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186/338

その186

 暴走したカイナさんから奪い取るように救出され、そのまま、私を抱き上げたままキャロルさんは少し離れた椅子に座る。なんという自然な交代だ。キャロルさんのメイドスキルもなかなかの物になってきたようだね。

 クレアさんもそれに続いて、また私の右隣へ立ち手を繋ぐ。カイナさんは左隣に椅子を持ってきて座ってもらっている。また暴走するといけないので、お仕置きも兼ねて手は繋がない。


 キャロルさんの膝の上は他のメイドさんズとはまた違った良さがあるね。振り返るとすぐに顔があると言うか、とても近い、キスもしやすそうだ。……ここでキスしやすいとか考えちゃう私も結構危なくなってきてしまっているのではないだろうか……?

 ま、まあ、そんな事はある訳は無いね。ちゅっちゅってする、軽く触れ合うくらいのキスの話だからね。私って、メイドさんズとするキスは本当に大好きになっちゃったなあ……。でも兄様とも父様ともするのも好きだから女の人だから、っていう事じゃない、よね? うんうん、安心。……安心? 普通に考えるとキスが好きなお姫様って事になっちゃうよ!?

 ああ、違う違う。家族とキスするのが好きなんだった。ちょ、ちょっと焦っちゃったよ……




「大丈夫ですかシラユキ様? あー、ちょっと塞ぎ込まれちゃったじゃない、どうすんのよ? ねえ、気になったんだけどカイナってやっぱレ、……こほん。えっと、そっちの趣味なの?」


 キャロルさんは少し怒った風にカイナさんに問いかける。


 レ……? ああ、レ、ズ? ひい! 実際そういう単語で聞かされるともの凄く抵抗がある!! ……はっ!? つまり私はまだまだノーマルなんだよ!! 大安心。


「そうなんじゃないのか? まあ、前にも言った様にその点は私は否定はしない。親友として認めてやらねばな」


 うんうんと頷きながら言うクレアさん。


 クレアさんはなんて理解がある人なんだ……。もしかして私とカイナさんをくっ付けようとしてる? ま、まさかね……。私がもっと嫌がれば止めてくれるんだろうとは思うんだけど、イヤ、とか、やめて、とか言って拒否した場合カイナさんは本気で泣いちゃいそうだしね……。それに私も普通のキスまでなら全然嫌じゃないからねー。舌を入れられるのは勘弁だけど!


「え、あ、ち、違うわよクレア! 私は姫様を可愛がって甘えて頂きたいだけで……、その、性的な意味で甘えられたいと仰られるのなら受け入れる覚悟はできているんだけど……」


「仰りませんー!! 言いませんー!! 変な覚悟しないでよ! もう!」


「か、可愛らしいです姫様! は……、すみません! 申し訳ありません!!」


 なんか反応の仕方がシアさんに似てきたよカイナさん……




 落ち着いたところでまたクレアさんの膝の上に乗せられる。キャロルさんは今日は自分はおまけって言っていた通りに、交代する事に関して文句も何も言わず、素直に応じる。


「うーん、カイナさんはもう完全にそっちの人になっちゃったかー。キャロルさんもそうだから私もそういうのは否定はしないからね、安心してね。でも私はノーマルなんだからね!」


「ち、違いますよ姫様。私は姫様にずっと触れていたいだけですから。朝起きられてから夜お休みになられるまで、いいえ、お休みになられてからも常にお側でお世話させて頂きたいんです。バレンシアが本当に羨ましいです……」


 なんでそこで真っ先にシアさんの名前が挙がるんだろ? 私のお付のメイドさんは三人いるのにね。私のメイドさんイコールシアさん、という認識になっているんだろうか?


「ずっと触れていたいとか何かいやらしい表現に聞こえるぞ。まあ、私もそうだな、姫様のお着替えやお食事のお世話は、たまにでもいいからさせて頂きたいと常々思っている。カイナはアレだな、姫様の可愛らしさを前にもう少し自分を抑える事ができればいいんだが」


「シラユキ様を傷モノにしようものなら骨の一本や二本どころじゃ済ませないからね。つーか、クレア? アンタってカイナといると結構口数増えるんだね。やっぱ親友が近くにいると話し易い?」


 傷モノ? え? どういう……、うん? そうかな? 言われてみればそうかもしれない。

 クレアさんは大抵はカイナさんと同じ場所にいることが多いから、私にはよく分からないかも。キャロルさんは朝の訓練を一緒にする事が多いから違いが分かりやすいのかもね。


「む……、そうか? そうかもしれんな……。そう言うキャロルこそ随分と王族の方々のお側に立つ事に慣れたな。以前はちょっと前までの姫様に対するのカイナの様にビクビクしていたのにな」


「懐かしいねその話。カイナさんは一緒に本を読んだりして慣れていったんだよねー。ふふ」


「はい。今でもまだ、もし嫌われてしまったら、と考えてしまう事は多いんですけどね。姫様が他人ひとを嫌うなんてよっぽどの事がなければありえませんよね」


「へー、え? それが今ではプロポーズするまでに? きょ、極端な奴……。男は完全に駄目なんだよね? 私は男は嫌いだけど、カイナは苦手? 怖いんだっけ」


 男の人が嫌い? どうしてだろう……? あまり突っ込んで聞いていい事じゃなさそうだけど気になるなー……。


「え、ええ。自分でもどうしてそこまで男性が怖いのかよく分からないんですけどね……。でも、もういいんです、男性とのお付き合いは完全に諦めましたから。私はエネフェア様の補佐を続けながら、姫様を可愛がる一生を過ごす事にすると決めたんです」


「なるほど、もう駄目だコイツ。シラユキ様、諦めましょう」


「二人とも諦めちゃ駄目!! 私も男の人はまだ苦手だし、一緒に克服できるように頑張ろうよ。ね?」


 森に住んでる男の人はそこまで怖いとか苦手って訳じゃないんだけどね。


「は……、はい!! ああ、なんてお優しい姫様なんでしょう……。クレア、また代わって」


「あ、ああ。だが、キスはいいが舌は入れないようにな。さっきは止めなかったが、考えてみたらバレンシアにバレようものなら殺されかねんからな」




 ひょいと左隣のカイナさんに手渡すように移動させられる。この感じ、物扱い、不思議と嫌いじゃない。


「ああ、やっぱり可愛らしすぎます姫様……。ほ、頬が緩みきっちゃう……。早速キスをさせて、あ、キスと言えば、クレアは姫様とあまりキスしてないんじゃない?」


 ああよかった、普通に正気のカイナさんだ、安心して全力で甘えちゃおう。

 クレアさんとのキス? うーん……、何回もあるよね? でも唇にされた事は一回も無いかも。


「頬に何度かさせて頂いた事はあるな。そもそも人前でする様な事ではないだろう。そうだな、今日お昼寝されるときにでも何度かさせて頂くか。宜しいですか? 姫様」


「軽ーくするだけならいつでもいいよ? んー、クレアさんって恋人いるんだし、その人とキスは普通にしてるの?」


「姫様!? な、何を!!」


 おお、慌ててる慌ててる。でも繋いだ右手を潰されるような事はない。クレアさん本気で気にしちゃってたからねあれは……


「ええ、キスもその先も、最後までしていますよ。いつもいつも惚気を聞かされて……」


 さ、最後まで!? カイナさんがここまですんなり言えちゃうっていう事は、やっぱりもう愛し合ってるレベルの恋人なんだ?


「やめろカイナ!! くっ、姫様がお側にいては手が出せん……!! アイツは偽の恋人だといつも言っているだろう、姫様も信じないようお願いします」


 はい、信じません。……クレアさんの嘘はね!!


「うっわあ、意外……、クレアってお堅いイメージがあったんだけどなあ……。いい加減認めればいいのに。偽の恋人なら最後までする必要はないっしょ? ま、ラブラブな様で何より。羨ましいよ」


「ぬ……、ん? ああ、キャロルはバレンシアの事が、だったな。まあ、バレンシアはもう完全に姫様一筋だ、冷たい言い方になるが諦めるしかないと思うぞ」


 あ、すんなり話が変わっちゃった、ちょっと残念。シアさんは……、まあ、ある意味完全に私一筋だね。


「ああ、それはいいのいいの、考え方を変える事にしたんよ」


「考え方? ……したんよ?」


「ちょっと言葉を砕きすぎましたか、すみません。クレアといるとどうも言葉遣いが悪くなってしまいますね。ええと、シア姉様はシラユキ様の愛人になるんですよね? フランもメアも、そして私も。それならば愛人同士そういう事もしていいんじゃないかと……」


 ……?


「え……? ごめんなさい、よく分かんない……。でも分からない方がいいっていうのだけは分かる!! 愛人愛人ってみんなどこまで本気なの……?」


「ふふ、冗談ですよ。そうでも考えないと現実が辛くて……」


「な、なんかごめんね……。あ、お膝に乗せてほしいなー? キャロルさん」


 ちょっと空気がしょんぼりとしてきちゃったのでごまかしを入れてみる。


「!? はい!! うっわ、シラユキ様のおねだり可愛すぎ! も、もう一度お願いします!!」


「恥ずかしいよ!!」


「愛人……。そうよ、私も姫様の……。ふふふ……」




 次はまたキャロルさんの膝の上。落ちないようにぎゅっと抱き締めてくれるのが嬉しい。


「さっきも思ったんですけど、キャロルの膝の上に姫様、この可愛らしすぎる組み合わせは絵にして飾って置きたいくらいですね」


 ええい、また褒めまくって……。そういえば母様も姉様も大絶賛だったもんね……。


「やめてよ恥ずかしい。ま、まあ、私は自分でも可愛い方だと思ってたけど、シラユキ様はもう次元の違う可愛らしさだよね」


「褒めすぎ褒めすぎ。子供だからそう見えるだけだっていつも言ってるのに……」


 本当に可愛い人っていうのはキャロルさんみたいな人の事を言うんだよ。


「ご謙遜を。キャロルも今更何を、当たり前だろう? 姫様は言うなれば、そう、女神様ですら陥落しうる程の可愛らしさなのだからな」


「ちょっ、クレア!!」


「!? も、申し訳ありません姫様!」


「え? 何が?」


 大袈裟に言い過ぎた? でもいつもの事だよねそんなのは……。


「何でしょう? 今のってただの誇大表現ですよね? まあ、誇大表現でも何でもなく、本当に女神様だって一目で落ちてしまう可愛らしさですよ」


「もう、褒めすぎだよキャロルさん……。そういえば女神様も私を膝の上に乗せるのが大好きなんだよねー」


「姫様!?」「姫様!!」


「……え?」


「……あ」


 また口走っちゃった!!




 ええい、もうここまで来てしまったのならしょうがない、全部話しちゃうとしようじゃないか。

 つい色々と口走っちゃうのは直りそうにないね。町だとそうでもないんだけど家の中だと気が緩んじゃうからかなあ……。


 私だけが椅子に座り、その左右にはカイナさんとクレアさんが立っている。キャロルさんにはお話を聞いてもらうために、正面に椅子を置いて座ってもらおうと思ったのだけれど、立ったままでいい、と遠慮されてしまった。


 とりあえず女神様に会った事がある事について、秘密共有仲間の十人が知ってるのと同じ内容の説明を頑張ってし終わる。カミサマ、六回の人生、女神様、生まれ変わり、そして前世の知識。

 説明している間、キャロルさんはずっと黙って、静かに聞いてくれていた。父様みたいにいきなりキレちゃうんじゃないかとも思ってたけど、まあ、いきなりすぎる話だからかな。


「こんな、ところかな? カレーを知ってたのは前世の世界にも同じ料理があったからなの。今まで内緒にしててごめんね」


「あああ、せめてエネフェア様を交えての方がよかったのでは……。うう、後でバレンシアに何を言われるか……」


「姫様本人が話されると決めたんだ。それに、キャロルには近い内に話すつもりだったからな、バレンシアの奴も分かってくれるだろう」


 あわあわと心配そうにしているカイナさんをクレアさんが宥める。

 母様からキャロルさんに話してもいいっていう許可はちゃんと貰ってあるからね、全く全然、何も問題はないよ。


 それまで黙っていたキャロルさんが、首を傾げながらゆっくりと口を開く。


「ええと……、前世の知識、ですか? 記憶ではなく知識? すみません、何となくは分かるのですが、急なお話すぎて……」


 むう、説明下手な私のせいで上手く伝わってないのかもしれない。でも何となくは分かってもらえたみたいだね。


「さっきのカレーに例えるとね、カレーっていう料理と味は知ってても、それをいつ食べた、とか、それを食べてどう感じたか、とかはもう覚えてないの。うまく説明できなくてごめんね」


「わあ! 何度も謝らないでください! シラユキ様は何も悪くありませんよ! ええと、全て本当の事なんですよね? し、シラユキ様規格外過ぎる……。しかし、いいんですか? 私なんかが聞いていい内容の話ではないと思うんですけど……」


「む! キャロルさんはこの家に住んでる私の大切な家族の一人なんだよ? 私なんか、なんて言わないでね。それに、別にそこまで隠さなきゃいけないっていう事でもないからねー」


「す、すみません! 大切な家族……、ふふ。え? そうなんですか? 結構重いお話だと思いますよ?」


 重いかなあ? まあ、母様が内緒にするって決めたんだから、あんまり触れ回るようなお話でもないのかもね。



 いやー、やっとキャロルさんにも話す事ができたね。胸のつかえが取れた感じだ。そう思い始めたのもつい最近な気がするんだけど……、まあいいや。

 キャロルさんも色々と聞きたい事はあるだろうと思うけど、我慢してくれてるのかな? 不思議そうな、あんまり納得がいってない様な、でも少し嬉しそうな、複雑な表情をしているね。

 後は、ショコラさんには話せそうに無いけど、ミランさんには聞いてもらいたいな。また何年かしたら忘れちゃうと思うけどね!



「あの、シラユキ様、気になった事が一つあるのですが……、聞いてもいいんでしょうか?」


「おい、キャロル。事この件に関しては何も追求してはならないとエネフェア様がお決めになられているんだぞ? これ以上はさすがに許されん」


「うん? いいよ? 答えられない事とか分からない事だったらそう言うから。キャロルさんにやっと話せて今日は嬉しいし」


「ありがとうございます。ええと、シラユキ様ご自身のことではなくてですね、女神様もシラユキ様を膝に乗せるのが好きって、どういう意味なんです? いや、意味は分かるんですよ。分かるんですけど……」


「え? あ、ああ、その事……」


「言われて見ればそうですよね。ま、まさか、姫様? 度々女神様にお会いしているとかでは、ありませんよね?」


「いやあ、さすがにそれは……。でも言葉どおりそのまま受け取ると、生まれる前? にお会いしたその時一回だけっていう感じじゃないよね」


「な、ナンノコトヤラ」


「ちょ、うわ! 聞くんじゃなかった!! し、シラユキ様凄すぎる……」


「い、一応エネフェア様にご報告させて頂きます。とりあえず今は忘れよう、忘れるんだ二人とも」


「女神様がこの館に何度かいらっしゃってるっていう事……? え? えええ!? 姫様!!?」


「知らなーい。何も聞こえなーい」







次回は二週間以内には……、何とか?

少し時間が掛かりそうです。


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