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183/338

その183

「お待たせしてしまいまして申し訳ありません。ああ、キャロとガトー、それに、ソフィーさんも戻られていましたか」


「あ、おかえり、シア、クレア。こっちはこっちで面白い事になってたから全然待ったって感じはしなかったわね。ふふふ」


「面白い事? ……なるほど、姫様にお仕置き中でしたか。どうか許して差し上げてください、お辛そうです」


「ま、もう暫くね。私もまだこの子を膝の上に乗せていたいし、ね?」


 アッー!! 許してー!! まさかこんなお仕置きをされるなんて夢にも思わなかった!! なんという絶望! なんという悲しみ! 姉様の膝の上でなかったら暗黒面へ堕ちてしまうところだ……



 今私に施されているお仕置きは、ただ単に姉様の膝の上から降りない事、それだけの事だ。そう、それだけの事の筈なのにこの身を、心を襲う絶望感、耐えられない! 耐えにくい!!


「むう、私もシラユキを膝の上に座らせて可愛がりたいんだが……。もう充分だろう? 許してやれ」


「そうです、本当にお辛そうで見ていて羨ましく……。あ、いえ、お預けという状況は辛いだけですね。あの思い返す事すら恐ろしい一週間を思い出して濡れ」


「はいそこまで」


 あの後、シアさんとクレアさんが準備に出て行った後すぐ、着替え終わったショコラさんは、何故かソフィーさんと一緒に戻って来た。全裸がどうのこうの言っていたのが少し気になるが、聞かなかった事にする。

 ショコラさんはいつも流しているだけの髪をポニーテールにしてクレアさんのメイド服を。ソフィーさんも着替えを持って来てるはずも無かったので、メアさんのメイド服を着て、髪は首の後ろ辺りで縛り、纏めている。……着替えが無い、全裸、なるほど。聞かなくてよかった。

 私は早速この素晴らしいメイドさん二人に甘えに行こうと思って姉様の膝から降りようとしたのだが、もうちょっと座っていなさいと止められてしまったのだ。


 姉様は何となくただもう少しだけ私を座らせていたかっただけだと思う。だけど私はその時もの凄く残念そうな顔をしていたらしい。

 多分姉様は、自分の膝の上よりその二人の方がいいの? お姉ちゃん泣いちゃう! と嫉妬してしまったんだろう。お仕置きに丁度いいわねうふふ、と今に至る。


「甘えん坊のシラユキにはちょーっときつかったかな? 教えちゃったのはシラユキだけど聞いたのはクレアなんだから、もうこれくらいにしてあげない? ユーネ様」


「シラユキ様は本当にメイドさん大好きなんだなあ……。ガトーにっていうのはちょっと複雑だけど。ユーフェネリア様もうそろそろ放して差し上げても……」


「お願いしますユーフェネリア様! 罰ならどうか私に!!」


 私の辛そうな表情を見てか、援護射撃がポンポンと飛んでくる。ありがたい事だね。キャロルさんは姉様にはまだあんまりお願いとかできないのに……。そんなに辛そうな顔してるとは思えないんだけどな……、姉様の膝の上も大好きだし、幸せだし。ちょっと大袈裟にして見せただけだよ……


「あらら、このままだと私が悪者になっちゃいそうね。まったくもう……。ほらシラユキ、行っていいわよ」


 姉様は名残惜しそうに私を抱えていた両手を放す。


 許された! わちき許された!! まだ許されてないと思うけど! でも今は、そんな事はどうでもいいんだ。重要な事じゃない。何だっていい! 素敵なメイドさんに抱き付くチャンスだ!


 姉様の拘束から逃れた私は、目の前に座っている素敵なメイドさん二人、その内の一人ショコラさんへと全力で飛びつく。


「ショコラさん大好き!! このままうちのメイドさんになってー!!」


「おお? いいぞいいぞ。可愛い娘のシラユキの頼みだ、メイドでも愛人でも母親でも何でもなってやろうじゃないか」


 ちょっと強めに飛びついてしまったのだが、ショコラさんは特に気にした風もなく優しく抱き返してくれる。


 何か口走っちゃったけど気にしない。とりあえず全力で胸へと頬擦りを開始だ!


「ああ、なんて可愛らしい……。シラユキ様、私にも後で抱きついてきてくださいね」


「うん! ちょっと待ってねー」


「ソフィーさんへはいけませんよ? 姫様の愛らしいお尻が撫でられてしまいますからね。まったくガトーは……、服装一つでこれですか……」


「いけませんか? うう……、ではお互いの舌を絡めながら太腿に指を這わせ合うくらい」


「ソフィーは姫に触るのは禁止!! 姫も迂闊に飛びついちゃ駄目だからね! 私だってまだ舌は入れたことないんだから!」


「そんな……。わ、分かりました。でも……、ふふ、見ているだけで幸せになってしまいますね」


「はーい! えへへー、ショコラさーん」


「なんだこの笑顔は……、堪らん!! もっと早く着てやればよかったな……、はは」


「私も初めてメイド服着た時は抱きつかれたなー。シア姉様に即剥がされちゃったけど。くそう……」






 そんなこんなで、もう頭から抜けかけていたシアさん作のオウドンがテーブルに並べられる。しかし何故か姉様の前と、ショコラさんプラス私の前にだけ、二皿しかない。またクロッシュで隠されてはいるが、大きさは普通のパスタ皿、一人前の大きさに見える。香りも特に流れてこないのでどんな料理なのか想像もできない。


 これはもしかすると、シアさんは本当に私と姉様の分しか用意してなかったのかもしれないね。オメーに食わせるおうどんはえ!! とかそんな感じか。

 まあ、それならそれでもいいかな、今はまだショコラさんの膝の上に座らせてもらってる状況だし、二人で仲良く分けて食べればいいよね。私は一口二口食べれれば満足だし、何より……、美味しい物は友達同士で分けて食べる! ショコラさんとの大切な約束だ。あーんして食べさせてもらっちゃおうかな、うふふ。


「二皿? どういう事だ?。ああ、スマン、私の参加が急すぎたか……。食材の用意が元々二人分しか出来ていなかったんだろう」


「ショコラさんは私と一緒に」


「いいえ? まあ、それは今は置いておきましょう。まずは今暫く準備のお時間を頂きます。姫様、ユーフェネリア様のお膝の上へとお戻りください」


「ふぇ? う、うん。……準備?」


「何かしら? ほら、おいでシラユキ」


 シアさんの急なお願いに特に何も考えず、姉様の膝の上に座らせてもらう。姉様も私が戻って来て少し嬉しそうだ、早速頬をグニられてしまった。


 つい言われるまま戻っちゃったけど、何の準備だろう? 食材が足りない訳じゃないんだよね? ショコラさんの膝の上は充分堪能したからいい……、いや、よくない。まだ足りない! 後でまた乗せてもらおっと。


「なになに? 何の準備? やっぱりレンの作る創作料理、一筋縄にはいかないみたいね、ぬふふ」


「私たちにも手伝える事ある? 順番終わったしもうやる事も特に無いしさ」


 フランさんとメアさんが準備と聞いて手伝いに入ろうとする。やっぱりこの三人は仲が良いね。ちょっと頬が緩んじゃう。


「いや、もう後は蓋を開けて食べて頂くだけだろう? また一体どんなふざけた事をする腹なんだお前は……」


 クレアさんもいつもの調子に戻ったみたいで普通に話に参加してきているね。多分私の期待に応えられなかった事を気にしちゃってると思うけど、そこは私とシアさんの二人で何とかしよう。


 って、後はもう食べるだけ? なるほど、クレアさんは中身を知ってるのか。お手伝いしてたみたいだから当然かな。

 となると、食べる前に変な前置きの小話でも用意してあるのかな? この料理に纏わる言い伝えとかそんな感じの。ふむふむ、なんだろう、興味が沸々と湧いてきてしまった。


「まあ、焦らず騒がず見守っていなさい。フランとメアもありがとうございます。ですが、私が軽く口に出せば済んでしまう程度の前準備ですから特に手伝いは必要ありませんよ。それでは次に……、キャロ、ガトーの横、姫様の座られていた椅子に座りなさい。ちなみに拒否権は勿論理由を問う権利もありません。即座に動きなさい」


 前半の優しい柔らかい口調とは打って変わって、キャロルさんには何故か冷たく言い放つシアさん。


「はい!! でもなんで私だけ睨みながら言うんですか! 多分ガトーのせいか……、シア姉様って結構嫉妬深いのね……、意外。あ、失礼しますね」


 シアさんの命令? に即座に行動に移すキャロルさん。


 うん、シアさんはかなり嫉妬深いと言うか、すぐぱるぱる妬ましがっちゃう人だよ。自分は本物のメイドさんなのに、ショコラさんはメイド服を着ただけで私に飛びつかれるほど気に入られちゃったからね。あれ? 私のせいじゃね? うん、メイドさんは悪くない。



 今更だけど、私たちが今いるテーブルはいつもの丸テーブルではなく、メイドさんたちが使っている長方形のテーブルだ。さっきまでは横に長い一辺に私と姉様、ショコラさんの三人で、私を挟むようにして座っていた。並び方は向かって、姉様、私、ショコラさんの順。

 現在は私が姉様の膝の上に移動して、空いた椅子にキャロルさんが座っている。ソフィーさんは念のため少し離れた所に座らされているが、今は除外する。これの何がシアさんの言う準備になるんだろう……



「はい、さらにお待たせしてしまいましたね。これで全て、ではありませんが準備は整いました。ふふふ……、最後の仕上げと参りましょうか」


 キャロルさんが椅子に座ると、シアさんは満足気ににんまりと笑顔でテーブルに近付いてくる。色んな意味でとてもいい笑顔だ。

 シアさんは笑顔のまま、姉様プラス私の前に置かれていたお皿をキャロルさんの前に移動させる。どうやらこれが最後の仕上げらしい。


「え? 何で私に? シア姉様?」


 なるほどなるほど、私には分かったよ。メイドさんズもみんな、ちょっと見上げて表情を見るに姉様も察しはついている様だ。ソフィーさんは首をかしげちゃってるね。美人メイドさんすぎて様になりすぎる……


 シアさんは両手で一つずつクロッシュの摘みを掴み……


「では……、じゃーん!!」


 可愛い掛け声と同時に蓋を開けた。


 じゃーん!? シアさんがじゃーん!!?


「うわ、シアさん顔真っ赤だよ!?」


「お、思った以上に恥ずかしい……。はっ!? 見ないでください! 泣いてしまいそうです……!!」


 シアさんは恥ずかしさのあまり、両手で顔を覆って隠してしまった。


「開ける時に掛け声を、って律儀に自分でやらなくても……。私の恥ずかしさが分かりました? シア姉様。もの凄く可愛かったですよー? ふふふ」


「ええ、やはりバレンシアさんも可愛らしいメイドさんなんですよね。エディくんにも見せてあげたかったです」


「これは何と言うか、一生に一度あるか無いかの貴重な体験だったな……。まあ、ネタにしようものなら殺されるのは間違いない、そこは惜しいが」


「あ、ああ、一瞬我が目と耳を疑ったぞ……。ここは笑う所なんだとは思うんだが、驚きの方が強すぎて笑えんな」


「ふふふ。本当に珍しいものを見ちゃったわ。ふふ、ふふふ」


「くっ、ぷふふ……。あ、そう? 私らはもう、ぷっ、ふふふっ、笑うしかっ、ないよっ」


「痛い! お腹痛い!! シア可愛すぎ!!! あははげほっ、ごほっ、死んじゃう!!」


 なんというカオス。とりあえずシアさんの可愛さが大絶賛されているという事にしておこう。私も驚きすぎて笑えないよ……。シアさん恥ずかしがりやなのに無茶しやがって……



 みんなの笑いが治まって、やっとシアさんの料理に目が向けられた。また忘れられてたよ……

 みんなと言ってもフランさんとメアさんは笑いすぎで戦線離脱、少し離れたところでソフィーさんとクレアさんに介抱されている。

 シアさんは自爆ダメージが大きすぎたのか、部屋の隅で、まだ両手で顔を隠して蹲ってしまっている。


「うわ、何この……、何? ぴ、ピンクのパスタ? あ、キャロル、早く食べてみて、ショコラもね」


「無茶言うな。いくら私が甘党でもコレはちょっとな……。匂いが凄い事になってるぞ、甘ったるい……」


「シア姉様は最初から私に食べさせるつもりで……!? くっ、確かにシラユキ様が喜びそう……」


 姉様もショコラさんもソレを一目見て軽く引いてしまっている。キャロルさんは自分の置かれた状況がやっと理解できたようだ。


 問題のシアさん作のオウドンは、ピンクのパスタ。それに生クリームがたっぷりと絞られて、さらにはこれまた甘そうな赤いソースがこれでもかとかけられている。色と匂いからすると、パスタもソースもどちらも苺味だと思われる。

 しかし、蓋をあけるまで匂ってこないとは、どうやって隠していたんだろう……? 謎が残るね。まあ、メイドさんスキルの何かかな。


 シアさんはどうやら最初から勝負を捨てて、私と姉様を喜ばせる事のみを考えてこの料理を作ったんだろう。だけど……、じゃーん!! のインパクトが強すぎて完全に食われてしまっていた……


「それじゃ私が食べようかな? キャロルさん、少し小皿に分けてー」


「え!? シラユキ様チャレンジャーですね……。ちょっとお待ちくださいね」


 苺と聞いては黙ってはいられない。シアさんの作った物だし私が食べても問題は……


「いけません!! 姫様には刺激が強すぎます!!」


 おおう、ビックリした……

 どうやら問題はあるようだ、シアさんに涙目で阻止されてしまった。可愛い。


 シアさんはささっと体裁を整えて、私と姉様のすぐ左隣に歩いてきた。でもまだちょっと頬が赤い。相当恥ずかしかったんじゃないかなと思う。


「ほらほら、どうしたのです二人とも? ガトーは甘い物が好みでしょう? それに……、キャロ? まさか私の作ったモノが食べられないとでも言うのではないでしょうね」


「シラユキには刺激が強いと止めておいてそれか!! いや、まあ、食うんだがな、少しばかり心の準備と勇気が、な」


「シア姉様自爆したのに不機嫌になるとか理不尽……、いえ! なんでもありません!! いただきまーす……」


 フォークでクルクルと巻き取り、恐る恐る口へと運ぶ二人。


「ん……? 甘い……、が、それだけだな、食える範囲だ。気構えて損をしたな」


「あー、うん、これならいけるいける。なーんだ、シア姉様も人が悪いですよ? 全然食べられるじゃないですか。まあ、美味しい、とはちょっと言い難いですけど」


「そうでしょう、そうでしょう? ふふ、すみませんね。ささ、温かいうちに食べてしまってください。温かいうちに……、ね」


 柔らかな口調になったシアさんに安心したのか、二人は続けて二口三口とフォークを進める。



「もう、ドキドキさせておいてそれなの? 二人が吐き出すんじゃないかと思って楽しみにしてたのに。あ、私も一口貰える?」


「あ、姉様、一口ならいいけどそれ以上はやめた方がいいよ? だよね? シアさん」


 おっと。姉様まで罠に嵌ってはいけない、先手を打とう。ついでにシアさんの狙いも確認。


「え……? ひ、姫様はまさかコレまで、なのですか? むう、ここからが見物だったのですけれど……。ユーフェネリア様にはお楽しみ頂けそうですし、良しとしますか……」


「? それはどういう……、あら? どうしたの二人とも、手が止まっちゃってるけど……」


 姉様の言葉に二人に目を向けると、キャロルさんもショコラさんも食べる手が完全に止まってしまっていた。心なしか顔色が悪いように見える。


「い、胃が受け付けん……。何か、こう……、喉元までせり上がって来ている気さえするんだが」


「あ、あの……、シア姉様? 何か変な汗が噴き出してきたんですけど……」


 うん、まあ、そうなるよね。

 甘さが許容量を超えると何故か胃が受け付けてくれなくなるんだよね。それでも無視して食べようすると吐いちゃう人もいるくらいだもんね。温かいっていうのがさらに響いてくるんだよ……。でも普通に食べれちゃう人も結構いるのが不思議。ショコラさんは何となく普通に食べ切っちゃう部類の人かなとも思ってたけど、ちょっと意外だね。

 私も前世でこういうのを食べた記憶が薄っすらと残ってるね。その時は殆ど全部って言ってもいい量を残しちゃったかな、勿体無い事をしたよ……


「ちょ、二人とも大丈夫? あ、フランメアクレア! 水を入れてあげて!」


「へ? あ、はいはい。ちょっと待ってねー」


「姫とユーネ様は食べない方がいいかもね。キャロルは……、横になった方がよくない? 顔色やばいよ?」


「え? マジで? ちょっと気持ち悪いけど、そんなやばそうな顔色してる? す、すみませんシア姉様、ギブアップでお願いします……」


「ええい情けない、それでも私の弟子ですか。もっと無様な姿を晒し、姫様とユーフェネリア様のお目を楽しませて差し上げなさい」


 キャロルさんダウン! 別の椅子に座ってメアさんに汗を拭いてもらって介抱されている。そしてシアさんはなんという理不尽な横暴さだ……


「くそっ、負けて堪るか……。そうだ、冷めればいけるんじゃないか!?」


「ショコラはそこまででもないみたいだな。ああ、メアリー、口直しにさっきのカレーを食わせてやったらどうだ?」


 ショコラさんはまだ挑戦を続けるみたいだね。しかし、甘すぎる物の後にカレーって口直しになるのかな? 逆にもっと気持ち悪くなりそうな気さえするんだけど……

 あ、確かに冷めれば、とは誰だって思うけど、冷めるとそれはそれで、温かいパスタとソースに溶かされてた生クリームが変に固まっちゃったりして食感が気持ち悪くなると思うよ。思うだけで言わないのが私の優しさ。誰に対しての優しさかも言わない。


「あ、それではキャロルさんの代わりに私に是非。ふふ、どんな物か興味が湧いてしまって。構いませんか?」


「うん。いいけど……、危ないと思ったらすぐ食べるのやめてね?」


「はい、ありがとうございます。それでは早速……」


 そしてチャレンジャーなソフィーさん。罰ゲームとも言える料理に進んで手を出すとは……。怖いもの知らずと言うか好奇心旺盛と言うか、ただのドMと言うか……




「ふむ、概ね予想通りの展開ですね。しかし肝心の姫様に喜んで頂くという事は叶わなかったのですが……、残念です。これでは大恥損ではないですか」


「いやいやシア? 私もキャロルが心配で喜んでないわよ? 貴女は弟子をもうちょっと大事にしてあげなさい……」


「うん……。後で膝枕でもしてあげてね?」


「う……、分かりました。はぁ……」


「シア姉様の膝枕!? やった!! ありがとうございますシラユキ様!」


「もう全然元気じゃん……。でもそれくらいはしてあげなよ? シア」



「うお!? 水すら甘く感じるぞ!? ぐぬぬ……、!? そうだ! フラン、塩だ! 塩をくれ!!」


「味を足すのだけはやめた方がいいと思うけどね。ま、いいか、面白そうだし」


「うーん……、私は普通に美味しいと思いますよ? あ、チョコソースも合いそうですね。今度冒険者ギルドの皆さんに振舞いましょうか? ふふふ」


「ソフィーティアすげー。今日はコイツが頼もしく見えちゃうわ……」


「私も食べれそうだな。だが、頑張れショコラ、応援だけはしてやろう。姫様とユーフェネリア様はいい休憩になりましたか? 腹具合、いえ、お腹の空き具合は如何でしょうか」


「うん! まだ食べれるよー」


「ええ。……あ、シアはまさかこれを狙って? 有能すぎるのも困りものよ、まったくもう……」


「ふふふ、何の事やら、私には分かりかねますね……。さて、他の皆は忙しそうですし私が手伝いましょうか。行きましょう、クレア」




 この後は特に波乱も何もなく進行したので、掻い摘んで何があったのかだけ。

 クレアさんの作ったオウドンは、あっさり目のコンソメスープパスタ。深いお皿にスープがなみなみと注がれ、少し太めのパスタが浸っている。見た目は完全にうどんそのものだった。


 私がシアさんの目を盗んで、どうやってクレアさんにおうどんについて伝えたのかと言うと、そう、あのお手紙だ。クレアさんの分だけ二枚、おうどんの絵と簡単な説明、後は、これで私を助けて! と小さくメッセージ入り。勘のいいシアさんは全部察してしまっていると思う。


 そういえば一つ、思いがけず面白い事はあったね。なんと、クレアさんは箸を用意してくれていた。私の書いた絵の通りに食器まで用意してくれていたみたい。


 意外な事に、ショコラさんとキャロルさんは箸を普通に使えていた。箸は他の国で普通に使われているみたいで、旅先で使い方を学んだって言っていたね。

 私は久しぶり(?)すぎて全然上手に使えなくて、結局はフォークに落ち着いてしまった。手が小さいからだと思いたい。決して私が不器用という訳では……、ぐぬぬ。

 ちなみに姉様も勿論使えず、あっさり諦めてフォークで食べていたよ。



 結局優勝者は、クレアさんの不正と、メアさんフランさんの料理がどっちも、見た目は私の書いた絵に似ていたという事で一時保留となった。


 私としてはもう全員優勝でもいいと思うんだけどね、ふふふ。







こんな感じで長引いちゃったうどん編はお終いです。

後日談的な物、続きのお話もまだまだありますが……


何か自然と文字数が増えてしまってますね。

次からはまた今回の半分くらい、4000文字前後を目安として書いていきたいと思います。

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