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240/338

その240

 結局シアさんの怪しい企みは何一つ明るみにならないまま、あれから約二週間後。ついにショコラさんとの約束の日がやってきた。場所は私の家ではなく、冒険者ギルドの例の奥部屋の一つ。ここを使わせてもらうのももう何度目になるだろう。

 どうやら今日はミランさんはお休みみたいで、受け付けの黒い翼の有翼族の人(巨乳)に軽く挨拶をしてから奥へと進む。


 私とエレナさん、それとシアさんとキャロルさんの四人でいつもの部屋に入ると、そこに待っていたのは……。


「おお、来たなシラユキ。ふふ、今日も可愛いな。さて、くだらん話なんぞさっさと終わらせてしまおう。その後でたっぷり甘えさせてやるからな?」


 満面の笑みで私だけを歓迎するショコラさんと、


「よお姫さん、少し久しぶりだな。バレンシアとキャロルは何も心配なんかしてなかったが、ま、三人とも元気そうでよかった。お、そっちのは初顔だな。俺は……、と、自己紹介なんか後でもいいか、早く始めちまおうぜ。師匠が姫さんを可愛がりたくてウズウズしてやがるからな」


 私的には少しどころか、かなり久しぶりなライナーさんの二人だった。


「でかっ! 背、たっか! 何この筋肉!!」


「ライナーさん久しぶり! エレナさんはちょっと怖いもの知らずにも程があるよ……」


 まあ、身長2m級の大男さんだから驚くのも無理ないね。でも人を指差して筋肉と呼ぶのはちょっと失礼じゃないかな……。ライナーさんはこれくらいで気を悪くする様な人じゃない、と思うからいいんだけどね。




 ドアから入って正面の壁には、どこかで見た覚えのある黒板が掛けられていて、向かってその左にはショコラさん、右にライナーさんが立っている。他に目に付く物は、黒板のある壁から少し離れた位置に置かれている横に長いテーブルと、そこに並ぶ三つの椅子。まるで何かの説明会場みたいだ。


 これはあれだね、お話するだけじゃなくてお勉強会になりそう。さらに久しぶりにシアさん先生モードが見れそうだね。でも、生徒役は私とエレナさんの二人なのに、なんで椅子が三つも? 予備か何かかもしれないからそこまで気にしなくてもいいか……。


「はい、そこの筋肉の言った様に自己紹介は後に回して、早速始めていきたいと思うのですが、その前に……。実は今回、ゲストと特別ゲストをお呼びしております。まずはゲストの方から」


 そう言うとシアさんは入り口のドアに歩いて行き、どうぞ、と声を掛けながら開ける。


「失礼するよ。いやあ、儂はBランクなんじゃが、本当にお邪魔してしまっていいんかのう?」


「あ、ウルリカじゃん。ウルリカってBランクだったんだ? って言うか、なんか印象変わったね」


「ウルリカさんだー! うん、綺麗! でもちょっと、見えちゃいけない所が色々と見えちゃってるんだけど……」


 部屋に入って来たのは、相変わらず素晴らしいモフモフ尻尾と可愛い狐耳のウルリカさん。今日は初めて会った時と違い、服装がとても女性らしいものに変わっている。



 まずはスカート、一見すると膝下結構長めの普通のロングスカートなのだが、かなり際どい所までスリットが入っている。多分見る位置によっては下着が丸見えになってしまうだろう。……ふむ、白か。

 上はええと、あれはタンクトップなんだろうか? 裾の部分が極端に短くて、お腹も背中も丸見え状態だ。おへそ丸出しでも夏だからいいのかもしれないが、私みたいに背が低いと南半球も普通に見えてしまう。あの見え方からすると……、まさかノーブラか!?

 全体的な色合いは白を基調として赤を散りばめる感じか……。何と言うか、こうして体の線がはっきりと分かる服装になって初めて分かるスタイルの良さ、ぶっちゃけエロイです。これはけしからんですなあ……。



 前回の女性らしさが欠片も無い状態から一体何があったのか、今日のウルリカさんは大変女性らしいと言うか、大胆な服装だ。


「へー、ふーん……。乳でかっ! フランくらいあるんじゃない? それ。姫、揉ませてもらったら?」


 ジロジロと上から下までじっくりと眺めた後、それ、とウルリカさんの胸を指差しながら言うエレナさん。ちょっと失礼だ。


「うんうん、おっきいよねーって揉まないよ!? ちょっと触らせてもらいたいけど……」


 あの南半球をつんつん突っついてみたいです。……変態か私は!! いや、メイドさんズのおっぱいは普通につんつんしてるな……。まあ、変態ではないだろう、うん。仮に変態だったとしても変態という名の淑女だよ。


「ふぅむ……、シラユキは本当におっぱい好きなんじゃのう、バレンシア殿の言っておったとおりじゃな。この服は実はの、バレンシア殿に頂戴したんじゃよ。年甲斐もなくこんなに肌を晒しておるとちいとばかし恥ずかしいもんじゃが、気持ちが若返ったみたいで悪くはないのう……」


 ほほ、と機嫌よさ気に笑うウルリカさん。


 ふむふむ、シアさんの趣味だったのか、なるほど。私がウルリカさんの服をどうにかしたいって言ってたからかな? さすがシアさんだ仕事が早い。でも、見た目は凄くアダルティーな美人さんなのに、中身はアダルトを通り越して完全にお婆ちゃんだよ。勿体無いぃぃ……。これもどうにかしないといけないね!


「狐族か、珍しい。ふむ、見た目は若いのに老人の様な喋り方だな? まあ、バレンシアが呼んだ人物だ、何かあるんだろうな。ああ、シラユキは私の胸を揉むといい」


 揉みませーん。なんていつも言ってるけど、多分後で膝の上に座らせてもらったら揉んじゃうんだろうなあ……。私は兄様よりはるかに意志が弱いね! だが反省はしない。


「師匠は男みたいな喋りの癖に他人をとやかく言うんじゃねえよ。しっかし姫さんの周りはホントに美人が集まりまくってるな……、俺は師匠さえいてくれりゃそれでいいんだが」


「相変わらずアンタはガトー一筋だね。もうヤっ……、んんっ! あー、ええと……、そ、そろそろ簡単に自己紹介でもします?」


 わざとらしい咳払いで誤魔化しつつ、さらにわざとらしくシアさんへ話を振るキャロルさん。


 聞こえちゃったよ! もう!! でもそれは私も気になるところではあるね……。

 ショコラさんとライナーさんはお互い踏み出せないだけで実のところ相思相愛っぽいし、何か切欠さえあれば一足飛びで結婚まで行けちゃうとおもうんだけどなー。いや、切欠イコールアレの事ではなくてですね……。ぐぬぬ。


「自重なさい。もう一人特別ゲストの方が見えるので、自己紹介はその方も纏めて行ってしまいましょう。まあ、初顔合わせはウルリカさんとエレナさんくらいなのですが……。では、どうぞ」


 自重という言葉から多分最も遠い位置に居るシアさんがまたドアを開け、ずっと外で待ってくれていただろう誰かを呼ぶ。


 今の言い方からすると特別ゲストさんも私の知ってる人っぽいね。誰だろう? ミランさんかソフィーさんかそれとも……。


「失礼します。シラユキ様、バレンシアさん、それに、キャロル先生、お久しぶりです。ガトーさんとライナーさんも、ですね」


「リズさん!!? わあ! リズさんだ!!」


「ああ、シラユキ様……、可愛らしいです。ずっとお会いしたかったです……」


 あまりの嬉しさに、駆け寄って抱きついてしまった。

 結構勢いよく抱きついてしまったのに優しく抱き返してくれたその人は、大きくて真っ白な、とても綺麗な翼を持つ大切な私のお友達。約十年ぶりに会うリズさんその人だった。


「おー、リズー。ちょっと久しぶりじゃない、元気そうだね」


 キャロルさん軽い!! 自分のお弟子さんなんだからもっと再会を喜ぼうよ! 私はもう嬉しさが有頂天っていう感じだよ!!


「はい、キャロル先生も、お変わりない様で……、? より一層可愛らしく、なっていますね。ふふふ」


「あはは。この髪型はちょっと前にシラユキ様に勧められてね。リズは逆に髪切ったんだね、似合ってるよ」


「うん、似合ってるけど……。折角長くて綺麗な髪だったのに、もったいなーい」


 このままリズさんのおっぱいに埋もれていたいが、断腸の思いで一旦身を離して観察し直してみると、以前腰辺りまであった髪が今は肩の辺りまででバッサリと切り揃えられてしまっている。本当に勿体無い。


「誰? ……また巨乳……」


「有翼族の方か……。はあ、お綺麗な方じゃのう。エレナ、胸なんぞあっても邪魔なだけじゃよ?」


「同じくらい美人であっちの人より胸もでかい奴が何を!! 姫ー、持たざる者同士仲良くしようねー」


「持たざる者とか言わないで!」




「では、まあ、上から年齢順という事で、お互い初対面の方がいる方のみ軽く紹介していきましょう。こんな事で時間を取りすぎるのもなんですから、余計な口は挟まないようお願いします。あ、勿論姫様は全力でツッコミを入れて頂いても結構ですよ?」


 とりあえずそれはスルーします。シアさんはホントに私にツッコミ入れられるのが大好きなんだから、もう。


 エレナさんと少し仲良くなった気がしたところで、それぞれシアさんが簡単に紹介をしていく。みんな互い互いに聞きたい事話したい事もあるだろうけど、この濃すぎるメンバーに好き勝手に話させては何時間、いや、何日あっても時間が足りない。どんな紹介の仕方になるかやや不安は感じるが、今は大人しくシアさんにお任せしてみよう。


「まずはこちらの白い竜人種族の方から、名前はガトーショコラ・おっぱいパン・カレードーナツといいます。初めて顔を合わせるのはウルリカさんだけですね。名前に関しては後で個人的に本人にお問い合わせください。今現在最強と囁かれている『閃光』の二つ名持ち、Sランクの冒険者です、が、ただの食い意地の張った馬鹿ですのでその様に対応してくださって結構です。ちなみにですが、何故か姫様にとても好かれてしまっていまして、たまに殺意が沸く事も……、失礼、主観の入った言葉が出てしまいましたね。まあ、ガトーについてはこんなところでいいでしょう」


 ひどい! でも的確だと思ってしまった私もひどい! ごめんねショコラさん。

 さりげなく増えてる名前のカレードーナツは、おっぱ、じゃない、メロンパンと同じく私考案とされている、カレーペーストの入った揚げたパンの事だ。カレーパンだね。辛さに弱い私でも美味しく食べられるカレーパンで、今ではショコラさんだけではなく家族みんなに大人気のおやつの一つになっている。


 シアさんはちらりとこちらに目をやった後、ツッコミが来ないのを確認してから残念そうに紹介を続ける。


「はあ。次にこの赤いのは、Aランクで『鋼爪こうそう』の二つ名持ち、ライナー・ランガーです。馬鹿二号と気軽に呼んでやってください」


「オイ」


「見てのとおり筋力馬鹿の思慮足らずですので、話を聞いたところで有益な物は一切無いと思われます。存在自体忘れて頂いても構いませんよ」


「コラ」


「ちなみにガトーの元弟子で、さらには将来を誓い合った仲。しかしこの馬鹿は恥を恥と思わず、からかってもなんの面白みも無いのでスルー推奨です」


「ぐ……。まあ、いいか」


「ニヤニヤするな。誰がいつ将来を誓った」


「今のは照れ隠しです」


「ええいうるさい! 次だ次!」


 早速からかわれてるショコラさん可愛いです。もう完全にラブラブだよねこの二人は。

 シアさんがやけに楽しそうで、私もなんとなく楽しくなってきちゃうね。ふふふ。……なんてニヤニヤしていたら、リズさんにほっぺをグニられてしまった。幸せ!


 うにうに……。ライナーさんはウルリカさんより年上なんだ? そういえば何歳なのか聞くのをずっと忘れてたよ。


「はいはい、それでは次に参りましょう。こちらの狐族の方はウルリカ・シェーステットさんです。最近リーフサイドへやって来た、姫様の一番新しいご友人の方ですね。私もそこまでお話していないので詳しく紹介する事はできないのですが」


「待て、リズより年上にはどうやっても見えんぞ?」


「……私は口を挟むなと言った筈なんですが、ね」


「ナイフを出すなナイフを!! まあ、聞くなという意味か。スマンな、続けろ」


「偉そうに……、ふう。後私の知っている範囲だと、Bランクの方ですよ、という事くらいですね。ウルリカさんについてはこの辺りで」


 いまの冷ややかな目……、マジ震えてきやがった、怖いです。もう! 怖い顔しちゃ駄目だっていつも言ってるのに! まったくシアさんは……。

 ウルリカさんはさっき自分でBランクって言ってたね。のーんびりとしたお婆、こほん、お姉さんなのに、凄く強い人だったりするんだろうか? ライナーさんみたいに筋肉質でもないし、戦ったりする人には全然見えないんだけどなー。もしかしたら魔法が得意なのかもしれないね。


「年齢順で行くと次はエレナさんですか。精神年齢で言うと姫様と同じくらいかさらに下だと思われるのですが……。ええと、エレナ・グリッズさんです。リーフエンドの森の住人で……」


「住人で?」


 何故か言葉に詰まったシアさんについ聞いてしまった。口を挟んだ訳じゃないから大丈夫かな。


「あ、いえ、申し訳ありません。それ以上お伝えする情報が特にありませんでしたので、自分でも驚いてしまっていました」


「もっと無い!? こうさ、将来超が付くくらいの大物になりそうだから覚えておいた方がいいとかさ! そんな感じの!」


「では最後に……、リズィーさん? 紹介が終わったら姫様を放して差し上げてくださいね」


「はい。ふふふ」


 実はずっとリズさんに捕まったままなのでした。

 個人的にはずっとこのままでもいいんだけどね、やっぱりキャロルさんとももっと触れ合ってほしいからねー。


「流された!! くっそう、今日の師匠ってばなーんかノリが悪いね」


「反対反対。今日のシアさんはすっごく機嫌がいいよ? 今のもノリで流したんだと思う」


「ああ、なる。さすがメイド大好きな姫、よく見てるね」


 メイドさんだからよく見てる訳じゃないですー!!


「リズィー・ランさん、恐らくAランクで一番有名な方なのではないでしょうか? 『落炎らくえん』の二つ名は冒険者であればよく耳にすると思います。その辺り詳しくは端折ってしまいますが、この方も姫様の大切なご友人のお一人です。ガトーとライナーは正直なところ別に呼ぶ必要は無かったのでは? と思うくらいどうでもいい存在なのですけど、リズィーさんは文句の付け所の無い立派な方、お話を聞かせて頂くのならまずはリズィーさんから、とお勧めしておきます」


「おい」「オイ」


 シアさんの紹介が終わると私から手を放し、みんなに向かって丁寧にお辞儀をするリズさん。

 そして、どうですか素晴らしい方でしょう、と言わんばかりのシアさんのドヤ顔が目に入った。


 今日のシアさんはノリがいいね。でもその分いつもより自重という言葉知らず、自由フリーダムさを感じるので警戒は怠らないようにしよう。







ちょっと長くなりそうです。続きます。


また場の登場人物が多くて、空気になってしまうキャラが出てきそうですね。

むしろシアさん以外あんまり喋らない予感が……

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