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その174

「もう最高の一言でした! いえ、最高なんていう言葉じゃ足りませんよね……。おやすみ中のちょっとした寝相や寝言、あの可愛らしい仕草……、もう思い出すだけでも頬が緩んでしまいます。ああ、そうそう、バレンシアさんからお借りした簡単に前がはだけるネグリジェなんですけど、その意味に気付いたらもう……、眠れませんでした。おかげで寝不足です。でも幸せです!!」


「ああ、ミランさん徹夜明けのテンションだよ……。まあ、無理もないよね。私たちでも未だにしょっちゅう寝不足になるくらい寝てる姫って可愛いし」


「あはは。シラユキが大きくなってから……、今も小さいけど、十三か四の頃だよね、一緒に寝始めたのって。私らも始めのうちはこんな感じだった気がするね。あ、ミランさん、おはようのキスはしてあげた?」


「はい! シラユキ様から頬にして頂いて、感動のあまり唇にお返しをしてしまいました! ファーストキスでした!」


「ほほう。ミランさんの初めてを姫様が……」


「誤解を招く言い方はやめて!! ミランさんも落ち着いてー、恥ずかしいよ……。ううう、また犠牲者が……、これで七人目……」


「す、すみません! もう一度顔を洗ってきますね……。恥ずかしがるシラユキ様も可愛らしいぃ」






 徹夜明けのテンションマックス状態のミランさんも面白かったけど、主に私にダメージが来ちゃうので落ち着いてもらった。

 キャロルさんとショコラさんは既に町へ出かけてしまっているらしく、ミランさんと二人での朝ご飯。ちなみにミランさんの服はまたシアさんのメイド服だ。

 通常テンションに戻ったミランさんは、フランさんからお世話を受けて恐縮してしまっていて見ているだけでもかなり楽しかった。朝の仕返しという訳でも無いけど特に止めるような事もせず、メアさんシアさんと三人でニヤニヤしながら眺めさせてもらってしまった。


 私もミランさんも食べ終わり、食後の紅茶を飲んでいた時、ある事に気付いた。気付いたと言うか、まだ続いてるの? と疑問に思っただけなんだけどね。


「シアさんシアさん。シアさんももっとお話に参加してもいいんだよ? フランさんとメアさんを優先してくれてるのは分かってるんだけど……」


 昨日の夜の、私は無視しても構わない発言の通り、シアさんはちょっとしたツッコミ以外は殆ど喋ってくれない。まあ、にこやかに機嫌良さそうにしてるから何か我慢とかしてる訳じゃないみたいだね。なのでそこまで強くは言わない。


「え、ええ、申し訳ありません。ミランさんの反応は見ていてとても面白楽しく……。まあ、私がいつも通り話に参加してしまいますと、ついからかいが過ぎてしまうのではないかと思いまして。今日の演奏は二人に任せて私は聞きに徹しようと思っているのです」


「演奏? 何の? 私は楽器とか弾いた事無いよ」


 シアさんの謎の発言にメアさんが反応して問いかけ、フランさんも不思議そうに首をかしげている。ミランさんはあの時の会話を思い出したのか苦笑いだ。


 懐かしいね。ミランさんは打てば響く、素晴らしい音色を奏でる楽器だったよね確か。シアさんって会う度にミランさんをからかって遊んでたもんね……


「ふふ、気にしないでいいですよ。……さて、姫様、本日のご予定は……」


「あ、うん。ええとね、ミランさんは何時くらいまでいてくれるの?」


「特に決めてませんね……。お昼前頃にはお暇させて頂こうかなと思ってましたけど……」


 お昼前? 早いなー、そんなのすぐ時間になっちゃうよ……


「遠慮しなくてもいいよ? お昼も食べていけばいいじゃない。ああ、明日はまた仕事なんだっけ、殆ど徹夜みたいだから無理にとは言わないけどね」


「あ、そうだよね。ミランさん大丈夫? 眠かったら無理しないで寝ちゃってもいいよ。お客様用のお部屋は昨日から用意してあるみたいだから」


 本当はもっともっとお話したり森の中を一緒に散歩したりもしたいんだけど、寝不足なままで行動して貧血でも起こしちゃったら大変だもんね。それに、寝不足はお肌の大敵! お肌の荒れを気にしているミランさんには死活問題だ。……さすがに言い過ぎか。


「だ、大丈夫です。確かにお腹いっぱいで眠気もさらに増してきてますけどね。ええと……、ご予定を聞かせて頂いてもいいですか?」


 こ、これは眠そうだ。うんうん、分かるよ……。それじゃ今日の予定、予め考えておいた半分だけにしておこうかな。


「兄様と姉様、母様と父様にもだね。後はカイナさんとクレアさんもかな? お話しに行こう?」


「無理です!! カイナさんとクレアさんだけでしたらまだなんとか……。クレアさんもちょっと、向かい合うと緊張しちゃうんですよ……。あの方は何と言いますか、美人過ぎて怖いですよね」


 即答だった!! うーん、やっぱり昨日の今日でいきなりは無理があったかなー、もっと心の準備をしてもらうべきだったのかもしれない。まあ、仕方ないか、残念だけど予定をさらに変更して……


「クレアは確かに怖いよねー。でもシアよりは怖くないと思うけど? 怖いといえばやっぱりシアだよね」


「うん、レンの方が怖いよね。実際クレアよりはるかに強いみたいだし? あ、ミランさんは知ってるんだっけ? レンの冒険者時代」


 むむむ。なにやら面白そうな話になってきてる? 予定の変更は後回しだ!!


「ええ、その……、ちょっとした噂話程度ですけど……。お二人はどこまで聞いているんですか?」


「ちょ、やめてください三人とも。そんなくだらない話より」


「シアさんお膝に乗せてー」


「はい!! ……では、失礼しますね。ああ、姫様からのおねだり、幸せです、感無量です……。誤魔化されておきましょう」


 め、珍しい!! シアさんが簡単に引き下がった!! そんなに私におねだりされたかったの!? ホントに嬉しそうだよ……


「姫、私にも後で何かおねだりしてね? あ、一応二つ名と、元Sランクだったっていうのは聞いてるよ。それ以上はあんまり興味なかったから何も聞いて無いんだけどね」


「や、やっぱり『千剣』のバレンシア!! ……さん、だったんですね……。お、お噂はかねがね……」


 ミランさんはやっぱりシアさんのこと知ってたんだね……、うん? 今日やっと確証が取れたの!? ふ、不安だったよねそれは……。逆にこれからもさらに不安が高まる気もするけど、ふふふ。


「あ、噂は話さないでね、シアさん恥ずかしがっちゃうから。シアさんが冒険者を辞めちゃったのって百……、ニ、三十年前? ミランさんはその頃から、じゃない、その前から冒険者してたんだ?」


 シアさんがミランさんで演奏を始めないように先手を打っておく。シアさんの冒険者時代の噂話は超が付くほど気になるけど、今日のメインはミランさんだからね!


 ミランさんはこの前の誕生日で二百九十八歳。あと二年で三百の大台、かどうかは知らないけど三百歳だ。シアさんが引退した頃はええと……、百六十歳以上? ソフィーさんが確かそれくらいだからその可能性も大いにあるよね。


「はい、両親とも冒険者でして、私も成人してすぐに……、恥ずかしい? わ、分かりました、だから睨まないでください……。あ、えと、私は両親の影響よりもSランクのエルフの方々に憧れて冒険者になったんですよ。勿論バレンシアさんも憧れの一人です。旅の最中実際にお会いできたのはネーブルさんだけだったんですけど……」


 ね、ネーブルさん? 誰だろ? えっと確か……、Sランクはシアさん以外に四人いて、二人がエルフ、一人は獣人、もう一人はショコラさんだったよね。話からするとエルフの二人のうちのどっちかがネーブルさんっていう名前なのかな。


「あ、憧れとかやめてください恥ずかしい……。本気で恥ずかしいので私は姫様をお連れして散歩にでも」


「シアさんに気付いたのって私と初めて会った日だよね? 懐かしいなー……。あ、ああ! 二つ名言いかけちゃってナイフ投げられたんだったよね、ふふふ」


「はい、あの時は本気で死を覚悟しましたよ……。でも、何度もお会いするうちにお優しい方だなって分かっていったんです。し、シラユキ様に対しては優しいとかそんなレベルじゃありませんけどね」


 ミランさんはシアさんの前だとビクビクしちゃってたもんねー。あれ? 今もしてるね……


「あはは、逃げられないね、レン。ま、たまにはいいんじゃない? こんなのもね。でも、それくらいにしといたげて、レンって結構恥ずかしがりやだから」


 !? そ、それだ!!


「は、恥ずかしがりやですか? バレンシアさんが? 恥ずかしがりやと言えばシラユキ様の方だと思うんですけど……。恥ずかしがるシラユキ様は本当に可愛らしいですよね」


 やめて!!


 そう、そんな気がし始めてた。シアさんって実はかなりの恥ずかしがり屋さんなんじゃないだろうか!?

 冒険者時代の事をみんなに口止めしてるのも恥ずかしいからとか変な理由だったし、まあ、本気で言ってたかどうかは分からないんだけど。


「姫様はいつでも、どの様な時でも世界一可愛らしいです。そんな事一般常識でしょうに……。こほん、話を戻しましょうか、姫様、どうぞ」


 あ、シアさんちょっと顔赤い? 可愛い!! シアさんも可愛いよ!! おっと、何のお話だっけ……?


「か、可愛らしい……。お忘れしていらっしゃる様なので私が。ウルギス様エネフェア様、お二人は無理としてもルーディン様とユーフェネリア様でしたら何度もお会いしていますよね?」


 ああ! 今日の予定の話だったね、完全に忘れちゃってた。

 兄様と姉様は私の保護者として何度もギルドに一緒に行ってたから大丈夫そうだよね? あ、ミランさんって兄様のことが好きなんだっけ……。好きと言うか、王子様に憧れ? ああ、愛人の座を狙ってるんだった……。それは会い辛そうだ。

 でも大抵はラルフさんに会いに行ってただけだし、ミランさんはあんまり兄様たちとお話してなかった気もするね、緊張しちゃうだけかな。


 懐かしいな……


「ええ……。でもまだ心の準備が……。きょ、今日は、そのー、ええと……」


 ミランさんは両手の平を擦り合わせ、言い出し難そうにしている。


「ルーディン様もユーネ様も年下なんだし話し易いと思うんだけどねー。なんでみんなそこまで緊張と言うか、恐縮しちゃうんだか……」


「私もルーディン様にはついつい敬語が出ちゃうかな。ま、焦らなくてもいいんじゃない? 森に住むようになってからゆっくり慣れていけばいいって。あ、そうだ、いきなりここに来ちゃったりはしないから安心していいよミランさん。鉢合わせしないように四階にはあんまり来ないでって頼んであるから」


 へ? 兄様が覗きに来ないと思ったらそんなお願いしてあったんだ? さすがメイドさんズ。私ももうちょっとお友達が遊びに来る事について考えないといけないかー……


「い、いいんですかそれ……。本当に皆さん家族なんですね、あ、私もでした。私もそうなれるといいんですけど……、今はまだやっぱり、シラユキ様とだけで精一杯です。でも、昨晩のおかげかシラユキ様とは、その、少しだけ軽く……、軽いのはいけないかな、あ、すみません。お話しし易くなったと言いますか、ええと……」


「心安くなりましたか、いいことです。ですが、森の中ででしたらそれも構いませんが……、人前、町中で姫様を抱き上げたり、ギルド内でも膝抱きにし、頬擦りキスなどしないようお願いしますね」


「シアさんが全部やっちゃってる事だよ!? あれすっごく恥ずかしかったんだからね!! もう……」


「ふふ、分かっています。ふふふ。はぁ……、シラユキ様とバレンシアさんの関係って憧れちゃいますね……」




「とりあえず今日考えてた予定は全部また今度にしちゃおっと。お昼までお話しよー?」


「そうですね。ミランさんも寝不足でしょうし、そんな状態で王族の方の前に出て倒れられでもしてしまったらいい迷惑……、こほん。ええと、心配デスヨネ」


「思いっきり聞こえてたよ! 言い直しも棒読みだったよ!! もう、膝から降りちゃうよ?」


「申し訳ありません!! あ、謝ります! 謝りますのでどうかもう暫くはこのままで……!!」


 私を優しく抱き締め頬擦りしながらお願いをしてくるシアさん。必死すぎる。


「ば、バレンシアさんも森の中では印象が随分と変わりますね。可愛い、あ、いえ、面白い、ああ、違う……」


「森の中だからっていう訳じゃないよ? 姫を膝に乗せてるとシアって可愛くなっちゃうのよ、面白いでしょ? ミランさんは多分、普段のキリッとしてるシアしか見たこと無いんじゃない?」


「これがシラユキ効果よねー。シラユキと付き合ってれば元Sランクの怖い冒険者でもこんなに可愛くなっちゃうんだから。ふふふ、凄いでしょ」


「しまっ! み、ミランさんにこんな姿を見せてしまうとはなんという不覚……!! しかし姫様が膝の上にいらっしゃるという何とも言えぬ幸福感の中で気を律し続けるというのは困難の極み……。ミランさんにだらしのない様を晒してしまうか姫様に降りて頂くか……、選ぶまでもありませんね。姫様、やはりもう暫くはこのままでお願い致します」


「あはは。うん、いいよー。ミランさんもこれでもっとシアさんと仲良くできそうだね? ふふふ」


「え、ええ。バレンシアさんに全く怒られないのも、ええと……、物足りないですね。ふふ」


「なるほど、ミランさんはレンに怒られるのが好き、と。ふむふむ……」


「そういえばいやらしい人なんだっけ? なるほどなるほど……」


「せ、精神的なM?」


「いやらしくありません!! そんな事まで伝わっちゃってるんですか……。シラユキ様に変な言葉覚えさせちゃ駄目ですよ……」







そろそろ話が進みそうです。


二十歳以上編は長引いちゃってますね。

でもまだまだ続くんです……

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