能りょ、あ、エレナ、椅子は向かい合わせじゃなくて並べて置いて」


「なんで? 姫はエネフェア様の膝の上に乗っけるんだからこっちはあたしのじゃないの?」


「それこそなんでよ!? リリアナさんが座るに決まってんでしょが」


「あの、リリアナさんは線の細い方ですけど、だからと言って体が弱かったりする訳でもないんですよ?」


「それは分かってるんだけど何となくね。リリアナさんってメイドさんって言うより奥様って感じだからさ」


「あー、分かる分かる。エネフェア様の母親って言われても全く違和感ないわ」


 三人ともお喋りをしながらもしっかりと手は動かしている。失礼な話だけどエレナさんがしっかりとメイドさんをしている事に驚きを感じてしまった。


 なにあれ楽しそう。エレナさんとキャロルさんって注意するシアさんがいない所だとあんな和気藹々とお仕事してるんだね、見てて面白いや。


「その椅子はキャロルさんのだよ。準備も終わったみたいだしもう座ってもいいよー」


「エネフェア様の隣に!? ささささすがにそれは!」


「えー! キャロルだけずっこいわー!」


「ふふふ、この子たちったら可愛いわね。さ、それじゃお昼にしましょうか。貴女たちも私たちの後でなんて言わないで一緒に食べて頂戴ね」


「私はお二人のお手伝いを優先させて頂きますけどね。あ、姫様? お手数ですけど椅子をもう二つ出して頂いても宜しいですか?」


「あ、うん。ルー兄様とユー姉様のがあるからそれを使っちゃおっか。……はい」


「ありがとうございます。さ、リリアナさん、エレナとキャロルも席へどうぞ」


「ん」


「うん、了解。き、緊張するわ……」


「やっほい。昼だ昼だー、肉だ肉だーっと」


 まずは母様が私を抱えて座り、次にリリアナさんが隣に、そしてキャロルさんとエレナさんもそれぞれの席に着いたところで楽しいお昼ご飯の始まりだ。


 毎回の事なので気にしてもしょうがないけど、これは果たしてピクニックと言えるんだろうか……。ただの青空昼食会だよね。ふふふ。



 母様の膝の上であーんして食べさせてもらう。この幸福感は筆舌に尽くしがたいものがある。


 おやつの時間にこうしてもらえる事はたまにあるけど、ご飯の時はきちんとみんな椅子に座ってだからね。本当に幸せで幸せでしょうがないよ。


「あ、そだ。姫、今更だけどここには何しに来たの? お昼食べて散歩するだけなら広場とか町でもいいじゃん」


 エレナさんからごもっともな質問を投げかけられてしまった。


「えっとね、ここではお昼を食べて、あとはタイチョーにご飯をあげてから散歩しようと思ってたんだー。コーラスさんのお花畑とかね」


「姫様可愛らしい……」


 ついでにグリニョンさんにも会えたらいいなー、とも思っていたけど、グリニョンさんはシアさんと兄様以外の人がいると面倒くさがって出て来てくれないんだよね。もしかしたら今も近くでこちらの様子を窺っているのかもしれない。


 ちなみにタイチョーは最近世代交代をした四代目、これまでと違ってかなり懐っこい性格のまだまだ若い角リスだ。名前を呼ぶとすぐに顔を見せにやって来てくれる。

 四代目にして一足飛びに懐き度が上昇し、私の手の上から木の実クッキーを取ってくれるまでになったけれど、撫でようと手を伸ばすとやっぱり少し距離を置かれてしまう。そこで度々シアさんに捕獲してもらって無理矢理撫でているのだが、暴れる事もなく大人しくしている辺りに警戒心の薄さを感じられる。


「ふーん、ただの散歩ならこれ食べたら帰ろうかな。つまんなさそうだし」


「自由な奴……。邪魔するだけ邪魔して面白くなさそうだから帰るってどういう事よマジで」


 あはは。キャロルさんには悪いんだけどこれはこれで楽しいからいいと思うけどね。


「あら? 私たちはお邪魔だったかしら? ふふふ」


「ひぇっ! い、いいえ! エネフェア様のことではなくてですね! すっすすすみません!!」


「エネフェア」


「う……。ご、ごめんなさいね、キャロルって本当に可愛い子だからついついね。許して頂戴」


「と、とんでもありません! リリアナさんすっご……」


 ここぞとばかりにキャロルさんをからかいにいった母様だったが、リリアナさんに怒られてあっさりと謝る破目になってしまった。キャロルさんの中でもリリアナさん最強説が浮上している事だろう。







次回は明日投稿予定です。

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