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175/338

その175

 ミランさんが初めて家に遊びに来てくれた日からほんの数日後、時刻は夕方頃。今日もお仕事を探しに町まで行っていたショコラさんとキャロルさんが帰って来た。

 私はシアさんと二人、談話室で何をするでもなくのほほんと過ごしていただけなので、これはいい話し相手が来てくれたぞと大歓迎しようと思っていたら……


「あー、その、アレだ。仕事、と言うか、収入の当てが見つかってしまった」


 指先で角の付け根辺りをポリポリと掻きながらショコラさんがそう言う……、え?


「も、もう見つかったの!? おめでと、う? その割りに浮かない顔してるね二人とも……。変なお仕事貰っちゃったの?」


 ショコラさんの煮え切らない言い方もそうだけど、キャロルさんも不思議そうな、納得いかない? とにかく二人とも複雑な表情だ。


「あ、いいえ、変どころかかなりいい条件だと思うんですけど……。うーん? どうしてそんな話がコイツに回って来たのかが不思議でしょうがないんですよ」


 不思議? でもいいお仕事みたいでよかったね。二人とも複雑そうにしてるから心配しちゃったよ。


「随分とあっさり見つかったものですね。まあ、とにかくおめでとうございます、と言っておきましょうか。それで、その当てとは一体、ああ、姫様にお聞かせはできるのでしょうね? 姫様の友人ともあろう者が大っぴらに人には言えぬ職に就くなどありえないとは思いますが……、ね」


 ナイフしまってナイフ!!

 自分に頼らずあっさり決めてきちゃったのが不満なんじゃないのかなこの人は……。頼ったら頼ったで私と一緒にいれる時間が減るとか言って不機嫌になるくせに!


「その点は全く問題はないな、冒険者ギルドのギルド員だ。ミカンと同じ様に冒険者を続けながらでも構わんらしい。しかも、あれだぞ? 机仕事は一切せんでもいいという好条件だ。何かしら裏があるんじゃないかと勘ぐってしまうのも仕方のないことだろう?」


 ギルド員さん? ミランさんの同僚!? 冒険者ギルドって受付以外どんなお仕事があるんだろ? 気になるね。机仕事っていうのはミランさんみたいな受付のお仕事の事なのかな? それはショコラさんには難しそう……、裏?


「なるほどギルド員……。いざという時のためにSランクの貴女を手元に置いておきたいのでは? ああ、しかし今のギルド長はそういった考えとは無縁の方なのですよね……。ふむ、確かに気になりますね」


「しかも肩書きがそのギルド長の補佐なんですよ。ガトーにそんな補佐なんて仕事が勤まるとはとても思えないんですけど……。ギルド長の仕事っていうのもどんなものかは全く分からないんですけどね」


 ぎ、ギルド長さん? 就任後にまず、何故か私のギルド内での自由行動を認めてくれた人、だよね。考えてみれば一回も会った事も、噂を聞いた事もないや……。あれ? お礼とか言いに行かないと行けないんじゃ……


「ああ、あの方の……、納得しました。まあ、特に裏も何もありませんよ、それだけははっきりと言い切ることができますね。なるほどなるほどギルド長補佐、ですか……。これは面白くなりそうですね……」


 一人だけ勝手に納得してニヤニヤし始めるシアさん。


「なんだニヤニヤと気持ち悪い……。しかしバレンシアがそう言うのなら、まあ、安心していいか」


「シアさんは知ってるの? そのギルド長さんのこと」


「え? ええ、何度かお会いした事はありますよ。姫様はまだ一度もお会いになられていませんでしたね……。まあ、特に気になさらなくても問題はないと思いますので、そんな方がいるということ事態忘れて頂いて構いませんよ」


「なにそれひどい。どんな人なんだろう……」


「さすがシア姉様、交友関係が広いと言うか顔が広いと言うか……。どんな人なんです? 私たちも実際に会った訳じゃないんですよ」


 むむ、二人ともまだ直接は会ってないんだね。それなのに自分の補佐にショコラさんを? やっぱりシアさんが言ったみたいにSランクに人に近くにいてもらいたいんじゃないのかなー。私兵っぽく? それはなんか嫌だなー……

 あ、でもシアさんがそういう考えとは無縁の人とも言ってたね。ぐぬぬ、どんな人なんだろう……? 気になる気になる木。


「姫様の手前内緒ということにしておきましょう、その方が今後面白くなりそうなので。ガトーが近い内に会う事になるでしょうからあなたはその後に聞きなさい」


「えー? 気になりますよそれ。面白そうってなんですか面白そうって……」


 多分私をからかういい材料になる人なんだろうと思うよ……


「むう、でもシアさんの反応からすると危険そうな人じゃなさそうだね。うん、とにかく、おめでとうショコラさん! 私としてはもっと、あと何年かはこの家に住んでもらいたかったんだけどね」


「はは。ああ、ありがとうなシラユキ。ま、ちょくちょく遊びに来るから寂しがる事はないさ。町からここまでの距離なんぞ高が知れてる、どうしても会いたくなったら精霊通信で呼び出しをかけてくれればいい。シラユキのおかげである程度は自由に出入りできる様になったからなあ……」


 母様にお願いしたらあっさりいいよって言ってもらえちゃったんだよね。条件は相変わらず厳しいままだけど、ショコラさんなら全く、全然問題はない。


「特例中の特例ですよねコイツ……。んー、私もやっとコイツのお供から開放されますよ、これでやっとまたフランとメアリーから料理を教われます。し、シラユキ様はちょっと寂しくなっちゃうかと思うんですが、その分私に甘えてくださいね!」


「ふふふ、ありがとうキャロルさん!」


 ああもう、キャロルさんは本当に私に対して激甘になっちゃったなー、嬉しい。


「ああ、ガトー? 新生活の身の回りの世話にメイドは必要ありませんか? 丁度ここに見習いが一人余っているんですよ」


「おお、ありがたい。キャロルはいい抱き枕に」


「シア姉様!? ガトーの世話とか勘弁してください!!」


「あはは……。あ、見習いと言えば、メイドさん採用試験の続きはどうなるの? これで第二段階もクリアだよね」


 ついにキャロルさんが見習いメイドさんを卒業して、一人前のメイドさんになる日が!! でも次もまた試験があるんだっけ? 第三段階は第二をクリア後に発表されるんだったよね。

 でも正式にメイドさんとして認められちゃったらネコミミ外されちゃうのかー、勿体無い……。私から付けたままにしておいてってお願いしちゃえばいいかな、うんうん。もうキャロルさんと言えばネコミミメイドさんっていうイメージが固定されちゃってるんだよね。



 シアさんは、そんな変な考えをしていた私を見つめ、少し考えた後口を開く。


「……ふむ、そんな話もありましたね。これはどうしたものでしょうか……。キャロ、一つ聞きますが、あなたは見習いを卒業したいですか?」


「え? そ、それは当たり前ですよ。シラユキ様を自由に膝抱きにできたり、添い寝もできるようになるんですよね? それを夢見て今まで頑張ってきたんですから!」


 シアさんの変な問い掛けに少し困惑しながらも、はっきりとそう答えるキャロルさん。


 ゆ、夢見てたとか……。一言私に言ってくれれば即OK出したのにね。ふふ、まあ、黙っておこうかな。


「ええ、まあ、それは確かに。ですが……、キャロ? 正式なメイドとして認められたその後、あなたはどこに配属されるのでしょうね? それを考えた事は一度もなかったのですか?」


「え……、え? えええ!?」


「おいおいバレンシア、それはさすがに酷いんじゃあないのか?」


「配属? メイドさんに配属とかあるの? ど、どういう意味?」


 今までみたいに私付きのメイドさんになるんじゃ……、あ。


「もしかして館の警備に回されるんですか!? シラユキ様を膝抱きにしたりとか、添い寝も絶対無理じゃないですかそれ!! な、なんで教えてくれなかったんですか……、酷いですよ……」


 う、うわ、落ち込んじゃった!? で、でもねキャロルさん……


「きゃ、キャロルさん、その、ね? 兄様もシアさんも最初に言ってたよ? もうずっと私お付みたいな感じだったからみんな忘れちゃってるんだと思うけど……」


 私が思い出せたのはメイドさんに関することだからではない、と思いたい。


「へ? 最初にですか? ええ? お、思い出せない……」


「何? なんだ忘れていただけか……、すまんなバレンシア。言われて見ればシラユキ一人に四人は多いよなあ?」


「それだ!! 確かルーディン様がそんな事を仰っていましたよね!? それって……、あれ? 初めて館に招待して頂いたときの……、あれって冗談じゃなかったんですか……。えええー……、マジですかー」


 思い出して一瞬元気になったと思ったらまた落ち込んじゃった。忙しそうだねキャロルさん。


 うん、私が十二歳の頃の話だから約八年前だね。冗談半分で私付きのメイドさんになってこの森に住んじゃえばってみんなで話してたはず。私は半分どころか九割以上本気だったんだけれど……

 その時は、ええと、メアさんを外してその代わりにっていう話だったかな? ちょっとうろ覚え。メアさんが私付きじゃなくなるなんて私が寂しくて死んじゃうから絶対無理だよね。




「どうします? キャロ。次の段階へ進みますか? それとも見習いのまま」


「見習いのままでお願いします!!」


「即答!? でも私はその方が嬉しいかな、ごめんねキャロルさん」


「え? いえいえとんでもありません! あっれー? 結局シア姉様に遊ばれただけじゃないこれって……?」


「気にするな。しかし、第三段階の試験内容が気になるな……。バレンシア?」


「ああ、簡単な内容ですよ。キャロは館全体、周辺の警備に就いてもらうつもりでしたからね。本気の私に一撃でも有効打を入れる事ができれば合格、というとても簡単な」


「どっちにしても無理じゃないですかー!!!」


「ビックリした! キャロルさん、これからもよろしくね? ふふふ」


「あ、すみません大声を……。あはは……、こちらこそよろしくお願いします……」







次回はまた間が空くかも? です。

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