その177
ちょっと会話文多めで長めです。
奥を使わせてもらおうという父様の言葉に、ミランさんが即カウンターの中のドアへと走る。まるで逃げ出す様に。多分中の誰かに部屋を使う許可を貰いに行ったんだろうと思う。
程なくしてミランさんともう一人、猫族の男の人が出て来た。何度か見た顔だけど話した事もないし、名前も知らない人だ。ネコミミの男の人だけど違和感は感じない、これももう当たり前の事だからね。
さてこのネコミミの男の人、奥で他のお仕事をしていたのだけど、どうやらミランさんの代わりに受付のお仕事に入ってくれるらしい。いい人だ。シアさんが何も言わないところを見るとギルド長さんではなさそう。
「交代なんていいですから!」と叫ぶミランさんの言葉は無視して、手の空いていた兄様と姉様に引き摺って行ってもらう。私は父様に抱き上げられちゃってるから止めれないんだ、ごめんね。止めるつもりも無いけどね!
十人でぞろぞろとカウンターの奥へ。うーん、デジャブ。デジャビュ? どっちでもいいや。フランさんとメアさんの料理をみんなで食べた日の事を思い出すね。あ、今日は前より人数が増えてるのにメイドさんはシアさんだけ……? た、大変じゃないかなそれは……
最後に入室したシアさんがドアを閉めて、十人全員が部屋に入った。
うん、前の八人でも狭く感じたのに、今日は二人増えてるからさらに狭く感じるね。ショコラさんとライナーさん、それと父様と兄様は背が高いから尚更そう感じちゃうよ。まあ、私は誰かの膝の上に乗せてもらうとして、シアさんが席につかないのは言うまでもない。実際に椅子に座るのは八人か、やっぱり多いね。
「姫様、申し訳ありませんがギルド用のバスケットと……、ふむ、もう一つ、散歩用の方もお願いします。皆様、席の用意が整うまでもう暫くお待ちくださいね。手荷物もそのまま……、ライナーは床に置いても構いませんよ」
シアさんのお願いに応えてバスケットを二つ、手渡す様に出現させる。ライナーさんは邪魔にならないように部屋の隅へ木箱を降ろした。軽そうに見えてしまう不思議……
「では私もお手伝いを。ライナーさん、これをお願いしてもいいですか? 折角箱を降ろせたところなのに申し訳ないんですけど」
「ん? お、おう。手が空いてるのは俺だけか、なるほどな」
「あ……、わ、私もお手伝いします! るるるルーディン様! ユーフェネリア様!」
ソフィーさんが持っていた紙袋をライナーさんに手渡して、ミランさんも兄様と姉様の拘束を振り払……う事なく、お願いをして放してもらい、二人ともシアさんのフォローに入る。
テキパキとテーブルをセッティングしていくシアさん、は置いておいて……、簡単にだけど椅子の埃を払い、布でを拭いているソフィーさんとミランさん。この二人を見ているとつくづく思わさせられるね……
二人ともやっぱり……、メイドさんになるべきなんじゃないかな!? あ、私の家のね!!
用意が整うまでに他の皆に聞いた話だと、ここにいないキャロルさんはお留守番、ではなく料理のお勉強。家族で一人だけいない母様は勿論仲間はずれじゃなくて普通にお仕事だ。
特に事前に打ち合わせをしていた訳でもないみたいで、どうしてこうなったのか簡単に説明すると……
依頼でリーフサイドを離れていたライナーさんが帰って来る→兄様が飲みに誘う→町に出かけていた姉様とショコラさん二人組とバッタリ→この四人なら酒場より持込で他の店に入るか→お酒を買いに行ったら父様と偶然遭遇して仲間に→どうせなら食べ物も買って冒険者ギルドで飲むか→露店で色々買い込んでいたらエディさんとソフィーさんを発見→拉致
の流れだ。全然簡単に説明できなかった……。まあ、エディさんにはお疲れ様と言っておこ、ん? 疲れるのはこれからかな? ふふふ。
「うわ、串焼きとか脂っぽいものばかり……、ルー兄様とライナーさんのかな?」
紙袋から食べ物を取り出し、バスケットに入れてあった小皿に並べられていくところを見てまずそう思ってしまった。やっぱりお酒にはこういう味の濃いおつまみが合うのかな? 私にはまだ分からないや。分かる日もきっと来ないだろう、うん。
「ちゃんと私たち用にお菓子もケーキも買ってあるから大丈夫よ。ショコラが持ってたバスケットが二つともそうだからね」
「え? ど、どれだけ入ってるのそれ……。あ、ああ、ショコラさんだもんね、ふふふ」
「ああ、私だからな。シラユキも今日はギルドに行くと言っていたからな、もしかしたらまだ居るんじゃないかと思って多めに買っておいたんだ。居なかったら居なかったで私が食えば済む話だからな。……ユーネ?」
「はいはい、後で交代するから、もう……。ふふ、妹が人気者でお姉ちゃん嬉しいわ」
私は今姉様の膝の上。父様も兄様もお酒を飲みながら色々食べるだろうし、邪魔になっちゃうからね。ショコラさんが羨ましそうに見てるのが面白いよ。
「な……、この木箱の中身は全て酒瓶ですか。どれだけ飲むおつもりなのですか……」
全部お酒!? ま、まあ、兄様と父様なら納得かな……。多分ライナーさんも相当飲むんだろうなー。
「あ、いえいえ、ジュースの瓶もいくつか入っていますよ、ユーフェネリア様はお酒はあまり飲まれませんからね。私は何故かエディくんに、今日は飲むなと止められてしまって……」
ああ、考えてみたら当たり前か。ケーキにお酒は合わないもんね。物によっては合うお酒もあるのかも?
「姫様がいらっしゃいますし、そうして頂けると面倒無く助かりますね。少し、いえ、かなり残念なのですが、ね。今日は貴女にツッコミを入れている余裕はあまり無さそうなので」
「なになに? ソフィーさんはお酒飲むとどうなっちゃうの?」
しまった! つい聞いちゃった! きっと酔うと誰彼構わず襲い掛かったりするんだよ!!
「おっと、シラユキちゃんの興味を引いちまったか。ええとな、コイツ酔っても全く普段と変わらないんだけどな、あー……、脱ぐんだよ」
「脱ぐ? 脱ぎ上戸? 確かに普段とあんまり変わらないですね。ソフィーさんっていつも意味もなく脱ごうとするし……。私はてっきりその場にいる人誰でもいいから、って感じで襲い掛かって行くんだと思ってました」
「いや、静止を振り切って全裸になるんだよ……。襲い掛かるのは、まあ、いつもの事って言えばいつもの事だろ?」
「全裸!? だ、駄目だよルー兄様も父様もいるのに!!」
ソフィーさん何がいけないんでしょう? って顔しない! 黙ってると美人さんだなあこの人は……
「うーん、シラユキの手前あまり下品な飲み食いの仕方はできんな」
「姫さんが真似でもするってのか? ありえねえだろそりゃ」
「ああ、父さんは割りと、と言うか結構大雑把なんだよ。普通に手掴みで食うぞ?」
うん、お祭りの時たまに、面倒だからって手掴みで食べてるね。その後服で手を拭くのがまた子供っぽくて見てて面白いんだけど。姉様以外誰も注意しないんだよねー。
「マジか。ウルギスさん王族だろ、それでいいのか……」
「誰に迷惑が掛かる訳でもなし、問題ないだろう? シラユキは真似するんじゃないぞ? はしたないからな」
「しないよ! 後お洗濯するメイドさんに迷惑は掛かってるよ!!」
「むう、ユーネと同じ様な事を……。ま、まあ、いいじゃないかそんな事は。ほら、そろそろ支度が終わるぞ?」
まったくこの父様は……。でも嫌いにはならない、なる訳もない。ふふふ。
買ってきた物も全て、は並べ切れなかったが、テーブルいっぱいに並べ終わり、みんな席につく。私は姉様の膝の上のままだ。
特に開始の挨拶の様な物も無く、男性陣四人がお酒で、女性陣はオレンジジュースでまず乾杯、エディさんだけ元気がなさそうだ。その後みんな思い思いに小皿に手を伸ばし、食べ始める。
そんな訳で急遽決まった宴会? の始まりだ。
「少し気になったんですけど……、シラユキ様はエディさんには敬語ですよね」
「う? あ、うん。男の人にはついつい敬語で話しちゃうんだよねー。変かな?」
「いえいえ! そういう訳ではなくてですね……」
「ん? ああ、シラユキちゃんは初めて会ったときからそうだよな。お姫様なんだし普通じゃないのか? ソフィーとミランさんはエルフだから話し易いんだと思うよ。あ、でもライナーさんとは何でか普通に話せてるな……。何か理由でもあるのか?」
「理由? 何でだろう……? ライナーさんとはいつの間にか、ですね。いつの間にか敬語が抜けちゃったんですよ」
「だな。知り合った日は同じくらいでも、付き合いは俺の方がはるかに短ぇんだがなあ。エディとも普通に話せるんじゃねえか? 姫さん。どうだ?」
「どうだって言われても……。うーん……、エディさんとはこの話し方が普通になっちゃってるから難しいかも」
「エディさんは姫様にとってはその程度の人物と……、失礼。姫様、チーズケーキは如何ですか?」
「あ、欲しい欲しい、って! 誤魔化されないからね!! エディさんも大切なお友達だよ!」
「誤魔化されかけてたよ……。はは、ありがとな。考えてみたら王族の友達って凄い事なんだよな……。シラユキちゃんはメイドさんが付いてるって事抜くとホントに普通の女の子だもんな、あんまりそう感じないよ」
「あはは、なるほどねー。付き合いが長いからこその、じゃないかしら? ライナーは逆にこの子とあまり話してなかったからじゃない?」
「そうかもな。ま、俺としちゃ敬語何ぞ使われてもくすぐったいだけだなあ。まだ二十なんだろ? 言葉遣いなんて気にすんじゃ、おっと、危ねえ危ねえ」
「そう睨んでやるなよバレンシア。多分ガトーと友達になった嬉しさっていうのもあったかもな。それで、ミラン、それがどうかしたのか?」
「い、いえ、そのー……、敬語で話されてるシラユキ様って、何と言いますか……、おしとやかに見えて……。いつもとはまた違った可愛らしさですよね」
「ほう……。おしとやかに、見えて、ですか。なるほど、ミランさんは普段の姫様に淑やかさが足りない、若しくは欠片も無いと……? そう仰りたいのですね」
「え? ……え!? あ、あの!」
「あら? ミランったら中々言うじゃない? ふふふ」
「俺たちの可愛い妹に淑やかさが足りないだと? ってヤバイ! 冗談だ冗談!! 顔真っ青になってたぞ……。まあ、ちょっと子供が背伸びしてる感じで可愛いって言いたいんだろ?」
「ミランさん落ち着いて! ルー兄様もユー姉様もからかっちゃ駄目だよ! 私が普段おしとやかじゃないのは……、うん、その通りだし……」
「おお、騒がしいと思ったら怒るシラユキも可愛いな……」
「ははは。そうだろう、そうだろう? シラユキはどんな時でも最高に、世界一可愛いんだがな!」
「恥ずかしいよ父様……。二人とも全然話に入ってこないと思ったら、ショコラさんは食べるのに集中してたんだね。そ、そのケーキは何ホール目なの……? あ、父様はなんで?」
「ああ、俺は楽しそうに騒ぐ皆を肴に酒だ、花見みたいな物だな。会話に参加しないと言えばソフィーティアもそうだな。宴会に給仕など必要ないぞ? まあ、バレンシアは好きでやっているようなものだ、気にするな」
「はい、お心遣いありがとうございます。給仕の真似事ですが、これはこれで楽しいものなのでご安心ください。最近は雑務依頼でウェイトレスのお仕事を受けてみたりもしているんですよ」
「ウェイトレスさんもいいけどメイドさんはどうかな? ……何でもない」
「ふふふ、シラユキ様のお世話も憧れますね……。あ、そうです、ウェイトレスの制服のスカート丈なんですけど結構短めで、下着を着けずに」
「うおい!! 黙ってろって言っただろが!! あ、すんません……。う、ウルギス様、マジですみません!!」
「はっはっはっ。いやあ、報告で聞いていた通りだな……。くっくっ、あ、ああ、気にするな気にするな、笑わせてもらえて感謝したいくらいだ。本当にシラユキに聞かせられん様な事を口走ろうとしようもバレンシアが止めるだろう? そう気張らんでもいいさ」
「あ、そうですか? さすがシラユキちゃんのお父さんだな……、寛大すぎる。こっちも聞いてた通りですよ」
「ええ、お任せください。今程度の軽さでしたら止めずともよかったのですよ?」
「軽いかなあ……。ソフィーさんは見られちゃったらどうするの? もう……」
「見られるかも、見られてしまったのかもしれない、という焦燥感、後悔。そして、下着を着けない状態での接客という背徳感。そのどちらも快感に変え、楽しんでの行為なので大丈夫ですよ。こう、わざとらしく腰を折ってみたり屈んでみたり」
「説明はいいから! 何となく分かってるか……ら? え? ソフィーさんもやっぱり見られると恥ずかしいの? い、意外!」
「いや、シラユキ? 人として当たり前の事だからな? しかし、いい趣味してるなソフィーは。これでもう少し胸があればな……」
「もう、お兄様ったら! ま、この子も子供に見えて……、実際子供だったわね。ん、こほん。シラユキは子供だけれどそっち方面の知識は色々と持っているから、その程度は本当に大丈夫よ。でも私も意外だわ、ソフィーは裸でも大通りを平気な顔して歩けそうだもの」
「さすがに不特定大多数の方に見られるのは快感より恥ずかしさが勝って……、? どうなのでしょう? あの、今から試してみ」
「はいそこまで」
「やめなさいってば! もう、シラユキ様が真似でもしたらどうするの、まったく……」
「しないよ!? 確かにシアさんとたまにしてる、スカートの中を見られないようにする訓練は楽しいけど……」
「何だその訓練!?」「シラユキ様!?」
「姫様と私の秘密の特訓です、ふふふ。ガトーも食べるだけでなくもっと会話に……、あ。が、ガトー、それは……!!」
「どうしたのシアさ……、ああ!!」
「んあ? ああ、いやこれがな、また絶品でな……。そこのバスケットに入っていたんだが、これは誰が作ったんだ? お前か? それともやはりフランか?」
「ええ、私が焼いた物なのですけど……。ああ……、なんという……。姫様、申し訳ありません。私がもう少しこの食い意地の張った愚か者に注意を向けてさえいればこんな事には……」
「私のアップルパーイ……。ううう、いいもん、シアさんにまた焼いてもらうからいいもーん」
「可愛い!! 何この可愛さ!! でもこの位置からだと拗ねてる顔が見えないわ! あ、ショコラ、交代する?」
「おお、悪い事をしたのに特をした気分だな。ほらシラユキ、後一口分くらいは残ってるぞ? ほれあーんしろ」
「大勢の前でそれは恥ずかしい!!」
楽しかった宴会もそろそろお開きの時間に差し掛かろうとしていた。まあ、何で終わるのが分かるのかと言うとただ単純にお酒が底を突きそうだったからだ。今はもうみんなで楽しく大騒ぎ、という時間は過ぎ、普通に何でもない会話をしながら飲み続けている。あれだけ大量にあったお菓子やケーキはとうの昔に無くなっていて、ショコラさんも男性陣に加わっていた。
ちなみに私の現在位置は、巡りめぐってまた姉様の膝の上。シアさんとソフィーさんは後片付けを始めている。そしてミランさんは兄様の勧めを断れる訳も無く、半ば無理矢理大量に飲まされて酔い潰れてしまっている。
このタイミングを待っていたのかどうかは分からないが、姉様がため息を一つついた後、姿勢を整えて口を開く。
「ふう……。ねえ、エディ? 旅に出るソフィーについて行くって聞いたんだけど、本当の事なのよね。シアの言う事だし……」
シアさんが申し訳なさそうに、心配そうに私の方を見つめてきている。私たちの、かもしれない。
むう……。私も聞きたかった事だけど、まだちょっと心の準備が……。とりあえず聞きに徹しよう。
「あ、ああ、やっぱバレンシアさん言っちゃってましたか。まあ、コイツについて行くって言うより俺がついて来てもらうって言った方が近いんじゃないかな。ちょっとミラまで足を伸ばそうかと思ってるんですよ」
ミラ? カルルミラの事だね。カルル、の部分を略す理由とカルルエラとの関連性は……、おっと、聞きに徹するんだった、考えを逸らさない様にしよう。
エディさんは全く酔っ払っている風には見えないね。お酒に強いのか、それともやっぱり冒険者、自己管理をちゃんとして飲み過ぎないようにしているのかも。
「そう……、また寂しくなるわね。ミラへはラルフたちに会いに?」
「なら暫くしたらまたこっちに戻って来るのか? 飲み仲間が減るのは俺としても寂しいし、困るんだけどな、はは」
兄様も姉様もちょっとしんみりしちゃって寂しそう。多分私もあんな表情をしているんだと思う。
「うーん……。それが、全くその先は考えてないんですよ。向こうに留まるのか、それともまたここに戻って来るのか、後は他の町に向かうっていうのもありますね。今決まってるのはラルフさんとナナシさん、それと二人の子供の顔を見に行くってだけかな」
「そっか。まあ、手紙くらいは寄越せよ?」
「それは勿論。多分そんなには書けないだろうと思うけど……。まあ、どうなるにしてもまだ、もう少し先の話ですよ」
なるほど……。うん、聞きたい事は全部教えてもらっちゃったかな。姉様に感謝しなきゃね。とりあえず頬擦りを開始。
「私はまたあちらで五年留まろうと思っています。でも……」
ここで片付けの手を止めて、ソフィーさんが話に加わってきた。
「どうした? ソフィー、お前らしくない。いつも要らん事は止めても言い切ろうとしやがるくせに……」
うんうん、エディさんが必死に口を塞ごうとしてるのにひょいひょいと避けちゃうんだよね。運動は苦手で後方支援担当とか言ってる割に身のこなしが軽いよソフィーさんって。今度は何を言い出すんだろう……
「この町では今までと違い、あまりにも素敵なお友達が何人も出来てしまって……。離れるのが辛いんです……」
ソフィーさんは寂しそうに、何故か身をくねらせながらそう言う。
私もソフィーさんとお別れするのは寂し……、なぬ?
「うお! 悪い! また変な事言い出すんじゃないかって思ってた!」
「ごめんなさい! 私も!!」
「おいおいお前ら……。まあ、俺もなんだけどな。ユーネもだろ?」
「ふふふ、秘密よ。ま、ゆっくり考えて決めて頂戴ね」
「旅なんぞやめてしまえばいいじゃないか。シラユキが成人してからでも遅くは無いだろう。私もその頃にはまた……、お? そうなったらシラユキを連れて旅に出るのもありか?」
「え? え? 旅?」
「や、やめなさいガトー! この酔っ払いはもう……。ウルギス様、申し訳ありません。どうか聞き流してやってください。しかし、旅という言葉に目をキラキラとさせる姫様、可愛らしいです……」
「ははは。シラユキの成人、か……。後大体八十年、この子はどう育つんだろうな……。既に世界一可愛いシラユキがさらに可愛くなるのは確定している事なんだが、な? 背もあまり伸びないだろうし、おっと。はははは」
「だよなー。もう身長の伸びは止まってるんじゃないのか? 抱き上げ易いからいいな、もうそのまま伸びるなよシラユキ」
「そうよそうよ? ずっと私の膝の上で可愛らしく座れる大きさでいてね?」
「やだよ!! と、止まってないよね? 伸びてるよね? シアさん!!」
「ええ、残念ながら。本当にほんの僅かずつではありますが……。ですが! ご安心ください姫様、祈りは毎日欠かさずに続けていますから!!」
「まだ続けてたの!? これって本当にシアさんのお祈りのせい!? もうやめてー!!!」
色々な謎や未解決事件を残しつつ、これでシラユキが二十歳の頃の大きな出来事は終わります。二十歳編でよかったですね……。次回から二十歳以上編が始まる感じです。
また十二歳以上編と同じ様に、話が前後したり、過去のお話も含まれます。