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その20

 さあ大変です。



 私がここまで泣いたのは初めての事。


 あたしって、ほんとバカ。という泣きだったんだが。後は急に出てきた寂しさかな。あの時、家族に、みんなに、どうしても会いたくなっちゃったんだ。




 大泣きする私を抱き上げて帰ってきた兄様とシアさん。

 静かに理由を聞く父様。怒り狂って町を破壊に向かうかと思ったよ。やっぱり冗談だったか。

 私を必死で泣き止ませようとする姉様。知らせを聞いて飛んで来てくれた母様。

 あ、これはシアさん死んだな、と、かなり本気で思ってるメアさんフランさん。



 ゆっくりと説明する兄様。






 そして、説明が終わり。


「こいつ多分、申し訳なく思っちまったんだろ、顔も知らない冒険者にさ。優しすぎる、相手の事を思いやりすぎる、ってのかな。後は、あれか、俺とバレンシアしか近くにいなかったからな。急に寂しくなったんだろ」


「私の、私の配慮、思慮が足りませんでした。浮かれていた、いえ、言い訳のしようもありません。どうか、厳しい罰を」


「バレンシアのせいじゃ無えよ。誰のせいでも無い。何かが悪いならそれは、タイミングが悪かったんだろ。色々とな」


「話を聞いてると、そうかもね。シラユキの頭の良さ、物分りの早さを少し軽く見ていたかしら」


「ああ、具体的では無く、遠まわしにでもいいから、まずは教えておくべきだったな」


 今の説明でここまで理解されちゃうものなのか。やっぱり家族って凄いな……


「ごめんねシラユキ? 私も、もう成人してるんだけどさ、いい言葉が浮かばないや。まだまだだね、私、お姉ちゃんなのにさ」


「ううん。ユー姉様、大好き」


 抱きつく、甘える。今は全力でみんなに甘えたい気分なんだ。






「しばらくは町に、いや、どうするか」


「そうね、ちゃんと色々と知ってからなら、何も問題は無いと思うわ」


「そうなると、だ」


 父様がこちらを向く。そしてにっこりと笑い。


「必要になったな。だが、シラユキが決めていいぞ?」


 私が決める?


「うん? 何を?」


「前に皆で決めたろう? 勉強なんて必要になったらやればいい、と」


 あー、決めたね、そういえば。五、六年前か。


「今回は、シラユキに何も予備知識を与えていなかった事が一番の原因だろう」


「だから、先に色々教えてあげちゃえば、知っておけばいいのよ」


「そうよね、もっと早く冒険者について、少しくらいは教えてあげればよかった。うーん、ごめんねシラユキー」


 ほっぺグニグニされた。




 勉強、勉強かー……。確かに、この世界の事、この世界での当たり前のことを、もっと知っておかないと。

 先にある程度情報を入れておけば、憧れ、楽しみが、目の前であっさり砕けた。何て事にはなりにくいだろう。


 今の私は、知識と頭の良さのバランスが取れていないんだ。




「これからは書庫を自由に使うといい。だが、必ず家族の誰かか、ふむ、バレンシアと一緒にな。本の知識を自分の中だけで完結させちゃいかんぞ?」


「そうよ? 本はあくまで本、あなたが得るのはその本に書かれた情報を、自分なりの知識に変えたもの。それだけではいけないわ」


 うわー、この二人の言葉はなんか深いわー、さすがだわ……。これ聞いてなかったら、私、絶対一人で読んで納得しちゃってたよ。


「私、ですか?」


「ああ、バレンシアは五百年近く外で生きてきた、生き抜いてきた、本物の冒険者だ。これ以上の適任はいないだろう?」


「そんなっ! ウルギス様、エネフェア様との誓いも守れなかった私に今さら、何が……」


 誓い? え? シアさん泣いてる!?


「それなら罰よ。あなたはこれからも、今までと変わらずシラユキのご、側にいるように」


 ご? ご……、私のご、護衛か? え!? シアさん私の護衛だったのかまさか! どう見てもメイドさんが本職だよ!!


「はいっ! ありがとうございます! 改めて今日、ここに誓います。……あ、やはり後にしましょう」


 ちょ、それは無いよ! 今いいところだったじゃん!!


「やめちゃうの?」


「ええ、姫様の前では少々、都合の悪い内容も含まれますので?」


「気になるよそれ! 何か怖いこと誓ってそうだよ!」


「いえいえそんなまさかうふふふふ」


「目! 目を合わせて! ああ、もう! すっかり元のシアさんだよ! よかったよ!!」











「いっやー、さすがに今回は死んだかと思ったよ、レン」


「そうですね、私も死んで償うつもりでしたし」


「またさらっと怖いことを! 駄目だよ、絶対!」


 この人はちゃんと見ておかなきゃ。色々な、色々な意味で怖いよ……


「あはは。ま、何も変わらなくて良かったよ。私、紅茶入れるの苦手だしさ、シアがいなくなると困るのよねー」


「シアさんのいれる紅茶っておいしいよねー。同じ茶葉なのにどうしてそこまで違いが出せるんだろ」


 本当に不思議だね。何で私の護衛役の、元冒険者の人が、ここまでメイドさんの仕事を、しかも完璧にこなせるんだろう?


「メイドですから」


「いや、私たちも一応メイドだよ」


「やっぱり私らはあれだね、胸に栄養が、いっちゃ、って……」


「姫様? 少し目を瞑っていて頂けますか? できたら耳も押さえておいてもらえると、大変助かります」


 やばい! シアさんが戦闘用オーラを纏っている!


「だからシアさん小さくないって! 私から見たら大きいよ!!」


「姫、子供じゃん?」


 メアさんフォローを潰さないで! それより早く逃げて! ナイフ出る! 出た!!!






次に町へ行くのはいつになるやら。

それはつまり、それまで新キャラが出ないという事に……?


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