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173/338

その173

「はい、まずは自己紹介。私はフラニーハナルスヒアメアロ、長いからフランでいいよ、よろしく。まあ、シラユキから話は聞いてると思うけどね」


「私はメアリーだよ。私もフランもシアと同じで姫付きのメイド、どうぞよろしくー」


 フランさんとメアさんが、両手でスカートを軽く摘み上げぺこりとお辞儀をしながら簡単に自己紹介をする。


「は、はいっ。わ、私はミーラン・スケイロといいます。よろしくお願いします。ええと……、私のこともシラユキ様から聞いてますよね? 冒険者ギルドで受付をやっています」


 ミランさんもそれに答え、少し緊張気味に自己紹介を返す。


 私のせいで随分簡単に自己紹介が終わっちゃったな……。まあ、いいんだけど。何事も面倒なくあっさり終わるのはいい事だよね。

 とにかく、ミランさんがついに私の家に遊びに来てくれた! ふふふ、何をお話しようかな! 何をしてもらっちゃおうかなー!!






 椅子に腰掛けたミランさんは何やら落ち着かない様子。キョロキョロと部屋を見回したり、私やメイドさんズ、ショコラさんと目が合ったら慌てて逸らしたりと忙しそうだ。緊張で喉が渇くのか紅茶のおかわりももう四杯目になっている。断りきれないだけだと思うけどね。


「ふふ、そんなに緊張しなくてもいいよ、ミランさん。ふふ、ふふふ」


 借りて来た猫の様なミランさんの仕草についつい笑いが出てしまう。失礼失礼。


「わ、笑わないでください……。やっぱり緊張しちゃいますよ。ああ……、バレンシアさん、は無理として、メアリーさんとフランさん、キャロルさんも座ってくださいよう……」


 さすがにシアさんが座ってくれない事については慣れちゃってるね。


「いやー、私らメイドだし、シラユキだけならともかくお客様が来てるときはさすがにねー。あ、名前は呼び捨てでいいよ」


「ミランさんは受付生活長すぎてさん付けが当たり前になっちゃってるんじゃなかったっけ? 姫がそんな事言ってたよね確か」


 うんうん。いつだったか二人にその話はしたね。今ではどんな人でもさん付けしちゃうらしいね。


「ああ、私とキャロ、ついでにガトーは無視、放置してくださって構いませんよ。私とキャロは何度もお会いしていますし、ガトーとはこれから嫌でも顔を合わせ続ける事になりますからね。今日は姫様自慢のメイドの二人との会話を楽しんでください」


 シアさんの言葉に笑顔で頷いて答えるキャロルさんとショコラさん。笑顔と言うか単にニヤついているだけか。


 確かに王族の住む館に加えて高ランクの二人がいると緊張も増しちゃうかな? ミランさんが遊びに来てくれるっていう嬉しさが強すぎてそこまで頭が回らなかったなー。

 あれ? 今この場に兄様か姉様が来ちゃったらミランさんどうなるんだろう? ちょ、ちょっと見てみたい気もして……、だ、駄目! ひどい事考えちゃ駄目!! ……父様母様が来たら……? だから駄目だってば私ったらもう!!


「わ、分かりまし……、? シラユキ様可愛らしいぃ……」


 !? いきなり何!?


「ああ、うん。さっきからにこにこしっぱなしだよねこの子。でもね、ミランさん? そういう事言っちゃうと我に返っちゃうから……」


 くう、嬉しさが溢れてニヤニヤしちゃってたか……、恥ずかしい……


「ご、ごめんなさい! ……え? この子? いいんですか? バレンシアさん」


 ミランさんはフランさんの言葉に疑問を持ったのか、シアさんに問いかける。


 なになに? 何の事? いい?


「私は放置して構わないと言いましたのに、まったく……。フランもメアも、勿論私も姫様お付とはいえただのメイド、なのですが、それ以前に姫様からは家族扱いをして頂いているのです。二人とも特に敬語も使って無いでしょう? それに、聞き逃しましたか? フランは姫様を呼び捨てていましたよ」


 ああ、なるほどそんな事。メアさんもフランさんも、私のことはお姫様っていうより妹みたいに思ってくれてるよね、ふふふ。シアさんもキャロルさんも様付けで敬語だから勘違いされちゃってたのかもしれないね。


「え、ええ、シラユキ様はそう仰っていましたけど、ちょっと違和感と言いますか……。お、お姫様ですよ?」


「四人ともメイドさんだけどみんな大切な家族なの。私はお姫様って言うよりただの子供だからね。他の国だともっと厳しくしてるのかもしれないけど……」


「まあ、そうですよね。ミランさんは私と同じで冒険者ですからしょうがないですよ。王族は偉い、っていうのがもう頭の中に刷り込まれちゃってるんでしょうね」


 ここでずっと傍観者を決め込んでいたキャロルさんがフォローに入ってくれた。


「私はてっきりシラユキ様がお優しい方で、メイドさんにも分け隔てなく接しているんだとばかり……。メイドさ、フランさんとメアリーさんからもだったんですね」


「森のみんなはほとんどそうだよ? 堅い喋り方の人もそれなりにはいるんだけどねー。それなりにしかいない、かな? ふふ」


「はー、なるほど……。シラユキ様が仰られていた家族は本当の意味での言葉だったんですね……。あれ? そうなると私は……」


 むむむ。気付いたねミランさん!!


「勿論ミランさんも私の大切な家族の一人! そろそろ敬語も様付けもやめちゃっていいんだよー? やめてほしいなー?」


「そうそう。なーんにも緊張も遠慮もする必要ないんだってば。シラユキを傷つけなければからかったっていいし、全然普通の子供扱いで大丈夫」


「ミランさんは受付嬢だから敬語抜くのは難しいのかもね。でも変に緊張するのはどうにか直したほうがいいと思うよ、姫もなんとかしたいって言ってたし……。あ、言っちゃってよかったのかなこれ」


 よくはないけど悪くもないかも? ミランさんの緊張癖が直せるのなら私も嬉しいし……


「ええ、敬語はさすがにやめれそうにないですね……。でも、うん、実感が湧いてきましたからある程度はなんとか……」


「実感?」「実感?」


 フランさんとメアさんが同時に聞き返す。


「わ、っと……。ええと、森の住人、シラユキ様の家族の一員である事の実感ですね。今日まで、今この時まで全く、欠片さえ思えなかったんですけど。ふふふ」


 あ! 笑った!! 緊張が抜けたかな? ふふふ、ふふふふ、嬉しいな!!


「ミランさん! 一緒にお風呂入ろう? ねえねえ、いいよねいいよね?」


「え? あ、はい! でも、いいんでしょうかバレンシアさ……、あ。か、家族ならいいのかな……? 私でよければご一緒させてください!」


「あはは! ああ、なんだかとっても嬉しい! 楽しい!!」



「また姫様におねだりを……、妬ましい……」


「あはは……。うん、ちょっと、どころじゃなく羨ましいかな。妬ましい……」


「おねだりする姫が可愛かったから良しとしようよ。でも妬ましい……」


「シラユキ様ってミランさんのこと随分とお気に入りなんですね。私も一緒に入りたいなあ」


「お前も一緒に入ればいいだろう? 森の住人なら変に遠慮する事はないとさっき……、ああ、キャロルの場合はバレンシアが怖いか、なるほどな」


「う? それじゃみんな一緒に入る? 入ろう?」


「姫様? メアとフランが襲われてしまいます、キャロとはまた次の機会に一緒に入ってやってください」


「シア姉様!? 私が襲い掛かるのはシア姉様だけですよ!!」


「やめなさい! ミランさんの前でまったくあなたは……」


 シアさんに襲い掛かるとか命知らずにも程があるよキャロルさん……。珍しくシアさんが恥ずかしそうに……、あれ? 恥ずかしそうに……?


「ふふふ。シラユキ様の家族、か……。毎日楽しそうでいいですね」


 っとと、ミランさんも緊張が解けて楽しそう。変な考えはまた今度にしよっと。


 まずはミランさんとお風呂だ!!






 結局一緒に入ったのは、私とミランさんに加えメアさんとフランさんの四人。ミランさんは二人の胸を目の前で見せつけられて言葉も出ない様だった。気持ちは分かるよ。

 ショコラさんに拉致されて連れられて来てしまったので着替えも何もなく、姉様のを貸そうとしたのだけれど、さすがに無理ですとシアさんの私服を着てもらう事に。私服と言ってもシアさんはメイド服しか持ってないみたいだったんだけど……


 とりあえず今私が考えるべき事は、ミランさんメイド化計画を……


「似合いますねミランさん。姫様も大変お喜びですよ妬ましい」


 シアさんの一言に意識を戻す。


 ああ、シアさんまだぱるぱるしてる……。一緒に入ればよかったのに。


「そ、そうですか? メイド服って一度着てみたかったんですよね……。バレンシアさんの立ち姿に少し憧れてまして」


 スカートを片手で少し摘み上げ、ゆっくりとくるりと一回り。素晴らしいメイドさんだ素晴らしい。


「ふふふ。シアさんは誰から見ても美人で完璧なメイドさんだからね。メアさんもフランさんもそうだけど、私の自慢のメイドさんなんだから!」


 今出したメンバーにキャロルさんが入ってないのは、私たちと入れ違いにショコラさんとお風呂に入りに行っているからであって深い意味はない。


「あら嬉しい。シラユキってホントにメイドさん大好きになっちゃったよね……。それがいけないって訳じゃないけどやっぱりちょっとね。あ、っと、ごめんねシラユキ? 悪く言ってる訳じゃないから勘違いしないでね。お姫様の趣味として珍しくて面白いなって思ってるだけだから」


「だいじょーぶ、変な勘違いなんてしないから安心して。私がメイドさん好きになっちゃったのは三人がメイドさんだからっていうだけだから。メイドさんじゃなくても、メイドさんをやめたとしても三人とも大好きなことには変わりないしね。ふふふ」


「うわ。何この子可愛すぎる……。ねね、姫、膝に乗せるね? ……っと」


 メアさんは座っていた私を軽く持ち上げ、そのまま椅子に腰を下ろし、可愛がりを始める。


「ああ、シラユキ可愛さに感動してたら先を越されちゃったか。メア、次は私……、あ、ミランさん、どう?」


「あああ、シラユキ様可愛いいぃ、え? ……はい!? ささささすがにそれは……」


 ミランさんはメアさんに可愛がられる私をにこやかに見ていたのだが、フランさんの急な申し出に我に返り大慌てだ。


「さすがに、何ですか? 何も難しい事も恐れ多い事もありませんよ。ここはギルドとは違い人目を気にする必要もないのですから。実感をさらに持てるのではないでしょうか妬ましい」


「シア、さっきから妬ましがりすぎだよ。今日のシアはなんだか可愛いね。それじゃ、早速変わってみる? はい」


 またもや私をひょいと軽く持ち上げ席を立ち、ミランさんへと差し出すメアさん。


「えええ……、どどどどうしたら……」


 手荷物扱いは複雑だけど黙っていよう。ミランさんにはやっぱり多少強引にした方がよさそうだね。


「はいはい早く受け取ってー。姫は軽いけどずっと腕だけで持ち上げてるのは辛いものがあるんだから」


「わ……、ちょ、わ! 本当に軽い!」


 ぐいぐいと押し付けるように私が手渡され、ミランさんは観念したのか膝の上に私を降ろす。


「ふふふ、ミランさんとこうするのは初めてだねー。嬉しいなー。ミランさんもこのままメイドさんに……、あっといけない」


「え? あ、は、はい。も、もう、可愛らしすぎて何が何だか……。か、軽い、細い……。心配になってきちゃいますよこれ……。あ、さっきメアリーさんがしてたように頬擦りしてもいいんでしょうか?」


「うん! キスだってしてもいいよ?」


「キス!? ……あ、ほっぺにですね。あー、ビックリしました……」


 私のキス発言に驚きながらも優しく頬擦りを始めるミランさん。


 あー、なにこれ幸せすぎる。十年以上お友達付き合い家族付き合いをしててやっと、ついに膝抱きにしてもらえたからかな? わ、私の甘えん坊レベルはもう手遅れだねきっと……。でも三十歳くらいまではいいかなー……



「ん? 唇にしちゃってもいいんじゃない? シラユキもミランさんなら全然気にしないと思うし、私らだって一日一回は絶対にしてるよ? そろそろ舌を入れようかって思ってるくらいで」


「やめて! 思い直して!」


「私なんて一回どころか、ええと……、何回だろ? ほっぺにも唇にも毎日数え切れないくらいしてるよ」


「メアはもう少し控えた方がいいのでは? まあ、姫様はメアとのキスは楽しみにされていますからいいのですが、ね。ああ、勿論私もフランと同じ様に一日最低三回は唇にさせて頂かないと死んでしまいますね」


「なんでシアさんはすぐ死んじゃうの!?」


「死んじゃうんですか!? フランさんも!? 私も一回してしまうとそうなってしまうんじゃ……?」


「私は死なないって……。でもレンはホントに死んじゃうかもね。ま、別に無理してしなくてもいいから気にしないでいいって。とりあえず頬にむちゅっと何度かしてあげて、シラユキはキスされるとすっごく喜ぶから」


「それはお三人が綺麗なメイドさんだからだと思うんですけど……。あ、シラユキ様? 一度だけ失礼しちゃいますね?」


「うん、何回でもいいよー。ふふふ」


「……んっ。はあ、可愛いぃ、幸せ……。持って帰りた……、はっ!?」


「シアさん駄目!!」


「姫様の前では何もしませんよ……。前では……ね」


「すみませんすみません! 出来心なんです!!」


「気持ちは分かるけど持って帰らないでねー。シラユキ攫うのは世界を敵に回して勝つ事より難しいと思うよマジで」


「うーん……、やっぱり今夜は我慢するかな。ミランさん、姫と一緒に寝てもいいよ。今日は私の当番なんだけどさ」


「あ、嬉しいです! ……当番、ですか?」


「わ! 気にしないでいいから!!」




 ミランさんに一人で寝られない事がバレてしまった!!

 でもそろそろ大丈夫だと思うんだけどね。直そうと思って直せるものでもないと思うし、あんまり気にはしてない。してないけど……!! 人に知られるのは恥ずかしい!!






「ミランさんミランさん。感想を聞かせてほしいな?」


「これが格差社会、なんですね。シラユキ様、私たちは強く生きましょうね……」


「あはは。ミランさんも小さくはないと思うんだけどねー。シアさんだって大きめなのに二人が大きすぎるから自信なくしちゃってるみたいなの」


「ええ……? バレンシアさんは普通に大きいですよ……」


「あ、あとね、私はまだ未来があるから。ふふ」


「ふふふ、そうでしたね。あー、私もこんな可愛い妹欲しかったな……。あのー……、シラユキ様?」


「ふあ……。ん……、なあに?」


「あ、眠いですか? すみません。ええと、抱き寄せても、構いませんか?」


「うん……、いいよー……。おやすみなさいミランさん。揉んじゃったらごめんねー……」


「あああああ、本当に可愛らしすぎるううぅ……。……揉む? あ、いくらでもどうぞ! ……あれ? あああ、頬擦りされてる……!! 可愛いいぃ……。おやすみなさい、シラユキ様。ふふふ」







一週間以上経ってしまいました……

次回はまた五日後くらいに投稿できると思います。


『裏話』の方にキャラ紹介のその2を投稿してあります。

超ネタバレ満載なのでお気をつけて?

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