その25
さあ今日も読書読書ーっと。今日は何を読もうかな。
兄様一押しの世界の巨乳シリーズは、昨日全巻焼き払ったばかりだし。兄様何で泣いてたんだろうね、不思議だね。
今日も竜人についての本でいいか。巨大な竜の姿になれる種族らしいねー。何それカッコいい。
魔法の実践は、実はまだ一度もしていない。夜中に使う明かりの魔法だけだ。ネタばらしをされた後も特に問題も無く使えている。
何故かあんまり新しい魔法覚える気にならないのよね。
跳躍魔法は使ってみたいが、私にはまだ危険すぎる。あの速度で飛び回るのは、慣れた土地、覚えた地形だからこそできる事みたいだ。今の私ができるとしたら、精々高い木の枝に飛び乗るくらいだろう。
飛び乗った後も問題だ。木の枝の上でバランスを保てるのか? 落ちた場合の対処は? そもそもちゃんと狙った所へ飛べるのか? 着地はどうする?
あの魔法は一体いくつの魔法を複合して使っているんだろう。
おっといけないいけない。感覚で使うんだったね。ついつい先に考えちゃうね、悪い癖だ。
ポーンとジャンプしてスタっと着地すればいいのよ。あれ? できそうじゃねこれ?
ちょっと部屋の窓を開けてみる。ここはいつもの談話室、四階だ。ふむ、高いな……
ここから飛び降りて軽く着地、できそうな気がするな。ふむふむふむ。
「よし」
足、はかけれないか。それなら飛び上がって……
「姫!?」
「姫様!?」
「シラユキ!!」
「だだだだだ駄目よ!!」
みんなに全力で止められてしまった。姉様に抱きとめられ、そのままずるずると、元いた椅子へ運ばれる。やばいな、怒られるなこれは。
「多分、高所からの着地の練習をしようと思ったんだと思うけど、ね?」
「は、はいっ」
「初めてがいきなり四階の高さからは無いでしょう!? お姉ちゃんびっくりしたわよ! 後スカートなのよ! ヒラヒラなのよ! 可愛いのよ!」
これは怒ってるのか? びっくりさせ過ぎてしまった様だ。
「ご、ごめんなさい。なんか今ね? ちょっと考えたらできるんじゃないかなって思っちゃったの」
「シラユキならできちゃうと思うんだけどさ、せめて一言言ってからにしてね? 下で誰か待たせるとかしないと……」
「私たちもいるんだからさ、気軽に言いつけてよ。私たち結構暇なのよ?」
「そうそう。別に畏まらなくてもいいから、楽でいいんだけどね」
そういえばそうだね、何故か失敗する事が完全に頭から抜けてたよ。考える事を少なくしすぎたね、いやいや、お恥ずかしい事で。
「どうする? その本読む? 着地の衝撃を和らげる魔法だっけ、練習する?」
「練習ってどんな風にやればいいの?」
二階辺りから飛び降りるのかな? あれ? 二階でも失敗したらやばくね?
「シラユキくらいの子なら、そうね。そのテーブルから飛び降りてみれば?」
「ですね、それくらいの高さがまずは妥当かと」
テーブルからって、これ、1mも無いよ?
「あ、これは駄目だ。絶対に失敗するわこの子。わ、私たちがいてよかった、気づいて止めれてよかった……」
姉様は、へなへなとその場に脱力して座り込み、え、え? な、泣いちゃった!?
「ごめんなさい! ごめんなさいユー姉様!! もう絶対しないから、絶対一人でやろうとしないから!!」
どうやら私、今さっき、死に掛けたようだ……
「はい、飛び降りてみて。魔法を使おうとか考えなくてもいいからね? そのままでいいから」
「私たちが見ていますからね。安心して降りてみてください」
テーブルの上に乗せられてしまった。く、靴のままだよ? お行儀悪いわー
「クロスを換えればいいだけだから、気にしなくていいよ」
「シラユキは結構細かい事気にするよね」
何故分かったし。そんなに考えが顔に出やすいのかな私は。
「はい、とても分かりやすいです」
「シアさんは返答が具体的過ぎるよ!?」
「それじゃ降りてみるねー」
ま、これくらい軽く降りれるって。ひょいっと。
スタッと華麗に着地、はできなかった。ドスンって感じ?
足に痛みがじーんと広がっていく。
「あ、足痛い……」
「はいはいこっちおいで? お姉ちゃんの膝の上、来なさい」
よろよろと姉様に抱きつく、い、痛かったよう……
「あれ? 思った以上にダメージ受けてません? 姫」
「そ、そうね。ちょっと高すぎたかしら?」
「実は、まずは椅子からの方が良かったんです。ですが、やはり一度、痛みを味わっていただかないと」
ううう、シアさんが怒ってる。
「大丈夫ですよ、姫様。説明の後、私の両足を自由にしてくださって結構です。へし折るなり切り落とすなり石臼に掛けるなりご自由に」
「表現が怖っ! しないよ!? 怒ったままでいいから! 自分を責めなくていいから!!」
「相変わらず姫の突っ込みはキレがいいね」
「見てて飽きないわホント」
「さて、それじゃ恒例の説明タイムよ。あ、シアは黙っててね?」
「ユーフェネリア様!?」
姉様も説明好きだからね、先手を打ったのか。
「その高さから飛び降りればね? 私たちだって普通に痛いわよ? 自分の全体重に、飛び降りた勢いを加えて足にかかるのよ。特にシラユキは細いからね、ひ弱だからね」
「姫って結構走り回ったりしてたけど、全然体力無いよね? ひ弱だよね」
「うん、ひ弱だねシラユキは」
「シアさんみんながいじめるー!」
申し訳ありません喋れません、という意思表示の綺麗なお辞儀をされてしまった。み、味方がいない!?
「シラユキ。実際その高さからどころか、あんまり自分で跳ねたりした事すらないでしょう?」
あ、姉様真剣だ。最近私怒られてばっかりだな。怒られている、という事では無いかもしれない。甘やかすだけじゃなくなっただけか。ありがたい事だね。
「うん。運動は軽く走るくらいしか……」
「軽く走っただけですぐ力尽きるのよね。ひーよわー」
フランさん酷い! でも全く言い返せない! 事実です……
「本当に、本当に止めれて良かったわ。高い所から降りた衝撃も分からないのに、経験した事もないのに、それをどう和らげるつもりだったの……」
「あう、ごめんなさい……」
「甘やかしすぎた私たちも悪いのよね。シラユキ小さいから、可愛いから、ついつい抱っこしちゃうのよね」
「これからは運動の時間、作ろっか? 私たち姫が本読んでる間、暇で暇でさー」
え! それはできれば遠慮したいと言うか、勘弁してもらいたい。私の読書時間を削らないでー!
「そこまでしなくてもいいわよ。でも、毎日散歩くらいする事、もっと外にも遊びに行く事、約束しなさい。お兄様とシアの三人で、魔法の練習に広場行くでしょ? そこにちょっとした高さの台作ってあげるから」
「椅子くらいの高さなら、私たちがいれば十分そうだしね」
「他の魔法を使いたい場合は、ちゃんと王族の人の誰か連れて行かなきゃ駄目よ? レンがいれば大丈夫そうだけどね」
あれ? 激甘じゃない? この人たち。つまり、今まではもっと甘やかされていたって事か。
うわあ、駄目だよ私、甘やかされるのに慣れ切ってた! もっと頑張らなきゃ! 頑張らなくてもせめて普通にならなきゃ!! なんという志の低さ。
「うん! ごめんなさい、ありがとう、みんな」
「かっ可愛すぎる! やっぱり毎日読書でもいいわ! お姉ちゃんが読んであげるから!!」
「ユーネ様台無しだよ……」
「あはは。みんな大好きー!」
本当に私に甘すぎる、優しすぎるね、みんな。
「ま、しょーがないわよね、姫だし」
「しょうがないっか、シラユキだし」
「あ、シア、もう喋っていいわよ。ごめん忘れ」
「姫様愛してます!!!」
また告白された!!
この後シアさんに構い倒されてしまった。我慢させると反動が凄いねこの人は、き、気をつけなきゃ……
まだまだ増えるお気に入りとユニーク……
何があったか気にはなりますが、嬉しいですね。