その15
「うーむ……」
私を膝の上に乗せ、撫でながら唸る父様。
六歳になりました。例年のごとく盛大なお祭りが開かれました。
いやー、凄かった凄かった。荒れ狂う嵐、爆ぜる大地、吹き飛ぶ人々……。お祭り? 何のお祭りだよ、戦争だよあれは!
それでも軽い怪我人程度ですんじゃうのが、ここの国民の凄いところだ。
中には魔法の苦手な人もいるだろうが、そういった人は離れて観戦できる位置に最初から固まっている。いいお酒の肴になるみたいだ。
父様の演説台の周りにいる人たちは、父様と魔法の撃ち合いができる人たち、という事なのか? それにしては人数多いような……。
しかも、比較的若い人たち、なのだ。
エルフは年を重ねれば重ねるほどあまり人前には出なくなる、らしい。コーラスさんも結構なお年の筈だけど、そういう人が多いという事だろう。
若い人たちは私たちの家、森の中心の大木からそう離れてはいない辺りで生活している。
約七百年前の戦争を経験してる人は殆どいない。みんな森の中に散らばって、思い思い、好き好きに生活しているようだ。
若い人たちでこれか。長く生きているエルフの強さは一体どれほどのものに……。
この国が大陸最強なのもなんとなく頷けるよ。大陸どころか世界最強なんじゃないか? まあ、大陸を越えてまで戦争しようなんて国は無いと思うけど。
「なあ、シラユキ」
「なあに、父様?」
父様が私を撫でる手を止め、私の長い髪を少し持ち上げて言う。
「髪、また伸びたな。切らないのか?」
「やだ! 絶対切らない!!」
「おっと。切らない、切らないよ。怒らないでくれ」
まったく、急に何を言い出すんだかこの父様は。
今私の髪は腰に届くまでに伸ばしている、膝下辺りまで伸ばす予定だ。
今の髪の長さでも十分いろいろな髪型が試せるのだが、どうせならもっと伸ばしたいな、とね。転生前も長かったし。
手入れは大変だが、今はメイドさんズがいる。お世話になってます。
着々と、メイドさん抜きでは何もできない、駄目エルフお姫様が完成しつつあります。あっれ、やばいなこれ。まだ六歳だしいいか……、いいのか? 駄目なんじゃないかな……。
「父様とーさまー」
「ん? なんだいシラユキ」
「父様は、私の髪の色、嫌い?」
そう、私の髪って真っ白なのよ。他の家族みんな、濃い薄いはあるけど、青髪に青い瞳だった。
あ、瞳は青だったよ、少し薄めだけど。ハイエルフは、青い髪に青い瞳が特徴らしい。
私だけ白いのは多分女神様の趣味だろう。白雪草は花弁が白いからね……。さらに葯の部分は青だ、間違いないだろう。
家族に合わせてよ! 青髪とか憧れるよ!
「ふむ……、ここは、怒るべきところなんだろう。だがっ! シラユキを叱る事などできんっ!!」
あ、怒ってるっぽい。言うんじゃなかったな、失敗失敗。
私の髪と目の色なんて家族も、国民も、誰一人気にしていない。それはもう分かっていた事じゃないか。
「ごめんなさい父様。今のは私が悪かったよね」
「お、怒ってない、怒ってないぞ! シラユキがどんな髪の色、髪型をしていようが嫌いになる事などあり得ないからな。俺が言いたいのは、そんな事気にするな、という事だけだ」
うん、大丈夫よ父様、私も気にして無いから。いやあ失言だったよ。
「ありがとうとーさまー!」
とりあえず抱きつく。ああ、ホントに大好きだ。
毎朝、私の着替えと髪形を決めてくれるのはシアさんだ。この仕事だけは誰にも譲れないと息巻いていた。
本当に毎朝楽しみにしているようで終始笑顔で身支度をしてくれる。シアさん妹か娘、欲しかったのかもね。
ちょっとだけ見た目の描写を。髪と瞳だけですが……
シラユキは六歳時点でまだ100cmちょっと、超低身長です。
2012/8/10
所々修正しました。