その158
あんまりおっぱい話ばかり続けていると本当に兄様が嗅ぎつけて来そうなので、そろそろ本題に入って貰う事にしようと思う。なんでこんなに話がずれちゃったんだろう……。あれ? 私がショコラさんの名前の事を突っ込んだからじゃね?
むう、しまった、私のせいだったのか……。まあ、でも、ショコラさんの名前の付け方、呼び方が分かったんだし完全に無駄話という訳でもなかったんだけどね。おっぱい連呼は恥ずかしかったけど楽しいお話だったから、むしろプラスと言ってもいいと思うよ。
「それじゃシアさん、ショコラさんがここにいる説明をまずお願い」
まずは一つ目。竜人種族であるショコラさんがリーフエンドの森の奥、しかも王族の住んでいる家で堂々と食事をしている理由から。食事は別にいいか、朝ごはんを食べるのは普通の事だった。
「畏まりました。しかし、どこからどう話したものか、少し難しいですね。まず昨日のメイド採用試験の第一段階は、残念ながら何とか突破してしまったことをお伝えしておきます」
残念じゃないから!! というツッコミを全力で我慢する。また話が逸れてしまいそうだからね。
「ツッコミが来ないとは、寂しいです。まあ、キャロとガトーの二人がそれなりに頑張って、ウルギス様とエネフェア様にはご納得頂いたのですよ。それはまあ、どうでもいいですよね」
投げやりすぎる!! くうっ、突っ込まない、突っ込まないよ!!
シアさんは私のツッコミを少しだけ待ち、これも駄目だったかと残念そうに説明を続ける。
「一段階目をクリアしたのなら次に待っているのは二段階目、ガトーの今後の住まいと仕事、ギルドの依頼の報酬以外の収入の当て探しですね。そこでなんと、この恥知らずと恥知らずな私の弟子の二人組みは、あろう事かエネフェア様にお縋りしようとしたのですよ。そこもまあ、面倒なので飛ばします」
飛ばしちゃった!! キャロルさんがいないのもそれ関係のお仕事か何かがあるのかな?
恥知らずと言われたショコラさんは全く気にせず朝食を続けている。
「その相談の結果、住居と収入の当てが見つかるまでの間、いくつかの条件付きでこの館に暫く滞在する事を許可されてしまったんです。本当にエネフェア様はお優しい方ですね。森の中の集落部分へ他種族が入った事は、実は今までにもそう多くは無いですがあった様なのですが……、しかし、王族の住まうこの館に招待されてしまうとは私も思わず、っと、申し訳ありません、少し話が逸れてしまいましたね。簡単に纏めてしまいますと、暫くの間ガトーはこの館に居候する、と決まった訳なのです」
「ショコラさん暫くうちにいてくれるの!? ううん! ずっといてもいいよ!!」
ここに住んでお仕事も森の中で何か探せばいいよね! それでライナーさんと結婚して……
「こらこら姫。まったくもう、自分の言葉でそれが実現しちゃうかもしれないっていう重さは分かってるの? 姫はお姫様なんだよ?」
「あう。ごめんねメアさん、つい嬉しすぎちゃって」
おっといけない。条件とか全部無くして永住させてしまうところだった。でも撤回はしない!!
「あはは。まあまあ、いいじゃない。しっかし、おっパンはたった二日でやけにシラユキに好かれちゃったね、ちょっと嫉妬しちゃうかな」
「私も何でか分からないけどショコラさんのこと大好きになっちゃったんだ。でも、フランさんも勿論大好きだよー」
「あーずるい! 姫姫、私はー?」
「メアさんも大好き! ふふふ」
「一瞬嫉妬を通り越して殺意を覚えましたが、姫様の嬉しそうな笑顔に癒されてしまいました。運が良かったですね三人とも」
「そう思うならナイフをしまえナイフを。まあ、ちょっと厄介な条件もある事だし、あまり長くは居れんとは思うがな。そういう訳だ、暫くよろしくな、シラユキ」
にかっと素敵な笑顔で私に微笑んでくれるショコラさん。なにこの笑顔、素敵すぎる。
「その条件も聞いちゃっていい? 私に話せなさそうなのは秘密にしてもいいよ」
ショコラさんは厄介な条件もある、って言ったね。私は知らない方がいい条件もあるかもしれない。それくらいこの家に他種族の人を招くというのは大きな問題なんだろうと思うからね。母様がお爺様お婆様に怒られないといいんだけど……
「あー、バレンシア、頼む。私は食う」
そう言って朝食の続きに取り掛かるショコラさんと、それを苦笑しながらお手伝いするフランさん。
「姫様にお話できない程の重い条件は……、いえ、条件自体は重くなくとも罰則は充分すぎる程重いのですが、ガトーがそれを無視する行動に出るなどありえません、お話しても大丈夫でしょう。まずは全ての条件に言える事なのですが、反故にした場合は、その……、これです」
シアさんは自分の首を手の平で横に……、え?
「し、死刑……、なの?」
「うわ重っ。気を付けてよショコラ、折角出来た新しい友達が死刑になるなんて御免だからね」
ショコラさんは大きく頷き、食べる事を再開する。余裕そうだ。
「大丈夫でしょ。レンだって大丈夫だと思うからこそシラユキにも教えたんだろうし。シラユキ、暗い顔しない。安心しなさいって」
「う、うん。ごめんね、ちょっと怖かった」
心臓がまだドキドキ言ってる、深呼吸して落ち着こう。フランさんの言う通りだよね。
「申し訳ありません。ですが、姫様にもガトーがリーフエンドの森に、この館に住む事の重さ、その重さを知って頂きたかったのです。お許しください」
「うん、ありがとうシアさん。条件の方も教えて貰えるかな」
「姫様は謝罪に対しお礼で返されることが多い気がしますね、なんという優しい心の持ち主なのでしょう……。ああ、すみません、条件でしたね。かなり細かく決められていますので簡単に、ああ、ガトーはその条件が書かれているメモを持っています。後でそれを見せて貰うのもいいかもしれませんね。まずは最低条件、森の中での故意による力の使用の禁止ですね。自衛やどうしても、という場合はその都度同行人の判断により是非が問われます。これはどちらかと言うと力の使用そのものではなく、森に住まう住人をその力で傷付けてはいけない、という意味ですね。さらにもう一つこちらも最低条件です。個人行動は一切禁止されています。こちらから先に説明すべきでしたね、すみません」
「ショコラさんなら絶対大丈夫だね、うん。個人行動の禁止って、常に誰かと一緒にいろっていう事? あ、一つ目の同行人の判断って、そういう事?」
「はい。主にキャロがその任に当たる事になると思います。例外として唯一許されるのはトイレのみですね、ドアの前に誰かを待たせる事が必須条件なのですが」
あはは、そこはやっぱりね。監視する人も大変すぎるよ。私はシアさんに見られちゃったんだよね……、思い出すだけでも恥ずかしい。
キャロルさんはショコラさんとすごく仲が良さそうだし、気心の知れたお友達が一緒なら何も問題は無さそうだね。
「私もさすがに用を足すところを見られるのは精神的にキツイからな、それは助かる。風呂は女同士なら問題は無いし、むしろ望むところだな。昨日はキャロルを洗いまくってやったぞ」
「なにそれ楽しそう。今日は私と入ろうねー」
「ああ、それはいいな。ふふ、楽しみだ」
私も楽しみだ。あの白いおっぱいが湯船に浮かぶところを是非拝見させて貰いたい。
「どうせならキャロも含め六人で入りますか。? 姫様? もう宜しいので?」
シアさんがフォークを置いた私に気付き、問いかけてくる。
「うん、お腹いっぱい、ごちそうさま。続きを聞かせてほしいな」
「小食すぎるだろう……。心配になってきたぞ」
「ショコラが朝から食べすぎなだけだって……。はい姫、口拭かせてね」
ショコラさんの食欲に呆れながら、メアさんは私の口周りを優しく拭ってくれる。
「後は、まあ、客人扱いではなく居候。ペット扱いでも構いません。これはフランの対応を見ての通り、特に問題はありませんね。こちらから勝手に客人扱いするのは問題ないですが、ガトーの方から要求するなという事ですね、こちらもまずありえないでしょう。後は細かい決まりが色々と、特に姫様にお聞かせする様なものも、興味を引かれる様なものもありませんね。こんなところでしょう」
ふむふむ、なるほどなるほど。……ペット!? ま、まあいいや、ツッコミよりまとめに入ろう。
森の住人、家族を傷つけるな。これはありえないね、大丈夫。クレアさんが模擬戦を申し込むかもしれないけど、それで出来る怪我はしょうがないかな。自衛と言えば自衛だよね。
一人で勝手に行動するな。これも多分大丈夫だろうね。でも、トイレ以外一人になる事は無いってプライバシーも何もあったものじゃ……、あれ? 私もそうじゃね? 問題無いかもしれない。
客人扱いはしない、むしろペット扱い。これは既にお客様扱いしちゃってるからぶっちゃけちゃうとどうでもいいね。ショコラさんから断ることはあっても、逆にそれすら無視してこっちからお客様扱いすると思うよ。ペット扱いは……、ああ、ドラゴンになれるから? !? せ、背中に乗せてもらって飛んでもらったりできるんじゃ……? む、胸が熱くなるわ……
これはこれは、うん、問題無くね? 問題どころか期待の方が大きくね? 安心だねー、? いやいや待てよ……? 忘れるところだった!
「ショコラさん、厄介な条件があるって言ってなかった?」
そのせいで長くはいられないとか何とか言ってたと思う。私の一言で取り消せる条件ならいいんだけど、そこまで甘くはないよね。
「む、覚えていたか。すまんなバレンシア、口が滑りすぎた様だ。言っても構わんか?」
「大丈夫だとは思うのですが……。姫様、聞いた後も興奮せず、落ち着いてくださるよう先にお願いをしておきますね。深く考えず、続きの言葉を待ってください」
「う? 聞いた後落ち着いて次の説明を待てばいいんだよね? 分かった」
「なになに? 姫が怒っちゃう様な内容? とりあえず肩押さえとくよ」
「シラユキを怒らせる様な条件? 何だろ、気になるねそれ」
「体を要求されても抵抗するな、だ。まあ、これも」
「はあ!? 何それ!! どこのどいつよそんな事決めたのは!! 私ちょっと姉さん呼んでくるわ……」
「さすがにそれは……。何? 若い男の慰み者になれとでも言われたの? ねえショコラ、姫のためっていうのは嬉しいけどさ、そこまで無理しなくてもいいんだよ?」
誰がそんな事を!!! と私も一瞬頭に血が上ったが、誰が、にすぐ思い当たり、また一瞬で落ち着いた。
「二人とも待って。大丈夫……、じゃないけど私、分かったよ……。ルー兄様だねそれ」
「あ」「あ」
私の一言に二人はあっさりと落ち着きを取り戻してくれた。兄様はみんなに信用されているね、変な意味で。
「おお、正解だ、さすがは同じ趣味の妹だな。一応言葉の意味通りやらせろと言われたら大人しく体を差し出さねばならんらしいが、ありえんだろう?」
「ええ、ルーディン様もまさか受け入れられるとは思わず、冗談半分で出してしまった条件なのですよ。不特定多数の男性ではなくルーディン様のみなのでこちらもご安心ください」
「姫、ありがと。驚かせないでよショコラ、もう……。んー、でもさ、確実に何度か揉まれるよ? 毎日要求されるかも……」
「あー、シラユキが落ち着いてるのに私が切れちゃってどうするんだか、恥ずかしいな……。もしかして、もう揉まれちゃった?」
二人とも落ち着いた事は落ち着いたみたいだけど、やっぱり心配だよね。実際ショコラさんの胸の感触は、私的ランク一位の母様の胸に匹敵する素晴らしさだったからね。私と同じ趣味の兄様が黙っている筈がない。……同じ趣味とか言わないで!!
「いいや? 我慢するとは言っていたが、その、な。どうやら私の胸はルーディン好みの大きさと形らしい、俺と二人きりになるなよとも言っていたな」
「ルー兄様意思弱い! ホントに気をつけてね? ルー兄様のおっぱい好きはいっそ清々しいくらいなんだから」
「実はそれもそこまで警戒する程のものではなかったりもするのですが……。お忘れですか? ガトーは個人行動を禁止されているのですよ?」
「あ、そっか。常に誰か一緒にいればルー兄様も手出しし難い、と言うかできないよね。よかった、安心だね」
背もたれにもたれ掛かり、ふうと大きく一息つく。
なんだ、全く全然何一つ問題は無さそうだね。いや、一個はあったか、兄様め……
「誰かいてもジロジロ見られる事には変わりないけどね。ま、それは宿賃だと思って我慢して。私らも毎日見られまくってるからね、すぐに慣れるよ多分」
「ああ。ま、揉まれるくらいなら、とは思うのだがな。それでユーネに要らん誤解を与える可能性があるのがなあ……。それが厄介だという意味だ」
「うん、だよね。ユー姉様不機嫌になっちゃいそうだから、うん?」
「どうしたシラユキ?」
ショコラさんが家にいる、というインパクトのせいで完全に頭から抜けちゃってた。もしかしてショコラさんは、既に私の家族と人間関係を構築済みなのか?
もしかして私……、また何日か眠り込んじゃってたんじゃ? っと、それはないか。シアさんがメイドさん採用試験を昨日って言ってたもんね。
「じょ、条件についてはもういいや。ショコラさんはいつの間にユー姉様と、メアさんとフランさんとお友達になったの?」
「それもまた今更だなあ。私がこの館に招かれたのは昨日の夕方くらいか、そこで全員紹介されてな。その後夕食やら風呂やら、寝るまで時間はあったんだぞ?」
ああ、うん……? そう、だよね? あっれー? 何か違和感が……
「肝心な部分の説明が抜けていましたね。姫様は昨日のお昼寝から今朝までの間、一度も目覚められなかったのですよ?」
「へ? ……え!? ももももしかして……」
「ああ、ご安心ください。前回と違いすやすやと気持ち良さそうに、とても可愛らしく眠っておられましたので……」
「シアは私たちがショコラと話してる間もずっと姫に付きっ切りだったし、絶対起きるまで側にいようとすると思ったからね。昨日は私の添い寝当番の日だったんだけど、私はお昼寝一緒にしたからシアと代わってもいいかなーとは思ってたんだけど……」
「そこで私がな、シラユキが寝てる間胸を揉んできたり吸ってきたりすると話を聞いて、な。ここは是非私が、と」
「そうそう。レンとしては珍しくあっさり引き下がったよね。やっぱレンも久しぶりに会った友達には甘いのかな? ふふふ」
「やめてください恥ずかしい……。まあ、昨晩限り、ですよ」
おお、シアさんが照れてる。ショコラさんが来てから調子を狂わされてばっかりだね。ふふふ、いい事だと思うよ。
「うん。ごめんねみんな、また心配掛けちゃったみたいだね」
「ふふ、いいのいいの。昨日は、うん、確かに心配はしたけど、そこまで、って言う程じゃなかったからね。んで、おっパン? やっぱり揉まれた?」
「あ、ちょっ」
「ああ、揉まれたし吸われたな。皆の言っていた通り素晴らしいの一言に尽きるなあれは。こう、胸の奥が暖かくなるとでも言うか……。とにかく幸せだったな。それに、気持ちよかった」
「え? 感じちゃった? 姫に変な事してないでしょうね? ふふふ」
「さすがに子供相手に性的興奮は覚えんよ、感極まってキスは何度もしてしまったがな。くすぐったそうに身じろぐ姿がまたどうしようもなく可愛くてな、病み付きになるなあれは」
「ややややめてー……」
「だよねだよね? しっかし、キャロルが聞いたら怒るよ多分。キャロルはまだ一度も姫と一緒に寝たことないしね」
「それもそうだね。レン? そろそろ当番の順番に入れてあげる? でもシラユキと一緒に寝れる日まで一日伸びるのは正直辛い!」
「そうですね……。それも今回の試験の結果次第でしょうね。ガトーはたまに姫様のお昼寝にお付き合いして差し上げてください」
「あ、それは嬉しいかも……」
「おお、三食昼寝付きとはまさにこの事だな。このままシラユキのペットになるのもいいかもしれんなあ……」
「ペットは駄目! 何となくいやらしい感じがするよ!!」
「いやらしい? まったく……、誰だ? この子に、子供にこんな知識を与えてるのは……。メアとフランか?」
「あー……、うん、えーっと……。ま、私らって事にしといて」
「あはは……。あ、キャロル遅いね? まだ戻ってこないのかなー?」
「それも聞きたかったんだった。キャロルさんはどこに行ってるの?」
「ん? ああ、私の着替えと荷物を宿に取りにな。下着無しはスースーしていかん」
「ノーパン!? 言われてみれば服も昨日と同じだね。スカート部分は長いけどスリットが深いから怖いよそれは……。あ、寝てるとき裸だったのもそのせい? カイナさんかクレアさんに借りればよかったのに」
「おお、その手があったな、考え付かなかった。昨日の私は自分が思う以上に緊張していたのかもしれんな……。んー、確かに遅いな。あいつの足なら朝食前には戻って来れそうなものなんだが……。ライナーと話し込んでるのか、説明が長引いているのかもしれん。まあ、シラユキにならいくらでも見せてやるぞ? ほれほれ」
「ち、チラ見せはいやらしい!!」
キャロルさんが戻ってきたのはショコラさんが食べ終わって暫く経った頃。疲れた表情で帰ってきたのでみんな不審に思い、理由を訊ねると……
ライナーとソフィーが、のところで私は耳を塞ぎ、全力で逃げ出したので詳細は分からない。
少し簡単すぎるとは思いますが、こんな理由と経緯でした。
ここでちょっと補足を。
シラユキがよく耳を塞いでいるときの動作は、長い耳の根元を正面から握る様な感じで押さえています。
よく聞こえるように耳に手を当てる動作の反対、が分かり易いでしょうか?
耳は真横に伸びていますね。伸びる? 個人差はありますが大体横方向やや上向きです。不思議と邪魔にはならないようです。