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その171

「ソフィーさんもエディさんもまだ町を出られる予定を立ててすらいませんでしたよ。ご安心くださいとは言い切れませんが、まだお悩みになられるのは少し早いかもしれませんね。私は勿論のこと、メアもフランも喜んで相談に乗ります。ゆっくりと心の整理をつけていきましょう」


 帰宅の挨拶の後、シアさんが真っ先に私が今一番必要としているだろうと思われる情報を教えてくれた。


「私の名前も出してくださいよ! シラユキ様、私も何だってして見せますからね!!」


 シアさんの横で、片手を挙げピョンと一跳ねしながら言うキャロルさん。何この人超可愛い。


「私は可愛がる事くらいしかできんと思うが、まあ、不安になるな、難しいとは思うがな。ふふ、こういった事はやはり付き合いの長い三人が適任だろうなあ。私たちは、その、離れて行く側だったからな。戻ろうと思えばいつでも戻れる旅人だったからなあ……」


 あー、ショコラさんもキャロルさんも冒険者だったからね。友達と別れることは寂しかったりするんだろうけど、どうしても会いたくなってしまったら自分から会いに行けたんだ。そうなるとやっぱり私の今の気持ちはそこまで理解できない物なのかもしれないね。

 ん? シアさんも冒険者だったねそういえば。ふふふ、忘れちゃってたよ。


「ありがとうシアさん。キャロルさんとショコラさんもありがとう。ふふ、大丈夫だよ、私だって少しは成長してるんだから、ね。……してるよね?」


 今日は不安になって逃げ出しちゃった形になる。そうなるととても成長したとは言えない? それどころか……、あれ?


「はいはい、考えない考えない。ちゃんと成長してるから気にしない、ゆっくりかもしれないけどね。いいじゃない、シラユキはお姫様なんだから弱いままだっていいのよ。家族みんなに甘えまくってればいいの、分かった?」


「うう、みんな優しい……。うん、ありがとうフランさん」


 みんな本当に優しすぎるなー、もう大好きすぎるよ……。今プロポーズされたら何も考えずに即OKしてしまいそうだ。あはは。


「今日コーラスさんに言われたみたいにさ、姫のやりたいようにやればいいよ。その二人に行かないでって泣きついちゃうのもいいし、また会おうねって素直にお別れするのもいいし……、逃げちゃうのもありだよ? だーれも責めたりなんてしないからさ。ね?」


 さ、さすがにそれは……

 なんという甘やかし! もう優しいとかそういうレベルじゃないよ! 嬉しいな……


「ううん、大丈夫! メアさん大好きだよー!!」


「私も大好きだよー!! ああ、甘えてくれる姫、可愛い!!」


 ひしっと抱き合う私とメアさん。



「あ、メアだけずるい! 私たちにはお礼だけだったのに! シラユキ、キスしてキス!!」


「ちょっとフラン、何を要求して……、シラユキ様からのキス……? 私もして欲しいです!!」


「されているのはよく見るが、シラユキからする事はあるのか? ああ、バレンシアの頬にしているのは一度だけ見たな」


「姫様からして頂ける事は本当に稀なのですよ。私も数える程しか……、ふむ。姫様、唇にキスを頂けませんか?」


「なんで!? ううう、でも今日はしてもいいかなって思えちゃう……。だ、駄目! ほっぺで我慢してみんな!!」



 ゆっくりと五人の頬にキスして回った。


 あ、改めてすると恥ずかしすぎるよこれ。まあ、いつもされてるばっかりじゃ駄目だよね。私も毎回キスしてもらって凄く嬉しいんだから、たまには私からもお返しをしないといけないか。多分みんな喜んでくれると思う……、? 思うじゃないや。

 今五人とも凄くいい笑顔をしてくれているね、実際に喜んでくれている。ふふふ、恥ずかしい思いはしたけれどこれなら私も大満足だ。後で母様にもしてあげよっと。






 さてさて、落ち着いたところで今日のお出かけの結果を聞かせてもらおうかな。あの優しいミランさんのことだから前向きに検討してくれたんじゃないのかな。


 私とショコラさんが椅子に座り、メイドさんズ四人は立ったまま。シアさんさえ座ってくれればキャロルさんも、連鎖的にメアさんとフランさんも座ってくれると思うのに……


「どうだったか聞いてもいい? ソフィーさんとエディさんからお話を聞いてきただけじゃないよね?」


 自分で言ってそれもあるかもしれないと思ってしまった。


「え、ええ。姫様には申し訳ありませんけどそちらはついでのような物でしたね。今日は偶然お二人に会えてお尋ねする事ができただけで……、と、すみません。どうにもこの回りくどい話し方は直りませんね。はあ……」


 シアさんは自虐的にため息をつく。


 あ、ショコラさんに言われた事気にしちゃってるのかな? 私もそう思ってる、とか変な事考えてるんじゃ……


「私はシアさんのその話し方、好きだよ? 無理に直さなくてもいいからね」


「は……。な、なんてお優しい……、感動です。ありがとうございます、姫様。ふふふ、嬉しいですね……」


 ため息をつく様な状態から一転、超が付くくらい上機嫌になってしまった。


「シラユキ様凄いなあ……、シア姉様をこんなに簡単に笑顔にしちゃえるなんて羨ましい……。あ、ミランさんは驚いてましたけどいいって言ってくれましたよ。まさかこんなにあっさり決まるとは思いませんでしたね」


 なぬ? 一発OK? なにそれすごい。


 ふふふ。そっかそっか、ショコラさんはミランさんと一緒に住む事になるんだね。私もシアさんと二人で一日だけ泊めてもらった事はあるんだけど嬉しそうにしてたもんねー。ミランさんも一人暮らしはちょっと寂しいとか言ってたし……。ふふ、ふふふ、自分の事じゃないのになんか、凄く嬉しいや。


「まあ、私としては少し複雑な気分だな。Sクラスの私から、さらに王族のメイドたちからの頼みだから断りきれなかったんじゃないかとも思ってしまうんだ」


「あー、うん。どうだろね? 私らはそのミランさんは話で聞いてるだけで直接会った事はないからね。この森に住む許可は貰ってる筈なんだけど一回も顔見せに来ないのよねー」


「姫とシアの話を聞く限りいい人っぽいよね。怒ると怖いらしいけど? あはは」


 そういえばメアさんとフランさんはまだミランさんに会った事ないんだった。クレアさんとカイナさんは何回か会ってるんだけどねー。

 ミランさんって森の中に、私の家に誘っても断っちゃうんだよね。無理に誘おうとすると半泣き状態になっちゃうし……


 むう、これはいい機会かもしれない。無理矢理、は駄目だけど、ちょっとだけ強めにお願いして一度家に遊びに来てもらっちゃおう!


「っと、大丈夫だよショコラさん。ミランさんは優しい人だけどそんな大事なことは嫌々でもOKしないと思うから。私が一緒にいなくても、いいよって言ってくれたのなら本心からだと思うよ」


 私が一緒にお願いしたら何でも許可しちゃいそうだからねミランさんは……


「ええ、私もそう思います。少し緊張されていましたけど自然体に近かったですからね。とりあえずは住む所の問題は解決したと言っていいでしょう。ですが……」


「ああ、収入の当てだな。節約をしつつも収入を増やし、生活を安定させていかなければな……。ここからが本番か、頼んだぞバレンシア、キャロル」


「自分でも考えなさい!」


「いきなり丸投げするな!! まったくコイツは……。やっぱり追い出しましょうよ」


「あはは、私からは頑張ってねとしか言えないよ。頑張ってね三人とも。その間の姫のお世話は私とフランに任せていいからさ!」


「そうそう、レンには悪いと思うけどね? シラユキを一人、じゃない、二人占めできるのは嬉しくって。レンがいなくて寂しがって、その分私らに対する甘えが強まっちゃってねー。今日も姉さんの所行ったんだけど、何て言うか……、辛抱たまらない?」


 ええ!? 今日の私ってそんなに寂しそうにしてた? くう、確かに今日は三人にもの凄く甘えちゃった気がする……。ちょっと恥ずかしい!

 でも今日は昨日言われた事でちょっと気落ちしちゃってただけで、別にシアさんがいないから寂しがってたっていう訳じゃないと思うんだけど……、思う? 自分でも断定できないのか私は!!


「私がいなくて寂しがられて……? う、嬉しさと申し訳なさが同時に……!」


 フランさんの言葉に身をくねらせるシアさん。複雑そうだ。


「あー、やっぱりシア姉様に頼りすぎるのはよくありませんよね」


「だな。私としては助かっていいんだが、そのせいでシラユキを寂しがらせていては、な。まあ、今度から出かける場合はシラユキも、と言いたいところなんだがなあ……」


 むむむ、私は一緒に行けない?


「言いたいところなんだけど?」


「ん、ああ、私の専門は荒事だ、まずはその方向で行こうと思っていてな……。さすがにシラユキを連れてそんな職探しはできん。そこにバレンシアを連れて行こうものならまたシラユキを寂しがらせてしまう事になる」


「な、なるほど。でもそこまで気にしなくてもいいよ……。シアさんが毎日いないのはちょっと、どころじゃなく寂しいけどね。一日置きとか二日置きとか」


「いえいえ! ええと、シア姉様には助言を貰おうと思っているんですよ。それだけでも充分すぎるほど助かるんです。闇雲に動き回るより何か道しるべでもあれば私とガトーの二人でも問題ないですから! シア姉様にはその道しるべになってもらえれば、と」


 キャロルさんは急に、私の言葉を遮るようにして今後の方針を話してくれた。


 ええい、何か勘違いしてるなキャロルさんめ……。私がシアさんがいない事を我慢しようとしている様に取られちゃったのか。

 いや、まあ、うん。今のキャロルさんの説明で本当に問題なさそうだからいいんだけどね……




「ん? シア?」


 メアさんの言葉にシアさんの方を向くと……

 シアさんは無言で私を抱き上げ、一緒に椅子に座る。


 な、何? 無言で勝手に膝抱きにするとか珍しい……。今までも何度か、本当に数える程しかこんな事はした事はなかったのに、どうしちゃったんだろう?


 シアさんは機嫌良さ気に私の耳元へ唇を寄せ、手で口元を覆い隠し……


(勘違いさせておきましょう。私としましても何日も姫様のお世話から離れるのはまさに死と同等、いえ、それ以上の苦痛ですから。ふふ、勘違いでない方が私は嬉しいのですが、ね)


 本当に小さな声で、でも私にははっきりと聞こえるように、嬉しそうな声色でそう囁いてきた。


「くすぐったい! ……うん、分かった、そうしちゃおう? ふふふ」


「あ、なになに? 内緒話? ご機嫌だね二人とも」


「やっぱりシラユキの隣にはレンがいないとね。ちょーっと羨ましいかな」


「ホントだよ。毎回思う事だけど、シア姉様もシラユキ様もどっちも本当に羨ましい!!」


「むむ? みんな大好きだよ? 一緒にいてくれないと寂しいよ? もちろんショコラさんだって!」


「はは、可愛いな……。見ているだけで幸せな気持ちが溢れてくるなこれは。ミカンの所に住まわせてもらえる様になってからもちょくちょくと顔を見に来れるといいんだがなあ」


「え? ショコラさんは森に入っちゃってもいいと思うよ? 巡回の人に言ってくれれば誰か、あ、私が勝手に決めちゃ駄目かな。母様にお願いしておくからね!」


「ああ、ありがとうな、シラユキ。本当に優しいいい子だな……」


「姫は世界一って言ってもいいくらい優しい子だからね。まあ、こんないい子先に見ちゃうと自分の子供とかホントに欲しくなくなっちゃうんだけどね……」


「褒めすぎ!! うーん、嬉しいけど恥ずかしい……」




 私のせいでみんなの婚期が遅れちゃう!? ……ん?


 フランさんは結婚済み、ショコラさんもライナーさんがいる。キャロルさんはシアさんが好きで、シアさんは……、謎。ふむ、浮いた話がないのはメアさんだけか。メアさんは完全ノーマルだし安心かな、最近ちょっと怪しくなってきてる気もするけど……


 申し訳ない気持ちになっちゃうけど、私がもうちょっと大人になるまではみんな側にいてほしいなー。ごめんね、甘えん坊のお姫様で、ふふ。







まだまだ続く二十歳以上編、百歳になるころには一体何話に……


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