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244/338

その244

 薄い茶色のさらさらロングヘアー、ちょっと釣り目気味だけど冷たさを感じさせない濃い茶色の瞳。身長は少し高めで、フランさん以上カイナさん未満、170cmには届いていないと思う。

 長いスカートと、フリル多めのふんわりとしたエプロンのせいで一目では分からないが、結構痩せ気味な体格。だがしかし、おっぱいは普通以上に大きいので服の上からでも目立ちます。痩せの巨乳という極めて珍しい体型をしている。


 元々はただの森の住人だったのだが、母様が産まれた時にメイドさん、と言うよりかはお手伝いさんとしてこの家で暮らすようになったらしい。

 その数百年後、カイナさんとクレアさんが母様のお付のメイドさんになり、ようやくお役御免とこの家からも一時離れていたが、その暫く後に兄様が産まれたので、今度は兄様のお付のメイドさんとしてまた一緒に暮らす事になったんだとか。

 さらに次に産まれた姉様は、リリーがいるとお兄様が自分を見てくれない! と嫉妬して、無理矢理お付のメイドさんから外してしまった。小さい頃の姉様は本当に正直で我侭な性格だったんだね。


 そして現在、一応肩書きは兄様と姉様二人のお付のメイドさんのままなのだけど、二人とも私と違って全く手が掛からないので、月に数回程度様子を見に来るだけの通いのメイドさんになっている。

 なので私の前世の秘密については知らされていない。まあ、必要になったら普通に教えちゃうけどね。



 これがリリアナさんの容姿と経歴だ。リーフエンドの森の王族の館のメイドさん第一号その人である。シアさんとクレアさんまでとはいかないが、優しい笑顔が似合う綺麗なお姉さんだね。

 そうなると気になるお年は……、実は不明。正確に把握している人は本人を含め誰もいない。母様が産まれた時点で千歳くらいだったらしいが、それはつまり父様と同年代だという事になる。

 見た目はほかのメイドさんズと変わらないように見えるのに、エルフはやはり凄い種族だと改めて思わされてしまうね。


 ちなみに個人的な情報も殆ど不明で、リリアナさんという名前も本名かどうかは分からないくらいなのだ。ある意味シアさん以上の謎メイドさんなんだよね……。



 そのメイドさんの原点とも言えるリリアナさんを、どうしてシアさんと、メイドさん大好きな筈の私が苦手に思っているのかは……、その性格、いや、性格は温和で優しいメイドさんの鑑の様な人だった。原因は性格ではなく……、ええと、これはなんと言えばいいのか……。




 エレナさんの背を押しながら談話室に入って来るリリアナさん。どうやら案内だけではなく、私の様子を見る事も兼ねて来ているみたいだ。


「リリアナさんいらっしゃい、エレナもついでにね。姫とお客様のお世話は私たちに任せて、リリアナさんは姫と遊んでてもいいよ」


 メアさんの言葉に柔らかい笑顔を向けて、頷きで返すリリアナさん。そしてそのまま歩みを止めず、私の右隣へとやって来た。

 エレナさんはライスさんの隣に椅子を並べて座り、早速ちょっかいを掛け始めている。ライスさんは超嫌そうだけど、エレナさんを嫌っている訳じゃないので安心だ。


 メアさんがナイスなフォローを入れるけど、私にとってはナイスでもなんでもありません!

 まあ、リリアナさんとのお話にもっと慣れなきゃとは常々思ってるんだけどね、絡みにくいと言うか、お話し辛い人なんだよねー。


「健康?」


「え!?」


 いつもの様に私の頬を軽く摘みながら、健康かという一言だけで全てを確認しようとするリリアナさん。……だよね?


「あ、うん! 健康だよ! ……健康?」


 いきなりな、予想もしていなかった質問についそのまま健康ですと返してしまった。

 そしてそのまま、笑顔だが無言で私の頬をムニムニとし続けてくるリリアナさん。続く言葉は無いみたいだ。


 ど、どうしたらいいの!? ほっぺをムニムニされるのはいつもの事だし嬉しいけど、間が、間が持たない!!


 だ、誰か助けてー! と、この部屋にいる面々の顔を見回してはみたが……


 ライスさんは擦り寄ってくるエレナさんを剥がすのに忙しそうなので、この二人にはきっと何も期待はできないし、元からしていない。

 ではメイドさんズはと言うと、メアさんとフランさんはニヤニヤとこちらを眺めるだけで、こんなときに頼りになる筈のシアさんは顔を横に背けて肩を震わせている。どうやら今のやり取りがツボに嵌った様だ。


 ふむ、これはつまり……、助けは無い訳だね!?



 間が持たないと言うのなら、こちらから話を振れば済む事じゃ? と思うのが当然の事なのだが、そんな簡単にリリアナさんが攻略できると思ったら大間違い。

 リリアナさんは何故か、こちらの質問に対しても予想外の返答を返してくる。なので質問する内容も吟味しないといけない、……うん? それだ!!


 そう、リリアナさんは、予想外メイドさんなのだ!

 まあ、行動自体は普通のメイドさんだから、全てにおいて予想できないシアさんとはまた違う意味での言葉なんだけどね。



「る、ルー兄様とユー姉様にはもう会って来たの?」


 メイドさんなら誰とでも、何時間でも無言のまま一緒にいる事のできる私だが、どうしても苦手意識を持ってしまったリリアナさんに対してだけは変に緊張してしまう。

 ちなみに今の言葉は、リリアナさんを追い出そうと考えての発言では決して無い! という事だけはきちんと明言しておこう。


「二人は、大人」


 そう言うとリリアナさんは、私の頬を摘んでいた手を頭の上に乗せ、優しく撫で始める。


「お、大人? シアさん、通訳をお願い!」


 左を向いて、そろそろ笑いから復帰しているだろうシアさんに通訳をお願いする。

 リリアナさんとの会話をスムーズに行うにはシアさんの協力が必要不可欠!


「はい、お任せください。では……、こほん。今の言葉は、ルーディン様とユーフェネリア様のお二人は既に立派な大人、なので特に急いで顔を見に行く事もないでしょう、という意味です。決していやらしい意味ではありません。まだまだ小さなお子様でいらっしゃいます姫様を優先するのも当然というものですね」


 私に頼られてやけに嬉しそうなシアさんが、張り切って通訳をしてくれる。

 頼りになるが、意訳なので100%合っているとは言い切れない。でも大体合ってるだろうからそこまで問題はないと思うけどね。


 また右に顔を戻すと、リリアナさんはゆっくりと頷いていた。やはり今の訳は正しかったようだ。


「あ、ありがとう、私は元気で健康だよー。リリアナさんは?」


「? ……暇」


「暇なの? え?」


 少し考えた後、暇、と一言だけ返してくれた。


 またもや意味不明だったので、左、シアさんの方を向く。


「暇……? 恐らくは、特に変わりのない毎日で平和に過ごしています、という意味でしょう。……ふむ、今日は難易度が高そうですね」


 なんというゲーム気分。リリアナさんは頷いているので多分正解だろう。


 シアさんは不意打ち気味に笑いのツボを突いてくる事を苦手としているだけで、この通訳に関しては結構楽しいんでいるみたいだよね。私に頼りにされるのが嬉しいのかもしれない。

 メアさんとフランさんは困惑する私を見てニヤニヤするのが楽しみらしく、シアさんがいるときはあまり手を貸してくれない。なんてひどいメイドさんだ!



「リリアナもまたこの館に住めば? 私らはシラユキのおかげで毎日楽しく過ごせてるよ。まあ、たまにちょっと焦らされちゃう事もあるけどね」


 私も負けず劣らずの予想外なお姫様でごめんねー。


「……邪魔」


「邪魔!?」


 今のフランさんに対して言ったの!?


「落ち着いてください姫様。私は家事があまり得意ではありませんから、皆さんの邪魔になるのでは? という意味です」


 ああ、そういう意味ね。私との会話を邪魔するなって怒ったのかと思ったよ……。シアさんじゃあるまいしそんな筈はなかったかー。


「そうそう。シラユキも慣れればちゃんと理解できる様になるから、もっとリリアナと話して練習するようにね。メイドスキルなんかよりこっちの方がはるかに重要なんだから。分かった?」


「はーい」


「ふふ、いい子いい子」


 確かにそうだよねー。でもメイドスキルの修行もあれはあれで楽しいし、いい運動になるんだよねー。


「今ってさ、三階以上に上がれるメイドさんが私たち三人とキャロルと、後はカイナとクレアしかいないから結構掃除が大変なんだよね。キャンキャンもこっちにいる間は手伝ってくれてるけど、やっぱりもう一人二人いると助かるんだけどな。だからリリアナさん戻って来ない? あと、ついでにエレナもどう? 毎日姫を可愛がれる特典も付いてるよ」


 ほほう? それは私も諸手を上げて大歓迎したい。

 今は主にキャロルさんが毎日せっせと掃除してるんだっけ? 大変そうだね……。これはそろそろ本格的に、ミランさんメイドさん化計画を推し進める時がやって来たか……!?


「はぁ? なんであたしが? いやー、冒険者目指すのは一先ず保留するけど、だからってメイドに転身は無いわ。姫も別に可愛がりたくないしー」


「だからなんでよ!? こんなに可愛いのに!! やっぱエレナはナシ!」


「悪くない」


「何が!?」


 くっ、シアさん通訳!


「悪くない……? 冒険者を保留してメイドに……。ふむ、まずは先にメイドの仕事で体を鍛え直せばいいのでは? という意味でないかと思われます。この館には私とキャロと、期間限定ですがキャンディスさんと、元冒険者が三人も住んでいますからね。そしてさらに、ガトー、ミランさん、ソフィーさんの現役組もよく遊びに見える事ですし、本当に悪くない提案なのでは?」


 な、なるほど、それは確かに悪くない。シアさんもなんだかんだ言ってエレナさんのこと結構気に入っちゃってるよね、ふふふ。


「それ以前になあ、普通に料理とかできる様になりたいと思えよエレナは……」


 あはは。そこはエレナさんだからしょうがないね。とは思っても口には出さない。


「!? もしかして、家事覚えればライ兄に貰ってもらえる!?」


「要らん!! お前はまずもっとお淑やかになれ!! 姫とはまた違った方向でいつまで経っても子供な奴だなホントに……」


 ライスさんに甘えてるんじゃないかなー? ふふふ。……よし!


「エレナさんは冒険者なんて諦めちゃって、ライスさんのお嫁さん一本に絞ろうよ! そのためにはまずメイドさんになるといいよ!!」


「姫はあたしのメイド姿が見たいだけじゃん、ほんっと甘えんぼなんだから……。んー……、手伝い程度にやってみるのもありかー」


 やったー!! 新たなメイドさんゲットだぜ!! いや、ゲットはしてないけど……。


「という事は、今度はレンだけじゃなくて私ら全員の弟子だね。最近キャロルが殆ど一人前になっちゃって寂しかったのよね。ふふ、扱いてあげるから覚悟しときなさい」


「うへぇ。ま、ほどほどによろしくぅ」


 どうやら頑張ろうという気持ちは欠片も無いみたいだ。さすがエレナさん。




「で、リリアナさんはどうすんの?」


 ここでエレナさんが、狙った事なのかどうかは分からないが、話を最初に戻した。


 私的には慣れるまで毎日大変になると思うけど、みんなのお仕事の負担が分散する事を初めとして、他にも色々な意味でメイドさんズが増える事については純粋に歓迎すべき事なんだよね。

 リリアナさんも私に対しては激甘な人だし、ここはちょっと強引にお願いしてみるのもありかもしれない。とりあえず答えを待ってから、だね。


 リリアナさんはまた少しだけ考え込んだ後に、


「心配」


 とだけ答えた。


「心配? リリアナさんは大ベテランメイドさんなんだから大丈夫だと思うよ? 私も頑張ってお話に慣れて見せるから……」


「ユーネが、ね」


 私の頭を軽く、ポンポンと叩く様に撫でながら言葉を足すリリアナさん。


「ユー姉様が心配なの? うう……、シアさーん?」


 やっぱりまだまだ通訳無しでは無理だったか。ぐぬぬ。


「ああ、なるほど。ユーフェネリア様がまた嫉妬なさってしまうのでは、と心配なのでしょう。申し訳ありません姫様、私にもリリアナさんのお言葉の把握は中々に難しいものでありまして……」


「完璧に把握できる人なんていないんじゃない? 私らは何となくニュアンスで話してるだけだし」


「それで充分対話できてるもんね。とりあえずリリアナさんはそんな事気にする意味ないと思うよ? だって私もフランも、カイナとクレアだって胸大きいじゃない。ユーネ様ももうそんな我侭言ったり理不尽な嫉妬なんてする子供じゃないから大丈夫だってば」


 なんでそこにシアさんの名前を入れないかな!? シアさん怒ってない? 機嫌悪くなってない?


 恐る恐るシアさんの顔を見てみると、どうしてそこで私の方を見るんですかねえ? というちょっと怖い笑顔で見つめ返されてしまった。薮蛇だった!!



「行ってくる」


「へ? あ、いってらっしゃい?」


 シアさんに、他意は無いよ! と、目で訴えていたら、何の前触れも無く、リリアナさんは一言だけ言い残して談話室から出て行ってしまった。


「多分エネフェア様の所に行ったんじゃない? ふふ、よかったね、姫」


「あ、ああ! うん!!」


 なるほどなるほど、母様にまたここに住む事の許可を貰いに行ったのか。


 メイドさんが二人も増えるよ!! やったね私!




「あ、メイドになると姫におっぱい吸われるんだっけ? それはちょっと勘弁してほしいわ……」


「吸わないから! もうそんな子供じゃないから!!」







メイドさん追加が一人だけだと思ったか? 実はもう一人いたんだよ!!

……これ前にもやった気がする……。

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