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214/338

その214

 未だに何がなんだか分からないよ状態な私への説明をするために、シアさんとメアさん、キャンキャンさんの三人を呼びに行ってもらった。シアさんメアさんはキャロルさんが探しに、キャンキャンさんはマリーさんが呼びに行っている。

 お客様であるマリーさんを使いに走らせるのはどうかと思ったが、自分がいない間に変な事を吹き込まれては困るとキャロルさんが無理矢理部屋の外まで引っ張って行ったのだ。楽しそうに言い合う仲良さげな二人のやり取りについ顔がにやけてしまう。


 そういえば、マリーさんが一人だけ帰ってすぐにここに来てしまったのは、一秒でも早く私にぬいぐるみをプレゼントして喜ぶ顔が見たかったのだとか。う、嬉しいけど恥ずかしい……。キャンキャンさんは一人せっせと今日買って来た物の整理中。シアさんは入り口ですぐに別れてしまい、どこに向かったのかも聞いていないらしい。


 という訳でまたフランさんと二人きりの状態に戻ったところで、みんなが揃うまでの短い間全力で甘えさせてもらおう。




 まずシアさんとメアさんが五分と経たずに連れて来られ、シアさんには帰宅の報告が遅れてしまい申し訳ありません、と深々と頭を下げて謝られてしまった。

 そのすぐ後にマリーさんとキャンキャンさんもやって来た。荷物の整理はまだ済んでいないみたいだったが、私を待たせてはいけないと張り切るマリーさんにずるずると引き摺られるようにして連れて来られて面白かった。キャンキャンさんはきっちり整理整頓しておかないと気が済まない性格なのかもしれない。


 慌てず騒がずお久しぶりですねー、とのんびり挨拶するキャンキャンさん。やっぱり大人のエルフの人は、何十年かぶりの再会でもこんなのほほんとした感じなのが普通なのかな? でもマリーさんは少しテンション高めに見えるね。やっぱり久しぶりにお友達に会えて本当は嬉しいんだよね? ツンデレなだけだよね? 身長で勝ったのがそこまで嬉しい訳じゃないよね……。


 これで一応のメンバーは揃ったかな。ほかのみんなには後で私から……、いや、恐らく全て把握しているシアさんから説明をしておいて貰おう。

 まったく、シアさんは相変わらず訳の分からない策略を張り巡らすんだから……。お友達を会わせない様にするだなんて、理由によってはしっかり強めに叱らないといけないね。……泣かれそうで怖いけど。



「えっと、まずは二人の関係からかな。お友達なんだよね?」


「いいえ? まさか」


「ただの顔見知り、ですわ」


 お互い、ふん、と顔を背ける様にして言う二人。その様子を見てフランさんとメアさんは微笑ましそうにしている。


 あっれー? 何この反応。本当にお友達じゃなかったらどうしよう……。友達でもまさか、喧嘩友達的なものだったり?


「キャロ」


「お嬢様」


 シアさんとキャンキャンさんが、咎める様に二人の名前を呼ぶ。

 二人はそれでハッと気付いたかの様に……。


「も、申し訳ありません! あの……、はい、本当は大切な友人ですわ。あ、姉の様に思っていますの。うう、恥ずかしい……。あと、失礼ポイントの加算はどうか……」


「すみませんシラユキ様! ええと、まあ、妹みたいな感じですね。コイツがもっと小さかった頃の話なんですけど、少しの間フェアフィールド家に厄介になっていた事があるんですよ。その後も手紙のやり取り等、色々と」


 さすがに私に誤解させては不味いと思ったのか、素直に話してくれた。でも失礼ポイントはしっかりと加算されていると思う。これはもうお仕置きは確定か。


 ふう、よかったよかった一安心。二人は仲のいいお友達、仲良し姉妹みたいな感じで間違い無さそうだね。


「なるほどねー、安心したよ。という事はキャンキャンさんも?」


 キャンキャンさんはマリーさんが生まれた頃からのお世話係の筈だし、きっとそうだよね。


「あ、はい。でもまさかここで再会、しかも同じメイドになっているだなんて思いもしませんでしたよ」


「そ、そうよね、後で詳しく話を聞かないと。いきなりメイドに、しかもハイエルフの方々に仕えてるとか何があったの……。リーフサイドまでの護衛をお願いしようとしたら連絡が一切取れなくて心配したんだから。あ、あと、レンさんは、その、キャロルの恋人のシア姉様で間違いないんですの?」


 控えめに訊ねるマリーさん。さすがにこんな質問は誰だってし難いと思う、女性同士で恋人とか。


「あ、ちょ」


「誰が恋人ですか誰が!! ……キャロ? まさかあなた、行く先々でそんなでまかせを吹聴して回っていたのではないでしょうね……」


「いやっ、そのっ……、あはは……」


 シアさんの一喝にビクッと身をすくめ、苦笑いで答えるキャロルさん。


「あははじゃありませんあははじゃ……。まあ、今はいいです、ここでは不問としましょう。……ですが、覚悟だけはしておきなさい」


「あああ……、だからコイツらと会いたくなかったのよ……、くっそう……」


「でまかせ? ……なるほど。自業自得ですわ、ふふ」


「うっさいわ……」


 シアさんの反応を見て納得し、いい気味だと笑うマリーさん。

 キャロルさんは言い返す元気も無いのか、がっくりと肩を落としている。


 ああ、ニヤニヤしちゃう、このやり取り。本当に仲のいい姉妹みたいで見ていて面白い。

 シアさんが私をからかうためにキャロルさんを追い出してたんじゃなくて、キャロルさんが二人に会いたくなかったから逃げてたんだね。なるほどなるほど。私は何かあるとつい真っ先にシアさんを疑っちゃうね、これはいけない事かもしれない。でも大体はシアさんが主犯な事が多いし……、ううむ。

 まあ、その事はもう過ぎた事にしてしまおう。マリーさんはこれでもっと肩の力を抜く事ができるんじゃないかな。知らない土地でも見知っている顔が一人いるだけで全然違うよね。




 私が特に質問をしなくても、メイドさんズやマリーさんの話を聞いているだけでかなりの情報を得る事ができた。

 キャロルさんがシアさんを探しにフェアフィールド家を訪れて来たのが二人の初めての出会いらしい。その頃のマリーさんはまだ二、三十歳の子供、今の私と同じくらいの年齢の時だ。リズさんを弟子にする少し前の話なんだと思う。


 シアさんの姿を見かけた、という直接的な情報ではなく、シアさんが失踪した時期と同時期に冒険者を辞めて、メイドとして働いているエルフがいる、という曖昧な情報だったのであまり期待はしてなかったみたいだが……。まあ、結果は予想通り、そこにいたのは別人、キャンキャンさんだった。冒険者を辞める時期とエルフという種族、それが偶然重なっての誤情報だったんだね。


 キャンキャンさんと会うという事は、一緒にいるマリーさんとも顔を合わせるという事になる。一人っ子でまだまだ子供だったマリーさんは、背が低めのキャロルさんを見て年の近いお姉さんだと思い懐いてしまったんだとか。キャロルさんもお姉さん扱いは純粋に嬉しくて、暫く、と言っても数年程度だが、フェアフィールドの町に滞在する事にしたらしい。


 出会いや仲のよくなった経緯は分かった。だけどその仲のいい、妹みたいに思っているマリーさんにどうして会いたくなかったのか。それは……


「やっぱりショックだなあ、マリーあんなに小さかったのに……」


「ふふふ。次に会ったら自慢してやると心に決めていたんですのよ!」


 どうたら当時のキャロルさん、マリーさんが自分より小さい事をいい事に散々からかってしまっていたみたいで、成長したマリーさんとはあんまり顔をあわせたくなかったという、なんともしょうのない話だ。ショコラさんのお手伝いは疲れさせられると分かっていたのに、それでも逃げて行っちゃうあたりかなり気にしていたのかもしれない。

 私は自分より背の低いどころか、自分より年下のエルフの人に会った事がないからこれはまだ理解してあげれそうにない。だが、きっと他人事ではなくなる日もやってくるのだろう……。




「まあ、念願叶って最愛のシア姉様と再会できた様でよかったですわ、それは私も嬉しいんですのよ? でも……、レンさんの事をどう貴女に伝えたらいいか悩んでいた私の苦労はなんだったんですの……」


 ああ! 最近何か悩んでるとか言ってたのはその事だったのか! 私はてっきりシアさんのお仕置きを怖がってるとか、もしかしたら恐怖が転じてシアさんの事を好きになっちゃったんじゃないか!? って変な勘違いしちゃってたよ。


「え? あ、ああ……、うん、ごめん、それとありがと。ふふ、やっぱいい子だねマリーは、久しぶりに撫でてあげようか?」


「子供扱いはやめて! ううう……、百にもなって、しかも皆さんの前でこれは恥ずかしいですわ」


 恥ずかしそうにして顔を伏せながらも、声色は嬉しそうなマリーさん。やっぱりお姉さんみたいに思ってるキャロルさんに撫でられるのは相当嬉しいんじゃないかなと思う。



「シアの前なのにキャロルがお姉さんっぽい……。なんだろうこの違和感」


「うん、面白いね。いつもはレンが近くにいると見たまま子供っぽい言動なのに」


「あ、そうなんですか? キャロルさんって見た目に反して凄く大人な、年相応な方だと思ってたんですけど」


「本当に見たままの子供ですよあの子は。毎日毎日ベタベタとくっ付いてきて疎ましくてしょうがありませんから」


 そんな二人を横目に見ながら、しかし邪魔はしないようにやや小声で話すメイドさんズ。


 うーん……、あれ? 私、ハブられてね? ちょっと疎外感。ま、まあいいか……、みんなが楽しそうで何よりだ。




 ショコラさんのお手伝いとミランさんの家のメイドさんのお仕事はめでたく(?)廃業。積もる話もあるだろうし、キャロルさんには暫くマリーさんのお世話係をやってもらう事になった。キャロルさん本人は凄く嫌そうにしてたけど……。

 これからはマリーさんの違う一面を見ることができそうだ。楽しみ楽しみだー。







マリーが悩んでいた云々の話はザックリとカットしてしまいました。


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